ベリルと聞いてもピンとこない方もいるかもしれませんが、エメラルドやアクアマリンはいかがでしょうか。
実はエメラルドとアクアマリンは色は異なりますが同じ鉱物。
どちらも鉱物ベリルの一種です。
他にもピンクやレッド、イエローなど多くの色合いがあり、色によって異なる名前で呼ばれます。
透明度も高く美しいことから、色によっては古くから世界中で愛されてきました。
今回はエメラルドやアクアマリンだけではない、鉱物ベリルの魅力についてたっぷりお話ししたいと思います!
目次
ベリルとは
冒頭でも触れたように、ベリルは色によって宝石名が変わり、主な色は8色です。
グリーンはエメラルド、ブルーはアクアマリン、イエローはイエローベリル、イエローグリーンはヘリオドール、ゴールドはゴールデンベリル、ピンクはモルガナイト、レッドはレッドベリル、そしてカラーレスはゴーシェナイトとそれぞれ呼ばれています。
稀にレッドベリルを「レッドエメラルド」と呼ぶのを耳にしますが、一般的にはあまり使われない名前だと思います。
また、猫の目のような光の筋が浮かぶキャッツアイ効果(シャトヤンシー)の見られるものもあります。
この効果が見られるものはカボションカットに研磨されることが多いです。
鉱物としての基本情報
英名 | Beryl(ベリル) |
和名 | 緑柱石(りょくちゅうせき) |
鉱物名 | ベリル |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 三方晶系/六方晶系 |
化学組成 | Be3Al2Si6O18 |
モース硬度 | 7.5 – 8.0 |
比重 | 2.63 – 2.9 |
屈折率 | 1.577 – 1.583 |
光沢 | ガラス光沢 |
ベリルの主な産地
ベリルの産地は、宝石によって変わります。
例えば、エメラルドは主にコロンビア、ブラジル、ジンバブエ、ザンビアで産出されますが、アクアマリンの主な産地はブラジルやナイジェリア、モザンビーク、マダガスカルなどです。
下記に宝石種別の産地をまとめましたのでご参考ください。
エメラルド | コロンビア、ブラジル、ジンバブエ、ザンビア、マダガスカル、パキスタン、インド、アフガニスタンなど |
アクアマリン | ブラジル、ナイジェリア、モザンビーク、マダガスカルなど |
イエロー系ベリル | アメリカ、ロシア、パキスタン、ブラジル、アフガニスタン、ナミビア、ナイジェリア、マダガスカル、ザンビアなど |
モルガナイト | アメリカ、モザンビーク、マダガスカル、ナミビア、ブラジル、アフガニスタン |
レッドベリル | アメリカ ユタ州とその周辺 |
名前の意味
ベリルは、緑色の石という意味をもつギリシャ語の「ベリロス(Beryllos)」から由来して名付けられたといわれています。
和名は緑柱石(りょくちゅうせき)です。
ベリルの価値
突然ですが、同じグレードの場合、ベリルの中で最も高値で取引される宝石は、何だと思いますか?
やっぱりエメラルドじゃないか?と思われるかもしれませんが、正解はレッドべリルです。
その理由は希少性で、産地の少なさから見ても明らかです。
上質な物であれば、同じカラットのダイヤモンド以上の金額で取引されることもあるのだとか。
その次にエメラルドが高値を付けられます。
ベリルは色鮮やかで透明度が高く、インクルージョン(内包物)が少ないものほど価値があり、輝きを増して見せるファセットカットに研磨されることも多いです。
さまざまな色のベリル
では、色別にそれぞれの魅力をご紹介していきましょう!
グリーン:エメラルド
世界四大宝石の一つにも選ばれているエメラルド。
ベリルの中で最も知名度が高い種類かもしれません。
エメラルドは主に、クロムとバナジウムによりグリーンを発色すると考えられていますが、実は鉄の含有もあるそうです。
クロムとバナジウムの含有量が多ければ濃く鮮やかなグリーンに、鉄の含有量が多ければブルー味を帯びるそう。
一般的にインクルージョンや内部にキズがあるものも多く、大粒の結晶になりにくいという特徴もあります。
そのため、比較的大粒で透明感の高いエメラルドには非常に高い価値が付けられます。
実はグリーンのベリルはエメラルドだけではありません。
グリーンベリルと呼ばれる種類もあります。
一般的にクロム発色で濃く鮮やかなグリーンがエメラルド、鉄発色で優しく薄めのグリーンがグリーンベリルとなります。どちらもそれぞれの魅力がありますね!
※鑑別機関によって基準や色範囲が異なる場合があります。
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エメラルドについてもっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
ブルー:アクアマリン
少し落ち着いた海の色を思わせるブルーのベリルはアクアマリンと呼ばれます。
2価鉄イオン(Fe2+)が要因でブルーを発色すると考えられ、カラーレスに近い淡く薄いブルーから、濃い目のブルーまで色幅があります。
濃いブルーのアクアマリンはサンタマリアと呼ばれ価値高く扱われます。
かつてブラジルのサンタマリア鉱山から産出されたことからこの名前が付いたといわれていますが、現在では濃いブルーのアクアマリンは全てサンタマリア(またはサンタマリアアクアマリン)と呼ばれます。
ベリルの中で最も流通量が多く、大粒の結晶も多いアクアマリン。
比較的内包物が少なく透明度の高いものも多いため、日常的なジュエリーとしても十分楽しめます。
アクアマリンではないブルーベリルも存在するそうですが、天然のものは非常に少なく市場で見かけることは殆どないようです。
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アクアマリンについてもっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
イエロー系:イエローベリル、ヘリオドール、ゴールデンベリル
色味の違いで3つに呼び分けられるイエロー系のベリル(イエローベリル、ヘリオドール、ゴールデンベリル)ですが、かつてはイエロー~ゴールドのものは全てヘリオドールと呼ばれていたと伝わります。
ヘリオドールの名前の由来は、太陽を意味するギリシャ語の「Helios(ヘリオス)」からきています。
現在では、イエローのものをイエローベリル、イエローグリーンのものをヘリオドール、そしてゴールドをゴールデンベリルと呼ぶようになっています。
ただ、実際にはきちんとした線引きがある訳ではなく、主観によるものが大きいため、鑑別機関によって見解が異なることも多いそうです。
また近年、鑑別機関によってはヘリオドールは出さないところもあるようです。
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イエローベリルについてもっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
ピンク:モルガナイト
モルガナイトはピンクのベリルのこと。
1911年にマダガスカルで発見された比較的新しい宝石で、アメリカの宝石収集家として知られるジョン・モルガンに由来し、モルガナイトと名付けられました。
モルガナイトの発色要因はマンガンに起因すると考えられています。
淡いピンクが多い印象ですが、濃い目のピンクやパステルピンク、逆に殆どカラーレスに近いものもあります。
昔はピンクベリルやローズベリルと呼ばれていたそうですよ。
比較的大粒のものが産出しやすいことから個性的なカットが施されることもあります。
カット別に集めてみても楽しいと思います♪
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モルガナイトについてもっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
レッド:レッドベリル
アメリカのユタ州とその周辺でしか産出されないといわれる、レッドベリル。
前述した通り、8色あるベリルの中で最も希少であり、高値がつきやすい種類といわれています。
初めレッドベリルは、発見者の鉱物学者メイナード・ビクスビーの名前にちなんで「ビクスバイト(Bixbite)」と命名されたといいます。1904年のことです。
しかし、その頃既に同じような名前の別の鉱物(Bixbyite)があり、混乱を避けるため、レッドベリルに改名されたといわれています。
レッドベリルの発色要因はモルガナイトと同じマンガンと考えられています。
この2つの違いも色。レッド味が強ければレッドベリル、ピンク味が強ければモルガナイトになります。
レッドベリルは希少性、価格ともにエメラルドよりも上でレアストーンとしてもコレクターから高い支持を得ています。
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レッドベリルについてもっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
カラーレス:ゴーシェナイト
不純物がなくカラーレスのベリルをゴーシェナイトといいます。
最初に発見されたのがアメリカのゴッシェンという場所で、その地名に由来して名付けられたといわれています。
ホワイトベリルと呼ばれることも。
比較的大粒で産出されることも多く、珍しいカットが施されることもあります。
一見無色に見えても調べてみるとわずかに色が含まれていることも多く、純粋なゴーシェナイトはベリルの中では産出量が少ないとされます。
色合いや輝き方が似ていることから、かつてカラーレスダイモンドの代用品とされていた時代もあったのだとか。
ホワイトクォーツやホワイトトパーズにも見た目が似ているため稀に意図せず混ざってしまうこともあるのだそうですよ。
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ゴーシェナイトについてもっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
番外編:ペツォッタイト
発見された当初、ベリルの一種と思われラズベリルやラズベリーベリルと呼ばれていた、ペッツォタイト。
しかし細かい分析の結果、ベリルの主成分がベリリウムであるのに対し、ペツォッタイトの主成分はセシウムということが判明。
2003年に正式に新しい鉱物として認められました。まだ歴史の浅い新しい宝石ですね。
色合いはラズベリーレッド、オレンジレッド、ピンクなどで、多くが1~2ct程度の小さな結晶で産出されるといいます。
キャッツアイ効果(シャトヤンシー)を示す、ペツォッタイトキャッツアイもあります。
キャンディーのような甘くて可愛らしい色合いが多いペッツォタイトはモース硬度が8。
日常的なジュエリーとしても十分楽しめる宝石です♪
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ペツォッタイトについてもっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
ベリルに施される人工処理
見た目を良くするために多くの宝石に施される人工処理ですが、ベリルも例外ではありません。
ベリルの場合は、色によって一般的に施される処理に違いがあります。
例えば、エメラルドやレッドベリルには通常、透明剤の含浸処理が行われます。
アクアマリンの場合は加熱処理、モルガナイトには照射処理が一般的に施されるといわれています。
イエロー系のベリルやゴーシェナイトは、人工処理が施されることは少ないそうです。
上記はどれも一般的に行われる処理のため、これによって著しく価値が下がることはありません。
但し、エメラルドやレッドベリルの場合、未処理の状態でも美しいものは希少性の高さから価値高く扱われます。
ベリルのお手入れ方法
使用後は柔らかい布やセーム革などで軽く拭いてから保管するとキレイを保ちやすいです。
時々、石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で優しく洗ってあげるとより良いと思います。
超音波洗浄については、特にエメラルドやレッドベリルは内包物が多く脆いため控えましょう。
ベリルはモース硬度7.5 – 8.0と高めですが、硬度の低い宝石と一緒に保管すると低い方が傷つく恐れがあります。
基本的に宝石は仕切りのある箱や小袋に分けて他の宝石とぶつからないように保管することをオススメします。
せっかく気に入って購入したベリル。少し手間をかけてお手入れすることで美しい状態を保ちましょう!
最後に
それぞれの色で様々な魅力を見せてくれるベリル。
長年宝石として愛されてきたことも納得できますね!
ジュエリーとしても十分に楽しめる宝石です。
色によっては比較的手に入れやすいものもありますので、気分で色を変えながらデイリーに身につけるのも楽しいかもしれませんね☆
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
<主な参考書籍>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行 ほか
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◆https://www.gia.edu/