日本最古の芸術品「根付」。意味は?由来は?その魅力を徹底解説!
私が初めて根付を見たのは、なんとフランスのベルサイユ宮殿。マリー・アントワネットのお母さんのマリア・テレジアは日本の蒔絵が大好きだったとか。
婚礼の調度品として根付や印籠をマリー・アントワネットに持たせたそうです。
日本人の間でも、特に若い世代には馴染みが少ないであろう根付。
実は海外には熱烈なマニア、コレクターが沢山います。上質な根付はほとんど海外へ流失しているといっても過言ではありません。
根付は日本最古の芸術品。手のひらの中の宇宙。粋な遊び心を併せ持つ、最高の芸術品です。
あなたにももっと根付の魅力を知ってほしい!今回は根付の魅力をアツく語らせてイタダキます!
根付ってなに?
出典元:https://www.vixen.co.jp/lp/monocle/cnts/netsuke.html |
そうでしょう。知らない人も多いはず。まずは根付の基本から。
根付とは、江戸初期に誕生した装飾品。印籠、巾着、タバコ入れといった小物の紐の端に取り付けるもの。帯に吊るして、持ち歩く時に落ちないように留めておくストッパー(留め具)のことです。
「飛鳥以降の日本人は、宝石や貴金属を用いて身体や衣服を飾ることをほとんどしなかった世界的に珍しい民族」
と『ジュエリーの歴史』の著者、山口遼氏は不思議がっていましたが、それは「着物」という完璧なコスチュームが日常着だったからでしょう。華やかな絵柄の着物には、装身具は必要ありませんよね。
そんな着物の唯一の欠点が、ポケットがないこと。江戸時代の人が自分の小物をいれたポシェット(提げ物)を、帯に吊るして持ち歩こうと思ったとき、思いついたのが根付だったのでしょう。
根付はかんざしとともに、日本人に愛された数少ない装飾品だったのです。
しかし初期の根付は、名前の通り、木の根っこを短く切ったものを紐にくくりつけて留め具にしただけのものだったそうです。
根付が芸術品になった由来
根付はどちらかというと男性のオシャレグッズ。根付が生まれる前は、提げ物(ポシェット)の紐を差している刀に結びつけたり、帯に巻きつけたりしていたとか。
「帯ぐるま」と呼ばれる輪っかを帯に通してそこに提げ物を結んでいたそうです。
しかし徐々に武士の間で裃を着用した時は、帯刀と一緒に印籠を腰につけるのが習わしとなります。
そのあたりから実用本位であった根付に、様々な趣向や意匠に工夫されたものがもてはやされ、「根付師」という職業が生まれます。
江戸中期には裕福な武士や商人のみならず、庶民の間にも喫煙の習慣が広がり、タバコ入れとともに根付を携帯するのが一般化しました。
今でいう携帯のストラップのようなものですね。
こうして、根付は日本人の日用品としての地位を確立し、数少ない日本人が愛する装飾品となったのです。
根付には「粋」「謎かけ」「お守り」の意味も
あの徳川家康は、ひょうたんの根付と黒い印籠を愛用し、鷹狩りに出かけた、と記された文献が遺されています。
ひょうたんには「ひょうたんを身につけていると転ばない」(落馬や失脚を防ぐ)という言い伝えがあり、公家、武家の間で愛用されました。
また、よく根付の意匠に使われる大黒様の根付は、家業繁栄の意味を持つお守りとして商人が好んで身につけました。根付は徐々に洗練され、趣向を凝らしたものが人気を呼びます。
たとえばネズミがネズミ捕りからするりと抜ける意匠を掘った根付は「ねが抜ける(病気が平癒する)」といった意味があり、病気平癒のお守りとして持つ人もいたようです。
根付の材料
最初は木の根っこなどから作られていた根付ですが、芸術品として流行するようになると、動物の牙が材料に使われるようになりました。
象牙、鹿の角、カバの歯、鯨の歯、マンモスの牙、セイウチの牙、サイの角などといった材料で作られた根付は現在ではワシントン条約に抵触するものもあるので作れません。
なので、象牙で作られた江戸時代の根付は特に貴重です。
表面に蒔絵や象嵌が施された根付はまさに芸術品。日本人の器用さに目がクラクラします。
また、植物材としては柘植や黒檀、マホガニー、堆朱(漆を層にして固めたもの)、琥珀などを材料につかうこともあります。
根付の条件
根付には厳然たる条件が3つあります。この条件をクリアしたものしか根付とは呼びません。
1つ目の条件は、どこかに必ず穴が空いていること。根付は紐の先につけて帯に引っ掛ける留め具ですから、紐通しの穴は必須です。
2つ目は出っ張りがないこと。根付の大きさはおよそ4センチ四方の丸いものがほとんど。出っ張りやとがった部分があると、着物や帯にひっかけてしまう恐れがあります。
全体的に軽すぎず、重すぎない、全体的に丸みがあるものが良い根付です。
そして3つ目は、どこから見ても彫刻されていること。いろんな角度から見ても惚れ惚れするほど細密な彫刻が施された根付は、「粋」を重んじる江戸の人々に熱狂的に愛されたに違いありません。
最後に
日本最古の芸術品「根付」。マリー・アントワネットも愛した芸術品です。日本では、故高円宮 憲仁親王がコレクターとして有名でした。
掌におさまる丸い彫刻は、将軍から庶民まで、日常的愛用品として愛され、動物や人間、おかめや鬼、エロティックなものまで、様々な意匠を凝らした作品が作られました。
日本では上野にある東京国立博物館で高円宮殿下が妃殿下とともに蒐集された現代根付や、江戸時代の根付を見ることができます。
2018年10月14日までは根付 高円宮コレクションが開催中!ぜひご自分の目で、この素晴らしい芸術品をご覧になってください。
カラッツ編集部 監修