青紫が美しいアイオライトは、本当にさまざまな表情を見せてくれる石です。
光にかざしてみると、淡いブルー、紫がかったブルー、淡いイエローといったいろいろなカラーを見ることができます。
石の特徴や、「なぜ色が変化するの?」ということなど、アイオライトについてお話していきましょう♪
目次
アイオライトとは
アイオライトは、ケイ酸塩鉱物の一種です。
モース硬度は7~7.5と高い方ですが、一方向に劈開しやすい性質があります。
アイオライトの大きな特徴の一つは、見る方向によって色が変化することです。
「なぜ色が変化するのか?」ということについては、後にご説明しますね。
鉱物としての基本情報
英名 | Iolite |
和名 | 菫青石(きんせいせき) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 斜方晶系 |
化学組成 | (Mg,Fe2+)2(Al2Si)[Al2Si4O18] |
モース硬度 | 7 – 7.5 |
比重 | 2.6 |
屈折率 | 1.52 – 1.55 |
光沢 | ガラス光沢~脂肪光沢 |
色
アイオライトの色と種類について、もう少し詳しくお話してまいりましょう。
アイオライトの中で価値が高いのは、バイオレットブルーで透明度の高いものといわれています。
アイオライトの青色は発色元素である鉄を含むからと考えられています。
鉄分を含まないと無色になり、別の名前で呼ばれます。詳しくは後ほどご説明しますね!
産地
主な産地は、インド、ブラジル、ミャンマー、スリランカ、マダガスカル、カナダなどです。
時にキャッツアイ効果やスター効果の見られるものが産出されることもあります。
原石の形
アイオライトは、低圧型の広域変成岩、接触変成岩、花崗岩やペグマタイトの中などで生成されることが多いといわれています。
透明、または半透明でガラス光沢をもち、結晶は柱状を示します。
施される処理
アイオライトには高熱に弱いという性質があり、それ故に加熱処理ができないといわれています。
なので、市場に出回っているものの多くは未処理のものだとされてきました。
ただ最近は、放射線照射で色を調整することができるようになったといわれています。
アイオライトの名前の意味
アイオライトの名前の意味は、ギリシャ語のion(すみれ色)とlithos(石)からきているといわれています。
和名は「菫青石(きんせいせき)」。
その名の通りすみれ色をしています。
宝石名はアイオライトですが、鉱物名は「コーディエライト」といいます。
こちらはフランスの地質学者であったルイ・コルディエが名前の由来となっています。
実はアイオライトは別名が多いことも特徴の一つです。
たとえば、色がサファイアにも似ていることと水を連想させる透明感があることから「ウォーターサファイア」とも呼ばれています。
また、見る方向によって色が変化する多色性という特徴から、「二色性のある石」という意味の「ダイクロアイト」という名前もあると聞きます。
アイオライトの多色性
アイオライトの結晶を光にかざしてみると、ある方向から見ると紫に近い濃い青色に見えたものが別の方向からはグレーがかった色に見えたり、また違う方向から見ると明るい青色だったりと色が変化して見えます。
この現象を「多色性」といいます。
ではなぜ、このような色の変化が起こるのでしょうか?
先程もお伝えしましたが、アイオライトの青色の発色要因は鉄の影響と考えられています。
そして、アイオライトの多色性もまた結晶に含まれる「鉄」がもたらしていると考えられているそうです。
結晶の中を通った光はその方向によって異なった吸収をされるために色が変化して見えるということです。
アイオライトは特にこの多色性が強いとされている宝石です。
カットで変わるアイオライトのカラー
アイオライトは強い多色性をもつため、一番美しく見せるためのカットが難しいとされている宝石です。
ブルーが最大に見える方向にテーブル面を切り出すのですが、わずかなカットの違いで色の出方に大きく影響してしまうとか。
主にオーバルカット、ラウンドカット、ステップカットなどにカットされることが多いように思います。
実は二色ではなく、三色?
前述したように、アイオライトは「二色性のある石」という意味を持つ「ダイクロアイト」という別名をもっていますが、実際には三つの色が見えることの方が多いようです。
石によって見える色は異なるものの、青紫、淡い青色、黄褐色や黄緑色、無色に近い青などといった色の中から三色が見えます。
※「多色性」について、また色が変化する特性である「変色性」について詳しく書かれた記事がありますので、ご興味がある方はこちらも参考に
アイオライトの仲間
前述したように、アイオライトにはブルー以外のものもありますが、別の名前で呼ばれるものも多いです。
代表的なものと少し変わった種類について幾つかご紹介しますね。
コーディエライト
アイオライト以外の色のものは一般的に鉱物名のコーディエライトの方で呼ばれることが多いです。
一時期話題にのぼった米津玄師さんの楽曲「LOSER」の歌詞に出てくる「黄金色したアイオライト」もその一つ。
大変珍しいそうですが存在しており、ゴールデンアイオライトなどと呼ばれ販売されていることもあるようです。
ホワイト・コーディエライト
稀に無色のアイオライトが産出されることがあり、それらは「ホワイト・コーディエライト」と呼ばれています。
カラーレスで透明度が高いものほど、価値高く扱われる傾向にあります。
ブラッドショット・アイオライト
レピドクロサイトなどの鉄分が多く含まれたインクルージョンをもつアイオライトは、見る方向によって光を反射して赤く見えることから「ブラッドショット・アイオライト」と呼ばれています。
「ブラッドショット」には「充血した」「血走った」「叫び」などの意味があります。
しかし市場に出回ることが少ないため、なかなかお目にかかることはできないといわれている石です。
桜石
アイオライトの結晶が分解すると、その形のまま「仮晶」という現象で、白雲母(しろうんも)、緑泥石(クロライト)に変化します。
やがて時を経てアイオライトが風化すると、その断面が桜の花びらのように見えることから「桜石」と呼ばれる石になります。
お花模様のとても可愛らしい石ですね。
桜石の最も有名な産地は、京都府亀岡市です。
「稗田野の菫青石化晶」と呼ばれる桜石は国の天然記念物に指定され、菊花石、梅花石とともに「三大花紋石」のひとつとなっているそうです。
この話を聞いて、桜石を見てみたい!桜石をみつけることはできるのかな?と気になって調べてみたところ、採掘は禁止とのことでした。
ただし天然記念物に指定される前に採取されたものなどを購入することは可能なようです。
アイオライトサンストーン
最近コレクターの間で人気上昇中のアイオライトサンストーンもアイオライトの変種の一つ。
アイオライトサンストーンはブラッドショットアイオライトと同じくレピドクロサイトなどのインクルージョンを含みます。鉄分を含むインクルージョンであることが多いようですよ。
アイオライトは何かと鉄の影響をうけている宝石なのですね。
ブラッドショットアイオライトよりは市場で見かけることが多い印象があります。
ブラッドショットアイオライトとの違いは、アイオライトサンストーンは光を当てると中のインクルージョンがキラキラと輝いて見えるところ。
それはとても神秘的で美しく、コレクターの間で話題になるのもとてもよく分かる気がします。
この宝石の中に含まれたインクルージョンが光に反射してキラキラ光る光学効果のことをアベンチュレッセンス(アベンチュリン効果)と呼ぶことから、「アベンチュリン・アイオライト」とも呼ばれていますね。
アベンチュリンクォーツやサンストーンなどが同じ効果をもつことで有名です。
ただ、アイオライトサンストーンもアベンチュリンアイオライトもいわゆるコマーシャルネーム(流通名)のため鑑別書には「アイオライト」とだけ書かれることが多いようです。
アイオライトの歴史・言い伝え
アイオライトには太陽にかざすと色が変化するという特徴からか、昔バイキングが羅針盤の代わりにしていたという言い伝えがあります。
これは、「アイオライトを太陽の光にかざしたとき、最もブルーが強く見える方向に船の進路を取った」というもの。
しかし中には、当時の航海は濃霧が命とりだったため、アイオライトの見る向きによって色が抜けて見える様を霧が晴れることになぞらえて、航海のお守りにしていたのではないかという説もあるようです。
アイオライトとタンザナイトの違い
アイオライトと同じように多色性が強い宝石にタンザナイトがあります。
アイオライトとタンザナイトは共にブルー系の宝石であり、見た目もとても良く似ています。
この両者の見分け方の一つは色味です。
アイオライトはやや黒っぽさを感じる藍色のものが多いのに対し、タンザナイトは青紫色に近いものが多い気がします。
買い付けたタンザナイト20粒を鑑別したら、アイオライト2粒と合成サファイアが混入していたというものです。
丸で囲った3粒が混入していたもの。なるほど!パッと見ただけではわかりませんね。
買い付けたタンザナイト20粒を屈折計と顕微鏡を用いて鑑別→2粒アイオライト、1粒合成サファイアが混入していました。何百石単位での買い付けで1石ずつ簡易機材で検査するのは極めて困難なので、仕入れ後に必ず鑑別しています。意図的で無くとも別の石の混入はよくある事です。 pic.twitter.com/xAGPLfudXu
— KARATZ(カラッツ)代表|小山慶一郎 (@keiichiro_oyama) May 21, 2019
アイオライトの価値基準と市場価格
では、実際どんなところで買えるか、価値基準や選ぶポイントはどこか気になるところですよね。
価値基準
アイオライトは他の色石同様に
色が濃いもの、透明感が高いもの、カットが美しいもの、カラットが大きいもの程、価値高く扱われますが、それに加え多色性がキレイに見えるものも高く評価されます。
アイオライトサンストーンはアベンチュレッセンスが美しく見えるもの程高く評価される傾向にあります。
市場価格
アイオライトはルースの取り扱いの多いお店であれば、比較的よく見かける宝石です。
相場的にはクォリティにもよりますが、大体数千円~数万円のものが多く、アイオライトサンストーンの方が人気の高さからか全体的に少し高いものが多い印象です。
最後に
名前も色もとても美しいアイオライトをご紹介してまいりました。
この機会に興味を持っていただけたら嬉しいです。
ジュエリーにしても素敵ですが、ルースで持っていると色んな方向から光にかざして眺めたり、色を見比べたりすることもできて楽しいと思います。
アイオライトの色の変化を、ぜひお手に取ってお楽しみください♪
カラッツ編集部 監修