とにかく照りが良くてキラッキラ。
私は、マダガスカル産のサファイアにそんな印象をもっています。
マダガスカルはご存知の通りアフリカの島国。
ワオキツネザルやバオバブの木が有名ですが、実は宝石が採れる国としても近年とても注目されているのです。
世界のサファイア産地の中でも、マダガスカル産の人気が急上昇中なのだそうですよ。
その理由は、マダガスカル産サファイアは質も量も素晴らしく、世界有数の産出国として成長しているから!
今回は、世界から注目されているマダガスカル産サファイアについてお話しましょう。
目次
サファイアの主な産地
サファイアの産地といえば、まず思い浮かぶのがインドのカシミールではないでしょうか。
希少価値のあるコーンフラワーブルーのカシミールサファイアはとても有名ですよね。
それからスリランカやミャンマーも良質なサファイアの産地としてよく知られています。
他にはオーストラリア、ナイジェリア、タンザニア、タイ、カンボジア、アメリカ、中国などでも産出されています。
そして近年大注目のサファイア産地がマダガスカルです。
マダガスカル産サファイアの発見と歴史
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マダガスカルでサファイアが発見されたのは1920年頃といわれています。
しかし海外への輸出ルートの確保が難しかったことなど諸々の事情により、すぐに広く知れ渡らなかったのだとか。。
マダガスカル産サファイアがクローズアップされたのはつい最近、1990年に入ってからだそうです。
まず初めに注目を浴びたのは、東南部に位置するアンドラノンダンボでした。
この地で良質のサファイアが大量に発見されたことを皮切りに数々の地で宝石採掘が始まりました。
そして1998年、マダガスカル南部のイラカカ村で世界最大級のサファイア鉱床が見つかり、これをきっかけにマダガスカルの宝石ブームは更に加速、世界中にその名を知らしめることになったのです。
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イラカカ村を流れる川で宝石を採掘している人々の姿は驚くべきものです。
マダガスカルに行って原石を探してみたいな、という夢を抱かせてくれる光景ですよね。
そんなマダガスカルは、今やサファイアの主産地の一つと言われるまでに成長しました。
では一体どのようなサファイアが採れるのでしょうか。
マダガスカル産サファイアの特徴
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マダガスカルは南北に長い島なのですが、南部と北部では起源の違うサファイアが産出されるそうです。
マダガスカルの南部では、スリランカと同じ変成岩起源のサファイアが採れます。
南部にあるイラカカ川流域では、100km四方という広範囲に、かなりの量のサファイア原石が眠っており、多い時で6万人にも及ぶ人々が採掘しているのだそうですよ。
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マダガスカルの北部では、タイ、オーストラリアなどと同じ、玄武岩起源のサファイアが産出されているそうです。
私には変成岩起源と玄武岩起源のサファイアの見分けなどつきませんが、専門家が見ると違うのでしょうね。
サファイアは産地が特定できる宝石なのだそうです。
マダガスカル産サファイアの産地と産地別特徴
イラカカ国立公園近郊
世界最大級のサファイア鉱床といわれるイラカカ国立公園近郊。
様々な色のサファイアが産出されています。
約70%がピンクやパパラチア、オレンジ系のサファイアで、約5%がブルーなのだそうです。
サファイア以外にもジルコンやガーネットなどが産出されるといわれています。
べマイティ鉱山
2016年に発見された比較的新しい鉱山です。
発見当初、なんと100ctを超える大きな原石が次々と見つかったそうですよ!
そんな光景、一度見てみたいですねー。
マダガスカルの他の鉱床より上質なパパラチアやブルーのサファイアが多く産出されるのだそうです。
べマイティ産ブルーサファイアは微粒子の内包物を含むものが多いそうですが、その他の内包物は比較的少ないのだそう。
彩度と透明度の高い白みがかった柔らかいブルーのものが多く、ブルーサファイアの最高品質と名高いカシミール産サファイアに似ているものも多いようです!
沢山産出され、いつかお目にかかれる日が来ることに期待したいですね!
人工処理の有無
マダガスカル産のサファイアには天然で高品質なものもありますが、多くは加熱処理が施されています。
マダガスカル産に限らずサファイアは色にも依りますが一般的に加熱処理が施される宝石です。
そのため加熱処理の有無によって、価値が著しく下がることはありません。
宝石には加熱処理がよく行われています。
気の遠くなる年月をかけて自然が作り上げる過程を人の手で補足することが加熱処理だと考えられていますし、基本的には気にすることはあまりないと私は思います。
ただ、問題だと思うのは、加熱処理がされているのに非加熱であるとされて高い値段がつけられているものでしょう。
さて、マダガスカル産サファイアは、原石の状態でタイやスリランカに持ち込まれて研磨されたり、加熱処理が施されることも多いようです。
マダガスカル産とスリランカ産のサファイアはよく似ているものも多いそうですよ。専門家でも判断が難しいものもあるそうです。
かつて陸続きだったからかもしれませんね。
マダガスカル産サファイアの色
先ほども触れた通り、マダガスカル産のサファイアは原石の状態で、スリランカやタイに持ち込まれることも多いといいます。
私は2000年代の初めに数年間スリランカで暮らしていたのですが、ちょうどマダガスカル産が出回っていた頃で、両者を見比べる機会が何度もありました。
私が見た限りでは、マダガスカル産のサファイアのほうがスリランカ産よりも色が薄めで明度が高く、照りがかなり良いので、とにかくキラキラと輝いていました。
スリランカの宝石商が「スリランカのサファイアは枯渇しつつあるけど、マダガスカルでは質の良いサファイアがかなり大量に出ているので、これからはマダガスカルの時代になるよ」と話してくれたのを覚えています。
その宝石商が持っていたアタッシュケースの中は全てがマダガスカル産の宝石で、開けた途端、色とりどりの光が輝いて、とても華やかな印象だったのを覚えています。
ブルーサファイアのほか、パパラチアサファイアも採れ、人気がありますね。
マダガスカル産サファイアの価値
良質なサファイア産地として人気急上昇中のマダガスカル。
マダガスカル産サファイアの価値はどれくらいなのか、とても気になりますよね。
サファイアは先ほども言ったように産地識別が可能な宝石です。
同じコランダムという鉱物なのに、産地によって違うんですね。
それでは代表的なブルーサファイアとパパラチアサファイアの価値について調べてみましょう。
マダガスカル産ブルーサファイア
スリランカ産ととても似ているといわれるマダガスカル産のブルーサファイアは、値段もだいたい同じくらいになっているようです。
産地によるサファイアの価値指数を見てみると、基本をスリランカ産とし、これを価値指数1.0とした場合、最高品質と謳われるカシミール産のコーンフラワーブルーが10、その次がミャンマー産(ビルマ産)で3.3となっています。
そしてカンボジアのバイリン産とアメリカのモンタナ産で0.3、タイのカンチャナブリ産:0.15、ナイジェリア産:0.1、オーストラリア産:0.03と続きます。
スリランカ産ブルーサファイアの価値は、カシミール産コーンフラワーブルーの10分の1位ということですので、マダガスカル産ブルーサファイアも大体同じ位と考えて良いでしょう。
ちなみに、ハイブランドのジュエリーにマダガスカル産が使用されていることも多いよう。
ハイブランドも認める品質といえるのかもしれませんね!
マダガスカル産パパラチアサファイア
パパラチアサファイアの産地は、以前はスリランカだけといわれていましたが、現在はマダガスカルでも採れることで有名です。
ピンクとオレンジの中間にあるパパラチアは、とても優美で魅力的です。
私は少しオレンジが強めのパパラチアサファイアが好みなのですが、ピンクに近いものがお好きな方も多いですね。
私がスリランカで見たマダガスカル産パパラチアサファイアは、スリランカ産よりも色が明るくて照りが良いという印象でしたよ。
しかし中にはベリリウム拡散処理を施されたピンクサファイアが含まれていることもあるとか。
ベリリウム拡散処理自体は悪い事ではないのですが、それを隠して「非加熱パパラチア」として高額な値段で売られることが問題です。
パパラチアサファイアは希少性が高くて人気があり、天然で高価なものも数多くありますので、信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付いたものを購入するかきちんと鑑別してもらうことをお勧めします。
最後に
アフリカの島国マダガスカルは、近年質・量ともに世界有数のサファイア産出国となりました。
個人的には憧れのパパラチアサファイアが採れることも魅力の一つではないかと思います。
一生に一度でいいのでマダガスカルに行って、イラカカ村の宝石採掘風景をこの目で見たいものです。
マダガスカルの地中には他にも素敵な宝石が沢山眠っているかもしれませんね。そう思うととてもワクワクしませんか。
マダガスカル、これからも注目していきたいと思います。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『決定版 宝石』
著者:諏訪恭一/発行:世界文化社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行 ほか
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◆https://www.gia.edu/
◆https://www.gia.edu/