アンドラダイトガーネットをご存知でしょうか。
ガーネットの一種で、和名は「灰鉄(かいてつ)ザクロ石」。
和名を見てもわかるように、鉄を多く含んだガーネットで、以前は黒いザクロ石とも呼ばれていたのだとか。
アンドラダイトガーネットは多くの色を呈し、色によって異なる名前で呼ばれます。
中には見た目も他と随分異なり、同じ仲間なの!?ってビックリしてしまうものもあるのですよ。
ではそんなアンドラダイトガーネットの世界をご紹介しましょう。
目次
アンドラダイトガーネットとは?
アンドラガーネットはその名の通り、ガーネットの一種です。
赤い宝石の印象が強いガーネットですが、実は一つの宝石を指す名前ではなく、細かく分けると20種類以上にもなるという鉱物のグループ名です。
大きくは二種類に分けられ、レッドやオレンジ色系が多いアルミニウム系ガーネットと、グリーンやイエロー、褐色系が多いカルシウム系ガーネットがあります。
そして、今回ご紹介するアンドラダイトガーネットは、カルシウム系ガーネットの一種です。
詳しくお話していきましょう。
鉱物としての基本情報
アンドラダイトガーネットの、鉱物としての情報は次の通りです。
英名 | Andradite Garnet(アンドラダイトガーネット) |
和名 | 灰鉄柘榴石 |
鉱物名 | ガーネット |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Ca3Fe2(SiO4)3 |
モース硬度 | 6.5 – 7 |
比重 | 3.8 |
屈折率 | 1.85-1.89 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
アンドラダイトガーネットの特徴の一つに屈折率と光の分散率の高さがあります。
いずれもガーネットグループの中で一番高い数値を誇ります。
特に分散率の0.057は、ダイヤモンドの0.044よりも強いので、カットによっては強い煌めき(ファイア)を楽しむことができるのもポイント。
光の中でキラキラ輝いてくれます。
最も知名度が高いのは、グリーンに輝くデマントイドガーネット。
最近人気のレインボーガーネットもアンドラガーネットに属します。
産地
アンドラダイトガーネットの産地は、世界各地にあります。
ヨーロッパでは、ロシア、イタリア、スイス、イギリス、ルーマニア、など。
南北アメリカ大陸では、アメリカ、カナダ、メキシコで採れます。
アフリカ大陸ではケニアやコンゴ、ナミビア、マダガスカルなど。
アジアでは、パキスタン、韓国、そして日本でも採掘されているのです。
日本が有名な産地の一つとなっている種類もありますので、そちらについては後ほど詳しくご説明しますね!
名前の意味
アンドラダイトガーネットとは、どのような意味なのでしょうか。
アンドラダイトという名前は、ポルトガルの鉱物学者J.B.Andrada氏の名前に由来するといわれています。
新しく発見された鉱物に自分の名前がつくなんて、宝石好きとしては本当に羨ましい人生だなーと思ってしまいます。
冒頭でお話したとおり、和名は「灰鉄柘榴石(かいてつざくろいし)」。
灰鉄はカルシウムと鉄、柘榴石はガーネットを指します。
赤いガーネットの結晶がザクロの実にそっくりなことから柘榴石と名付けられたと言われていますね。
鉱物の名前には、発見者の名前、成分、見た目の様子など、様々な情報が込められているので、由来を知るのは面白いですね。
アンドラダイトガーネットの原石の形
アンドラダイトガーネットの結晶は、菱形12面体や変菱24面体の形をしています。
鉄が豊富に含まれるスカルン中や蛇紋岩の中に生成することも多いといわれています。
変成作用を受けた石灰岩の中やある種の火成岩の中でグロッシュラーガーネットと一緒に産出されることもあるようですよ。
グロッシュラーガーネットはアンドラダイトと同じカルシウム系ガーネットの一種です。ツァボライトが有名ですよね。
グロッシュラーとアンドラダイトは固溶しやすいそうで、2つの固溶体であるマリガーネットもイエロー系の色合いが美しく人気の宝石です。
デマントイドガーネットの採掘方法について
アンドラダイトには様々な種類があるのですが、その中のひとつ、グリーンが美しいデマントイドガーネットの原石をどのように採掘するのか、少しお話しましょう。
デマントイドは、変成岩のひとつである蛇紋岩や、スカルンと呼ばれる石灰岩や苦灰岩の中から見つかるといわれます。
蛇紋岩からは濃いグリーン、スカルンからは薄いグリーンのデマントイドが生成されることが多いそうです。
採掘方法は場所によって異なり、ナミビアではその地帯を爆破して切り崩してから重機などを使って行っているのに対し、風化したスカルン帯から見つかる事が多いマダガスカルでは、手作業を中心に採掘されていると聞きます。
同じ鉱物なのに、生成される場所の特徴や採掘方法が異なるのは何だか興味深い話です。
宝石の原石を自分で採ったらどんなにうれしいだろう・・・夢は広がるばかりです(笑)
アンドラダイトガーネットの色と種類
アンドラダイトガーネットは、色によって種類が分かれ、違う名前がついています。
イエローのアンドラダイトはトパゾライトで、ブラックはメラナイト。
ダイヤモンドが語源のグリーンのデマントイド、虹色の輝きをもつレインボーガーネットなど。
ではそれぞれの特徴について解説しましょう。
トパゾライト
トパゾライトは、トパーズのように黄色いことから名付けられたといわれています。
イエローの煌めきが美しい種類です。
トパゾライトの色の幅は、グリーンがかったイエローから黄褐色まであるようです。
ブリリアントカットが施されたらきっと、イエローダイヤモンドに似た輝きを見せてくれることでしょう。
メラナイト
ブラックのアンドラダイトガーネットを、メラナイトと呼びます。
多くは真っ黒で不透明なのですが、力強く反射するので独特の煌めきを放つといいます。
チタンが入ることで黒くなるのだとか。
何と、めったにないことだそうですが、透明のメラナイトが産出することもあるそうですよ。
どんなに美しいでしょうか。見てみたいものですね!
デマントイド
デマントイドは、希少性が高く、アンドラダイトガーネットの中で最も人気、知名度ともに高い種類です。
デマントイドとはオランダ語でダイヤモンドという意味。
ロシアのウラル山脈で発見され、グリーンダイヤモンドに似た輝きをもつことからそう名付けられたといわれています。
グリーンからイエローグリーンの瑞々しい色味、強いファイアがデマントイドの特別な煌めきを作り上げています。
ロシアの王族や貴族からも広く愛されていたといいます。
ロシア産のデマントイドには、ホーステールインクルージョンという独特の内包物が見られるものが多いといわれています。
石綿の繊維が放射状に広がっている様がホーステール(馬の尻尾)のように見えることから、そう呼ばれているのです。
インクルージョンは好まれない宝石が多い中、デマントイドガーネットにおけるホーステールインクルージョンは形状や位置などによって高額になるという珍しさがあります。
今では、ヨーロッパやアフリカなどでも産出されるようになりましたが、全体的に産出量が減り希少性が高まっているという話もあるようです。
レインボーガーネット
七色に輝くレインボーガーネット。
実は日本産が有名ということをご存知でしょうか。
レインボーガーネットは、2004年頃に奈良県天川村で発見されたといわれています。
現在残念ながら日本のレインボーガーネットは採掘が禁止されています。
アメリカやメキシコでも見つかっていますが、その鉱山もすでに閉山されているとか。
レインボーガーネットの不思議な虹色の輝きは「イリデッセンス」という光学効果によるものです。
「イリデッセントアンドラダイトガーネット」と呼ばれることもあるそうですよ。
光が当たることによって様々な色が浮き出てくるなんて、本当に不思議。
先ほど紹介したデマントイドや、他のアンドラダイトガーネットの仲間たちとは、見た目がずいぶん違いますよね。
改めてガーネットは本当に奥深いなぁ、と感じました。
価値が高いのはどの種類?
アンドラダイトガーネットの4種類をご紹介しました。
トパゾライト、メラナイト、デマントイド、レインボーガーネット、それぞれ特徴があってバラエティ豊かでしたね。
ではこの中で最も価値が高いのは一体どの種類なのでしょうか。
詳しい方はきっと簡単にお分かりになりましたよね。
答えは・・・そう、デマントイドガーネットです!
特に、ホーステールインクルージョンが形よく入っているデマントイドには高い価値が付けられます。
市場価格
アンドラダイトガーネットとして販売されているものは、クォリティにも依りますが大体一万円前後から販売されているものが多いように思います。
トパゾライトやメラナイトは希少性の高さからかあまり市場では見かけず、最近人気上昇中のレインボーガーネットは数千円~数万円位のものが多い印象です。
デマントイドガーネットは、ホーステールインクルージョンを含まないものであれば、クォリティによっては一万円以下でも探せますが、色が美しく透明感の高いものになると、数十万円以上するものもあります。
更にホーステールインクルージョンを含むロシア産のデマントイドガーネットとなると、クォリティにもよりますが数十万円~百万円位が一つの目安と言えるかもしれません。
どこで買える?
先述したように、トパゾライトやメラナイトは市場にはあまり多く出回っていない印象です。
アンドラダイトガーネットやレインボーガーネットはルースの取り扱いが多いお店やミネラルショーなどで見かけることが増えた気がします。
デマントイドガーネットは更に取り扱っているお店が多く、ジュエリーでも見かけることがありますので、色々なお店を見比べながら選ぶこともできそうです。
但し、ホーステールインクルージョンが入ったロシア産デマントイドガーネットなどは特に高額のものも多いため、購入する際は信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付属しているか、オプションで付属できるものを選ばれることをオススメします。
アンドラダイトガーネットのお手入れ方法
アンドラダイトガーネットはモース硬度が6.5~7ですので、特別低い方ではありませんが、それよりも硬度が高い宝石は多くありますので、仕切りのある箱や小袋などに入れて保管することをオススメします。
また、強い衝撃によっても傷付けてしまう恐れがありますので、ぶつけたり落としたりしないよう気をつけて下さいね。
普段のお手入れは、身につけた後柔らかい布などで拭く程度で良いと思いますが、時々ぬるめの石鹸水などで洗ってあげると美しさを保ちやすいと思います。
最後に
アンドラダイトガーネットについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
色の異なる4つの種類がありましたね。
トパーズ色に輝くトパゾライト、漆黒の魅力あふれるメラナイト、王族にも愛されたデマントイド、虹色に光る不思議なレインボーガーネット。
同じ種類なの?とビックリするほど個性豊かなアンドラダイトガーネットの変種たち。
ガーネットの世界にハマり、色々集めたくなる気持ちがとっても理解できる気がします。色々並べて比べてみたら本当に楽しそうですね☆
カラッツ編集部 監修