宝石鑑別とは何か?
簡単にいうと「その宝石が本物か偽物かを科学的に検証するお仕事」です。
そしてその調査結果を「宝石鑑別書(または鑑定書)」にしています。
それくらいなら知ってるよ!という方が多いかもしれませんが、では、具体的に宝石を鑑別するとはどういうことで、何を使って宝石鑑別を行っているのかをご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
こちらの記事では、宝石鑑別の方法から偽物との見分け方、そして宝石鑑定士の資格についてのお話をお伝えしていきたいと思います。
※こちらも参考に:プロ厳選“5つの宝石鑑別機関”
宝石鑑別の方法
Photo by : David Talukdar / Shutterstock.com
まずは宝石を10倍のルーペや顕微鏡で見て、光沢や内包物などを観察します。
例えばルビーと疑われる宝石を見る場合には、ガラス光沢であるか、ルチルの内包物があるかなどを見ます。
カットされた宝石はカットの名称を確認しますが、結晶であれば形を見てどの鉱物であるかを確認することができます。
さらに本物であることを確認するために鑑別用の機械を使ってテストを行います。
例えば複屈折量は鉱物によってそれぞれ異なり、光の吸収スペクトルはその宝石独特の色の分光を表します。
つまり、宝石がもつ物理的特質を確認するさまざまな方法でテストを行うことで、その宝石がどの種類であるかを識別することができるのです。
偽物との識別の方法
ルーペや顕微鏡で見る場合は、光沢の違いや内部からの煌めき、内包物、さらに変色性やスター、キャッツアイ、遊色などといった特殊効果を確認します。
ガラスや合成石の場合は光沢が異なったり、内部がクリアーすぎたりイミテーション特有の内包物が見られることがあります。
天然石の下にガラスを付けたダブレットやトリプレット、人工的に作ったオパールやスタールビー、スターサファイアなども独特の外観をもっているといいます。
宝石鑑定士の資格
宝石鑑定士は国家資格ではありませんが、イギリスのGem-Aが行っている宝石学(FGA)コースと米国宝石学協会(GIA)が主催する、GG(Graduate Gemologist)の資格取得コースが世界で最も権威のある宝石鑑定の資格として知られています。
FGAのコースでは、宝石の結晶の形から物理的特質や化学組成などを習うことから始まります。
基本の科学知識を学んだら、鑑定機材の使い方を教わって実際に使いこなしていきます。
宝石独自の屈折率や複屈折量の数値、さらには特徴的な内包物などについても覚えなくてはならないので大変ですが、合格するまでには宝石鑑別士としての実践力が確実につく実績の高いコースだと思います。
FGAは国内でも取得可能です!
コースについては、コチラで詳しく説明していますので興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。
宝石鑑別書とは
宝石鑑別書とは、宝石が天然か、または合成やイミテーションかなど、これまで鑑別した結果を報告書にしたものです。
カラーストーンやダイヤモンドから、真珠やサンゴなどの有機質起源の宝石まで、結晶やカットされたもの全ての宝石を鑑別することができます。
ちなみにお値段は数千円から1万円前後です(宝石の種類や大きさによって異なる場合が多いようです)。
鑑別書には以下のテスト結果が記載されます。
- 鉱物・宝石の名称
- 写真
- 外観(カット、サイズ、色、重量、寸法など)
- テスト結果(屈折率、多色性、比重、分光性、偏光性、内包物など)
- 処理(加熱、照射、含浸など)
ちなみにルースの場合は問題なくテストが可能ですが、ジュエリーにセットされた宝石はテストができないことがあり、その場合は、その旨が書かれます。
原石の場合も鑑別不能として戻されることが多いそうです。
宝石鑑別書と鑑定書は違うの?
宝石鑑別書は、そのひとつの宝石が本物か否かということを識別したものです。
それに比べて、宝石鑑定書はダイヤモンドにのみ発行される報告書です。
すなわち、鑑定書はダイヤモンドの4C(カット・カラット・クラリティ、カラー)をそれぞれグレーディング(ランク付け)した結果をまとめたものです。
ただしファンシーカラーとラウンドブリリアントカット以外のカットを施されたダイヤモンドはカット評価がつかず、3Cのみの表記となります。
これだけで1つのトピックになってしまうので、詳しくはこちらをお読みください。
まとめ
宝石鑑別とは、まさに宝石が本物であることをさまざまな方向からテストして識別する大変な作業です。
高額な機械も知識も必要になります。
巧妙に作られたイミテーションも出回っていることから、見た目だけで判断したり、一般の人が簡単に見分けることはなかなか難しかったりします。
逆に言うと、時間や労力、高度な知識が必要だからこそ、そうして発行された鑑別書や鑑定書が付いている宝石であれば安心できるとも言えます。
ただし、世の中には悪い人がいるもので、名のしれない鑑別機関の鑑別書をつけて販売されていることもあると聞きますので、特に高額の商品の場合、信頼のおける鑑別機関の鑑別書や鑑定書が付いているか、オプションで付けることができるものを購入することをオススメします。
カラッツ編集部 監修