真っ黒でツヤツヤ。まるでオセロの黒い部分のような宝石がオニキス。
あなたは、オニキスをそう思っていませんか?
そう、実は私も、このブログを書くまでは、そう思っていました!
オニキス=真っ黒
実は、皆さん、それはちょっと違うのです。
真実は
縞模様がなければオニキスじゃない!
のです。
実はちょっと複雑な事情をもつオニキスの世界について、さっそく詳しくご紹介しましょう。
そもそもオニキスとは
一見プラスチック?と思えなくもない真っ黒なオニキス。
もちろんプラスチックではありません。
オニキスの鉱物名は「石英」。
宝石としては、「カルセドニー」の仲間です。日本名は「縞めのう」といいます。
縞めのうには、白と赤の縞模様を持つもの(カーネリアンオニキス)や白と茶色の縞模様(サードオニクス)などがあります。
飯田孝一氏の著書「天然石のエンサイクロペディア」(玄辰社)によると、
「オニクス(オニキス)とは«白い縞»を指して言った名前。元来はギリシア人が宝石の縞目のことを「オナックスonux」と呼んだことに端を発する。」
とあり、続いて、
「オニクス(オニキス)の本質はアゲート(縞めのう)で、狭義では明瞭な白色の縞目を持つアゲートの亜種をいう。」
と書かれています。
例えばこんなのや
こんな石です。
どちらも白い縞がありますよね。
要するに、そもそもオニキスとは
白い縞があるカルセドニーのことをいうのです!
そして中でも白と黒の縞模様のある石
本来ならこちらが「オニキス」
なのです。
じゃあ黒いオニキスは何だったの?
縞がなければオニキスじゃない!のであれば
あの真っ黒なオニキスは何なの?
当然そうなりますよね。
今まで、当たり前に「オニキス」だと思っていた、あの黒い宝石は、
「ブラックカルセドニー」
という名前が正しい名称です。縞がない黒いめのうのことですね。
なるほど、そうだったのか!
ではこれからは縞模様のあるものだけをオニキスと認識しよう!
と言いたいところでしたが、事態はもう少し複雑でした。
本来のオニキス=白い縞模様のある黒いカルセドニー
には違いないのですが、真っ黒なカルセドニー=オニキスというイメージが定着してしまっているのが現実です。
そこで、SMITHSONIAN・宝石と鉱物の大図鑑にも、
「オニキス」という名称は正確には黒と白の縞模様の石だけを指すが、非公式にはすべての種類に使われている。
と記載されていたり、宝石鑑別機関の教科書にも、
「黒色で縞目を示さない素材も宝飾取引においてはオニックス(オニキス)と称される。」
と書かれています。
つまり、例え間違っていたとしても、市場での名前が定着してしまっているので、業界としても
「縞がなくてもオニキスと呼ぶことを認めよう」
という認識になっているようです。
オニキスとブラックカルセドニーの特徴
オニキスって本当に奥の深い、複雑な事情のある宝石だったんですね。
では、オニキスの真実が分かったところで、本来のオニキスとブラックカルセドニーの基本情報についてまとめてみましたのでお伝えしますね。
産地
オニキス
ブラジル、ドイツ、インド、中国、日本 など
ブラックカルセドニー
カルセドニーは世界中で産出されますが、ブラックカルセドニーの産地としては、アメリカ、ペルー、モロッコなどが有名です。
名前の意味
オニキス
前述していますが改めて。
オニキスは「オニクス」「オニックス」とも呼ばれます。ギリシャ語の縞「オナックス onux」が名前の由来です。
ブラックカルセドニー
カルセドニーの名前の由来は、良質な原石を産出したギリシャのカルセドン(Chalcedon)から来ています。
色
特徴として知っておきたいのが、一般的に市場に出回っているオニキスやブラックカルセドニーのほとんどは着色されているということ。
オニキスと呼ばれるブラックカルセドニーのほとんどは処理された灰色カルセドニーです。
灰色のカルセドニーを砂糖溶液中で煮沸し、その後濃硫酸処理をすることで、微小な炭素の粒がカルセドニー表面の空孔に沈着して、あのような黒くてツヤツヤの「オニキス」が出来上がります。
オニキスの価値基準と市場価格
価値基準と市場価格
色むらがなく色が均一に入っているもの、縞模様のあるものは縞がバランス良く入っているものが価値が上がります。
他にはカットの美しさや大きさなども考慮の上価格が決まります。
オニキスは、全般的に手の届きやすい価格のものが多い印象です。
ルースであれば数千円~手に入れることができると思います。
どこで買える?
縞模様のない真っ黒なブラックカルセドニーは、ジュエリーでもルースでも多くのお店で取り扱いがあり、よく見かける印象です。
ブルガリやヴァン クリーフ&アーペルなど有名ブランドでの取り扱いもありますね。
しかし本来のオニキス、つまり縞模様のあるものは逆にあまり見かけない気がします。
オニキスのお手入れ方法
カルセドニーの一種であるオニキスは比較的取り扱いやすい宝石ではないかと思います。
日常的なジュエリーとして楽しめる硬度もあります。
しかし、強い衝撃を与えれば傷ついたり欠けたりする恐れはありますので、特にリングなどで身につける場合は注意が必要です。
使い終わったら柔らかい布などで拭いてからしまうと美しさが長持ちしやすいです。
本来であれば多少のアルコールは問題ないとされますが、前述したように、オニキスは着色処理を施されているものが殆どです。
着色処理がされている場合、色落ちする恐れがありますので、念のためアルコール消毒液などを使用する場合は外した方が良いでしょう。
最後に
知っているようで知らなかったオニキスの真実。
オニキスの石言葉は、「手中にある成功」。艷やかなブラックカラーは見るからにスタイリッシュで、クールなイメージがありますよね。
鉱物学者のジョージ・フレデリック・クンツ博士は、
「首につけたオニキスは、愛の熱を冷ますといわれている」
と語っていたとか。
恋人にプレゼントするときは、ネックレス以外がオススメのようですね?
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『天然石のエンサイクロペディア』
著者:飯田孝一/発行:亥辰舎 ほか