淡い黄白色~褐色系の色を発色する宝石、シーライト。
シーライトの成分の分析を行った、スウェーデンの化学者C.Wシェーレ にちなんで名付けられたといわれています。
透明度の高いものから不透明なものまであり、透明度の高い、高品質のものは研磨され、コレクターから支持されているといいます。
今回は、宝石としてだけでなく、資源鉱物としても多く活用されるシーライトの魅力をイロイロご紹介したいと思います!
シーライトとは?
前述した通り、シーライトは淡い黄白色~褐色系のものが多く見られる宝石です。
日本でも産出され、タングステンの主要な資源鉱物としても重要視されている鉱石です。
まずはシーライトの詳細を順番に見ていきましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Scheelite |
和名 | 灰重石(かいじゅうせき) |
分類 | カルシウムのタングステン酸塩鉱物 |
結晶系 | 正方晶系 |
化学組成 | Ca[WO4] |
モース硬度 | 4.5 – 5.0 |
比重 | 5.9 – 6.3 |
屈折率 | 1.92 – 1.94 |
特徴
繰り返しになりますが、シーライトは淡い黄白色~褐色系の色合いの鉱物です。
大粒になるほど、透明度を失っていくという特徴があり、透明度の高い宝石品質のものは小さい結晶が多いそうです。
高い分散率をもつことから、カットされたシーライトは高い分散光を放ちダイヤモンドに似た輝きをもつといわれています。
しかしながら、元々小さい結晶が多い上に一方向に明瞭な劈開性をもつことから、特定方向からの衝撃に弱く、装飾品としては向かないためコレクター向けにカットを施される程度にしか出回っていないようです。
シーライトの最大の特徴は他の宝石と比べると高い比重をもっていることなのですが、その理由はシーライトの主成分が重金属のタングステンだからです。
希少金属であるタングステンの主原料なので、装飾品というよりも資源鉱物としての方が幅広く活用されています。
色
淡い黄白色~褐色系が多いですが、その他に無色、白色、灰色、橙色、緑色などのものも産出されます。
原石の形
シーライトの結晶は両錐形を成し、双晶のものも多いそうです。
粒状や塊状の集合体で生成されることもあるといわれています。
高温の熱水鉱脈や接触変成のスカルン鉱床、花崗岩ペグマタイトなどで産出されます。
不透明なものは大きな結晶を成すこともあるそうですが、かつてアメリカで重量7kgもの巨大な結晶が産出されたこともあるそうです。
産地
透明度の高い宝石品質のものは、オーストリア、スイス、イタリア、ブラジル、ルワンダ、アメリカなどから産出されるといわれています。
他にはメキシコ、チェコ、タンザニア、中国、韓国、ドイツ、イギリス、フィンランド、アフガニスタン など。
そして日本でも産出されるといわれています。
日本で採れるシーライトについて少しお話しましょう。
日本で採れるシーライト
実は日本にもシーライト鉱山が多く存在し、特に京都にはかつて有名な鉱山があったといいます。
それは大谷鉱山と呼ばれた場所で、現在は閉山していますが、国内でも最大規模のタングステン鉱山として有名だったそうです。
タングステンは徹甲弾や耐高温鉄を作るためにも使われることから、終戦後に進駐してきた米国軍も京都のタングステン鉱床を探索したといわれる程注目されていたようです。
現在でも京都府内には鐘打や和知鉱床、他県では茨城県高取、山口県喜和田などがあります。
シーライトにおける蛍光性
殆どのシーライトは、短波長の紫外線を当てると青白色の蛍光を示すといわれています。
タングステンを含むシーライトですが、タングステンに換わって少量のモリブデンを含むものもあるといいます。
モリブデンがタングステンに置き換わると蛍光色も変化するそうで、モリブデンが増える程黄色が強くなると考えられています。
石に含まれる元素や結晶構造によって個性が出ることから、識別の参考にもされているそうです。
面白いですよね。
資源鉱物としてのシーライト
現代の産業には欠かせない金属といわれるタングステン。
そのためその鉱石であるシーライトは資源鉱物としても重宝されています。
タングステンは元素の中で最も融点が高いことから、色んな形に加工され、多くの工業製品に使用されています。
例えば、鉄鋼にタングステンを入れた「タングステン鋼」は非常に硬く、ロケットの噴射口など高温にさらされる機械設備に使われ、また「炭化タングステン」はドリルの刃や切削工具の表面などに使われるそうです。
そして最も身近なところでいうと、白熱電球のフィラメントではないでしょうか。
これには純タングステンで使われているといいます。
しかし昨今謳われている地球温暖化防止の施策にて、タングステン電球は姿を消しつつあるといいます。
合成シーライトについて
前述したとおり、シーライトは高い分散率をもち、カットによってはダイヤモンドに似た輝きを放つといわれています。
そのため、無色透明の合成シーライトが作られ、ダイヤモンドの代用品として使われることもあるそうです。
また微量の元素を加えて着色を行い他の宝石の模造品に使われることもあるそうです。
最後に
モース硬度が4.5と傷がつきやすい上に劈開性ももつため装飾品には向きませんが、コレクターには人気のあるシーライト。
またレアメタルの原料でもあり、資源が少ないといわれる日本で産出する、世界の産業を支える貴重な資源でもあります。
もし、シーライトを手にすることがあれば、是非手のひらに乗せてみてください。
大きさの割に重たいな!と実感することができると思いますよ♪
カラッツ編集部 監修