ルビーは、数あるカラーストーンのなかで最高峰の価値があるといわれています。
例えば、同じ品質で同じカラット数のエメラルドとサファイアとルビーがあったとしたら、ルビーに一番高い価値がつくことが多いそうですよ。
しかも、ルビーはダイヤモンドに次ぐ硬さ。丈夫で美しいなんて、何とパーフェクトな宝石なのでしょう。
そんなルビーの特徴や意味、石言葉、産地ごとの特徴などについてまとめてみました。
目次
ルビーとは?
赤い宝石とは何ですか?
世界中の人々にそんなクイズを出したら、多くの人がルビーと回答するのではないでしょうか。
このように、ルビーは赤い宝石の代表的な存在であり、古くから世界中で愛されてきた宝石でもあります。
ルビーについてより深く知るために細かく見ていきましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Ruby(ルビー) |
和名 | 紅玉(こうぎょく) |
鉱物名 | コランダム |
分類 | 酸化鉱物 |
結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
化学組成 | Al2O3 |
モース硬度 | 9 |
比重 | 3.99 – 4.1 |
屈折率 | 1.76 – 1.77 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
ルビーはコランダムという鉱物です。
同じコランダムに属する宝石にサファイアもあります。
ルビーとサファイアは同じ鉱物の色違いということですね。
コランダムの中でレッドのものをルビー、それ以外の色を全てサファイアと呼びます。
一般的に「サファイア」と呼ばれるものはブルーサファイアを指し、その他の色はイエローサファイアやピンクサファイアなどサファイアの前に色名を付けて呼ばれます。
コランダムの和名は鋼玉。このことからも分かるように硬いのが特徴です。
冒頭で触れたように、ダイヤモンドに次ぐ硬さがあり、モース硬度は9です。
更に、特定方向からの衝撃に弱い性質である、劈開もないことから耐久性にも優れ、日常的なジュエリーとしても十分に楽しめます。
色
ルビーの色は主にレッドですが、ピンク味やパープル味のあるレッドもルビーの範囲に入ります。
ルビーとピンクサファイアやパープルサファイアの違いは色味で、各鑑別機関によって定められています。
ルビーの色として最高級のものは、ピジョンブラッドと呼ばれます。
様々な色を呈するコランダムですが、実は元々はカラーレスで、そこに、何かしらの微量元素が含まれることにより、発色すると考えられています。
ルビーのレッドは、クロムの影響が強く、クロムや他の微量元素の含有量によって色が変わります。
ルビーには、クロムの他にも鉄が入ることが多く、クロムが多いとレッドが濃くなり、鉄が多いと黒っぽくなるのだそうです。
また、クロムはコランダムの蛍光性にも影響を与えると考えられており、クロムを多く含むとブラックライトを当てた時強い蛍光を示します。
逆に鉄は蛍光性を抑制する性質をもつため、クロムが多くても鉄も多ければ蛍光が弱くなることもあるそうです。
様々な要因が重なり、色味や蛍光の強さが変わってくるのですね。
ルビーは血の色!?
ルビーの色はしばしば血の色に例えられることをご存知でしょうか。
先程お伝えしたように、最高級の色合いは、ピジョンブラッドと呼ばれます。
鳩の血という意味で、鮮やかな濃いレッドのものを指します。
一方、黒っぽい暗めの色のものは、ビーフブラッドと呼ばれることがあります。
牛の血という意味です。タイ産のルビーにはビーフブラッドが多いといわれています。
スリランカ産など、パープルやピンクが強めのルビーは、チェリーピンクと呼ばれています。
また近年、わずかにオレンジまたはイエロー味を帯びた明るいレッドのものをスカーレットレッド、青みがかった濃く明るいレッドのものをクリムゾンレッドと呼ぶこともあるそうです。
原石の形
ルビーを始めとしたコランダムの結晶は、六方晶系や三方晶系をしています。
六角柱のような形なのですが、長さはあまりなく、母岩からちょこちょこと顔を出している感じです。
閃長岩、石灰岩、ペグマタイトの中や火成岩、変成岩の造岩鉱物として生成されるといわれ、母岩から外れたルビーの結晶が川に落ち、流されて摩耗し、川底に溜まっていることもあります。
ルビーの産地では川底の砂利から原石を探し出している様子を見ることもできますよ。
ルビーに施される処理について
ルビーは、一般的に加熱処理が施されるといわれています。
加熱処理は昔からルビーの色を美しくするために行われてきたことで、加熱処理の有無によって価値が大きく変わることはありません。
非加熱でも色が鮮やかで美しいルビーには、その希少価値の高さから高値がつくものも多いですが、ルビーの場合、加熱か非加熱かより、色の美しさの方が重要視されます。
つまり、色が鮮やかで透明度が高い加熱ルビーは色や透明度が劣る非加熱ルビーより価値高く扱われる場合も多いという訳ですね!
一方、ルビーの価値を大きく下げてしまう処理もあります。フラクチャー充填処理やガラス含浸処理されたものです。
人工的な処理自体が悪いと言っているのではありません。処理が行われていることを納得の上、安い値段で購入することもルビーの楽しみ方の一つだと思います。
しかし、人工処理が行われているのに、未処理のものと偽って販売され、知らずに買ってしまったらとても悲しく残念な思いをしてしまいますよね。
そうならないためにも、人工処理について知っておくことは大切だと思います。
ルビーの産地とそれぞれの特徴
ルビーの産地はどこでしょう。
ルビーは産地によって特徴が変わり、価値も異なるといいます。
現在ルビーは、アジアやアフリカを中心に産出されていますが、一説によると、最も古くに形成されたと考えられているものはグリーンランドで見つかったそうです。
1960年代に発見され、2015年頃から採掘が活発化し、今後に期待されている産地の一つなのだとか。
もしかして今後もまた新たなルビー鉱脈が世界のどこかで見つかるかもしれませんね!
ベトナム、インド、スリランカ、タンザニア、マダガスカルなど、ルビーの産地として知られている国は様々ありますが、中でも有名なのはミャンマー、タイ、モザンビークでしょう。
では、それらの産地で採れるルビーについて掘り下げてお話しましょう。
ミャンマーモゴック産
最高品質のルビーが多く産出されることで有名なミャンマーモゴック地方。
世界中のルビーコレクターの憧れと言っても過言ではないかもしれません。
モゴック産ルビーは、不純物の少ない白い大理石に抱かれて産出されるといいます。
母岩に鉄が少ないため、鉄の含有量の少なく、黒味のない鮮やかなレッドを呈するものが多いのだそうです。
透明度が高くて照りも良く、まるで炎のように蛍光するのもモゴック産ルビーの特徴です。
ミャンマーモンスー産
1993年くらいから有名になったのが、モンスー産ルビーです。
最初の頃は褐色が強いルビーが多く、あまり重要視されていなかったようですが、モンスー産ルビーに合った加熱処理方法が見つかり、美しいルビーを作ることができるようになったことから注目度が上がりました。
加熱処理によって、モゴック産ルビーに劣らない品質になることもあるそう。
熱を加えることで青みが消えて赤が際立つようになるそうです。
タイ産
タイ産のルビーは、ミャンマー産よりも黒っぽい、暗めの色合いのものが多いといわれています。
ビーフブラッド(牛の血の色)と呼ばれるものが多いことは、先ほど触れた通りです。
母岩が玄武岩などで、鉄の含有量が多いことから、黒っぽさが増すと考えられています。
タイ産ルビーの特徴の一つに、モゴック産のようなシルクインクルージョンがあまり見られないということもあります。
産地によってインクルージョンが違うとは、個人的にはとても興味深く感じます。
タイ産ルビーには、平面状や液体状など、他にもいくつか特徴的なインクルージョンがあるそうですよ。
モザンビーク産
アフリカの東海岸にあるモザンビークでも、良質なルビーが採れることをご存知でしょうか。
モゴック産によく似た、高い品質のものもあるのだそう。
モザンビークで宝石品質の美しいルビーが発見され始めたのは2008年頃から。
その後世界最大級のルビー鉱山が発見され、一気に注目を集めました。
モザンビーク産ルビーの母岩は角閃石です。
そのためインクルージョンとして角閃石が内包されていることもあるそうですよ。
ルビーの意味
ルビーという宝石名にはどんな意味があるのでしょうか。
宝石名って由来が様々あって、調べるのが結構楽しいですよね~。
名前の意味や石言葉、そして誕生石や記念日の贈り物としてのルビーについても調べてみました。
名前の意味
ルビーという名前には、どのような意味があるのでしょうか。
ルビーは、ラテン語で赤を意味する「ルベウス(rubeus)」や「ルベール(ruber)が語源といわれています。
ラテン語って、古代ローマの公用語だったそうですよ。今ではバチカン市国だけで使われているという話を聞いた事があります。
赤い宝石全てがルビーとされていた時代もあるのだそうです。
古代インドでは、ルビーはラトナラージ(ratnaraj)と呼ばれていたそうなのですが、これはサンスクリット語で「宝石の王」を意味しています。
石言葉とその意味
花に花言葉があるように、宝石にも石言葉があります。
「情熱」「仁愛」「威厳」この3つが、ルビーの石言葉なのだそうです。
情熱とは、激しく燃え上がる感情のこと。炎のように真っ赤なルビーにピッタリですよね。
仁愛には、恵み慈しむこと、情け深い心で思いやること、などの意味があります。
ルビーの赤い輝きが深い愛情を表しているかのように感じられたのかもしれませんね。
威厳とは、近寄りがたいほど厳かで堂々としていることです。
誕生石
ルビーは7月の誕生石です。
6月生まれの私としては、7月生まれが本当に羨ましいです・・・あと数日生まれるのが遅かったら、誕生石がルビーになったのに!とつい思ってしまいます。
誕生石の由来について調べてみたところ、旧約聖書の「出エジプト記」にまで遡るのだそう。※諸説あり
誕生石は国によっても異なり、日本の誕生石は、1958年に全国宝石卸商協同組合によって発表されたものが元になっているようですよ。
ルビー婚
結婚15周年や40周年をルビー婚と呼ぶのだそうです。
国によっても微妙に違い、結婚40周年だけをルビー婚という場合もあるそうです。
25周年が銀婚式、50周年が金婚式、というのはよく聞くので知っていたのですが、それ以外にもあったんですね。
調べてみると、結婚1年目は紙婚式なんですって。
紙から革になったり木になったり、年月を重ねるごとに、強くて貴重なものであらわされるようですね。
結婚40周年にルビーを贈るのって素敵だなぁと思います。
ルビーの種類
ルビーの中には光学効果をもつものや見た目が変わっているものもあります。
6条の光を放つスタールビーや、歯車模様をあらわすトラピッチェルビーなどで、それらについても簡単にご紹介しましょう。
スタールビー
アステリズムと呼ばれるスター効果の見られるルビーです。
スターを出すためには、表面を丸くカボションカットにする必要があります。
光を当てた時、石の中央から放射状に6条の光が浮き上がります。光を揺らすとスターも揺れて、まるで生きているかのようですよ。
スター効果は、シルクインクルージョンによるものなのだそうです。
多くは6条の光ですが、4条や12条の光が出現することもありますよ。
トラピッチェルビー
トラピッチェとは、サトウキビを絞り出す時に使う器材の大きな歯車のことを指します。
この不思議な模様はカーボンラインとも呼ばれ、ルビーだけでなくエメラルドやサファイア、トルマリンや他の宝石にも出現することがあるとか。
産出量が少なく珍しい宝石なのですよ。
トラピッチェ模様のある宝石は、キズやカケが多い傾向にあります。
優しく丁寧に取り扱いましょう。
ルビーの歴史・伝説・言い伝え
ルビーと人類との歴史はとても古いといわれています。
古代インドでもルビーはとても重要だったと伝わっています。
インドには現在もバラモンを最高位としたカーストという身分制度が残っており社会問題化しています。
かつては、ルビーも美しさによってカースト毎に分けられ、最高品質の色合いのものはバラモンと呼ばれていたそうです。
バラモンとは聖職者のことで、王族であるクシャトリアよりも上とされています。
ミャンマーでは、戦士がルビーをもつと無敵になると信じられていたそうです。
ルビーは、古代から人々にパワーを与える宝石なのですね。
ルビーの偽物
画像:合成ルビー
ルビーにも、残念ながら偽物があります。
ガラス製、合成ルビー、合成スピネルなど色々ある印象です。
レッドスピネルがルビーと偽って売られていることも。
事実を明記して販売されている場合は問題ありませんが、ルビーと偽って販売されることは問題です。
ルビーには偽物があることを頭に置いておき、高額のものを購入する際は、鑑別書が付属しているものかオプションで取ってもらえるお店で買うことをオススメします。
ルビーの価値基準と市場価格
ルビーは一体どのくらいの値段で流通しているのでしょうか。
手軽に買える価格帯のルビーはあるのでしょうか。
ルビーの価値基準と市場価格について見てみましょう。
価値基準
前述したとおり、ルビーはまず色が美しいことが最も重要です。
それから、カラットの大きいもの、透明度が高くカットの美しいものにも評価がつきます。
最高級品質のピジョンブラッドには、非常に高い価値が認められています。
ルビーは 産地の特定がある程度可能で、採掘される国や地域によって価値が変わります。
最も価値が高いといわれているのがミャンマーモゴック産、その次が同じくミャンマーのモンスー産。ミャンマー勢、強いですね!
それからタイ産やモザンビーク産と続くそうです。
これはあくまでも、同じクォリティだったら、のお話で、モゴック産でもクォリティが低いものもありますし、他の産地のものが全てミャンマー産に劣っているという訳ではありません。
様々な産地のルビーを見比べてみたら違いが分かって面白いかもしれませんねー。
市場価格
次にルビーの市場価格についてもお話ししましょう。
ルビーと言っても様々なクォリティがあり、値段も大きな幅があります。
低品質のルビーでしたら、数千円で手に入ることもありますよ。
1ct以上の大きさで高品質のルビーでしたら、価格はグンと上がります。
例えば、1ct以上でトップクォリティのタイ産ルビーでしたら、数十万円から数百万円の価値がつくものもあります。
同じサイズと品質で、ミャンマー産のルビーだと数百万円以上になるものもあるとか。
さらに、ミャンマーモゴック産で2ct以上のピジョンブラッドとなると、その価格は1億円を超えるものもあるのだそうですよ。
私はスリランカの宝石商から、ルビーは1ct以上で品質の良いものは少なくなってきているので、ある内に、できるだけ大きいルビーを買っておいた方が良いよ、といわれたことがありますよ。
ルビーのお手入れ方法
ルビーは丈夫で硬い宝石です。
しかし、丈夫とは言っても、あまり手荒なことはしないでください。
身につける時は一番最後に装着し、帰宅したら一番初めに外すなど、大事に取り扱いましょう。
超音波洗浄機やスチームクリーナーは、未処理や加熱処理のルビーに対しては問題ないとされていますが、含浸処理などが施されているものは見た目が変化してしまう恐れがありますので、使用しない方が安全です。
また、キズや欠けがあるものも避けた方が良いでしょう。
最も安全なお手入れ方法は、柔らかい布で拭くほか、温めの石鹸水の中で柔らかいブラシなどを使い優しく手洗いすることです。
手洗いしたあとは、柔らかい布で拭き、他の宝石とぶつからないよう配慮して、直射日光が当たらない場所で保管しましょう。
このお手入れ方法は、ルビーに限ったことではなく、他の多くの宝石も同様です。
最後に
ルビーについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
その歴史の長さに畏敬の念を抱いてしまいます。
ルビーは7月の誕生石であり、結婚40周年がルビー婚であることも知りましたね。
色やインクルージョン、母岩など、産地によってルビーの特徴が違うことや、見た目が異なる種類があることも分かり、更に深くルビーについて学びたくなりました。
いつかモゴック産のピジョンブラッドを手に入れられる日が来ると良いなぁ、と思います。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか