ファベルジェとインペリアルエッグ|知れば知るほど美しい!その魅力とは

ファベルジェ エッグ

Photo by : watermelontart / Shutterstock.com

ロシアのジュエリーと言われてもピンと来ない!という方もいるかもしれません。

しかしアンティークジュエリーの世界において、ロシアは特色あるデザインで知られ、特にファベルジェは宝飾史においても非常に重要なジュエラーとして知られています。

今回はそんなロマノフ王家ともつながりが深いファベルジェと、彼らが制作したアートとも呼べるインペリアルイースターエッグについて、興味の扉をノックしてみましょう!

宝石の魔術師カール・ファベルジェとは?

ファベルジェ

Photo by : Chrispictures / Shutterstock.com

ファベルジェ・・・どこかで聞いたことがある、でも詳しくはよく知らない。。という方も多いかもしれませんね。

そこでまずは、ロシアンジュエリーの代名詞ファベルジェの謎めく工房と、その制作体制について解説してみたいと思います。

ロシアンアンティークの巨匠ファベルジェは宝石商だった!?

ロシアの街、空港にはマトリョーシカがズラリと並びますが、それ以上に卵型のオブジェを多く見かけます

イースターエッグと呼ばれる、ファベルジェが多く制作しその名を知らしめたジュエリー「インペリアルイースターエッグ」を模して作られたもので、お土産品として人気を博しています

ファベルジェは、1842年にグスタフ・ファベルジェがサンクトペテルブルグに開いた宝飾店を源流とします

ロシア王室のご用達となり、王侯貴族に愛されその名を広く知らしめるようになったのは、息子のカール・ファベルジェが本格的に参画した1870年頃から

彼らはサンクトぺテルブルグに大規模な工房を構えました。

ただ、ジュエリーを制作するのは優秀な職人たちであり、カール本人はプロデュースに徹し、分業体制で多くの名品を残しました

ファベルジェ工房は、いわば大規模なジュエリー工場であり、一人の作家が作るサインドピースというより、現代のブランドジュエリーの礎を築くような生産体制をとっていたということですね。

カールは良品をプロデュースした謂わば敏腕プロデューサーだったといえるでしょう。

その後、宝飾店ファベルジェはロマノフ王室お抱えのジュエラーとなり、破竹の勢いでロンドン、モスクワ、オデッサ、キエフにまで支店を広げ、1917年の閉房までの約50年、多くのジュエリー、工芸品を制作していったのです。

ファベルジェのインペリアルイースターエッグとは

イースターエッグ

Photo by : Evdoha_spb / Shutterstock.com

ファベルジェの代表作ともいえる、卵型ジュエリー、インペリアルイースターエッグ。

ここではインペリアルイースターエッグが作られた背景から、びっくり仰天!?の卵事件簿まで、好奇心を刺激するファベルジェジュエリーをご紹介してみたいと思います。

世界に50個しか存在しないといわれるファベルジェの卵

ロシアを含むキリスト教国家では、磔刑にあったキリストがその3日後に復活したことを祝う復活祭(イースター)の期間に、飾り付けをした卵でお祝いする風習があります。

ファベルジェ工房でもイースターエッグを題材にしたジュエリーが多く作られ、中でもアレクサンドル3世、ニコライ2世の注文で作られた卵型ジュエリーをインペリアルイースターエッグと呼んでいます

1886年からファベルジェ閉房前年の1916年まで制作が続き、計50個のインペリアルイースターエッグが誕生したといわれています。

宝石をこよなく愛したロマノフ王家の財を尽くして作られたインペリアルイースターエッグ。

その豪華絢爛な卵は、外交上の贈り物としても大いに利用されたといいます。

カラーゴールドを駆使しながら繊細な彫金が施され、動植物を様々な宝石やエナメルで装飾。

さらに卵の中にはある種の仕掛けが施され、オルゴールや写真立て、時計などがはめ込まれたものやミニチュア模型が飛び出すものまで、一つ一つが唯一無二の独創的アイデアを持って王室メンバーを楽しませたといいます。

なおこれらの素晴らしきイースターエッグは、ソ連崩壊とともに売りに出され、アメリカをはじめとした各国の美術館や、イギリス、モナコなどの王室、そして個人のコレクションとして、世界各国に散らばっていったといわれています。

ロンドンの名門ジュエラーWartskiが発表!廃棄を免れた幸運なインペリアルイースターエッグ

中には、驚きの逸話を持つインペリアルイースターエッグもあります。

それは、ファベルジェを常時数百ストックしているというロンドン屈指の伝統と顧客を持つWartski(ワツキ)のコレクションの一つ

ファベルジェといえばWartskiといわれるほどのコレクションを持つ彼らですが、2014年3月に、新発見のインペリアルイースターエッグを発表し話題を集めました。

それは、世界に散らばった50個のインペリアルイースターエッグの内、内部にヴァセロン・コンスタンチン(スイスの老舗時計メーカー)の時計がセットされた、いかにもファベルジェらしい作品でした。

現存するファベルジェ工房によるジュエリーは、小型のイースターエッグや美しいエナメル細工(ギロシュエナメルといいます。)のジュエリー、銀食器、雑貨などがほとんどなので、このインペリアルイースターエッグの発見はジュエリー業界に大旋風を巻き起こしました。

しかもそれは、著名人のプライベートコレクションでも美術館でもなく、アメリカののみの市で偶然発見されたとか!

金属を溶かして転売されそうになっていた、まさにギリギリのところで、「もしかしてヴァセロン・コンスタンチンの有名な作品なのでは!」と気付き、最終的にWartskiに渡ったというわけです。

アレクサンドル3世の命を受けて制作されたインペリアルイースターエッグ、どんな経緯でガラクタ市に紛れ込んだのかは謎ですが、150万円ほど(十分高い!)で購入したド派手な卵が、まさかの35億円に化けたという前代未聞のお宝ストーリー!

何処でどんなお宝に出会えるか分からない、というある意味夢のあるお話ですよね☆

ファベルジェの卵はオンラインで購入可能!?

見れば見るほど、そのポッテリしたバディーにうっとりしてしまうファベルジェの卵。

多種多様な宝石とエナメルを駆使した彼らのジュエリーは、アンティークジュエリー愛好家の中でも特に玄人に愛される一級品。

ロンドンやパリのアンティークマーケットやオークションなどでも、しばしばファベルジェ工房作のジュエリーが見られますが、その数は年々少なくなっています。

しかしあまり知られていないようなのですが、現代のファベルジェ社によるモダンジュエリーならば、実は比較的経済的に購入できるのです。

1917年激動のロシア革命の中で、その歴史に幕を閉じたファベルジェですが、2007年に紆余曲折を経てファインジュエリーブランドとして復活しました

そして現在も、カール・ファベルジェが築いたデザイン性を継承しながら、モダンアートともいえるようなジュエリーと時計を発表しています。

モダンファベルジェのジュエリーもピンからキリまでありますが、シンプルな卵型チャームなら40万円程度で購入可能なので、特別な時などにポチっとオンライン購入してみてもいいかもしれませんね!?

ちなみに2015年には、3300以上のダイヤモンドと139個の真珠による豪華絢爛なインペリアルイースターエッグが新生ファベルジェにより制作されました。

そのお値段、なんと約2億3000万円……。
うーん、それが高いのかお安めなのかは、ちょっと私にはわかりません!!

ファベルジェコレクションはここで鑑賞できる!

ファベルジェ エッグ2

Photo by : BakerJarvis / Shutterstock.com

最後に、世界に誇るファベルジェコレクションが鑑賞できる、ファベルジェ美術館についてご紹介したいと思います

ファベルジェ美術館 IN サンクトペテルブルグ

ロシアで美術館といえば、女帝エカテリーナ2世のコレクションで構成されたエルミタージュ美術館が有名ですが、ファベルジェ工房のジュエリーに特化したファベルジェ美術館も絶対に外せない観光スポットです!

世界最大のファベルジェコレクションから成るファベルジェ美術館は、ロシアの富豪ヴィクトル・ヴェクセリベルク氏のコレクションと、ニューヨークのフォーブス一家が蒐集したインペリアルイースターエッグが展示されています

中でも9つのインペリアルイースターエッグが目玉品として注目を集めており、特に美しいといわれている「ルネサンス・エッグ」、「ベイ・ツリー・エッグ」、「リリー・オブ・ザ・バレー・エッグ」も含まれているので、ファベルジェファンでなくても必見の内容です!

【ファベルジェ美術館】

  • 入館料 ガイドなし料金450ルーブル(約770円)、ガイド付き料金600ルーブル(約1030円)
  • 開館日・時間 金曜を除く10時から21時まで
  • HP https://fabergemuseum.ru/

まとめ

ファベルジェ エッグ

今回はロシアが誇るジュエリーブランド、ファベルジェについてお話してみました。

日本でインペリアルイースターエッグを含むファベルジェのジュエリーや工芸品を鑑賞する機会はあまりありませんが、もしロシア旅行を考えている方は、ぜひサンクトペテルブルグのファベルジェ美術館に足を運んでみて下さい。

目の保養になるばかりか、きっとロシアを見る目も変わるはずですよ!?

カラッツ編集部 監修

ABOUT US

スペインの地方都市の工房で彫金を学びながら、スペイン宝飾ブランドの翻訳、アンティークジュエリーのコラムなど執筆。古代ローマのインタリオからジャポニズムまで、アンティークジュエリーを研究しながらコレクションしています。スペインのGemフェリアや美術館に遠征しながら、ジュエリーの楽しさを皆さんと共有できればと思っております!