光源の種類によって色が変わる、カラーチェンジ効果を持つ6月の誕生石アレキサンドライト。
その変色ぶりはまるで別の宝石のようにガラリと印象が変わります。
神秘的なその色の変化は「神様のいたずら」とも称され、人気も価値も高く扱われている宝石の一つです。
今回はアレキサンドライトの魅力や特徴についてご紹介します。
目次
アレキサンドライトとは?

アレキサンドライトの性質
結晶系 | 斜方晶系 |
硬度 | 8.5 |
比重 | 3.7 |
屈折率 | 1.74-1.75 |
複屈折 | 0.008〜0.010 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
アレキサンドライトの最も大きい特徴といえば、変色性(カラーチェンジ効果)です。
これは、光源、つまり太陽光の下とロウソクや白熱灯の光の下とで見える色が異なるという特殊効果の一つで、アレキサンドライトはその代表格といえます。
鉱物としては、クリソベリルに属します。
クリソベリルは、黄色、黄緑色、褐色、ミントグリーンなどの色をもつ鉱物で、アレキサンドライトはその変種です。
クリソベリルの中で変色性をもつものがアレキサンドライトとして扱われています。
アレキサンドライトは、モース硬度8.5と高く、”劈開”(へきかい:一定方向からの衝撃で割れる性質)が無いため、優れた”靭性”を持っているとされ、ジュエリーとして日常生活の中でつけるのにも適している宝石の一つです。
ダイヤモンド・ルビー・サファイア・エメラルドに次ぐ”第五の宝石”としても有名ですね。
和名(日本語名)は、変彩金緑石(へんさいきんりょくせき)と呼ばれます。
名前の意味
アレキサンドライトの名前はロシア帝国の皇太子アレクサンドル二世から由来しているといわれています。
1830年にロシアの鉱山でエメラルドを採掘している際に発見され、その発見された日が皇太子アレクサンドル二世の誕生日だったためそう名付けられたそうです。
昼と夜で色が変わるこの不思議な宝石を初めて見た鉱夫たちはきっと大変驚いたことでしょう。
それにしても365分の1の確率で皇太子の誕生日に当たるとは素敵な偶然というか、縁を感じますよね。
1日でもずれていたり、もしも皇太子の名前がアレキサンドルでなければ、などと思うと、大げさかもしれませんが「物事は点と点で繋がっているな」とちょっと感じてしまいました。
産地
スリランカ・インド・タンザニア・ロシア・ブラジル など
中でもブラジル産のものは透明度、変色性ともに上質なものが多いといわれています。
なお、アレキサンドライトは2019年からGIAで産地鑑別ができるようになった石です。
アレキサンドライトの原石

アレキサンドライトの原石はとても小さな状態で発掘されます。
カットされると1ct未満になるものがほとんどで、それより大きいものは希少価値高く扱われ高額で取引されるといいます。
原石の状態とカットされた状態を比べると、宝石を削る職人さんの存在の大きさを改めて感じます。
特にアレキサンドライトのように変色効果をもつ宝石は、色の変化を最大限に見られるようにカットされるといいますから、宝石の魅力を最大限に引き出してくれる職人さんは、宝石にとってなくてはならない存在ですね。
色と変色性について
アレキサンドライトの特徴である変色性(カラーチェンジ効果)は、前述したとおり、光源によって色が異なって見える特殊効果です。
同じような効果をもつ別の宝石としては、サファイア、ガーネット、アンデシン、フローライトなどが挙げられます。
しかし代表格はやはりアレキサンドライトで、カラーチェンジ効果をもつ宝石のことを「アレキタイプ」と呼ぶこともあるほどです。
アレキサンドライトは、昼間の太陽光の下では青や緑を示し、夜のロウソクや白熱灯の下では赤~紫に変化することが多いです。
これはアレキサンドライトに含まれるクロムとバナジウムが引き起こしている現象と考えられており、色の変化が大きく見られるものほど価値が高いといわれています。
いわば、アレキサンドライトは二面性を持っているのですね。
こんなにガラリと変わるととっても不思議で神秘的に感じます。
人間に例えたら、まるでスーパーマンに変身するように「別人」になったといえるのでしょうか?
アレキサンドライトキャッツアイ

鉱物に平行に並んで針状のインクルージョンが含有すると、カボションカットにされた時、光の屈折によって猫の目のような一筋の光が現れます。
それをキャッツアイ効果(シャトヤンシー効果)といいます。
一番有名なのは、アレキサンドライトと同じ鉱物であるクリソベリルキャッツアイですが、アレキサンドライトにもこのキャッツアイ効果があらわれるものがあります。
それらはアレキサンドライトキャッツアイと呼ばれ、
変色性とキャッツアイ効果
の2つの現象が見られることから人気があります。

写真で見ると、こんな感じに変色性とキャッツアイの二つの効果が見られます。
こちらもとても印象が変わりますね。
アレキサンドライトキャッツアイは一粒で様々な表情を楽しむことができてよりお得な感じがしますね。
アレキサンドライトは何月の誕生石?

アレキサンドライトは6月の誕生石です。
アレキサンドライトの石言葉は 「秘めた思い、魅力、高貴」です。
私はこの言葉を知った時、色の変化に何か秘めているのか?と思いました。
昼と夜、それぞれ秘めた思いがあるのでしょうか・・・?想像がふくらみます。
二面性をもつ「宝石の王様」アレキサンドライトにぴったりの石言葉だと思います。
6月の誕生石はアレキサンドライト以外にもパールとムーンストーンがあります。
その2つの宝石についても少しずつご紹介しますね。
パール

カジュアルやフォーマルなど色々なシーンで用いられるパールは、年齢に関係なく馴染みのある宝石の一つです。
パールは養殖が主とされますが、そのパールの養殖に初めて成功したのが日本人である御木本幸吉でした。
今でも愛媛県や三重県などを中心に盛んに行われており、主産地の一つとなっています。
石言葉:健康、長寿、無垢、富
ムーンストーン

ムーンストーンは古くから世界各国で月にまつわる石だと考えられてきた宝石です。
古代ローマでは「月の大きさによって大きさが変わる」といわれていたそうです。
石言葉:健康、幸福、恋の予感
合成アレキサンドライトについて

合成石は人工的に作られた宝石です。天然石ではありません。
しかし、本物と同じ成分を使って人工的に作った石ですので、成分的には本物と同じです。
そのため見た目もよく似ています。
それぞれの特徴としては、
合成石
・不純物が入っておらず綺麗
・大量生産が可能
天然石
・天然石ならではのインクルージョンなどが見られる
・希少価値が高い
というところです。
こちらは合成アレキサンドライトです。
そしてこちらは天然のアレキサンドライトです。
写真だとよりその違いが分かりにくいかもしれませんね。
ただ誤解しないで頂きたいのは、合成石が悪い訳ではありません。
合成石も必要があって作られているものですし、合成アレキサンドライトとして販売されている場合は問題ないのです。
天然アレキサンドライトとしてや合成であることを隠したり誤魔化したりして販売されていることが問題なのです。
しかしながら、見かけだけで素人が判断することは難しいと思いますので、気になる場合は鑑別機関にてきちんと調べてもらうことをお勧めします。
天然のアレキサンドライトの方が希少性の高さもあり高額なことが多いですが、アレキサンドライトの合成石は人気があることから、合成石の中では比較的高値で取引されることも多いそうです。
実際京セラ製造のモノの中にはクオリティ高く数十万円するものまであるといいます。
ただ、最近ではその人気の高さに乗じて別の合成石を合成アレキサンドライトとして販売する業者までいるとか。
何がなんだか段々分からなくなってきますね。。。
天然石の偽物だけでなく、合成石の偽物も出回ってます。特に合成アレキサンドライトが人気で、フリマサイトで高値取引されてますが、実際は合成カラーチェンジサファイアや合成スピネルである事が多いです。京セラ製造の合成アレキはクオリティ高く数十万円するものまでも。合成石も鑑別が必要な時代🤔 pic.twitter.com/wHAakdTMcb
— KARATZ代表|小山慶一郎(旧RECARAT) (@keiichiro_oyama) December 21, 2018
アレキサンドライトの価値基準
アレキサンドライトの価値が決まる基準は主に3つです。
1.変色性
色の変化がはっきりしているほど高額に
2.透明度
内包物(インクルージョン)が少ない方が高額に
3.カット
- 色の変化が最も大きくなるようにカットしてあるものが高額
- 赤紫と青緑の多色性が綺麗に見えるようにカットしてあるものが高額
アレキサンドライトの市場価値はとても高く、1カラットで100万円以上するものもあるといいます。
さすが、「宝石の王様」アレキサンドライトですね。
最後に

昼と夜とで異なる表情を見せるアレキサンドライト。
「昼のエメラルド」「夜のルビー」と呼ばれ、その魅力に取り憑かれる人も多い宝石じゃないかと思います。
またアレキサンドライトについて調べていて、もし発見された日がロシアの皇太子アレキサンドル2世の誕生日でなかった場合、どんな名前になったんだろう?というところも個人的にとても気になりました。
不思議で神秘的な要素がたくさん詰まった宝石ですね。
アレキサンドライトをジュエリーとして身につけた際は、そのシーンによって違う輝きを放ち、つけるたびに新鮮な気持ちになれる気がします。
アレキサンドライトは優れた靭性を持ち、丈夫なので安心して身につけることもできますよ。
今回の紹介でアレキサンドライトに興味をお持ちいただけたら、是非近くで輝きを見てみてくださいね。
カラッツ編集部 監修