サードオニキスは赤褐色などの地に白い縞模様をもつ美しい宝石です。
丸いビーズ状に研磨され、ブレスレットなどに加工されることも多い石ですが、昔から芸術作品やカメオなどに多く使用され愛されてきたという歴史があります。
またサードオニキスとよく似たサードという宝石もありますよね?この2つの違いは何なのでしょう?
今回はサードオニキスについて探ってまいりましょう♪
サードオニキス(サードニクス)とは?
サードオニキスは、多結晶質のクォーツ(石英)の一種、カルセドニーの変種の一つです。
薄褐色、濃褐色~赤褐色の地色に白い縞模様の入った宝石で、古くから彫刻品やカメオなどに仕立てられ多くの人々に愛されてきました。
サードオニキスは、「サードニクス」「サードオニックス」などと呼ばれることもありますが、ここでは「サードオニキス」で表記統一しますね。
では早速鉱物としての基本情報から見ていきましょう!
鉱物としての基本情報
英名 | sardonyx |
和名 | 紅縞瑪瑙 |
分類 | 珪酸鉱物 |
結晶系 | 六方系晶 |
化学組成 | sio2 |
モース硬度 | 7 |
比重 | 2.57~2.64 |
屈折率 | 1.53~1.54 |
色
薄褐色、濃褐色、赤褐色の地色に白い縞模様
産地
ブラジル、ウルグアイ、インド、インドネシア、アメリカ、中国、ドイツ、日本 など
サードとサードオニキスの違い

冒頭でもお話したように、サードオニキスによく似たサードという宝石がありますよね。
この2つの違いは何なのでしょう。
大きく簡単にいうと、白い縞模様があるかどうかだけです。
つまり、薄褐色、濃褐色、赤褐色の地色で半透明のカルセドニーのことをサード、サードに白い縞模様が入ったものがサードオニキスということです。
分かりやすいですね。
ちなみに、カルセドニーとは多結晶質のクォーツ(石英)の一種で、細かなクォーツ(石英)の結晶が網目状に集まり緻密に固まった、潜晶質と呼ばれる結晶構造をもつものです。
カルセドニーには数多くの変種が存在し、サードとサードオニキスもその一種という訳です。
▶とっても奥の深いカルセドニーの世界はこちらの記事を参考に☆
名前の意味
ギリシャ語で茶色を意味する「sard」、縞、かぎ爪を意味する「onux」が名前の由来だといわれています。
もともとは爪の根元にある半月形の白い模様のことをonuxと呼んでいたそうで、それが転じて、白い縞模様のあるカルセドニーをonuxと呼ぶようになったといわれています。
また、サードは古代ギリシアのリディア王国の首都サルディスに由来して名付けられたという説もあるようです。
サードの色合いに縞模様のオニキスが合わさって「サードオニキス」です。そのままですね。
歴史的に見るサードオニキス

新約聖書の「都の城壁の土台を飾る12種類の宝石のひとつ」として登場するサードオニキスには、大変古い歴史があります。
サードオニキスの縞模様の美しさに魅せられたヨーロッパの人々。特に古代ローマで絶大な人気を博していたと言い伝えられています。
熱せられたワックスはサードオニキスには付着しないので、ローマの紋章や印章(はんこ)、シグネットリング(印章や紋章を彫刻した指輪)にするのに重宝したといいます。
サードオニキスの「層状で色相が違う」という特徴を利用して、浮き彫りを施したカメオ、沈み彫りが施されたインタリオなどの装飾品が作られ、それは何千年もの間重宝され続けていたといいます。
さまざまな色が織りなす縞模様が美しいサードオニキスは、カメオやインタリオの彫刻の素材に適していると考えられていたのですね。
ちなみに、サードも古くからカメオやインタリオなどに使われていたといいます。
この2つの主張しすぎない、優しく愛らしい色合いが人々の心を癒していたのでしょうか。
サードオニキスは8月の誕生石
8月の誕生石といえば、ペリドットが有名かと思いますが、サードオニキスも8月の誕生石の一つに選ばれています。
サードオニキスの石言葉は、「夫婦の幸福」「和合」「結婚運」などといわれています。
ちなみにペリドットの石言葉も「夫婦愛」「夫婦の幸福」「豊穣」などといわれていますので似ていますね。
8月は夫婦の愛や幸福を確かめ合う季節と考えられていたのでしょうか。
また最近アメリカでは、スピネルも8月の誕生石に入るようになったと聞きます。
アイアゲート(天眼石)とは?

Photo by : Mazur Travel / Shutterstock.com
オニキスの中でも、目玉のように見える模様がある石を「アイアゲート」と呼びます。
和名は「天眼石」といい、「天から降ってきた神の眼」という意味が込められているそうです。
昔のヨーロッパでは、模様を彫り出して「魔除けの目」として身に着けられていたといいます。
チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世もこのアイアゲートを愛用していたそうで、ノーベル平和賞受賞時にも身に着けていたといいます。
最後に

古代ローマやギリシャ時代に人気を博したといわれるサードオニキスのカメオ。
特にギリシャ神話の神々や英雄の彫刻が施されたカメオが好まれていたと言い伝えられています。
その人気ぶりに、世界帝国を短期間で築き上げた偉人アレクサンダー大王は、「信頼のおける彫刻家、ピュルゴテスのほかに自分の肖像を彫ってはならない」と命令を下したとの伝説まであるのだとか。
また日本には、出雲大社にまつられる御神体が巨大なサードオニキスでできているという云われがあります。
ただ、実際、御神体は封印されているそうで、真相は謎に包まれている・・・そうですが。
神に通じるような神秘的なものを感じるサードオニキス。ずっと長い間、人々の暮らしに寄り添ってきたということがうかがえますね。
カラッツ編集部 監修