あなたはアンブリゴナイトという宝石のことをどのくらい知っていますか?
「全然知らない」という方もきっと少なくないでしょう。
それもそのはず、宝石品質の結晶が見つかるのは珍しく、さらに割れやすくてもろいことから、ジュエリーに加工されることは滅多にないといわれるレアストーンの一つです。
一般的にはあまり知られていない、名前を聞くことも少ない宝石、アンブリゴナイト。
しかし実は資源鉱物としても重要な役割を担っており、私たちの身近なものにも使われていたりするそうです。
今回は、そんなアンブリゴナイトの秘密を探ってみることにしました。
アンブリゴナイトとは?
アンブリゴナイトの結晶は短い柱状をしており、粗い目の表面をしていることが多いといわれています。
原石は半透明で白く、大きな塊で産出されることがほとんどで、宝石品質といえるような良質のアンブリゴナイトは透明感があり、黄色、緑色を帯びた黄色、薄紫色をしていることが多いそうです。
鉱物としての基本情報
結晶系 | 三斜晶系 |
化学組成 | リン酸塩鉱物 |
硬度 | 5.5-6.0 |
比重 | 3.0-3.13 |
屈折率 | 1.57-1.60 |
光沢 | ガラス状~油脂状または真珠状 |
特徴
冒頭でもお話したとおり、宝石にできるような高品質の結晶が見つかるのは大変稀だといわれています。
更に硬度があまり高くなく、もろい性質をもつためジュエリーに加工するのには向いていないとされる宝石です。
そのためほとんどがコレクター向けにカットされているのだとか。
歴史
アンブリゴナイトが最初に発見されたのは、1817年でした。
ドイツにあるザクセン州で、ドイツ人鉱物学者のアウグスト・ブレイトハウプトによって発見されたそうです。
後に同じような鉱物がフランスのモンテブラや米国メイン州のヘブロンでも発見されました。
しかし化学組成や光学的特性がアンブリゴナイトとは少し異なったことから、モンテブラサイトやヘブロナイトなど、発見された土地にちなんだ名前でそれぞれ呼ばれていたといわれています。
名前の意味
アンブリゴナイト(Amblygonite)という名前は、ギリシャ語の「Amblus(アンブルス‐鈍い)」と「Gonia(ゴニア‐角度)」という二つの言葉から由来しているといわれています。
アンブリゴナイトの結晶の見た目と性質からそう名付けられたのだとか。
色
一般的に原石は白やクリーム色をしているといいます。
しかし宝石品質と呼ばれるような高品質のものは、黄、緑系黄色、薄紫色などをしていることが多いといわれ、他にも、無色、緑、青、ピンク色などが発見されています。
産地
アンブリゴナイトは、アメリカ合衆国、ブラジルで主に産出されています。ほかにも、フランス、ドイツ、カナダ、中国などで産出されるといわれています。
モンテブラサイトとの関係
アンブリゴナイトは、ペグマタイト脈に産するリン酸塩鉱物です。
リン酸塩鉱物には、燐灰石やターコイズ、フォスフォフィライトなど、多くの鉱物グループが属しています。その中のひとつが、アンブリゴナイト・グループです。
そしてこの「アンブリゴナイト・グループ」に属するのが、アンブリゴナイトとモンテブラサイトです。
アンブリゴナイトより遅くに発見されたモンテブラサイトですが、この二つの鉱物は性質が似ていることからかつては混同されることも多かったそうです。
現在ではモンテブラサイトの方が少し屈折率が高く、フッ素を含まない水酸基タイプであることが分かったことから、アンブリゴナイトとは区別されています。
資源鉱物としてのアンブリゴナイト
リン酸塩鉱物であるアンブリゴナイトは、リチウムと燐の重要な資源となります。
例えば、炭酸リチウムとして精神障害の治療のために医学的に用いられたり、耐熱ガラス容器やセメント、リチウムイオン電池の製造など、工業用としても重要な役目を果たしています。
さらに炎に入れると発色する特質があるため、花火の材料にも使われているそうですよ。
最後に
アンブリゴナイトは、リチウムの資源となる鉱物だったのですね。
宝石としてはレアですが、工業や医学など、私たちの身の回りで活躍していたことが分かりました。
モンテブラサイトという、同じグループに属し似た性質をもつ宝石があることも知ることができました。
市場に出回ることさえ珍しいといわれるアンブリゴナイト。
もしもいつかあなたが、コレクター用にカットされたアンブリゴナイトのルースと偶然出会うことがあるとしたら、それはどんな色や形をしていると思いますか?
カラッツ編集部 監修