ツァボライトはガーネットグループに属する宝石で、深いグリーンが印象的な宝石です。
1960年代後半に発見され、ティファニー社によって「ツァボライト」と命名された後、世界的に知名度が上がったといわれています。
ガーネットの中ではデマントイドに次いで高く評価される、ツァボライト。
美しい緑色の起因や原石の特徴から、石言葉や価値基準など、ツァボライトについて知っておきたい情報をまとめました。
目次
ツァボライトとは
ツァボライトはガーネットグループに属する、グロッシュラーガーネットの一種です。
グロッシュラーガーネットの中でエメラルドに似た緑色のものを「ツァボライト」と呼んでいます。
ただし、「ツァボライト」は別名(通称名)であり、正式な宝石名ではありません。そのため、鑑別書では次のように記載されます。
「※別名(または通称)「ツァボライト」と呼ばれています。」
ツァボライトの正式な宝石名はグリーングロッシュラーガーネットですが、略してグリーンガーネットと呼ばれることもあるようです。
鉱物としての基本情報
英名 | Green Grossular Garnet(グリーングロッシュラーガーネット) Tsavorite(ツァボライト) |
和名 | 灰礬柘榴石(かいばんざくろいし) |
鉱物名 | ガーネット |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Ca3Al2(SiO4)3 |
モース硬度 | 6.5 – 7 |
比重 | 3.51 – 3.73 |
屈折率 | 1.73 – 1.75 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
透明感のあるエメラルドに似た緑色が特徴的なツァボライト。
美しい色の発色要因はクロムとバナジウムによるものと考えられています。
同じグロッシュラーガーネットで、オレンジ色はヘソナイト、明るいグリーンのものはミントガーネットなどと異なる名前で呼ばれます。
またバイカラーのツァボライト(バイカラーツァボライト)が産出されることもあります。
原石の形
ガーネットの原石の形は、主に斜方12面体または24面体の結晶形、もしくはその2つの結晶形が組み合わさった形を成すといわれています。
多くは粒状や塊状の形で産出されます。
何カラットもある大きな結晶は稀ですが、2006年には925カラットという巨大な原石が発見されているそうです。ちょっと見てみたいですね!
産地
ツァボライトは、タンザニアとケニアにまたがる鉱山で発見されたのが最初です。
その後も、タンザニアとケニア、そしてマダガスカルが主要な産地として知られています。
この他、パキスタン、南極大陸のクイーンモードランドなどでも産出しています。
誕生日石と石言葉
ガーネットが1月の誕生石ですので、ガーネットの一種であるツァボライトも1月の誕生石です。
また、ツァボライトは5月30日の誕生日石としても選ばれています。
ガーネットの石言葉は真実、友愛、貞節です。
ツァボライトの歴史
1967年にイギリスの宝石・鉱物学者であるキャンベル・ブリッジズがタンザニアの北東地域にある山でグリーングロッシュラー鉱山を発見したのが始まりだと伝えられています。
透明感が高く鮮やかな緑色をした原石は、宝石バイヤー達の興味を集めますが、海外に輸出することはタンザニア政府によって禁じられていました。
ブリッジズ氏は、鉱山がケニアに繋がっていると確信します。
そして苦労を重ねた結果ついに結晶を発見し、ケニア側で採掘の許可を得ることに成功しました。
しかし、当時この緑色の結晶はまだ鉱物学者などの専門家のみに知られている宝石でした。
ティファニーとの関係
影の存在だった緑色の宝石ですが、1974年になるとティファニー社が大々的な広告を打ち出し、一気に世界の注目を浴びることになりました。
「ツァボライト」という名前も発見地である、ケニアとタンザニアの国境にある「ツァボ東国立公園」からティファニー社の当時社長であったヘンリー・プラット氏によって命名されました。
ツァボライトに施される処理と偽物の存在
ツァボライトは、今のところ人工的な処理を施されたものはあまり見かけません。
ガーネットは全般的にあまり人工処理が行われない宝石ではないかと思います。
ツァボライトの偽物について
ツァボライトの偽物を意図的に販売している様子も現状ではあまりない印象があります。
ただし、ロットの中にツァボライトと似た色をしたグリーントルマリンやガラスが混ざっているケースはあるようですので、一応注意をしてくださいね。
デマントイドガーネットとの違い
画像:左-ツァボライト 右-デマントイド
同じグリーン系のガーネットにデマントイドガーネットがあります。
ツァボライトとデマントイド、この2つの違いは何でしょうか。
ガーネットはレッド、ピンク、イエロー、オレンジ、グリーンなどさまざまな色を呈しますが、グリーンのガーネットはグロッシュラー、アンドラダイト、ウバロバイトの3種類の中に多く見られるといいます。
ツァボライトは、先にお話したように、グロッシュラーガーネットの一種です。
それに対し、デマントイドはアンドラダイトに属する宝石です。
カルシウムと鉄の珪酸塩鉱物であるアンドラダイトに、クロムが含まれるとエメラルドグリーンを呈すると考えられており、それらをデマントイドガーネットと呼びます。
アンドラダイトはダイヤモンドよりも分散が高く、カットによっては強い輝きが見られることも特徴のひとつです。
また、デマントイドガーネットには「ホーステール」と呼ばれる特徴的な内包物(インクルージョン)が含まれることがあり、それらがバランスよく含まれているものは価値高く扱われています。
ツァボライトの価値基準と市場価格
ツァボライトを買う前に価値基準や市場価格などを知っておくと見るポイントが少しは明確になるかもしれませんよね。
どのような品質が高く評価され、一般的にはどれほどの価格なのか、そして、どんなところで売っているのかなど、ツァボライトを買うために知っておきたい前知識を簡単にご紹介しますね!
価値基準
ツァボライトは産地が限られており産出量も多い方ではないことから、ガーネットの中では価値高く扱われることが多い種類です。
ツァボライトの価値基準は、他の色石と同様にまずは色の鮮やかさが重要です。
次に透明度の高さ、カットの美しさ、カラット数が大きいことなどから総合的に判断され評価が決まります。
特にツァボライトは大きい原石が採取しにくいため、2ctを超えると価格が大きく跳ね上がる印象があります。
ガーネットグループの中では、デマントイドに次いで高い価値が付くことが多いようです。
市場価格
前述したように、ツァボライトの市場価格は品質やカラット数によって異なります。
小さいサイズであれば、クォリティによって5,000円前後から入手可能なものもありますが、2ctを超えると極端に流通量が減ることから、トップクオリティで2ct以上あるものは百万円以上するものもあります。
どこで買える?
ツァボライトはオンラインショップを中心に取り扱いが多く、原石やルースの他、ジュエリーとして一般的に出回っている印象があります。
人工処理や偽物はあまり流通していないようですが、購入する際には口コミや購入者の評価などを確認して、信頼のおけるショップを選ぶようにすると良いと思います。
ツァボライトのお手入れ方法
ツァボライトの日常のお手入れは、柔らかい布で拭きとるだけで十分です。
汚れが目立つようでしたら、中性洗剤を薄めたぬるま湯の中で、柔らかい歯ブラシなどで優しく洗ってあげましょう。
泡を洗い流したら、柔らかい布でしっかりと乾燥させます。
多少のアルコールは使用頂いて問題ありませんので、気になる汚れをアルコールティッシュなどで拭き取っても良いと思います。
爪などにティッシュの繊維が残る場合もありますので、気をつけて下さいね。
超音波洗浄機でクリーニングすることは避けるようにして下さい。
高熱にも弱いため、長時間に渡り高熱に晒さないようにして下さいね。
保管する際には個別の箱などに入れて、直射日光や湿気を避けた場所に置かれることをおススメします。
最後に
ツァボライトはモース硬度が7と高く、ガラス光沢をもつため美しい輝きを見せます。
ファセットカットにするとその美しさがより際立つ感じがします。
深みのあるグリーンカラーは、見ているだけでとても癒されるような気がしますよね。
原石やルースをコレクションするほか、ダイヤモンドを配した高級感あるジュエリーとしても美しく映える宝石だと思います♪
カラッツ編集部 監修