深みのあるグリーンの中に、糸のようにキラキラする光沢が美しい鉱物、クリノクロア。
自然が作り出す芸術作品と感じずにはいられません。
セラフィナイトと呼ばれることもあるといいますが、その違いとは何なのでしょうか。
今回は、クリノクロアについて特徴、意味、原石の形、セラフィナイトとの違いなど、ご紹介していきましょう!
クリノクロア(クローライト)とは?
マグネシウムとアルミニウムの水酸化アルミノ珪酸塩鉱物であるクリノクロア。
現在10種類程が確認されている緑泥石グループの代表的な鉱物の一つです。
クリノクロアは同じ緑泥石グループに属するシャモサイト(シャモス石)と化学成分が連続しており、固溶体(中間体)を作ります。
主成分がマグネシウムと鉄の場合はクリノクロア、アルミニウムだとシャモサイトに分類されます。
鉱物としての基本情報
英名 | Clinochlore(クリノクロア) Chlorite(クローライト) |
和名 | 緑泥石 |
鉱物名 | クリノクロア |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | (Mg,Fe2+)5Al(Si3Al)O10(OH)8 |
モース硬度 | 2 – 2.5 |
比重 | 2.6 – 2.9 |
屈折率 | 1.57 – 1.60 |
光沢 | ガラス光沢~無艶 |
特徴
深みのあるグリーンと柔らかいクリーム色が混ざったような個性的な見た目が魅力的なクリノクロア。
クリノクロアは、雲母のように薄く剥がれやすいという性質をもち、かつ、モース硬度が2 – 2.5と低いことから加工が難しいとされます。
カットが施されて出回ること自体少なく、見かけた場合もカボションカットやビーズ状であることが多いですね。
どちらかというと、別の鉱物にインクルージョンとして入ったものの方が多く、一般的にも知られています。
また、古墳時代に翡翠(ヒスイ)やジャスパーの代わりとして、玉類を作るのに使用されていたと伝わります。
色
主に濃くくすんだグリーンをしていますが、中にはホワイトや褐色のものもあります。
鉄の含有量が多い程、黒っぽくなると考えられています。
クロムを含む変種は鮮やかなパープルを呈し、ケンメレライトやクロムクリノクロアと呼ばれています。
産地
スウェーデン、カナダ、メキシコ、ドイツ、ネパール、ブラジル、オーストラリア、アメリカ、インドなど広域で産出されます。
良質のものが多く見つかるのは、ブラジルのバイーア州などです。
名前の意味
ギリシア語で「傾く」を意味する「Klinen」と「緑色」を意味する「chloros」を組み合わせて名付けられました。
和名の緑泥石は、緑の泥のように見えるということから命名されたといわれています。
クリノクロア(クローライト)の原石の形
クリノクロアは、火成岩、堆積岩、変成岩の造岩鉱物の一つで、温度や圧力の低い変成岩、熱水変質などによって生成します。
海底の粘土や土壌、充填された火山岩の空洞や鉱脈などで見つかることもあります。
結晶は主に厚板状ですが、六角板状結晶や片状、鱗片状、緻密質のものもあるそうです。
インクルージョンとしてのクリノクロア
前述したように、クリノクロアは、それ自体がカットされ宝飾品として出回るより、他の鉱物にインクルージョンとして含まれているものの方が多いです。
最もよく知られているものは、モスアゲートです。
モスアゲートは、多結晶のクォーツであるカルセドニーやアゲートの中に苔のような模様が見えるものを指します。
古代ヨーロッパでは、植物の精が宿った石だと考えられ崇められていたといわれる宝石なのですが、この苔のように見えるものがクリノクロア(クローライト)などである場合が多いそうです。
また、クォーツやフェルスパーの結晶の表面を覆ってくすんだグリーンを彩ることもあります。
セラフィナイトとは
クリノクロアの葉片状の集合体がセラフィナイトという名前で流通していることがあります。
特にパワーストーンとして人気があるようです。
セラフィナイトは、主に深いグリーンの地色にホワイトやシルバーで羽のようなマーブル模様が入ったものを指します。
この模様が天使の羽根をイメージさせることから、最高位の天使「セラフィム(seraphim)」に由来し名付けられたといわれています。
ただ、セラフィナイトというのは流通名のため、鑑別書上はクリノクロアとなります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
クリノクロアは、硬度が低く、雲母のように剥がれやすいため宝石として扱うことは難しいということが分かりました。
ジュエリー加工には向かないため、カボションカットやビーズ状のものをコレクションしたり、原石のまま愛でるというのが安心して楽しめる一番の方法かもしれませんね。
天使の羽根のような模様をもつクリノクロアはセラフィナイトと呼ばれ、主にパワーストーンとして流通しています。
自然が作った芸術品のような宝石、クリノクロア。良かったら今後注目してみて下さいね。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社 ほか
▽参考書籍・参考サイト一覧▽