インペリアルトパーズは皇帝に愛された!?色の違いや名前の由来など

インペリアルトパーズ ルース

インペリアルトパーズをご存知ですか?

「インペリアル」とは「皇帝の」「帝国の」という意味ですね。

なぜ、そんな高貴な名前がつけられたのでしょうか。

それからインペリアルトパーズ他のトパーズとどこが違うのでしょうか?

とても気になったので、調べてみました!

インペリアルトパーズとは?

インペリアルトパーズ ルース

トパーズは、フッ素を含む「Fタイプ」と、水酸基を含む「OHタイプ」という、2つの種類に分かれることをご存知でしょうか。

インペリアルトパーズはOHタイプのトパーズです。

黄金色~オレンジ~オレンジッシュピンクの色合いのものが多い印象ですが、「OHタイプ=インペリアルトパーズ」ということですので、色は特に関係ないそうです。

ですので、ピンク色のものは「ピンクインペリアルトパーズ」、赤色であれば「レッドインペリアルトパーズ」となり、カラーレスのインペリアルトパーズも存在するそうです。

前に何もつけず、ただの「インペリアルトパーズ」と呼ぶ場合は、一般的に黄金色~オレンジ~オレンジッシュピンクの色合いのものを指すことが多いです。

鉱物としての基本情報

インペリアルトパーズの鉱物としての情報をまとめてみました。

英 名 Topaz
和 名 黄玉(おうぎょく)
分類 アルミニウムの珪酸塩鉱物
結晶系 斜方晶系
化学組成 Al2OH2SiO4 ※OHタイプ
モース硬度 8
比 重 3.50 – 3.54 ※OHタイプ
屈折率 1.63 – 1.64 ※OHタイプ
光 沢 ガラス光沢

トパーズは様々な色があるのに、和名は「黄玉」なんですねぇ。

硬度は8
日常的に使用してもひっかき傷などはつきにくい硬さですね。

しかし靭性は5と低めなので、落下などの衝撃には気をつけましょう。

インペリアルトパーズの産地


インペリアルトパーズの最大の産地は、ブラジルのミナス・ジェライス州にあるオウロ・プレト地域といわれています。

1735年に発見されたオウロ・プレトのインペリアルトパーズには、クロム元素が含まれており、独特の赤オレンジ色に輝いていたといいます。

赤オレンジのインペリアルトパーズは、現在のところ、世界中でオウロ・プレトからしか産出されていないといわれているそうです。

かなり貴重だということがわかりますね!

ブラジル以外ではパキスタン、マダガスカルなどでも産出されています。

※トパーズは、産地証明ができない宝石 です。

インペリアルトパーズの名前の意味

インペリアルトパーズ

「トパーズ」という名前の由来は、ギリシャ語の「トパッツィオス(探し求める)」や、インドのサンスクリット語「トパス(火)」などといわれています。

それでは、「インペリアルトパーズ」という名前は、なぜ付けられたのでしょうか。

調べてみると、二つの説がありましたよ。興味深いですね!

「最高のもの」という意味

インペリアルトパーズ ルース
「最高のトパーズ」という意味で「インペリアル」がつけられた、という説があります。

冒頭でも触れましたが、トパーズは、宝石学では「Fタイプ(Al2F2SiO4)」「OHタイプ(Al2OH2SiO4)」という、2つの種類に分けられます。

Fタイプのトパーズはフッ素を含んでおり、多くの色が存在しています。

Fタイプのトパーズは、退色することがあるといわれていますが、水酸基を含むOHタイプのトパーズは色がさめることは少ないといわれています。

皇帝に愛された宝石

インペリアルトパーズは、ブラジルのドン・ペドロ皇帝に愛され、王冠に飾られていたことが名前の由来という説もあります。

ブラジルにも皇帝がいたのですねぇ。

その昔、ポルトガルのドン・ペドロ皇太子がブラジル帝国の皇帝になったそうです。

インペリアルトパーズが使われた王冠、見てみたいですねー。

それから、ロシアのウラル山脈で濃いピンクのトパーズが見つかり、ロシアの皇帝を称えて「インペリアル」と名前が付いた、という説もあります。

この美しいトパーズの所有権は、皇帝に限られていたそうですよ。

皇帝だけが持てた宝石「インペリアルトパーズ」、とってもロマンがありますねー。

インペリアルトパーズは他のトパーズとどう違う?

トパーズ ルース

インペリアルトパーズ他のトパーズとでは、どのような違いがあるのでしょうか。

大きくは前述したとおり、OHタイプかFタイプかの違いですが、分かりやすいように細かく表にまとめてみました。ご覧ください。

インペリアルトパーズ トパーズ
黄色・シェリー・ピンク・レッド など 無色・褐色・黄色・青色・ピンク など
産 地 ブラジル・パキスタン
マダガスカル など
ブラジル・メキシコ・アメリカ・ロシア
スリランカ・パキスタン・日本
オーストラリア・タスマニア など
タイプ OHタイプ(水酸基を含む) Fタイプ(フッ素を含む)
退色性 しにくい 退色する可能性がある

インペリアルトパーズは産地も限られているし、産出量も少なくてとても貴重な宝石だということがわかりました。

そういえば、日本もトパーズの産地だったそうですね、ちょっと驚きました。

残念ながら、インペリアルトパーズではありませんが・・・。

明治8年頃、滋賀県で大きなトパーズの結晶が数多く発見され、当時の日本は世界に名だたるトパーズの産出国だったとか。

青いトパーズも見つかっていて、そのほとんどは海外に流れて行ってしまったそうです。

日本産の青いトパーズ、見てみたかったですね。

トパーズ ルース

少し話は変わりますが、トパーズと聞くと「智恵子抄」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

私もその一人です。

初めて「トパーズ」という言葉を聞いたのは、中学生の時国語の授業で学んだ「智恵子抄」の「レモン哀歌」でした。

「トパアズいろの香気がたつ」という所で、先生に「トパーズという黄色の宝石がある」と教わったのを鮮明に覚えています。

トパーズの和名も「黄玉」ですし、私はずっと「トパーズは黄色」と思っていたのですが、本当はそれだけではなかったのですね。

スリランカの宝石店で大粒でギラギラしたブルートパーズを初めて見た時は驚きました。

ビックリするほど安いのに、とても綺麗で透明なブルー。

宝石店の人によると、無色のトパーズに放射線照射して色をつけたものということでした。

インペリアルトパーズの原石の形

トパーズ 原石

次に原石について見てみましょう!

珪酸塩鉱物であるトパーズは、ペグマタイト・花崗岩・流紋岩・結晶質石灰岩の空隙や割れ目の空間で作られるそうです。

原石の断面はひし形で、細長い柱状縦の溝があります。

表面はザラザラした手触り。

水流で摩耗して小石のような状態で見つかることもありますが、風化に強いため、生成した状態のまま大きな結晶として見つかるケースも多いのです。

世界最大のトパーズの原石は、271㎏もあるのだそうですよ!

かなり大きく成長するんですね。驚きです。

インペリアルトパーズ 原石

インペリアルトパーズも細長い柱状の原石です。

見た目的には大きく変わらないように思います。

色も原石の状態から赤オレンジやピンクオレンジ色など、インペリアルトパーズの特徴的な色を呈しているものが多い印象です。

インペリアルトパーズの産地であるブラジルのオウロ・プレト地域には、貫入した花崗岩と地下熱水とが反応してできた鉱脈があるそうです。

この鉱脈にクロム元素が含まれていることから、赤みがかったオレンジ色のトパーズができたと考えられているようです。

自然の力って、本当にとても神秘的ですねー。

インペリアルトパーズの色

インペリアルトパーズ ルース
先にお伝えしたように、「インペリアルトパーズ」いうと、主に黄金色~オレンジ~オレンジッシュピンクの色合いのものを指します。

そして他にもピンク色や赤色、そしてパーティーカラー(複数の色が入っているもの)のものなどもあり、それらは、「ピンクインペリアルトパーズ」など前に色名をつけて呼ばれます。

彩度明度も加えると実に様々な色があるのではないでしょうか。

ではそれぞれについてももう少し詳しく見ていきましょう!

シェリーカラー

インペリアルトパーズ シェリーカラー ルース

シェリーカラーとは、褐色を帯びた黄色から、オレンジ色のトパーズのことです。

インペリアルトパーズとして最も人気が高いのがこのシェリーカラーのものだそうです。

シェリー酒の色と同じ色相ということでそう呼ばれるそうです。

黄みがかった麦わら色、琥珀色、ブランデーの色、シェリー酒にも様々な色があるようです。

グラスに注いで、インペリアルトパーズのシェリーカラーを確かめてみましょう!

ピンク

ピンクインペリアルトパーズ ルース

ピンク色のインペリアルトパーズも高い人気があります。

ピンクトパーズにはFタイプとOHタイプ、いずれも存在しているそうです。

価値・価格が異なりますので、混乱しないように気を付けて下さいね。

価値が高いのはピンクインペリアルトパーズの方です。

多くは褐色や黄色のインペリアルトパーズを加熱してピンクにしているといわれていますが、中には非加熱のものもあります

正直非加熱のピンクインペリアルトパーズには憧れますよねー。

パキスタンやロシアで非加熱でも美しいピンクのトパーズが産出されるそうですが、産出量はとても少ないといいます。

そういえば昔スリランカの宝石店でピンクがかったインペリアルトパーズを見せてもらったことがあります。

ピンクにオレンジが少し混ざっていて、まるでパパラチアサファイアのようでした。

見る角度を変えると赤や黄色やオレンジの光が走って、とても綺麗でしたよ。

通常トパーズのルースはとても安価なのに、それは高価だったことを覚えています。

レッド

レッドインペリアルトパーズ ルース

インペリアルトパーズの中で最も価値高く扱われるのがレッドインペリアルトパーズです。

殆ど産出されないため、本当に稀少なんだそうです。

世界中の宝石商が探しているといっても過言ではないとか。

コーティング処理で赤く着色されたレッドトパーズは多く出回っているそうですが、価値が全く異なりますので気を付けて下さいね。

レッドトパーズの多くはOHタイプ、つまりレッドインペリアルトパーズにあたるといわれています。

パーティーカラー

パーティーカラーインペリアルトパーズ ルース

中には一石の中に複数色が入っているパーティーカラーと呼ばれるものもあります。

2色であれば、「バイカラーインペリアルトパーズ」として販売されることもあるそうです。

上の画像のように赤味が強く出ているものは、レッドインペリアルトパーズ同様に希少性が高くなり、価値も上がるそうですよ。

インペリアルトパーズの価値基準と市場価格

インペリアルトパーズ ルース

価値基準

インペリアルトパーズは色でその価値が変わります。

一番価値が高いのが赤色。前述もしましたね。

宝石になっているトパーズの中で0.5%程度しかない、希少な色なのだそうです。

赤味があるほど価値が高くなるようで、色での価値評価は

レッド>レディッシュピンク>ピンク>シェリーカラー>その他の色

になるそうですよ。

ちなみに、それ以外の価値基準は他の色石と大きく変わらず

・色の濃いもの
・透明度が高いもの
(インクルージョンやキズなどが少ないもの)
・カラットが大きいもの
・カットが美しいもの

などが評価の対象になるそうです。

市場価格

人気の色合いやクォリティによって異なりますが、人気色ではないカラットの小さいものであれば数千円~、人気のシェリーカラーでトップクォリティ、1ct以上のものだと数万円~販売されている印象です。

それがピンクインペリアルトパーズのトップクォリティ、1ct以上のものとなると、数十万円以上するものもあります。

更にレッドインペリアルトパーズとなると、赤みが強いものは殆ど出回らないことから、クォリティによっては数百万円以上してもおかしくないと言えそうです。

何処で買える?

色に拘らなければ、ルースについては比較的取り扱いが多い印象です。

オンラインショップでもよく見かけますね。

ジュエリーも少ないですが、販売しているお店はあります。

ただ、ピンクインペリアルトパーズとなると、グッと取り扱いが減りレッドは殆ど見かけません。

インペリアルトパーズのお手入れ方法

インペリアルトパーズ ペンダントトップ

インペリアルトパーズはモース硬度は高めですが、特定方向からの衝撃に弱い劈開性をもつため強い衝撃を与えないよう注意が必要です。

特にリングの場合、重いものを運んだりスポーツや家事などをするときには外した方が安心です。

また、極度な温度変化によって割れが生じる恐れがあるようですので念のため気をつけた方が良いでしょう。

なお、インペリアルトパーズは退色しにくいといわれていますが、直射日光が当たらない場所で保管した方がより安心だと思います。

日常のお手入れは、柔らかい布でサッとふき取るだけで十分ですが、汚れが目立つ場合はぬるめの石鹸水の中で優しく洗って上げて下さいね。

泡をきれいに洗い流し柔らかい布でしっかりと乾燥させることも忘れずに。

超音波洗浄などは使用しないで下さい

最後に

インペリアルトパーズ ペンダント
いかがでしたでしょうか。

インペリアルトパーズはOHタイプで、最高品質のトパーズです。

ブラジルやロシアの皇帝からも愛されました

黄色が強いものからピンクが強いものまで様々な色相があるので、お好みの色合いを探すのも楽しいでしょう。

特にレッドオレンジやオレンジピンクのインペリアルトパーズは貴重なので、出会えたらラッキーといえるかもしれませんね!

カラッツ編集部 監修

 
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
 監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
『価値がわかる宝石図鑑』
 著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
『アヒマディ博士の宝石学』
 著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
 著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
 監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社  ほか
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https://www.gia.edu/

▽参考書籍・参考サイト一覧▽