明るいグリーンが印象的な宝石クリソプレーズ。
その色合いと半透明でプルンとした見た目がまるでゼリーのようと表現されることも多く、思わず食べてしまいたくなるような可愛らしさがあります。
古くから宝石や装飾品として愛されてきただけでなく、治療薬として珍重された時代もあったそうですよ。
今回は、そんなクリソプレーズについて、特徴、名前の意味、歴史、価値など、色々な角度からご紹介していきたいと思います!
目次
クリソプレーズとは
クリソプレーズは、多結晶のクォーツであるカルセドニーの変種の一つです。
その色合いは、アップルグリーンと表されることも多く、古代より珍重されてきた宝石の一つです。
鉱物としての基本情報
英名 | Chrysoprase(クリソプレーズ) |
和名 | 緑玉髄 |
鉱物名 | クォーツ |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系/三方晶系 |
化学組成 | SiO2+Ni |
モース硬度 | 7 |
比重 | 2.57 – 2.7 |
屈折率 | 1.53 – 1.55 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
クリソプレーズは、透明度のあるグリーン~イエローグリーンを呈するカルセドニーを指し、和名は緑玉髄(みどりぎょくずい)です。
カルセドニーの中では最も価値高く扱われるといわれています。
モース硬度は7と比較的高めで、ジュエリーとして日常的に楽しむこともできます。
古代ギリシアやローマ時代から宝飾品として多く用いられていたと伝わり、今でも主にカボションカットやビーズなどに研磨され、ジュエリーやアクセサリーとして親しまれています。
主に半透明~不透明をしており、透明度が高く内包物が少ないもの程、価値高く扱われます。
見た目が翡翠に似ているものも多く、オーストラリアが主産地であることからオーストラリアンジェイドというフォルスネームで販売されることもあるといいます。
色
クリソプレーズの色はグリーン、ライトグリーン、イエローグリーンなどです。
このグリーンの色合いは、ニッケルに起因すると考えられており、ニッケルの珪酸塩鉱物泥を含むことにより発色するのだそうです。
通常のクリソプレーズよりくすんだグリーンをしているものはグリーンカルセドニーと呼ばれます。
ちなみに、酸化クロムで濃いグリーンに着色したカルセドニーもあり、それらはクリソフレーズ(Chrysophrase)や日本ではクリソ(Chryso)と呼ばれることもあるそうです。とってもややこしいお話ですが・・・・
産地
クリソプレーズの主な産地はオーストラリアです。
その他にも、ロシアやアメリカ、ブラジルなどでも産出されます。
原石の形
クリソプレーズは岩石中の割れ目や空洞の内面を埋めるように形成されることが多く、ニッケルを含む岩石が風化することによりできるといわれています。
主に、塊状や腎臓状、鍾乳状などで産出されます。
表面が不均一で、乾燥によるひび割れが多く見られるという特徴があり、原石の表面に白っぽい線が見られるのもそのせいです。
中には、堆積物の砂泥を取り込んでいるものもあるそうですよ。
原石を見ていると「どんな風にできたのだろう。。」と思わず想像したくなります。
そこに長い歴史とストーリーが詰まっていると思うとより一層愛着がわいてくる気がしませんか。
名前の意味
クリソプレーズは、ギリシア語で金を意味する「chryso」とニラを意味するprasonを合わせてできた名前だといわれています。
クリソプレーズはかつて黄金の塊の中から生まれてきたと信じられていたこともあったそうです。
クリソプレーズの色合いとその言い伝えから生まれた言葉ではないか、という説もあるようですが、詳しい由来についてはあまり知られていないようです。
誕生石
クリソプレーズは、月の誕生石には選ばれていません。
しかし、2月17日、5月31日、10月6日の誕生日石として選ばれています。※書籍によって異なります。
石言葉
クリソプレーズの石言葉は「豊かな実り」です。
私はこれを聞いて、青いリンゴが沢山実っているところを想像してしまいました。
クリソプレーズにピッタリの石言葉ではないでしょうか。
クリソプレーズの歴史
前述したように、クリソプレーズは古代ギリシアやローマの時代からカメオが施されたり、ペンダントやリングなどにセッティングされ愛されてきました。
古くは現在の中央ヨーロッパ辺りで産出されていたといわれています。
当時は希少な宝石だったようですが、19世紀になってロシアやアメリカ、ブラジルでも見つかり、更に、20世紀に入るとオーストラリアで大きな鉱床が見つかったことから、広く見かけられるようになったそうです。
クリソプレーズは、教会やお城の装飾などに使われることも多かったといいます。ジュエリーとしてだけでなく、内装を彩る宝石としても広く使われていたのですね!
また、優れた治療薬として用いられることもあり、痛風やてんかんを防いだり、体内の毒素や老廃物を排除する力があると信じられていたと伝わっています。
クリソプレーズの仲間
画像:シーブルーカルセドニー
カルセドニーの変種であるクリソプレーズには沢山の仲間が存在します。
色の違いだけでなく、見た目が大きく異なる、個性的な子も沢山います!
早速ご紹介していきましょう!
カーネリアン
和名を紅玉髄というカーネリアン。
色はレッドやオレンジ、褐色などがあります。
カーネリアンの色は鉄の含有によるものと考えられていますが、加熱することで鉄が酸化し色が濃くなるのだそうです。
主に半透明で、カボションカットを施すとぷるんとした見た目になるところがクリソプレーズと似ている気がします。
名前の由来は諸説あり、肉という意味の「carnis」や新鮮という意味の「carneolus」から名付けられたといわれています。
オニキス
現在、オニキスとして流通している多くは模様などのない真っ黒な宝石ですが、本来のオニキスは白と黒の縞模様があるアゲートを指します。
元々オニキスという名前も爪を意味するonuxに由来し、縞模様が爪に似ていることから名付けられたといわれます。
しかしながら、真っ黒なブラックカルセドニーがオニキスとして広く流通したため、現在はいずれもオニキスと呼ぶことが宝石業界の通説になっています。
実は複雑な事情をもつオニキスですが、メンズジュエリーなどに用いられることも多く、広く愛されている宝石の一つです。
アゲート
アゲートは、和名を瑪瑙(メノウ)といい、馬の脳に似ていることから名付けられたといわれています。
目に見えない程微細な石英の結晶が集まり、その隙間に異種鉱物が入り込むことで様々な色や模様が生まれます。
一般的には、縞模様をもつものがアゲートですが、中には見た目が異なるものもあります。
例えば、木やシダのような模様が見られるデンドリティックアゲート、風景のような模様が見られるランドスケープアゲート、コケのような緑の角閃石を内包するモスアゲートなどです。
クリソプレーズの偽物とは
クリソプレーズの場合、クリソプレーズの偽物よりも、先に紹介したとおり、クリソプレーズが翡翠に似ていることから、オーストラリアンジェードというフォルスネームで販売されるなど、翡翠の偽物として出回ることも多いようです。
クリソプレーズの偽物として出回っているものとしては、着色して色を変えたものや別の宝石が多いようです。
何をもって偽物と呼ぶかによって、考え方が異なる部分もありますが、一例としてご紹介できればと思います。
着色したクリソプレーズ
クリソプレーズは微細な結晶が集まってできた多結晶質であることから、染料が染み込みやすいため古くから着色されてきた宝石です。
現在では、処理の有無を明確にすることが求められますが、昔はそのまま流通していたことから、着色処理を施されたクリソプレーズが混在していると聞きます。
無色のカルセドニーをグリーンに着色したものが多いようです。
同じカルセドニーとはいえ、最初から分かっていれば別ですが、知らずに買って後から事実が判明したら、やはりちょっと複雑な気持ちになる気がしますよね。
別の宝石
着色処理されたものだけでなく、グリーンアゲートをクリソプレーズとして販売されているケースもあるそうです。
カルセドニーとアゲートは同じ石英の仲間ですし、成分的にも変わらないのですが、厳密にいうとグリーンアゲートは深みのあるグリーンで、クリソプレーズとは色の印象が異なります。
販売店によっては区別されていないこともあると聞きますので、注意が必要です。
また、レモンクリソプレーズという名前で販売されているものの多くはマグネサイトだと聞いたこともあります。
分かった上で処理されたクリソプレーズやグリーンアゲートを購入するのは問題ありません。問題は、処理や事実を明記せずに販売することです。
未処理だと思って購入したクリソプレーズが着色だった・・・なんてことがないよう、購入の前に確認したり、処理まで明記してあるお店で購入することをオススメします。
クリソプレーズの価値基準と市場価格
クリソプレーズが欲しくなったら、何を基準に購入すると良いのでしょうか?
クリソプレーズの価値基準と市場価格についても簡単にご紹介しますね!
価値基準
クリソプレーズは、透明度が高く、色が鮮やかなもの程、価値高く扱われます。
原石は砂泥を含んでいたりすることも多いため、内包物が少ないものも高く評価されます。
彫刻や複雑なカットが施されたもの、有名デザイナーの作品などは付加価値がつき、価格が上がります。
市場価格
クリソプレーズは比較的お手頃価格のものも多い印象です。
クォリティによっては大きいサイズのものでも数千円~探すことができるでしょう。
クォリティが高いものや凝ったカットが施されているものなどは数万円以上するものもあります。
どこで買える?
クリソプレーズは、実店舗でもオンラインショップでも、比較的多くのお店で取り扱いがある印象です。
ルースでもジュエリーでも探しやすいと思います。
パワーストーンとしても人気がありますね。
クリソプレーズのお手入れ方法
クリソプレーズは、モース硬度も比較的高く扱いやすい宝石です。
しかし、強い衝撃を与えると欠けたり傷付いたりする可能性がありますので、着用の際には丁寧に扱ってくださいね。
普段のお手入れとしては、着用後、乾いた柔らかい布で優しく拭いてからしまうのがオススメです。
汚れが目立ってきたら、中性洗剤や石鹸を薄めたぬるま湯の中に入れ、毛先の柔らかい歯ブラシなどで優しく汚れを落としてください。
洗った後は丁寧にすすぎ、柔らかい布で十分に水分を拭き取りましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
古来より珍重されてきたアップルグリーンの宝石クリソプレーズ。
ジュエリーとしてだけでなく、教会やお城の装飾として使われるなど広く愛されてきた宝石ということが分かりました。
黄金の塊から生まれたとか、治療薬としての効果が信じられていたという言い伝えも興味深いものがありました。
美しい宝石を見ると色々な想像を膨らませてしまうのは、昔も今も変わらないのだと感じました。
クリソプレーズを見かけたら、その長い歴史に思いを馳せてみるのも良いかもしれませんね。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか