ファンシーカラーダイヤモンドの中でも価値が高い色の一つとされる、ブルーダイヤモンド。
鮮やかなブルーを発色する高品質のものは大変希少価値が高く、オークションなどで驚くほどの高額で落札されています。
今回は、ブルーダイヤモンドの色のヒミツや市場価格から人工処理石との違い、さらに世界で有名なブルーダイヤモンドのお話などをお伝えしていきます。
目次
ブルーダイヤモンドとは?
画像:トリートメントブルーダイヤモンド
ダイヤモンドはカラーレスの他、イエロー、ブラウン、レッド、ピンク、パープル、オレンジ、グリーン、ブルーなど様々な色が存在します。
カラーレス以外の色は、ファンシーカラーと呼ばれ、色や濃さによっては高い価値が付けられます。
ブルーダイヤモンドは、ファンシーカラーダイヤモンドの中でも希少性が高く、特にサイズが大きく濃い色合いをもつものは珍しいとされます。
天然未処理で色の濃いものが市場に出回ることは滅多にありませんが、人工的にブルーにしたトリートメントダイヤモンドであれば、多く目にすることができます。
天然未処理のダイヤモンドに比べると価値は下がりますが、色合いによっては人気も高く、数十万円以上で取引されるものも珍しくありません。
産地
かつては、インドのゴルコンダ鉱山で産出されていたようです。
現在はごく僅かですが、南アフリカのプレミア鉱山やカリナン鉱山、オーストラリアのアーガイル鉱山などで産出されるといわれています。
ブルーダイヤモンドの色のヒミツとグレーディング
ブルーダイヤモンドの色は主に、結晶格子構造に微量のホウ素(ボロン)を含むことに起因すると考えられています。
しかし、ダイヤモンドが生成する地球の奥深くには、ホウ素がごく僅かしか存在しないといわれており、ダイヤモンドがブルーを発色すること自体がとても珍しいことなのです。
天然未処理のブルーダイヤモンドの殆どはグレー味を帯びているといわれますが、ホウ素の含有量が多いとブルーが濃くなるのだそうです。
ホウ素による発色のほか、生成過程で自然の放射線に晒されたり、水素の影響でブルーを呈する場合もあるそうです。
放射線に晒されたものはグリーンブルー、水素によるものはグレー味を帯びたバイオレットやブルーを呈することが多いそうです。
GIAのファンシーカラーダイヤモンドの鑑定書には、Color Originの項目があります。
この部分にNaturalと記載されていれば、そのダイヤモンドは人工処理を施していない天然色であることを証明しています。
一方、トリートメント処理を施した色である場合はTreatedなどと記載されます。
ブルーダイヤモンドのカラーグレーディング
ブルーダイヤモンドと一口に言っても、濃淡や鮮やかさが異なったり、グレー味やグリーン味を帯びたものなど色幅もあります。
ブルーに限らず、ファンシーカラーダイヤモンドのColor Gradeは主に
フェイント(Faint)
ベリーライト(Very Light)
ライト(Light)
ファンシーライト(Fancy Light)
ファンシー(Fancy)
ファンシーダーク(Fancy Dark)
ファンシーディープ(Fancy Deep)
ファンシーインテンス(Fancy Intense)
ファンシービビッド(Fancy Vivid)
の9段階の濃淡評価に色合いを組み合わせたもので表記され、フェイントが最も色が薄く、ビビッドが最も濃いということになります。
色合いについても細かく分けられ、
例えば、グレー味がかったものは、グレーブルーやグレイッシュブルー、グリーン掛かったものは、グリーンブルーやグリーニッシュブルーなどと表現されます。
他の色味が見えずブルーが強いものは、「ブルー」と評価されます。
色合いは結構細かく分けられる印象があり、中には「ファンシー・グレイッシュ・グリーニッシュ・ブルー」のような評価がつくものもあるようです。
ブルーダイヤモンドに施される人工処理について
画像:トリートメントブルーダイヤモンドの原石とルース
前述したように、未処理のブルーダイヤモンドは産出量が少なく希少なため、人工的に照射処理を施したトリートメントダイヤモンドも多く出回っています。
未処理のブルーダイヤモンドに比べ、確かに価値は下がってしまうのですが、ゼロになってしまう訳ではなく、数億円をポンと支払うことが出来ない庶民にとって、少し身の丈に合った価格になる程度です。
トリートメントダイヤモンドも天然ダイヤモンドであることには変わりませんし、ダイヤモンドの科学的性質に合わせた方法で処理されるため、クリーニングなどによる色落ちの心配もありません。
色鮮やかなファンシーカラーダイヤモンドを気軽に楽しめると考えれば、十分に価値があると思います。
また、人工的に色を付けているため、様々な色合いを作ることができるのもトリートメントダイヤモンドの良いところです。
ライトブルー~ディープブルーまで様々で、最も人気が高いのは、爽やかな色合いが印象的なアイスブルーダイヤモンドです。
「アイス」を「愛す」と掛けて、婚約指輪などに選ばれる方もいらっしゃるそうですよ。
ブルーダイヤモンドの価値
画像:左-ナチュラル 中央-アイスブルー(トリートメント) 右-ブルー(トリートメント)
ファンシーカラーダイヤモンドの評価は、カラーレスのダイヤモンドと異なり、カット評価は付かず、クラリティ、カラット、カラーの3Cで評価されます。
最も重要なのはカラーグレードで、色の濃さに準じて価値が決まります。
最も価値が高いのは最も色が濃いとされる、ファンシー・ビビッドブルー(Fancy Vivid blue)。
グレー味やグリーン味を帯びたものよりも純粋なブルーに近い方が評価も上がります。
ちなみに、トリートメントブルーダイヤモンドの中で最も価値が高いのは、アイスブルーダイヤモンドです。
ブルーダイヤモンドの市場価格
画像:左-ナチュラル 中央-アイスブルー(トリートメント) 右-ブルー(トリートメント)
ブルーダイヤモンドは、一体どれくらいの価格で販売されているのでしょうか。
品質によっては、未処理のものを入手することも不可能ではないかもしれませんよね。
こちらでは、未処理とトリートメントのブルーダイヤモンドの市場価格の違いや、入手できる場所などをお伝えしていきます。
市場価格
未処理のブルーダイヤモンドは小さくて色が淡いものでも、多くが十万円以上の価格が付くと見受けられます。
ブルーの色が明確にわかるファンシーインテンス・ブルー(Fancy Intense Blue)やファンシービビッド・ブルー(Fancy Vivid Blue)になると、0.1ct以下の小粒でも数百万円以上になります。
大きくて高品質のものは、博物館級の価値とも評価され、クリスティーズやサザビーズなど世界の有名オークションで数十億円で落札されることも多いようです。
一方、照射処理が施されたトリートメントブルーダイヤモンドは数万円~探すことができそうです。
大きさやクォリティによって価格は様々ですが、未処理のものよりもお手軽に入手できることは確かです。
最も人気も価値も高いとお伝えしたアイスブルーダイヤモンドでクォリティの高いものは、数十万円以上するものもあるといいます。
どこで買える?
未処理のブルーダイヤモンドも色が非常に薄いものであれば、稀に目にすることがあります。
偶然出会えることもあるので、過去に取り扱いがあったお店などを中心にマメにチェックされると良いでしょう。
これに対し照射処理を施したトリートメントブルーダイヤモンドは比較的多く出回っています。
ダイヤモンドの取り扱いが多いお店などを色々覗いてみたら、好みの色合いのものに出会えるかもしれません。
ブルーダイヤモンドは、処理の有無で価格が大きく異なります。
トリートメントダイヤモンドを未処理のブルーダイヤモンドとして、悪徳に販売している業者も居ると聞きます。
特に、高額なものを購入される場合は、信頼のおける鑑別機関の鑑定書やソーティングが付いているかオプションで付けてもらえるお店を選ぶと安心だと思います。
有名なブルーダイヤモンド
ブルーダイヤモンドは希少な宝石ですが、長い歴史の上ではサイズが大きくて色が濃い高品質の結晶も見つかっています。
これらは大変レアなため、気が遠くなるような高額で取引されてきました。
宝石史に残る有名なブルーダイヤモンドについてご紹介していきます。
ホープダイヤモンド(The Hope Diamond)
「ホープダイヤモンド」は、世界で最も有名なブルーダイヤモンドと言ってもきっと過言ではないでしょう。
クッション・ブリリアント・カットが施された45.52ctのブルーダイヤモンドで、呪いのダイヤモンドとしても有名です。
諸説ありますが、最も一般的なものはインドで発見され、ヒンドゥー教寺院の女神像に嵌められていたものがある日何者かに盗まれたことから呪いが始まったという説。
数々の所有者の手に渡りますが、彼らには必ず不幸が訪れたとのこと。
一時期所有したホープ一族に由来してホープと名付けられたそのブルーダイヤモンドは、最後の持ち主ハリー・ウインストンによってスミソニアン博物館に寄贈され現在に至ります。
ブルー・ムーン・ジョセフィーヌ(Blue Moon of Josephine)
2015年11月にサザビーズのジュネーブ支店で開催された競売で、4840万ドル(約51億円)という史上最高価格で落札されたブルーダイヤモンドです。
クッションカットが施された12.08ctで、カラーグレードは「ファンシー・ビビッド・ブルー(Fancy Vivid Blue)」と評価された、鮮やかで濃い色をしています。
透明度はIF(インターナリー・フローレス)」でタイプⅡbと、非の打ちどころがないほどの高品質です。
このブルーダイヤモンドは「ブルー・ムーン」という名で出品され、香港の億万長者ジョセフ・ラウ氏が、7歳の娘のために落札しました。
ラウ氏は購入後、娘の名前に因んで「ジョセフィーヌのブルー・ムーン(Blue Moon of Josephine)」と改名したとのことです。
最後に
ホウ素を含むことなどでブルーを発色するダイヤモンドは、ファンシーカラーダイヤモンドの中でも特にレアな色の一つです。
欧米ではブルーは信頼と誠実を象徴するとされるため、婚約指輪としてブルーダイヤモンドを選ばれる方も多いようです。
高品質な未処理のブルーダイヤモンドは手が届かないような高額であることも多いため、まずはトリートメントダイヤモンドから購入して、その色合いや輝きを楽しむのも良いと思います。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『決定版 宝石』
著者:諏訪恭一/発行:世界文化社
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社 ほか
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◆https://www.gia.edu/