近年、価格が上がり続けている金。
投資対象としても人気ですが、価格が上昇し続けている現状に「そろそろ下がるのでは?」「今買って損をしない?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
「金は安全資産」とよく言いますが、本当に安全なのか、暴落したりしないのかと心配になりますよね。
筆者自身、数年前より僅かながら金投資を続けており、気になるアレコレについて、改めて調べてみました。
そこで分かった、金の価格が下がる可能性や、実際にどんな場面で金の価値が変動するのかを、過去の事例や経済の動きとともに詳しく解説していきます。
目次
金の価値はなくならないって本当?
金の価値はなくならないといわれていますが、何故そういわれるのか、まずはその説明からはじめたいと思います。
金は「美しい」「希少性が高い」「化学的に安定しているため劣化しにくい」「加工がしやすい」などの特徴を持っています。
美しくてほとんど劣化しない、さらに何度でも加工ができる天然の金属は、様々な分野においてとても魅力的です。
コインやジュエリー素材として使われるほか、精密機械の部品材料として使われることなどもあり、多方面から引っ張りだこなんですよ。
誰が見ても「価値がある」と納得できる性質を備えているため、経済が不安定なときほど、多くの人が金を選びます。
例えば、株を持っていてもその会社がなくなってしまったら、株はただの紙切れになってしまいます。
しかし金は、金そのものに価値があるので、それらに比べ確かな資産を手元に置くことが出来るというわけですね。
金の価格が下がる主な要因は5つ
そんな金でも価格変動があると聞くと、やはり不安になりますよね。
どんな時に下がるのでしょうか。
備えることはできるのでしょうか。
実際に金の価格が下がりやすいタイミングや要因を見ていきましょう。
ドルの値上がり
金は世界的に「米ドル建て」で取引されることが一般的です。
過去を振り返って見てみると、米ドルの価値が上がると、金の価格は相対的に下がる傾向にあります。
たとえば、アメリカの景気が良くなると、米ドルやアメリカ企業の株価が上がり、米ドルの需要が高まります。
そして、他国の通貨よりドルが強い、ドル高の状況が出来上がると、他国の通貨で金を買う場合割高になってしまうことから、米ドルを持たない他国の投資家は、金を買い控える動きが広まります。
その結果、金の価格が引き下がることがあるということです。
この法則は「金とドルは逆相関の関係」として広く知られています。
もちろん、全てがこの法則で値動きするわけではありませんが、一つの知識として知っておくと購入時の参考になるでしょう。
政策金利の上昇
金は安定した資産ではありますが、持っているだけでは利息や配当といった“収益”を生み出しません。
例えば国の方針で政策金利が上昇し、預金や債券の利回りが良くなると「せっかく投資するなら、金よりも利息のつく資産を持ちたい」と考える投資家が増えます。
金の需要が落ちたり、金を売って通貨や債券を購入する人が増えると、結果、金の価格が下がることがあります。
ということで、政策金利が大幅に上昇すれば、金価格は下落する可能性が高くなるといえるのです。
原油価格の低下
絶対的な指標とはいえませんが、昔から「原油」と「金」の価値は相関性があることで知られ、「石油が上がれば金も上がる」と言われていたそうです。
原油は世界経済にとって重要なエネルギー資源で、金と同じようにドル建てで取引されています。
どちらも「ドル」の影響を受けやすいことから、直接的な関係がなくてもこの二つは同じような値動きをすると知られてきました。
しかし、10年ほど前からその相関性が崩れてきているそうです。
アメリカのシェールガス・オイル開発、石油需要の減少、イランの経済制裁解除など様々な理由が重なり、原油価格が急落しました。しかし、この時の金は逆に徐々に上昇します。
2020年から現在(2025年)までのチャートを見ても、原油価格は2023年以降は比較的横ばいが続いていますが金価格はさらに上昇を続けています。
産出量の増加
金の価格は、「需要と供給のバランス」に大きく左右されます。そのため、金の産出量が増えると、供給過多となり、価格が下落する可能性があります。
金は希少性が高いからこそ価値が保たれてきた資産です。技術の進歩や新たな鉱山の発見などにより、金の採掘量が一時的に増えることがあるかもしれません。
ただし、新しく金鉱脈を見つけたとしてもそれを採掘できるかは技術面、コスト面の問題から、そこまで大きな影響はないと言われています。
いくら金が高額だからといって、それ以上の採掘コストがかかってしまっては意味がないですもんね。
金の需要が減少
金の価格は「需要の高さ」によっても大きく左右されます。つまり、金を「買いたい」と思う人や国が減れば、自然と価格は下落していきます。
例えば、金の産出量が大幅に増えることで金の価格が大幅に下がると、資産として金を購入する人が少なくなる可能性があります。
他にも、金の代わりになる新たな金属などが発見されたら需要が減ってしまうかもしれません。
しかし今現在、金は投資商品としてだけでなく、宝飾品や精密機器の素材など幅広い分野で需要があることを考えると、需要の減少は個人的にはあまり現実的じゃないと考えます。
金の価値が大きく下落した過去の事例
ここからは金の価格が下落した過去の事例を見ていきましょう。
過去には、世界的に大きなニュースになるような出来事が起こると、短期間で金の価格が下落することがありました。
1980年|アメリカとソ連の緊張緩和
1979年、ソ連(現ロシア)のアフガニスタン侵攻により、アメリカとソ連の関係がさらに悪化し、冷戦が一段と深刻化しました。
また、同じ年、第二次石油危機やアメリカ大使館の占拠事件、翌年の始めにはイラン・イラク戦争も始まり、世界的な政情不安に陥ります。
地政学的リスクが高まったことで、安全資産としての金への需要が急増。その結果、1980年1月には金価格が当時の史上最高値6,495円/1gを記録します。
しかし、その後はソ連側が緊張緩和の姿勢を見せ始め、東西関係が徐々に改善されていきます。
両国の関係が落ち着いていくことで、金価格は一気に下落に転じていきました。同年5月には3,645円/1gと、約半分ほどの価格になっています。
金価格が一時的に高騰した背景には、不安心理が強く影響していたことがよくわかりますね。
1980年~90年代|バブルからバブル崩壊
1980年に高値を記録した金価格ですが、その後はおよそ20年にわたり、下落傾向が続きます。
1980年代の日本はバブルで株式市場が絶好調だった時期です。日経平均株価は一時4万円近くまで上昇し、投資マネーは株へと流れていました。
金と株価は基本的に逆の動きをするため、金の価格はさらに押し下げられることになったのです。
1991年のバブル崩壊をきっかけに日本経済は長期に渡る低迷期に突入しますが、それでも金の下落は止まらず、1998年には、金価格が1グラムあたり865円という史上最低価格を記録しました。
調べてみると、この長期的な金価格の下落には1983年にOPECが実施した原油価格の大幅な値下げも影響しているそうです。
金と原油は価格の動きが連動しやすいため、原油安が金安を引き起こしたということでしょうかね。
2008年|リーマンショック
2008年に発生したリーマンショックでは、世界中の金融市場が大混乱に陥りました。
投資家たちはまず、現金を確保するために資産を売却。金も例外ではなく、一時的に価格が下落しました。
しかし、金融危機を受けてアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を引き下げ、大規模な金融緩和を実施すると、ドル安とインフレ懸念が浮上。
これにより、安全資産である金への需要が再び高まり、金価格は反発・上昇していきました。
金が「危機時の安全資産」として機能するとともに、極端な混乱時には現金確保のために一時的に売られる、流動資産に近い存在でもあることがわかりますね。
2014年|アメリカの経済回復
2001年のアメリカ同時多発テロ以降、金価格は徐々に上昇を続け、2012年には史上最高水準まで到達しました。
その背景には、世界的な経済不安やリーマンショック後の金融緩和、低金利政策がありました。
しかし2013年以降、アメリカ経済は徐々に回復を見せ始めます。そして2014年、FRBは量的金融緩和の縮小を本格的に開始。
この動きにより、金利上昇への期待が高まり、インフレ懸念も後退。投資家のリスク回避姿勢が和らいだことで、金価格は大きく下落しました。
このように経済が安定・好調に向かうときは、相対的に安全資産としての金の魅力が薄れ、価格が下がることがわかります。
金の価値が全くなくなるリスクはある?
比較的安定していると言われる金の価格。では、金の価値がゼロになってしまうことはあるのでしょうか。
個人的な見解ですが、金は物質資産で有限であること、宝飾品・工業材料・投資など様々な需要が高いこと、歴史的にも信頼度の高い資産であることから、ある程度価格が上下することはあっても価値が全くなくなることはないのでは?と思っています。
ただ、もし金を人工的に作り出すことができれば、金の価格が見直されることはありえるかもしれません。
金は熱を加えることで繋ぎ合わせたり、切り取ったりすることができます。つまり、人工ゴールドと天然ゴールドをミックスすることも出来るということです。
そうなると人工であっても天然であっても区別がつかなくなってしまい、価値が下がってしまうのではないでしょうか。
金を買うにはどうすればいい?4つの製品と特徴
金の購入方法は大きく分けて4つ。それぞれ特徴をご紹介します。
コインやジュエリーなどの金製品
金を購入するのには金製品を購入するのも一つ。
金製品はコイン、ジュエリー、仏具、置き物などがあります。身に着けたり飾ったりなど実際に使うことが出来るのが魅力です。
コインはコレクションアイテムとしても人気があります。
宝飾品であればジュエリーショップ、コインであれば金販売の専門店やアンティークショップなど、それぞれの専門店で購入することができます。
製品として加工しているので購入金額に工賃分の金額が掛かっていること、また加工しやすいようにK18(金の含有量75%)など金の純度が違う場合も多いです。
購入の際は必ず詳細を確認し、納得した上で購入するようにしましょう。
完全に投資対象として購入するよりも「ジュエリーとして身につけたり、コレクションして楽しみながら金を持ちたい」という方にあっていると思います。
私自身、昔から金のジュエリーを少しずつ集めていて、お出かけの時に着けて楽しんでいますよ。計算してみると、今では購入した金額よりも高い価格で売れるようです。
インゴット
インゴットは金属を精製して一塊にしたもののこと。
貴金属メーカーや貴金属販売店などが販売していて、5g程度の小さいタイプから1kgなどの大きなサイズまで様々あり、予算に合わせて購入することができます。
先ほど紹介した金製品は何かしらの用途がありますが、インゴットは資産として家や金庫に保管しておくというイメージでしょうか。
直営店が取り扱っているものは品質が保証されており、換金もスムーズにできるでしょう。
資産を手元に置いておきたいという方に良いかもしれません。
純金積み立て
純金積み立ては毎月金を購入する投資方法です。
インゴットと同じく貴金属メーカーや貴金属販売店などで購入できます。
いつ購入するかタイミングを見計らうのが面倒、少しずつ投資を増やしたいという人にオススメですよ。
純金積立には定額購入と定量購入の2種類があります。
定額購入は毎月の積立金額を決めて、その金額分の金を購入する方法です。
価格が安い日に多く、高い日には少なく購入することになるため、価格変動のリスクを抑えることが出来るとされています。
また、毎月にかかる費用が変わらないので、積立額を増やしたくないという人に良いでしょう。
定量積立は毎月購入する金の購入量を決めておく方法です。
計画的に金を購入することができるため、積み立ての計画がしやすいのが特徴です。
ただ、この方法だと割高な時期に購入してしまうとそれだけ費用が掛かってしまうこともあります。
投資信託
投資信託は実際に金を購入するわけではなく、金価格の値動きと連動するファンドに投資する方法です。
紛失や保管場所などを気にすることなく気軽に購入できるとあって人気があるそうですよ。
証券会社や銀行で注文することができます。
ただし、投資信託は購入時だけでなく資産を運用している間も手数料がかかるので注意が必要です。
私も投資信託で金の積み立てをしていますが、ネットでいつでも購入できるのでとても便利でお手軽です。
ただ、実際に金が手に入るわけではないので、面白みに欠けるかもしれません。
最後に 金の価値は「なくなりにくいが、下がることはある」
いかがでしたでしょうか。
今まで、金は様々なタイミングで価格が下がることがありましたが、価値がなくなることなく、長い目で見ればむしろ上がり続けているように見えます。
「有事の金」「安全資産」と言われるように資産として持つには非常に頼もしい存在ですね。
とはいえ、何らの原因によって価格が暴落することがないともいえません。
金に投資する際は無理なく続けるのが大切と聞きますから、皆さんも自分に合った方法を探してみてくださいね。
カラッツ編集部 監修






















