ウバロバイトガーネットは、まるで良質のエメラルドのように煌めくグリーンが魅力的です。
とても美しいガーネットなのに、宝石としてカットされることは殆どないのだとか。
一体なぜでしょうか!?
手に入れることはできないのでしょうか?
ウバロバイトガーネットについて解説しましょう。
目次
ウバロバイトガーネットとは?
母岩にびっしりくっついたウバロバイトガーネットは、一度見たら忘れられないインパクトがあります。
とても美しいグリーンガーネットなのですが、ウバロバイトガーネットの結晶は殆どが1㎜前後から大きくても3㎜くらいと、かなりの極小です。
ぜひジュエリーとして身につけたいところですが、カッティングできる大きさのウバロバイトガーネットはかなりのレア。めったに無いのだそうですよ。
何だか不思議なウバロバイトガーネットは、一体どのような鉱物なのでしょうか。
鉱物としての基本情報
ウバロバイトガーネットの鉱物としての基本情報は次の通りです。
英名 | Uvarovite(ウバロバイト) |
和名 | 灰クロムザクロ石 / 灰格柘榴石(かいかくざくろいし) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Ca3Cr2(SiO4)3 |
モース硬度 | 6.5 – 7 |
3.40 – 3.80 | |
屈折率 | 1.86 – 1.87 |
光沢 | ガラス光沢 |
化学式を見ると分かるように、ウバロバイトガーネットはカルシウムとクロムを含んだ珪酸塩鉱物です。
特徴
ウバロバイトガーネットの特徴は、何といってもその結晶の小ささでしょう。
先ほども触れた通り、殆どが1㎜前後で、大きくても3㎜ほど。
宝石としてカッティングすることが困難な小ささです。
もう一つの特徴は、エメラルドのような美しいグリーンの発色です。
グリーンの発色に作用しているクロムは、結晶体の成長を妨げる働きもあるそうで、ウバロバイトガーネットの粒が極小なのはクロムのせいもあるのではないか、ともいわれているそうですよ。
ウバロバイトガーネットの特徴である極小の結晶もグリーンもクロムの作用によるものなのですね。
色
様々な色が揃っているガーネットグループの中で、グリーンのものしか産出されないのはウバロバイトガーネットだけなのだそうです。
ウバロバイトガーネットのグリーンは、先ほども述べた通り、クロムによるもの。
エメラルドの発色もクロムの影響があると考えられていますので、似たような色合いになるのも理解できる気がしますね。
クロムはグリーンの発色に欠かせないものなのね!と思っていたら、実は、ルビーのレッドにも作用しているそうなのですよ。
クロムって、鉱物によって異なる色になるんですねぇ。鉱物の世界は本当に奥深いです。
産地
ウバロバイトガーネットの主な産地は、ロシアのウラル山脈、フィンランド、カナダ、アメリカ、ポーランド、インド、南アフリカなどです。
最初に発見されたのは1832年のことで、ロシアのウラル山脈のクロム鉄鉱鉱床から見つかったのだそうです。
フィンランドのオートクンプでは、1㎝の結晶が採れることもあるとか!
1㎝あれば、宝石としてカッティングが可能ですよね。
どんな感じか見てみたいです。
名前の意味
ウバロバイトという名前の由来は、人名からきているそうです。
ロシアのウラル山脈で最初にウバロバイトガーネットが発見されたときにロシアの文部大臣だった、セルゲイ・ウヴァーロフ氏に因んで名付けられたとか。
ウヴァ―ロフ文部大臣は鉱物コレクターとしても有名だったそうですよ。
自分の名前が宝石に使われるなるなんて、鉱物コレクターとしては最上の喜びだったことでしょうねぇ。
宝石の名前の由来を調べると人名が付けられている事が結構多くて、知るたびに羨ましくなってしまいます。
自分の名前が付いた宝石、憧れますよね!
ウバロバイトガーネットと他のガーネットとの違い
画像:左(上下)-ウバロバイトガーネット 右(上下)-デマントイドガーネット
ガーネットグループには様々な色や性質がありますが、ウバロバイトには他のガーネットたちとはちょっと違う部分があります。
第一の違いは、ウバロバイトガーネットはガーネットグループの中で一番産出量が少ない、とてもレアだということ。
それから、小さすぎてカッティングが殆どできない、ということも他のガーネットグループの宝石たちとは違いますね。
そして、先ほども触れた通り、グリーンしか産出しないガーネットはウバロバイトのみなのだそうですよ。
3つのグリーンガーネット
画像:左-ウバロバイト 中央-ツァボライト 右-デマントイド
ガーネットグループはアルミニウムガーネットとカルシウムガーネットの二系統に大きく分かれます。
アルミニウムガーネットはレッドやオレンジ系の色合いのものが、カルシウムガーネットはグリーンや褐色系の色合いのものが一般的に多いとされます。
グリーンの発色が美しいウバロバイトガーネットもカルシウムガーネットの一種です。
カルシウムガーネットには他にグロッシュラーとアンドラダイトが属します。
カルシウムガーネットの中で特に美しいと人気なのが、アンドラダイトに属するデマントイドガーネットでしょう。
デマントイドガーネットも美しいグリーンを発します。
そしてもう一つ、美しいグリーンを発するガーネットがツァボライトと呼ばれるもの。
グロッシュラーガーネットの中でグリーンのものを指します。
それぞれ種類は異なりますが、いずれも発色要因の一つにクロムの含有が影響していると考えられています。
デマントイドガーネットもツァボライトもガーネットの中では価値高く扱われ、特にホーステールと呼ばれる特有のインクルージョンをバランスよく配するデマントイドガーネットは高額に取引されることも多いです。
しかし、カッティングできる大きさのウバロバイトガーネットは、デマントイドよりさらに希少価値が高く高値になる可能性があるのだそうですよ!
▼デマントイドとツァボライト、宝石として価値高く扱われる2つのグリーンガーネットについてはこちらから
ウバロバイトガーネットの原石の形
ウバロバイトガーネットは、火成岩や変成岩の中で、クロムを含んでいる鉱物と一緒に産出されるといいます。
結晶体は菱形12面体や変菱24面体で、ルーペで見ると、深いグリーンがとても綺麗です。
クロム鉄鉱の割れ目や、母岩の表面を覆っている皮膜状のウバロバイトなどはさらに細かくて、結晶体の確認はかなり困難でしょう。
まるで緑色の布がかかっているようにも見えますよね。
他にも、粒状や塊状の形で産出されるウバロバイトガーネットもあるそうです。
ウバロバイトガーネットはどこで買える?
宝石品質のウバロバイトガーネットは殆ど採れないため、ジュエリーは入手困難でしょう。
あったとしても手が出ないほど高値ですよね・・・。
せめて、ウバロバイトガーネットで覆われたクロム鉄鉱があったら欲しいなぁ、できたら結晶体が肉眼で確認できるものがあるといいなぁ、と思ってしまいました。
深いグリーンがとても美しいウバロバイトガーネットは、一体どこで手に入るのでしょうか?
宝飾店での取り扱いは殆どないと考えて良いでしょう。
母岩ごとペンダントなどに加工されたものもあるようですが、そんなに出回っていないという印象です。
流通しているウバロバイトガーネットは、原石の状態が殆どだと思われます。
原石の取り扱いがあるお店などに行けば、もしかして手に入るかもしれません。
でも必ず出会えるとは言い難く、タイミングが合えばという感じだと思います。
偶然出会えたらラッキーなことだと思われます!
最後に
ガーネットグループの中で最も希少価値の高いウバロバイトガーネットについてご紹介しました。
ウバロバイトガーネットにはエメラルドのように美しいグリーンの輝きがあるにもかかわらず、宝石としてカッティングされることが殆どない理由は、カッティングできる程の大きさで産出されることが少ないからということでした。
カットできるほどの大きさの結晶になると、かなりの高値になるというウバロバイトガーネット。
一生に一度で良いからジュエリーにセットされた状態を見てみたいです!
それにしても、ガーネットの世界の奥深さには感動してしまいますよねぇ。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか