光を受けてゆらめく金色の縞模様が「虎の目」を思わせる宝石、タイガーアイ。その力強い見た目から、古くから宝飾品やお守りとして愛されてきました。
アクセサリーやパワーストーンとしても人気があり、性別を問わずに身に着けられています。
タイガーアイはクォーツ(石英)の一種でありながらも、他とはちょっと違う生成過程があるのをご存じでしょうか。
この記事では、タイガーアイの基本的な情報から、生成の秘密、色の種類、石言葉や市場価格など、その魅力を詳しくご紹介します。
目次
タイガーアイとは
タイガーアイ(タイガーズアイ)は、黄色の地色に特有の縞模様を持ち、光を当てるとキャッツアイ効果(シャトヤンシー)が現れる宝石です。
英名は「Tiger’s Eye(タイガーズアイ)」ですが、日本では一般的に「タイガーアイ」と呼ばれています。
冒頭でも触れたように、鉱物学的にはクォーツ(石英)の一種ですが、一般的なクォーツとは生成の仕方が異なります。見た目や雰囲気も少し独特なものがありますよね。
モース硬度は7と比較的硬く、日常使いのジュエリーやアクセサリーにも適しています。
その力強い見た目と意味合いから、古来からお守りや装飾品として世界中で珍重されてきました。
鉱物としての基本情報
| 英名 | Tiger’s Eye |
| 和名 | 虎目石(虎眼石) |
| 鉱物名 | タイガーアイ、タイガーズアイ |
| 分類 | 珪酸塩鉱物 |
| 結晶系 | 三方晶系 |
| 化学組成 | SiO2(※) |
| モース硬度 | 7 |
| 比重 | 2.65 |
| 屈折率 | 1.54-1.55 |
| 光沢 | ガラス状 |
※タイガーアイは、クォーツ(石英)の変種の一つとして位置づけられ、化学組成もクォーツ(石英)と同じ、SiO2で表されることが一般的です。書籍によっては、起源鉱物であるリーベッカイト(クロシドライト)の化学組成式:Na₂(Fe2+3Fe3+2)Si8O22(OH)2)で表されることもあります。
特徴
タイガーアイは、クロシドライトという繊維鉱物が石英に置き換わることで形成されたものです。
最大の特徴は、石を動かすと光の筋が揺らめく「キャッツアイ効果(シャトヤンシー)」で、一般的には、ドーム状のカボションカットが施された時、最も美しく現れる効果とされます。
キャッツアイ効果(シャトヤンシー)をもつ宝石は多く、代表的なところだと、クリソベリルキャッツアイやアレキサンドライトキャッツアイ、トルマリンキャッツアイなどがあります。
同じクォーツの一種である、キャッツアイクォーツも有名ですね。
ただ、主に不透明で、特有の縞模様があるタイガーアイは、それらの宝石とは少し異なる雰囲気をもちます。
どこかワイルドで、名前が示すように、虎のような気高く威厳のある印象、といった感じでしょうか。
最も一般的なタイガーアイは、黄色や金褐色をしていますが、その他の色合いもあります。
産出量は多く、比較的容易に手に入れることができます。
産地
タイガーアイの主要な産地は南アフリカ共和国とオーストラリアです。
特に南アフリカ産は高品質で大きな原石が多いことで知られ、世界市場の主流となっています。西オーストラリア産も品質が高く、多様な色合いが見られます。
その他、ナミビア、インド、ミャンマー、中国など世界各地で産出されます。
産地によって色味や繊維の細かさ、キャッツアイ効果の現れ方に違いがあり、例えばナミビア産には繊維が波のようにうねった「ピーターサイト」と呼ばれる種類も存在します。
市場の多くは南アフリカ産かオーストラリア産ですが、他の産地の個性に着目するのも面白いかもしれませんね!
名前の意味
タイガーアイという名前は、黄金色の光の筋が「虎(タイガー)の目」に似ていることに由来するもので、和名も「虎目石(とらめいし)」といいます。
動物としての虎は、古くから力強さ、勇気、威厳の象徴とされ、各国で一目を置かれる存在でした。
タイガーアイも、聖なる宝石として大切にされてきた歴史をもちます。
例えば、古代エジプトでは神像の目に、古代ローマでは兵士のお守りに、中世ヨーロッパでは護符として用いられたという言い伝えも残っています。
虎の持つ、力強いイメージと結び付けられることが多かったのかもしれませんね。
石言葉
タイガーアイの石言葉は、「好奇心」「洞察力」「知識」などです。
「好奇心」は猫科である虎にも通じるイメージですし、黄色という色がもつイメージでもあります。
「洞察力」や「知識」も含め、その色合いや虎のイメージから連想されたものが多いような感じですね。
タイガーアイはどうやってできる?原石の形や生成方法、キャッツアイ効果が現れる理由
タイガーアイは、角閃石の一種であるリーベッカイト(リーベック閃石)の繊維状結晶である「クロシドライト」が、長い歳月を経て石英(クォーツ)に置き換わり、形成されたものです。
鉱物が元々の結晶構造を保ったまま化学組成だけ変化するという現象は、「仮晶(かしょう)」や「仮像(かぞう)」と呼ばれます。
クロシドライトのほかにも様々な鉱物に見られ、「◯◯(元の鉱物)の仮晶(仮像)」という言い方をします。
つまりは、タイガーアイは『クロシドライトの仮晶』ということになるのですね!
化学組成はクォーツ(石英)と同じSiO2で表されることが一般的(※)で、鉱物種としては、クォーツ(石英)に属します。
※一部リーベッカイト(クロシドライト)の化学組成式で紹介している書籍もあります。
一般的なクォーツ(石英)は、二酸化ケイ素が結晶化して出来上がったものとされますので、クロシドライトの繊維状構造を残したまま石英となった、仮晶であるタイガーアイとは生成の仕方が異なる、というわけなのです。
タイガーアイができるまで
それでは、タイガーアイが出来上がるまでの過程をもう少し詳しく見ていきましょう。
【生成のステップ】
①クロシドライト(青石綿)の形成
鉱床中に、青い繊維状鉱物クロシドライトが生成します。
②珪酸(SiO₂)との反応
平行に並んだ、繊維状のクロシドライトの脈の隙間に、シリカ(クォーツの成分)に富んだ熱水が流れ込み、じわじわと染み込んでいきます。
③鉄分の酸化による変色
熱などの作用により、鉄分が酸化することで色が変わり、黄色や金褐色をした、独特の縞模様が現れます。
④硬化と置換
長い年月を経てシリカが硬化し、クォーツ(石英)へと置き換わります。
タイガーアイは、鉱物が別の鉱物に置き変わる過程で生じた化学変化によって、独特の色合いと模様をもつ宝石になるのですね。
キャッツアイ効果を生み出す理由
先にご説明したように、仮晶であるタイガーアイには、クロシドライトの繊維状構造が残っています。
この平行に並んだ、クロシドライトの繊維状構造に光が反射することにより、キャッツアイ効果が現れると考えられています。
タイガーアイの毒性について
タイガーアイは、クロシドライトが石英化して出来上がった、クロシドライトの仮晶である、とご説明いたしました。
クロシドライト(青石綿)はアスベスト(石綿)の一種で、強い有毒性をもつことでも知られます。
アスベストの繊維状結晶を吸い込むと、それがトゲとして肺の組織に残り、その結果、肺がんや悪性中皮腫などの病気を引き起こしてしまう恐れがあるからで、社会問題になったこともあります。
では、クロシドライトの仮晶であるタイガーアイにも毒性があるのでしょうか。
ご安心ください。
アスベストは、加熱や大気中の物質と化学反応を起こすことで毒が発生するのではなく、砕けた繊維状結晶が空気中に舞い、それを体内に吸い込むことで毒性をもつ鉱物です。
クロシドライトの仮晶であるタイガーアイも、奥にクロシドライトの繊維状結晶を残しますが、繊維脈に染み込んで固まった石英がそれを閉じ込めているような状態になっています。
そして基本的には石英部分が溶け出すことはないと考えられています。
クロシドライトの繊維状結晶がむき出しになって繊維が飛び散らない限り問題ありませんので、安心して身につけてくださいね。
タイガーアイの色と種類
最も一般的なタイガーアイは、黄褐色や金褐色をした、いわゆる「イエロータイガーアイ」ですが、他にも青、グレー、赤など様々な色があります。
イエロータイガーアイの次に多いのは、青色の「ブルータイガーアイ」。その見た目から、主に「ホークスアイ」や「ファルコンアイ」と呼ばれています。
イエロータイガーアイの黄褐色や金褐色は、先にご紹介したように、鉄分の酸化によって生じた色合いです。
元々のクロシドライトは青色をしており、酸化しない状態で石英化し産出されたものが、「ホークスアイ」や「ファルコンアイ」として流通しています。
そのほか、グレーの地色の「グレータイガーアイ」(イーグルアイ)や黄色と青色など2色の縞模様が個性的な「ゼブラアイ」、マーブル模様を見せる「ピーターサイト」などもあります。
ホークスアイ、ゼブラアイ、ピーターサイトについては、別の記事で詳しく紹介していますので、こちらもぜひご参照ください。
他にも、レッドタイガーアイやゴールデンタイガーアイをはじめ、オレンジ、ピンク、パープル、グリーン、ブラックなどを発色するものもありますが、これらの殆どは、加熱などの人工処理により色を施したものです。
それはそれで天然とは異なる魅力があって素敵ですが、気になる方は、天然によるものか人工的な着色か、購入前に確認した方が良いかもしれません。
レッドタイガーアイ
レッドタイガーアイは、赤褐色が特徴的なタイガーアイです。
天然のものも産出されるようですが、非常に稀だといわれています。
市場に流通している多くは、天然のイエロータイガーアイに加熱処理を施して赤味を帯びさせたものです。
情熱的な赤色は独特の魅力があり、見ているだけでも勇気や活力を与えてくれるような、力強さを感じます。
人工着色された色合いと理解した上で購入し、楽しむ分にはもちろん全く問題ありませんが、天然未処理のレッドタイガーアイを求めている方はご注意ください。
ピンクタイガーアイ
ピンクタイガーアイは鮮やかなピンク色が特徴的ですが、天然には存在しない色といわれています。
市場に出回っているものは、天然のタイガーアイを脱色後、ピンク色に染色処理したものです。
ピンクに染色後も、タイガーアイ特有の模様とキャッツアイ効果は残っており、愛らしさと力強さを併せ持つ印象があります。
ピンク色は恋愛運や魅力を高めるといわれることから、お守りとしても人気があるようですね。
ただ、染色された色合いですので、天然未処理にこだわる方は避けた方が良いでしょう。
宝石としての価値もゼロに等しいものとなりますので、アクセサリーとして独特の美しさを楽しむのが良いと思います。
タイガーアイの価値基準と市場価格
タイガ―アイは市場に多く出回っており、比較的安価で入手しやすい宝石です。
こちらでは、タイガ―アイを選ぶ際の価値基準と、一般的な市場価格、購入場所などについて簡単に説明していきます。
価値基準
色のコントラストが美しく、キャッツアイ効果が明確であるほど良いとされます。
不透明で、キャッツアイ効果を楽しむためカボションカットやタンブルのまま流通することが殆どで、大きさ以外で価格差は生じにくい宝石と言えます。
特殊カットが施された場合は、そこに付加価値が付くこともあります。
市場価格
一般的なアクセサリーなどは1,000円以下で探せるものが多いようです。
一方で、有名ブランドのジュエリーに加工された場合には、付加価値により価格が上がります。
どこで買える?
一般的には、パワーストーンや天然石を取り扱うショップなどで、丸玉ブレスレットなどのアクセサリーとして見かけることが多い印象です。
印鑑の素材に使われることも多いですね。
宝石専門店やジュエリーショップでも取り扱いはあります。
ヴァンクリーフ&アーペルやティファニーなどの有名ブランドでジュエリーとして販売されていることもありますので、色々なお店を覗いてみると良いですよ。
タイガーアイのお手入れ方法
先にご紹介したように、タイガーアイは、アスベストの一種であるクロシドライトがクォーツ(石英)に置き換わってできた宝石です。
しかし、クロシドライトがもつ有毒性の影響はないと考えられますので、安心して身につけることができます。
クォーツと同じモース硬度7で、比較的丈夫ですが、一般的なクォーツとは構造が異なり、衝撃や強い圧力によってダメージを受ける場合もあるようですので、取り扱いには注意しましょう。
お手入れの際は、柔らかい布で優しく乾拭きするだけで十分です。
汚れてきたら、中性洗剤を薄めたぬるま湯で洗い、柔らかい布で水気を拭き取ってください。
超音波洗浄やスチームクリーナーは、割れや劣化の原因となるため避けましょう。
保管方法
タイガーアイを保管する際は、他の宝石や金属と接触して傷が付かないように、個別に保管しましょう。
柔らかい布などで包むのが理想的ですが、ジッパー付きの小袋に分けて入れても良いと思います。
ジュエリーボックスなどに収納する場合は、仕切りのあるタイプを選びましょう。
また、高温多湿や直射日光の当たる場所での保管は避けることが大切です。色あせや変質、石の内部に亀裂が入るのを防げます。
香水や化粧品、薬品類との接触も避けると、長く美しい状態を保てます。
最後に
タイガーアイは、虎の目を思わせる神秘的な輝き(キャッツアイ効果)を持つ、魅力的な宝石です。
独特の縞模様とキャッツアイは、地球の内部で長い時間をかけて育まれたものです。
安価に販売されていることも多い宝石ですが、その成り立ちや自然が作り上げた唯一無二の模様のヒミツなどを知ると、これまでと違った目で見えてきます。
定番の黄褐色のタイガーアイだけではなく、さまざまな色のバリエーションが楽しめるのも魅力のひとつ。
この記事を参考に、あなたにぴったりのタイガーアイを見つけて、その魅力をぜひ日常に取り入れてみてくださいね!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『起源がわかる宝石大全』
著者:諏訪恭一、門馬綱一、西本昌司、宮脇律郎/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『宝石の写真図鑑』
著者:キャリー・ホール/発行:日本ヴォーグ社 ほか




















