編集部注:
本記事は有識者の経験および書籍等の内容をまとめたものですが、2022年現在、立入禁止になっている区域が含まれる可能性があります。また個人所有の土地に許可なく入山し採掘する行為は、不法侵入罪や器物破損罪に問われる可能性があります。
キラキラと美しく輝く宝石たちは見ているだけでも癒やされますよね。
海外の鉱山で採れた宝石が、色々な人の手を借り海を渡って私たちの手元に来たと思うと、ロマンさえも感じます。
しかし、実は日本で採れる宝石も多いことをご存知でしょうか。
翡翠や珊瑚が採れたり、真珠の養殖が盛んなこと、かつて山梨県でクォーツ(水晶)が多く産出されたことは有名な話なので、ご存知の方は多いかもしれません。
でも、それだけではありません!
2006年発行の「日本産鉱物型録」(発行:東海大学出版会)によると、なんと1,139種の鉱物が日本で見つかったことがあると書かれているそうですよ!
残念ながら、その全てが宝石になるような透明度が高いものや美しいものではありませんし、中には、昔は高品質のものが採れた場所もありますが、現在は採れなくなっているケースが殆どで、山を掘れば宝石がザクザク出てくる感じではありません。
それでももし自分の手で宝石採取ができたら嬉しいですよね。
そこで、今回は日本で採れる(採れた)宝石についてご紹介したいと思います!
中には観光地として発展し、気軽に行ける場所もありますので、良かったら参考にしてみて下さいね!!
日本で採れる宝石
冒頭でもお話したとおり、日本でも多くの宝石が見つかっています。
かつて日本に金山や銀山を含む鉱山が多く存在したことはご存知でしょうか。
有名なところだと、佐渡金山や菱刈鉱山(稼鉱中)、石見銀山、神岡鉱山などがありますね。
それらの場所では、金や銀、銅を始めとした資源鉱物が多く産出され、中には、質の高い宝石が採れ、市場に出回るものもありました。
現在、その多くは既に閉山し、鉱山として商業的に稼働しているところは殆どありませんが、観光施設に作り変えられ、かつての坑道を見学したり、採掘体験ができる場所は多くあります。
残念ながら、宝石として楽しめる程の高品質ものは種類としても多くなく、かつて採れたものも今は採られておらず、オールドストックのものが市場に出回るだけというのが現状です。
それでは具体的に、日本で採れる(採れた)宝石をご紹介していきましょう。
※採集場所へ立ち入る場合は、役場 / 権利者 / 管理者の方などへの確認を徹底し、許可が必要な場合は必ず事前に許可を得てください。
※現地に掲げられたルールは徹底して守り、常識の範囲内で楽しむようにしてください。
※自然を大切に、ゴミなども絶対に捨てず、地元の方のご迷惑になるような行為をしないよう徹底してください。
1. 翡翠(ヒスイ)
2016年に日本の国石に指定された翡翠。
新潟県糸魚川市と周辺地域で採れることで有名です。
国の天然記念物に指定されている、小滝川ヒスイ峡と青海川ヒスイ峡での翡翠採取は禁止されていますが、富山県と新潟県の県境周辺の海岸沿いや糸魚川、青海川などの河口付近に打ちあがったものを拾うことはできるそうです。
糸魚川市にあるフォッサマグナミュージアムでは、採取した石を持っていくと本物の翡翠かどうかを鑑定してくれるサービスを行っているそうですよ。
この他にも、鳥取県、兵庫県、長崎県、岡山県などで翡翠が見つかることもあるそうです。
2. 真珠(パール)
1893年に御木本幸吉が半円真珠の養殖に成功した後、養殖産業が発展した真珠(パール)。
大きく分けると、主に海で作られる海洋真珠と主に湖や河川などで作られる淡水真珠があります。
海洋真珠
日本では、愛媛県、長崎県、三重県、熊本県、奄美大島などを中心に養殖が盛んに行われている海洋真珠。
愛媛県、長崎県、三重県、熊本県ではアコヤ真珠が、奄美大島ではマベ真珠や白蝶真珠が主に養殖されています。
淡水真珠
淡水真珠は、日本では主に滋賀県の琵琶湖(西の湖)や茨城県の霞ヶ浦で養殖されています。
主にイケチョウ貝、ヒレイケチョウ貝などで作られます。
琵琶湖の真珠は水質の悪化やタヌキ藻の大発生が原因で、生産量が激減した時期もあったようですが、近隣の自治体や関係団体などの努力の結果、少しずつ生産量も戻ってきているようです。
3. 珊瑚(コーラル)
珊瑚も日本近海で採れることで有名です。日本では主に赤珊瑚、桃色珊瑚、白珊瑚などが採れるそうです。
宝石珊瑚は古来より祈祷や装身具などとして用いられてきたと伝わりますが、日本で発見されたのは、江戸時代の終わり頃だったといわれています。
特に高知県土佐沖で主に採れる赤珊瑚は価値高く扱われ、血赤珊瑚と呼ばれる、血のように濃い赤色のものが最高品質とされ、海外でも人気が高いです。
高知市には、宝石珊瑚の資料館「日本サンゴセンター 宝石珊瑚資料館『35の杜』」があり、土佐沖で採れた宝石珊瑚で作った作品が見られたり、手作りアクセサリー製作体験や珊瑚磨き体験などを楽しむことができます。
4. 琥珀(アンバー)
太古の樹木の樹脂が化石化してできたといわれる琥珀(アンバー)。
良質な琥珀が見つかる場所として有名なのは、バルト海沿岸やドミニカ共和国ですが、日本でも古くから採取されています。
主に産するのは、岩手県久慈市、福島県いわき市、千葉県銚子市、北海道三笠市、同じく北海道石狩市などです。
日本の歴史上最も古いとされる琥珀は、北海道の柏台遺跡から見つかった小玉だといわれています。
約2万年前の旧石器時代に作られたものと見られ、世界的に見ても古いものだそうですよ。
5. アクアマリン
爽やかなブルーの色合いが印象的なアクアマリン。
鉱物ベリルの一種で、主にブルー~ブルーグリーンのものを指します。
そんなアクアマリンもまた日本で見つかったことがあるそうです。
日本で、アクアマリンを含むベリルが見つかったことがある場所は、福島県石川町、茨城県真壁町、山梨県甲府市と岐阜県中津川市や佐賀県佐賀市です。
特に茨城県真壁町山の尾や山梨県甲府市上黒平ではサイズは小さいものの、透明度の高いアクアマリンが見つかったこともあるそうですよ。
6. サファイア
言わずと知れた有名石の一つ、サファイア。鉱物種であるコランダムの変種の一つです。
コランダムは、色によって名前が異なり、レッドをルビー、レッド以外のものをサファイアと呼びます。
日本でサファイアが採れる場所として知られるのは、岐阜県中津川市、奈良県二上山、富山県南砺市利賀、岐阜県飛騨市など。
日本のコランダムは変成岩に含まれることが多く、アンダリュサイト、シリマナイト、フェルスパー(長石)などと一緒に見つかることが主だそうです。
富山県南砺市利賀では、結晶に6条の線が見られるトラピッチェサファイアが、岐阜県飛騨山地では、ルビーが産出されたこともあるそうですよ。
7. トパーズ
日本で、宝石品質と呼ばれるような高品質の宝石はあまり採れない、と冒頭でお伝えしましたが、このトパーズについては例外で、昔は品質の高いトパーズが多く産出されたといわれています。
しかしながら、当時の日本に鉱物に精通した人が少なかったことなどもあり、多くはアメリカやヨーロッパなどに輸出されてしまったようです。
アメリカ自然史博物館には日本産ブルートパーズのカット石が所蔵されているようですよ。
日本のトパーズの産地として有名なのは、滋賀県大津市田上山、山梨県甲府市黒平、そして岐阜県の中津川市や恵那市などです。
他にも茨城県、三重県などで発見されたこともあるといいます。
8. ガーネット
赤い石という印象の深いガーネットですが、実は、多くの色合いをもちます。
それもそのはず、ガーネットとは一つの鉱物の名前ではなく、同じ結晶構造をもつ等軸晶系の鉱物のグループ名であり、化学組成や不純物の違いにより多くの種類が存在するからです。
日本で採れるとされるガーネットは主に3種類です。
アルマンディンガーネット
ガーネットの中で最も産出量が多く、恐らく一般的によく知られる赤いガーネットはアルマンディンガーネットであることが多いと思います。
日本でアルマンディンガーネットが採れる主な場所は、福島県石川町や富山県南砺市利賀。
しかし、福島県石川町はペグマタイト、富山県南砺市利賀は片麻岩と産状が異なり、石川町のアルマンディンガーネットは手のひらサイズなど大粒のものが採れることもある一方、利賀では片麻岩内に小粒のものが密集して見つかることが多いといいます。、
また、利賀のアルマンディンガーネットの中にはルチルインクルージョンを含み、かすかにスター効果を現すものもあるそうです。
その他に、茨城県真壁町や奈良県香芝市などでも産出されるといわれています。
スペサルティンガーネット
オレンジ色の色合いが印象的なスペサルティンガーネット。鮮やかでジューシーな色合いのものはマンダリンガーネットと呼ばれることもあります。
スペサルティンガーネットは、長野県和田峠で見つかることがあるといいます。
しかし、一般的に知られるスペサルティンガーネットのオレンジの色合いとは少し異なり、和田峠のスペサルティンガーネットはオレンジ色が濃すぎるため黒っぽく見えるものが多いようです。
和田峠は、現在国有林または私有地のため、入山禁止となっています。
アンドラダイトガーネット
埼玉県秩父地域ではグリーン味を帯びたアンドラダイトガーネットが産出されるといいます。
デマントイドガーネットほど、透明度の高い宝石品質のものは産出されないようですが、近い色合いのものが見つかることはあるそうです。
また、奈良県天川村は、アンドラダイトガーネットの変種の一つであるレインボーガーネットが産することで知られています。
レインボーガーネットは、他のガーネットとは外見が大きく異なり、不透明な地色にイリデッセンス効果を示す珍しい種類です。
天川村のレインボーガーネットは宝石品質のものも多く、コレクターの間で人気も高いのですが、私有地のため現在は採掘されておらず、オールドストックを探すほかないようです。
9. ロードクロサイト
ロードクロサイトもかつて日本で高品質のものが採れた数少ない宝石です。
今でも時々北海道産や青森県産のロードクロサイトを市場で見かけることがありますが、主にオールドストックであることから、近年大きく減ってきているといいます。
有名なところですと、青森県尾太鉱山、北海道古平町稲倉石鉱山、茨城県城里町高取鉱山などがあり、特に尾太鉱山のロードクロサイトはコレクターの間では世界的にも有名だといいます。
しかしいずれも現在は閉山しており、入山できないところが多いようです。
10. クォーツ
山梨県で江戸時代から上質なクォーツが採掘され、現在でも水晶彫刻などが伝統産業として引き継がれていることは有名な話ですね。
現在でも山梨県甲府市には宝石彫刻や宝石研磨の工房、ジュエリーメーカーなどが多く立ち並び、宝石の街として栄えています。
2つの水晶が84度33分の角度でくっつき、まるで、ハート型のような形をしている結晶を「日本式双晶」と呼び、かつて山梨県や長崎県で産出されたといいます。
ただ、最初に研究発表された標本が山梨県乙女鉱山産だったため「日本式」と呼ばれているだけで、日本特有のものではないそうです。
ブラジル、ペルー、アメリカなどからも見つかっており、バタフライ・ツインと呼ばれることもあります。
ロッククリスタル(カラーレスのクォーツ)の他に、スモーキークォーツ、ローズクォーツ、アメジストなどが各地から見つかることもあります。
11. フローライト
カラーバリエーション豊富で、コレクター人気の高いフローライトもまた日本で産出される宝石です。
残念ながら、宝石品質と呼ばれる高品質のものは少ないようですが、かつては福島県蛍鉱山、岐阜県下呂市笹洞鉱山や関市平岩鉱山などで工業用の蛍石が多く採られていたようです。
現在はいずれも閉山していますが、笹洞鉱山では期間限定でミネラルハンティングガイドツアーなる、プロのガイドさんと一緒に採掘できるツアーなども開催されているようですよ。
鉱山によっては、現在は私有地となっており、入山には許可が必要な場所も多いため、行く場合は事前に色々調べ、必要な許可を取った上で入山するようにしてくださいね。
12. ロードナイト
マンガンを含み、マンガンの資源鉱物としても広く用いられているロードナイトは、かつて岩手県野田玉川鉱山を中心に日本でも多く採掘されていました。
愛知県北設楽郡田口鉱山も宝石品質のロードナイトが産出されたことで知られています。
いずれも現在は閉山されていますが、岩手県野田玉川鉱山については「マリンローズパーク野田玉川」という観光施設として開放されており、かつての坑道を見学したりできます。
野田玉川鉱山で採れたロードナイトを使ったジュエリーなどを販売するショップも併設されているようですので、日本産のロードナイトを手に入れたい方は要チェックです。
田口鉱山は現在入山禁止となっていますのでご注意下さい。
13. メノウ(アゲート)
結晶の並び方に方向性のある多結晶のクォーツを総称してメノウ(アゲート)と呼ぶこともありますが、一般的に縞模様のあるものをメノウ(アゲート)やオニキス、ないものをカルセドニーと呼んで区別しています。
メノウもまた、日本で採取できる宝石の一つです。
メノウは弥生時代の遺跡から勾玉が見つかったことがあるほど、古くから日本でも採掘され人々に親しまれてきた宝石の一つです。
茨城県久慈川・玉川流域、山形県最上川上流域、島根県松江市、富山県魚津市のほか、日本各地で見つかっており、今でも海沿いや川辺などに打ち上げられたメノウを拾える場所も多いようです。
特に、茨城県奥久慈地方にはかつてメノウ鉱山があり、日本の一大産地としても知られています。現在鉱山は閉山しています。
14. ジャスパー
ジャスパーも多結晶のクォーツの一種ですが、結晶の並び方に方向性はなく、一般的に不純物を20%程度含んでいます。
成因には、堆積性と火山性(主に熱水による)がありますが、火山性の場合、メノウが混在することもあり、見つかる場所もメノウと似ています。
島根県松江市、青森県、富山県魚津市、新潟県糸魚川市、山梨県市川三郷町・身延町のほか、多くの場所で見つかっています。
特に島根県玉造温泉は、かつて勾玉など玉造石が多く製造されていた場所としても知られており、その中にジャスパーも含まれていたことから、この地で採れたジャスパーのことを出雲石と呼んでいるそうです。
15. 長石(フェルスパー)
地表に最も多くある鉱物といわれる、長石(フェルスパー)。
固溶体鉱物のグループ名である長石には、多くの種類が存在します。
その内の幾つかは日本でも産出されるといわれていますので、少しずつご紹介しましょう。
アマゾナイト
アルカリ長石グループに属すマイクロクリンの変種の一つで、ブルーグリーンを呈するものをアマゾナイトと呼びます。
日本のアマゾナイトは、山梨県甲府市黒平、長野県南木曾町、岐阜県中津川市などで見つかっています。
アノーサイト
斜長石グループの端鉱物の一つで、カルシウムを多く含むアノーサイト。
アノーサイトは、北海道余市町、東京都三宅島、八丈島、山梨県大月市などで見つかるといいます。
特に北海道余市町と三宅島のものが有名で、三宅島ではごく稀ですが、透明度の高いものが見つかることもあるようです。
アノーソクレース
オーソクレースとアルバイトの固溶体であるアノーソクレース。
長野県木崎湖畔の山中で見つかるといいます。
中には、ほんのりブルーのシラーが見えるムーンストーンに似たものが採れることもあるそうです。
16. オパール
遊色効果が美しいオパールも日本で産出されるといわれています。
一瞬意外に思いましたが、オパールはクォーツの成分である二酸化珪素(SiO2)に水分が混ざり球状になったもの(シリカゲル)が無数に固まってできた鉱物ですので、クォーツやカルセドニーが多く産出される日本で生成されるのは不思議ではないことが分かります。
日本のオパールは主に、福島県宝坂、富山県富山市新湯、石川県赤瀬、愛知県棚山などで見つかっています。
特に、福島県の宝坂鉱山はかつて宝石品質のオパールが採れたことで知られています。現在は閉山しており、入山禁止となっています。
また、富山県富山市新湯は遊色効果を示さない、ハイアライトオパールが産出される場所として有名で、平成25年(2013)に国の天然記念物に指定されています。
17. 橄欖石
英語でオリビンと呼ばれる橄欖石(カンランセキ)。
橄欖石と聞いてもピンと来ない方もペリドットと聞くとどうでしょうか。
厳密には、ペリドットは橄欖石系列の中間体に当たり、橄欖石の中で透明度が高い宝石品質でイエローグリーン~グリーンのものをペリドットと呼びます。
日本の橄欖石の産地として知られているのは秋田県一ノ目潟、伊豆諸島のほか、特に三宅島や島根県隠岐の島などが有名です。島や半島で多く見つかっているイメージですね。
島根県隠岐の島は2009年に日本ジオパークに、2013年に世界ジオパークに認定されています。
18. オブシディアン
天然ガラスであるオブシディアン。和名は黒曜石です。
オブシディアンは、北海道音更川周辺や長野県和田峠のほか、日本各地で見つかっています。
北海道音更川周辺地域で採れるオブシディアンは地元では十勝石と呼ばれ親しまれています。
また、長野県和田峠(下諏訪郡下諏訪町~小県郡長和町にまたがる地域)では近くにある縄文時代の遺跡からもオブシディアンが多く発見されており、古くから人々に広く利用されていたことが分かります。
長和町には黒曜石石器資料館や黒曜石体験ミュージアムなど観光施設もあり、この地域の黒曜石の歴史を見ることができます。
その他の宝石
上記では、いまだかつて透明度の高い高品質の、いわゆる宝石としての価値が認められるようなものが採れた宝石だけをご紹介しました。
しかし、宝石品質のものでなければ、日本で採れるとされる鉱物はまだまだ沢山あります。
例えば、スファレライト、パイライト、シーライト、ベニトアイト、マラカイト、スギライトなども見つかったことがあるといわれる宝石です。
こうまとめてみると、本当にバラエティに富んだ多くの鉱物が日本で採れることが分かりますね!
宝石が採取できる地域について
先にご紹介した内容と重複するものもありますが、何処に行けばどんな宝石が採れるか地域別でもまとめてみましたので、良かったら参考にしてみて下さい。
新潟県糸魚川市とその周辺地域
言わずと知れた、翡翠(硬玉:ジェダイト)の産地です。軟玉と呼ばれるネフライトも産するといわれています。
また、糸魚川市では、宝石品質ではないもののベニトアイトが見つかったこともあるそうですよ。
翡翠の項でもご紹介したとおり、富山県と新潟県の県境周辺(富山県宮崎・境海岸~糸魚川海岸辺りまで)の海岸沿いや糸魚川、青海川などの河口付近では、岸に打ちあがったものを拾うことができます。
近くに、フォッサマグナミュージアムや親不知ピアパークの翡翠ふるさと館などの観光施設があり、糸魚川周辺で過去に採れた翡翠を見たり、糸魚川翡翠の歴史などを学ぶこともできます。
先にご紹介したとおり、フォッサマグナミュージアムでは、拾った石を鑑定してくれるサービスも行っていますので、行った際は利用してみると良いと思います。
富山県魚津市
富山県魚津市ではメノウやジャスパーなどが多く産出されます。
魚津市から海岸沿いに新潟県方向に進むと、前述した宮崎・境海岸(通称ヒスイ海岸)があり、糸魚川海岸まで続いています。
魚津市から糸魚川市まで宝石採取の旅に出かけるのも面白いかもしれませんね。
岩手県久慈市・岩手県野田村野田玉川鉱山
国内有数の琥珀の産地として有名な久慈市。
久慈市にある久慈琥珀博物館では、久慈の琥珀について学べるだけでなく、白亜紀の地層をアイスピックなどを使って掘り、琥珀の採掘ができるコーナーなどもあります。
大人でも楽しめる、結構本格的な採掘体験ができるそうですよ。
また、かつて日本有数のマンガン鉱山として名のしれた野田玉川鉱山は現在、「マリンローズパーク野田玉川」という観光施設になっています。
かつての坑道を歩いたり、野田玉川鉱山で採れたロードナイトのジュエリーを買ったりできるようですので、遠方の方はレンタカーを借りるなどして、久慈市とともに遊びに行くのも楽しいと思います。
岐阜県中津川市・恵那市・下呂市
岐阜県中津川市や恵那市ではアクアマリン、サファイア、トパーズ、クォーツなど多くの宝石が採れます。
中津川市にある博石館では、周辺地域で採れる鉱物を始め国内外の色々な鉱物や宝石を見ることができるほか、宝石探し体験や鉱山体験、手作り体験など色々な体験ができます。
恵那峡周辺にはその他の観光地もありますので、ご家族やご友人と旅行に行っても楽しいと思います。
また、下呂市金山町の笹洞鉱山では、前述したとおり、期間限定でミネラルハンティングガイドツアーが開催されています。
プロのガイドさんと一緒に採掘できるツアーとのことですので、安心して参加できそうです。ご興味のある方は金山町観光協会のサイトで詳細をチェックしてみて下さいね。
滋賀県大津市
かつて日本の三大鉱山の一つとして名を馳せた滋賀県大津市田上山。
クォーツや高品質のトパーズが採れたことで知られています。
現在登山コースの入り口付近に鉱物専門の博物館があるようですが、開館は不定期のようですので、行く場合は事前に連絡すると良いでしょう。
福島県石川町
かつて高品質のアクアマリンが採れたことで知られる福島県石川町。
他にもクォーツ、アルマンディンガーネット、ショールトルマリン、ベリル、クリソベリルなど多くの宝石が見つかっています。
石川町にある歴史民俗資料館では、かつて産出された高品質なアクアマリンの結晶を始めとした多くの鉱物を間近で見ることができます。
昨年日本経済新聞のwebサイトに掲載された情報によると、2023年に新しい博物館が新設される予定もあるそうです。楽しみですね!
茨城県久慈川・玉川流域
かつて奥久慈にメノウ鉱山があったことで知られる久慈川・玉川流域。
ココでは川辺に打ち上がったメノウを拾うことができるそうです。
週末に散歩がてら出かける方も多いようですよ。
奈良県香芝市二上山周辺
奈良県香芝市二上山周辺では、ガーネット、サファイア、ジルコンを始め多くの鉱物が見つかることで知られています。
今でも竹田川などでガーネットやサファイアを拾うことができるそうです。
場所によっては採取許可が必要な場所もあるようですので、事前に自治体などに問い合わせをしてから行かれた方が安全だと思います。
二上山博物館では、かつて、夏休み限定で「サファイア探し」イベントを行っていたようですが、開催されない年もあったようですので、こちらも事前に確認が必要です。
東京都三宅島・八丈島
三宅島でも海岸に小石が打ち上がった浜があり、その中からアノーサイトや橄欖石などを探すことができます。
透明度の高いアノーサイトが見つかったこともあるそうですので、根気強く探してみると良いかもしれません。
伊豆半島
伊豆半島の菖蒲沢海岸では、クォーツ、メノウ、自然金などが採れることで知られています。
こちらも小石が打ち上がった海岸沿いを歩いて探すことができます。
宝石採取に出かける時の注意事項
まだ多くの鉱物が眠る日本。宝石や鉱物に興味がある方なら一度は宝石採取してみたいと思うかもしれません。
運良くキレイな結晶を見つけられたら、、と思うと夢も広がることでしょう。
しかし、何処でも勝手に入って石を拾って良いということはありません。現在入山禁止となっている場所も多くあります。
楽しい宝石採取の旅が悲しい出来事にならないように、守るべきルールは必ず守って良い思い出だけを持ち帰るようにしてくださいね。
①採取可能な場所かどうか事前に確認しましょう
かつて鉱山だった場所でも、現在は国有林や私有地となり、入山禁止となっている場所が多くあります。
特に、個人所有の土地に許可なく入山し採掘する行為は、不法侵入罪や器物破損罪に問われる可能性がありますので、十分にご注意ください。
鉱山のある自治体に問い合わせたり、インターネットなどで色々情報を集めたり、事前に採取可能な地域かどうか確認し、事前許可が必要な場合は、必ず許可を取ってから行くようにして下さいね。
②危険な場所には一人で行かない
鉱物採取ができる場所の多くは海沿いや川沿いであったり、山の中だったりします。
特に山は何が起こるか分かりませんので、整備されている土地であっても複数人で行くことをおすすめします。
また、海沿いや川辺に打ち上がった石を拾う分にはよほどの悪天候でない限り大丈夫かと思いますが、軽い気持ちで海や川の中に入って探すのは危険ですのでやめましょう。
③自然を汚さない
宝石採取地の多くは自然の中にあります。美しい自然を汚さないよう、その土地のルールを守るようお願いします。
迷惑行為が原因で、採取禁止地域になってしまっては悲しいことです。
ゴミなども絶対に捨てずに持ち帰り、地元の方のご迷惑にならないような行動を心がけるようにして下さいね。
最後に
いかがですか。意外に身近な場所で、宝石は静かに眠っているのかも。
ただし、ジュエリーとして楽しめるような大きな結晶や質の良いものは現在の日本ではあまり見つかっていないようですので、期待はし過ぎずお宝探しを楽しむ位の気持ちでのぞんでくださいね。
宝石採取の時間をぜひ楽しんで下さい!
【この記事の監修者】 山梨県立宝石美術専門学校 教授 高橋 泰 富山大学理学部地球科学科で地質学・岩石学を専攻 博士(理学)、FGA(英国宝石学協会特別会員) 山梨県立宝石美術専門学校で宝石学および宝石鑑別実習について教鞭をとる傍ら、2015年春号~2021年秋号まで「宝石の四季」(発行:レッグ)にて『日本で産出される宝石』を連載。 その他、一般社団法人日本宝石協会主催のセミナーにて講師を務めるなど、多岐に渡り活躍する。 |
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