白く優しい色合いをもつ、アンハイドライト。
ジュエリーやカットされたルースなどで見かけることは少ない宝石かもしれません。
しかし実はパワーストーンとして人気のエンジェライトと深い関係にあるといいます。
そこで今回は、そんなアンハイドライトの特徴や原石の形、エンジェライトとの違いなどをご紹介したいと思います!
目次
アンハイドライト(硬石膏)とは?
堆積岩の主要鉱物の一つである、アンハイドライト。
和名では硬石膏といわれます。
それだけ聞くと硬い石膏のことなの?とも思ってしまいそうですが、一般的に石膏と呼ばれている鉱物とは別の種類になるようです。
詳しいことは後程お話するとして、まずは鉱物としての基本情報から順番に見ていきましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Anhydrite |
和名 | 硬石膏(こうせっこう) |
分類 | 硫酸塩鉱物 |
結晶系 | 斜方晶系 |
化学組成 | Ca[SO4] |
モース硬度 | 3.0 – 3.5 |
比重 | 2.90 -3.00 |
屈折率 | 1.57 -1.61 |
光沢 | ガラス光沢~真珠光沢 |
特徴
前述したように、アンハイドライトの和名は硬石膏ですが、和名で石膏と呼ばれるジプサムとは鉱物の種類としては異なります。
しかしいわば親戚のような関係にはあるようで、湿った環境下ではジプサムに変質するといわれており、産出量もジプサムよりアンハイドライトの方が少ないそうです。
また、三方向に劈開があるので六面の立体状に割れてしまい、モース硬度も低いことから、ジュエリーにあしらわれることは少ないとされます。
化学品バリウムの原料であるバライト(重晶石)やセレスタイト(天青石)とは、同じ系統の鉱物に当たるそうです。
色
クリア、ブルー、ホワイト、グレー、ピンク、レッド、ライトパープル、褐色など。
産地
アメリカ、イタリア、スイス、カナダ、インド、フランス、ドイツ、オーストリア、ポーランド、日本など。
名前の意味
アンハイドライトは成分に結晶水を含まない構造ということから、ギリシャ語で“無水”という意味のan-hydros(アンハイドロ)に由来して名付けられたといわれています。
「無水石膏」と呼ばれることもあるそうです。
アンハイドライト(硬石膏)の原石の形
クォーツなどのように、明瞭な結晶になることは稀ですが、劈開があることから立方体に割れて結晶のような形になることはあるそうです。
多くの場合は柱状や板状、塊状または集合体で産出されるといわれています。
海水が蒸発することで形成される鉱物で、塩鉱床で岩塩やジプサムと共に形づくられるそうです。
また、火山の噴火口やチムニーと呼ばれる海底にある熱水噴出孔などでも生成されます。
エンジェライトとの関係
エンジェライトと呼ばれる淡いブルーカラーが美しい宝石をご存知でしょうか。
パワーストーンとして販売されていたり、本で紹介されているのをよく見かける気がします。
冒頭でチラッとお話したとおり、エンジェライトとアンハイドライトは深い関係にあります。
どういう関係かというと、実はエンジェライトはアンハイドライトの一種で、ストロンチウムが含まれるアンハイドライトのことを指すのです。
色の印象から「ペルー・ブルー・ジェード」と呼ばれることもあるようですね。
ストロンチウムが含まれる鉱物で有名なのはセレスタイト、ですね!
人気小説の主人公の目の色に表現されたり、コレクター人気の高い鉱物のように思います。
画像:セレスタイト
何となく色の雰囲気が似ている気もしますね。
エンジェライトは 特定方向からの強い衝撃を受けると欠けてしまう劈開(へきかい)という性質を 一方向にもっているといわれます。
それに加えモース硬度も低いことからジュエリーにはあまり向いていないとされますが、ビーズ状に研磨されパワーストーンとして販売されているものを見かけることはありますね。
儚い印象を受ける淡いブルーカラーとエンジェライトという名前の響きの可愛らしさからか、人気がある印象です。
エンジェライトの名前の意味
鉱物の色が天使を想像させることから、ギリシャ語の “angelos” から由来して名付けられたといわれています。
優しいブルーの色合いが空から舞い降りるエンジェルのイメージにピッタリだったのかもしれませんね♪
石膏(ジプサム)との違い
画像はジプサム
先ほどもお伝えした通り、ジプサムとアンハイドライトは成分は似ていますが構造が異なることから別の鉱物種として扱われます。
二つの構造上の大きな違いは、アンハイドライトの名前の由来にもなった、結晶水の有無です。
結晶水とは、結晶中に一定量含まれる水の分子のこと。
ジプサムには構造中に結晶水が含まれますが、アンハイドライトには含まれません。
ジプサムを70℃以上に熱すると「半水石膏」となり、200℃以上に熱するとアンハイドライトとなるといわれています。
また、ジプサムを300℃以上熱すると白い粉末の「焼石膏/しょうせっこう」となり、水を加えると発熱して固まるそうです。
一方、アンハイドライトを熱して出来た粉末に水を加えても固まりません。
熱を加えることで変質したり別の種類になったり、、鉱物の不思議を感じずにはいられませんね。
工業用としての用途
アンハイドライトは、その水を混ぜても固まらない性質を利用して、漆喰の乾燥剤として使われることがあるそうです。
また、肥料として使用されるほか、建築素材としてセメントや塗料などに利用されることもあるようですよ。
最後に
ジプサムとは鉱物種としては異なるものの、深い関係にあるアンハイドライト。
湿気が多いと別の鉱物に変化したり、別の元素が加わることで色や性質に変化が起きたりと、鉱物の世界は本当に奥深いなあと知れば知るほど感じざるを得ません。
ジュエリーやルースとして市場に出回ることは少ないとされるアンハイドライトですが、もしどこかで見かけたら、淡く優しい色合いを楽しんでみてくださいね♪
カラッツ編集部 監修