光の中でギラギラと輝く姿が印象的なスファレライト。
ダイヤモンドを凌ぐ輝きをもつともいわれ、コレクターの間でも人気があります。
流通量が比較的少ないレアストーンの一つとされますが、なんと、日本でも採れることがあるそうですよ!
そう聞くと、どんな宝石なのか益々気になってきました。
ということで、スファレライトの特徴や意味、価値、そして強いファイアのヒミツなどを調べてみました!
目次
スファレライトとは?
とにかくギラギラとまばゆいばかりの輝きを放つスファレライト。
特にイエローやオレンジ系のスファレライトは、強いファイアが地色の濃さと相まって、まるで真夏の太陽のような印象さえ与えます。
鉱物としての基本情報
英名 | Sphalerite(スファレライト) |
和名 | 閃亜鉛鉱(せんあえんこう) |
鉱物名 | スファレライト |
分類 | 硫化鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | ZnS |
モース硬度 | 3.5 – 4 |
比重 | 3.90 – 4.10 |
屈折率 | 2.36 – 2.43 |
光沢 | 樹脂光沢~金剛光沢 |
特徴
スファレライトの主な特徴として、強い輝きの他にもう一つ、脆さというものがあります。
スファレライトのモース硬度は3.5 – 4と低く、その上、特定方向からの衝撃に弱い性質劈開が6方向に完全にあり、カットを施すのがとても困難だといわれています。
ジュエリー加工されたものも見かけるようになりましたが、ジュエリーとして身につける際はとても注意が必要です。
また、レアストーンとお伝えしましたが、鉱物としては珍しくないようです。
宝石品質のものが少なくカットが難しいことから宝石として市場に出回るものが少ないため、レアストーンとして扱われているようです。
スファレライトは最も重要な亜鉛鉱石としても知られています。
亜鉛は主に鉄や鋼鉄のメッキに使われたり、銅と混ぜて真鍮を作ったり、化粧品や塗料、プラスチックに使われるなどの多くの用途をもちます。
世界の産業にも大きく役立っているのですね!
色
通常、スファレライトはブラックやブラウンを呈するといわれています。
これらは主に鉄の影響によるものと考えられ、鉄の量が多いほどに色が濃くなり、ブラックに近づいていくそうです。
結晶は透明〜半透明ですが、これも鉄が多いほど、不透明に近くなるそうです。
宝石品質といわれる透明度が高いものは、イエロー、ハニーブラウン、オレンジ、グリーン、レッドなどが多いそうです。
美しい琥珀色のものはハニーブレンド、ブラックのものはブラックジャックとも呼ばれるそうですよ!
日本ではかつて黄褐色のスファレライトをべっこう亜鉛と呼んでいたとか。
また、レッドや赤褐色を呈するものには、ルビージンクやルビーブレンドの愛称があるそうです。
中には縞模様やバイカラーのものなどもあり、実に様々な色合いが存在することが分かります。
産地
スファレライトは、世界各地の広い範囲で産出されているようです。
美しい宝石品質のスファレライトが産出されることで有名なのは、スペイン、メキシコ、アメリカ、カナダなど。
他にも、スウェーデン、ドイツ、スイス、チェコ、ルーマニア、ブルガリア、イギリス、ロシア、ペルー、ナミビア、アフガニスタン、ユーゴスラビア、オーストラリア、中国などでも産出されます。
日本でも採れるそうで、青森県の尾太鉱山、秋田県の佐山鉱山、岐阜県の神岡鉱山などが知られています。
原石の形
スファレライトの結晶は等軸晶系で、原石は四面体や十二面体の複合体になるそうです。
他に、粗い結晶体や塊状、ブドウ状などで見つかることもあるといいます。
結晶は熱水鉱床中に生成し、主にパイライト(黄鉄鉱)、クォーツ、ガレナ(方鉛鉱)などを伴っています。
ペルーの鉱山で採れたという、ゴールドのパイライト、カラーレスのクォーツ、そして赤褐色のスファレライトの3つの鉱物が集まった原石の写真を見たことがあります。
スファレライトのコロンとした結晶がいくつか顔を出し、そのまわりを角ばったパイライトや六角柱のクォーツが囲んでいました。
色も形もそれぞれの鉱物の特徴が出ていて、それらが一つの母岩の中に共生している様子は、人間の手では決して作り出すことのできない美しさがあるように感じました。
名前の意味
スファレライトはギリシャ語で「あてにならない」という意味をもつ「Sphaleros」を語源としているといわれています。※諸説あり
他の鉱物と混同しやすい外見をもつことから、このような名前で呼ばれるようになったそうです。
それから、ジンクブレンド(Zincblende)やブレンド(blende)とも呼ばれていますよ。
ジンク(zinc)とは亜鉛のことで、ブレンドとはドイツ語起源の英語で「欺く」という意味があるといいます。
スファレライトは鉛が採れるガレナ(方鉛鉱)と一緒に産出されることが多いそうですが、発見当初ガレナの変種と考えられており、同じように鉛が採れると思い込まれていたのだとか。
ところが、スファレライトからは鉛ではなく亜鉛が採れたことから、「欺く」「混同する」という意味のブレンドが呼び名になったといわれています。
ちなみに、和名の「閃亜鉛鉱」は、亜鉛が含まれることから名付けられたと考えられ、閃(せん)には、キラリと輝くという意味があるそうですよ。
施される処理について
宝石には、見た目などを改善するために人工的な処理が施されているものも多いですが、スファレライトの場合はどうなのでしょうか。
今のところ、人工処理が施されたスファレライトが市場に出回っている様子はあまりないと聞きます。
個人的には、スファレライトの輝きや価値を損なわない方法で、モース硬度や靭性を高くできる人工処理があったら、スファレライトのジュエリーをもっと気軽に身につけられて良いな、と思ってしまいますが。
そんな夢のような人工処理が実現する日がいつか来たりするのでしょうか。
スファレライトの強いファイアのヒミツ
強い輝きを放つ宝石と言えば、まず思い付くのはダイヤモンドではないかと思います。
しかし冒頭でもお話した通り、スファレライトはそのダイヤモンドを凌ぐ輝きをもつといわれています。
そのヒミツは、どうやら屈折率と分散率にあるとのこと。
ダイヤモンドと比較しながら説明していきたいと思います。
まずは2つの屈折率と分散率を表にまとめてみましたのでご覧ください。
スファレライト | ダイヤモンド | |
屈折率 | 2.37 – 2.43 | 2.42 |
分散率 | 0.156 | 0.04 |
このように、屈折率はスファレライトが2.37 – 2.43、ダイヤモンドが2.42と同じ位。
そして、分散率は0.156(スファレライト)と0.04(ダイヤモンド)で、スファレライトの方が約4倍高いことが分かります。
分散率とは、光の分散の大きさを示す尺度で、分散が大きいほど分散率は高くなります。
では、そもそも光の分散とは何かと言うと、光が物質の中に入ると屈折という現象が起きます。
様々な色の光によって構成されている白色光の場合、屈折角度が色によって異なることから、同時に色が分かれて見えるという現象も起きます。これが光の分散です。
分散が大きいとは即ち、色の分かれ方が大きいということになり、分散率の高い宝石ほど、反射して跳ね返った光が何色にも分かれて人の目に映りやすいということになります。
この反射した光が虹色に見える強い分散光のことを俗に「ファイア」と呼び、ダイヤモンドの約4倍の分散率をもつスファレライトは、カットによって華やかで強いファイアを放つということです。
宝石の輝きには様々な要因があるといわれますが、スファレライトの場合は、高い分散率と屈折率にあるということですね!
スファレライトの歴史・言い伝え
スファレライトは、古代のアフリカやオーストラリア、アメリカの先住民族らが儀式の際などに用いていたという記録が残っているようです。
それぞれ遠く離れた大陸で用いられていたとは、スファレライトが世界中に分布していることが分かるエピソードですよね。
儀式に使われるということは神聖な石と信じられていたのでしょうか。
また、眼病の治療に使われたり、擦り傷や切り傷の手当など医用に使われていた、という話もあります。
それから驚いたのは、スファレライトは隕石や月の岩石にも少量含まれているのだそうです!
それを知って、スファレライトは宇宙とつながっている!という不思議な気持ちになりました。
スフェーンとの違いは?
画像:左-スファレライト 右-スフェーン
スフェーンと呼ばれる宝石があるのはご存知でしょうか。
スフェーンもスファレライト程ではないものの、高い分散率をもつため強いファイアを放ちます。
名前の響きも似ていますし、何か関係があるのでしょうか。
答えはNO。
両者は化学組成も結晶構造も違う、全くの別の鉱物です。
鉱物的な共通点は何もなくても見た目や性質がこんなに似ることがあるのですね!
しかし名前の由来も全く別のところからですので、偶然が重なっただけのようです。
スファレライトの偽物について
多くの宝石に見受けられる偽物の存在。
スファレライトにも偽物はあるのでしょうか。
今のところ、スファレライトの偽物が目立って売られている印象はあまりないです。
しかし世界は広いですし、全くないとまでは言い切れないのが現状です。
この先人気が上がれば出てくる可能性も十分にあります。
凄く構える必要はないとは思いますが、一応頭の片隅に「万が一」を考えておいても良い気がします。
スファレライトの価値基準と市場価格
スファレライトを買うときに、押さえておくべきポイントはあるのでしょうか。
価値基準や市場価格なども事前に知っておきたい情報です。
また、レアストーンと聞きましたが、どこに行けば手に入れることができるのでしょうか。
価値基準
まず、色石である以上、最も重要なのは色で、色が濃くて鮮やかなものほど価値高く扱われます。
また、スファレライトは一般的にインクルージョン(内包物)が多いため、インクルージョンが少なく透明度の高いものやファイアが強く美しいものも評価されます。
そして、大きさやカットの美しさなども合わせ、総合的に評価され価値が決まります。
市場価格
では、実際買おうと思った場合予算はどれくらい用意しておけば良いのでしょうか。
流通量が少ないせいか、販売価格にバラツキが見られますが、クォリティによっては一万円以下で手に入ることもあるでしょう。
一般的には、数万~十万円位までのものが多いように思います。
大きなサイズで高品質のスファレライトであれば、数百万円以上するものもあるそうです。
数百万円以上のスファレライトだなんて、目が眩むほどの輝きなんでしょうね。
その素晴らしいファイアを見てみたいものです!
どこで買える?
最近はオンラインショップやミネラルショーなどのイベント出展店舗を中心に見かけるようになってきた気がします。
ジュエリーに加工されたものも、稀ではありますが、目にすることもあります。
気になる方はぜひ探してみて下さいね!
スファレライトのお手入れ方法
スファレライトは、欠けたり割れたりしやすいので、とにかく優しく取り扱うことが大事です。
超音波洗浄機などは絶対に避けてください。
ぬるま湯で優しく手洗いし、柔らかい布でそっと拭きましょう。
保管する時は、割れたり傷つけたりしないよう、他の宝石とぶつからないよう個別に分けて保管するなど十分に注意してあげて下さい。
。
最後に
強く美しいファイアが特徴のスファレライトについてお話しました。
古代の人々からも重用されていたスファレライトですが、月や隕石にも含まれていることを知り、驚きましたね!
日本でも採れると聞いて、何だか身近に感じてしまいました。
宝石品質のスファレライトは珍しく、硬度が低くて劈開もあることからカットされたりジュエリー加工されたりするものは少ないようですが、探せば自分好みのものを見つけることも可能だと思います。
眩く輝くファイアの魅力が多くの人に伝わると嬉しいです。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか