2022年4月4日に発売され、瞬く間に話題にのぼった「起源がわかる宝石大全」(発行:ナツメ社)。
既にお持ちの方やご覧になったという方も多いのではないでしょうか。
6月19日までは東京・上野の国立科学博物館で、7月9日~9月19日は愛知県の名古屋市科学館で開催予定の、特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」に展示されている全ての鉱物と宝石が掲載され、イベントとコラボした形で出版されたこの本。
※第4章と第5章の展示品は未掲載。
今回、カラッツ編集部はこの本の共同著者であり、特別展「宝石」の監修も務められた4名(諏訪恭一氏、宮脇律郎氏、門馬 綱一氏、西本昌司氏)にお話を伺えるという好機に恵まれ、張り切って取材に行って参りました!
日本の宝石、鉱物、そして岩石の世界をリードする4名が拘り抜いて作ったこの本の素晴らしさを少しでも多くの方にお伝えできればと思います!!
目次
「起源がわかる宝石大全」著者について
まずは、この本を書かれた4名の著者の方々について簡単にご紹介しましょう!
お一人目は、宝飾業界のレジェンドともいえる諏訪恭一(すわ やすかず)氏。カラッツGem Magazineでも過去何度か取材させて頂いています。
諏訪貿易の現会長で、宝石にまつわる著書をこれまでにも数多く出されています。
主なものとしては、「価値がわかる宝石図鑑」、「品質がわかるジュエリーの見方」(ともに、ナツメ社)、「決定版 アンカットダイヤモンド」(世界文化社)などがあります。
お二人目は、宮脇律郎(みやわき りつろう)氏。
国立科学博物館 地学研究部長で、特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」の責任者でもいらっしゃいます。
書籍としては、「カラー版徹底図解 鉱物・宝石のしくみ」(新星出版社)、「ときめく鉱物図鑑」(山と渓谷社)にて監修を、「宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物」(日東書院)にて日本語版監修をされました。
三人目は、同じく国立科学博物館 地学研究部に在籍されており、鉱物科学研究グループ研究主幹の門馬 綱一(もんま こういち)氏。
「KOUBUTSU BOOK-飾って、眺めて、知って。鉱物のあるインテリア-」(ビー・エヌ・エヌ新社)、「愛蔵版 楽しい鉱物図鑑」(草思社)、「大迫力バトル鉱物キャラ超図鑑」(西東社)などの書籍に監修者として携わっています。
四人目は、愛知大学教授の西本昌司(にしもと しょうじ)氏。
専門は地質学、岩石学、博物館教育で、NHKラジオ「子ども科学電話相談」の「岩石・鉱物」の回答者としてもお馴染みです。
主な著書には、「観察を楽しむ特徴がわかる 岩石図鑑」(ナツメ社)、「東京「街角」地質学」(イーストプレス)、「街の中で見つかる「すごい石」」(日本実業出版社)などがあります。
4名とも、各分野で一目置かれる方ばかりで、特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」(以下の文中、特別展「宝石」)も「起源がわかる宝石大全」(以下の文中、「宝石大全」)もそんな皆さまが全力で取り組み、拘り抜いたイベントであり、書籍であると思います。
それでは早速、詳細をご紹介していきましょう!!
「起源がわかる宝石大全」出版に至った経緯
まず、「宝石大全」が誕生したきっかけについて、宮脇先生に伺いました。
「国立科学博物館(以下、科博)で特別展を開催する際、会期に合わせて図録を作ることが多いのですが、図録って、一般書籍扱いではないので、特別展の終了とともに、絶版扱いになるんです。
最近では、中古品や新古品として出回ることもあるようですが、少なくとも、最初に計画した時はそういう流れはなく、終わってしまうと完全に世の中からなくなってしまう、という認識で。でもそれでは勿体ないですよねっていう話になって。
どうせやるなら、特別展が終わった後も長く使って頂けて、「欲しい」と言って下さる方があれば、気軽に手に入れられるようにしたかったんです。
あと、宝石の分野も技術的に日進月歩があるので、その都度改訂していける形が良いということで、今回の特別展「宝石」については、通常の図録の代わりになるようなものを一般書籍として販売しようということになりました。」
まずはイベントの開催が決定し、それに伴うものとして、本の出版が決まったということですね。
イベントの監修もこの4名で主に行っていたため、「宝石大全」の方も共著ということになったようです。
この取材の際、特別展「宝石」開催への道のりと思いについても併せてお話を伺い、別記事にまとめましたので、良かったら併せて読んでみて下さい。
特別展「宝石」にかける熱い想いなどもきっと伝わるのではないかと思います!
「起源がわかる宝石大全」のここがスゴイ!!
私自身、このカラッツGem Magazineの編集に携わる中で、多くの書籍を日々参考にさせて頂いており、これまでも沢山の良書に出会ってきました。
そんな中でこの「宝石大全」に出会い、初めて読んだ時、著者の皆さまの拘りや今まで培った知識が惜しみなく出されていることが所々から感じられ、正直とても感動しました。
私が心から感動した「宝石大全」、具体的にどう凄いのか、ご紹介していきましょう!
1.4名の専門家のタッグで生まれた深みのある内容がスゴイ!
「宝石大全」は主に、宮脇先生が元となる文章を書き、門馬先生と西本先生がそれを整え清書し、4名それぞれでチェックし、出来上がったと伺いました。
鉱物学・岩石学・地質学の専門家である、宮脇先生、門馬先生、西本先生の観点からベースが書かれているため、鉱物としての特徴なども分かりやすく紹介されています。
特に第一章の中の「宝石の生成」という項では、特別展「宝石」でも第一章で紹介されていた、どういった岩石からどのような宝石が生まれるかが画像とともに詳しく説明されており、勉強になります。
2.宝石の実寸サイズが載っているのがスゴイ!
「宝石大全」には、宝石の実寸サイズを記したページがあります。
これは私も今まで読んだ中で、同じようなものはあまり見た記憶がなく、驚いた部分でした。
カラットでの表示になるため、厳密なサイズとは言い切れない部分もありますが(カラットは重さを表す単位)、おおよそのサイズ感は分かると思います。
特に宝石初心者の方は、1ctといわれても、どれ位の大きさなのか検討もつかない、という状況かと思います。このページを見れば、それぞれのカラット数の平均的な大きさを知ることができるため、実物が見られないオンラインショップなどで購入する際の参考にもしやすいと思います。
3.宝石のカットについての説明がスゴイ!
諏訪先生いわく
「宝石のカットと言っても、今まできちんとした定義がないままに、輪郭だけでラウンドカットやハートシェイプなどと言われることも多かった。」
とのこと。
しかし宝石のカットは、主にカッティングスタイルと輪郭(シェイプ)と面の取り方の組み合わせでできています。
例えば、パビリオンとクラウンを持ったスタイルで、オクタゴンシェイプにステップカットを施すと、エメラルドカットと呼ぶ、とかそういった感じですね。
それを分かりやすくまとめられた、とのことでした。
4.大色相環がとにかくスゴイ!
特別展「宝石」にも飾ってあり、注目を浴びている大色相環が「宝石大全」にも掲載されています。
これは、365石の色石が色別に並べられ、同じ色合いをもつ宝石が一目で分かるようになっています。
大色相環を作成するきっかけとなったのは、諏訪先生の著書「価値がわかる宝石図鑑」のP26-33にある宝石色別インデックス。
主な宝石については、品質別・産地別で載っているため、色別の種類が分かるだけでなく、自分が持っている物がどれに当たるか逆引き出来るのも良いと、大変評判が良かったそう。
これをヒントに、宝石を色別に並べた色相環を作りたいと宮脇先生が強く推され、実現したといいます。
「宝石大全」上では、数字が付けられた列にどんな宝石が入っているかが分かるだけですが、ページ内にあるバーコードを読み込み、サイトに飛ぶと、それぞれの宝石の名前と詳細が載ったリストが見られます。
同じ宝石であっても、発色要因となる微量元素の量などによって、濃淡や色に違いが出ます。
この表では、そういった違いも分かるようになっており、例えば、同じロードライトガーネットでもルビーに近い色合いのものもあれば、アメジストに近い色合いのものもあることが分かります。
宮脇先生いわく、大色相環は「同じ色合いをもつ異なる石」と「異なる色合いをもつ同じ石」が未だかつてない程分かりやすく表現され、特別展「宝石」開催で得た大きな成果の一つとのことでした。
5.主な宝石についての情報量がスゴイ!
主な宝石については、品質の違いが一目で分かるクォリティスケールや価値比較表のほか、その宝石の類似宝石、人工石、模造がビジュアルで載っています。
前項でもお話したとおり、色石は発色要因となる微量元素の量などによって濃淡や色幅が出たり、透明度の違いによって色の見え方が異なるため、それによって類似する宝石も若干異なります。
例えばエメラルドの類似宝石には、深いグリーンの色合いをもつツァボライトもあれば、グリーン系のパライバトルマリン、少し淡めのグリーンのヒデナイト、不透明の翡翠などもあります。
人工石や模造も画像で載っているため、購入する際の一つの参考になると思います。素人目で判断まではできなくても、存在を知っているだけで意識が変わるため、騙されないための抑止力にはなってくれるかもしれませんね。
6.写真の美しさがスゴイ!
4人の著者の皆さんが口をそろえて言われていたのが、写真の素晴らしさ。
これまでも諏訪先生の著書の写真を撮ってこられた、カメラマンの中村淳氏を中心に全て撮り下ろしたもの。
特別展「宝石」の第1~3章にある全ての原石、ルースと橋本コレクションが掲載されています。(一部科博の標本などもあり)
掲載されている宝石種としては200種類とのことですが、原石とルースが両方掲載されていたり、産地別・カット別に載っているものなど、点数としては1000点以上あり、約3年かけて撮影されたといいます。
「宝石大全」における写真の魅力と拘った点
「宝石大全」の売りの一つである写真。
美しい宝石や原石、ジュエリーの画像が全ページを通しふんだんに使われており、写真集さながらの贅沢さがあります。
ルースと橋本コレクションは諏訪先生が、原石(標本)については門馬先生が主に見られたそうですが、お二人それぞれに強い拘りがあったといいます。
今回、諏訪先生の特別な取り計らいにより、カメラマンの中村淳氏にもお話を伺うことができましたので、ご紹介させて頂きますね!
※中村氏は当日都合が合わず、オンラインでの参加となりました。
ルースと原石、それぞれで拘った点
ルース
まず、ルースについては、正面からの画像ではなく、斜俯瞰で撮ることに拘ったとのこと。
小さすぎたり、形的にどうしても撮れないものなどを除き、多くの宝石が斜俯瞰で撮られています。
テーブルからパビリオンまでが写り込むことで、立体的に見え、手に取るような感覚で見ることができるのが最大のポイントです。
原石
原石(標本)については、その宝石の象徴的な特徴や結晶の形、表面の条線などもきちんと分かるような置き方や角度に拘って撮られています。
門馬先生いわく、
「石ごとに、形、条線、割れ方などそれぞれの特徴があって、そういったものが写真に写っていないと、正直意味がない。鉱物の専門家として携わる以上、誰が見ても納得しやすい写真を載せたかった。」
とのこと。
カットが施され、美しく輝くルースの方に目が行きがちな方も多いかもしれませんが、原石だからこそ見える特徴や自然が生み出した神秘感や優美さなど、原石ならではの魅力も沢山あります。
そういった部分をぜひ、中村氏の素晴らしい写真から読み取って頂ければと思います。
◇◆◇◆
「宝石大全」は、原則、ルースと原石が並んで紹介されているため、その宝石がどんな風に結晶し、人の手によってどんな風に生まれ変わったのかを見比べることができます。
この点も、この本がもつ大きな特徴の一つであり、味わうべきポイントだと思います。
「宝石大全」の撮影で最も苦労した点
「宝石大全」の撮影において、最も苦労した点は、時間。
このプロジェクト自体は、約5年前から動いていたとのことですが、途中で新型コロナウィルスの蔓延という予想外の事態にみまわれ、色々と計画が狂ってしまったといいます。
緊急事態宣言下で一日の撮影時間に制限を設けざるを得なかったり、展示品がなかなか決まらず撮影が終われなかったりと、苦労も多かったそう。
1000点以上の展示品を一つ一つ撮影し、かつ、一つにつき、角度やライティングなどを変えて何ショットかずつ撮られたそうなので、想像するだけでも気の遠くなるような作業だったことが分かります。
更に、宝石の画像は色や深みなど、ライティングを変えただけではどうしても出せない部分も多く、多少の画像処理は必要不可欠となります。
細かい画像調整なども基本的に中村氏ご自身でやられたとのことですので、その点でも気苦労が多かったのではないかと思います。
ジュエリー、ルース、原石それぞれで意識を変えた部分
「宝石大全」には、ルース、原石のほか、橋本コレクションを始めとしたジュエリーの画像も多く掲載されています。
ジュエリー、ルース、原石の撮影において、それぞれ気を使ったり、意識を変えたりする部分はあるかを伺ってみました。
すると、ジュエリーとルースについては大きく意識を変える点は少ないという意外なお答えが。
むしろ、サイズによる違いの方が大きく、強いて挙げるとしたら、ジュエリーの場合は地金があるため、地金への映り込みや質感が損なわれないように気をつける位なのだそうです。
ただ、橋本コレクションについては、西洋美術館から持ち出せず、かつ、直接触れてはいけないなどの制約が多く、ライティングや置き方、限られた時間内での撮影など、色々苦労もあったようです。
原石については、ルースやジュエリーと大きく勝手が違い、強調すべきポイントや上下の違いさえもよく分からず、誤って逆に置いてしまったり、難しかったといいます。
その都度門馬先生に教えて頂きながら、進められたのだそうです。
宝石の撮影で最も苦労する点と拘っていること
宝石の撮影において、最も苦労される点は、ずばり
ホコリ。
特に、小さいルースの場合、ルースケースに付属しているクッション布の細かい糸が付着してしまうこともあり、悩ましかったとのこと。
同時に、静電気も大きな問題で、メレサイズの小さなルースだとピンセットにくっついてしまい、置こうと思っても正しい位置に置くことさえできず、セッティングの段階から躓いて苦労したことも多かったようです。
また、宝石の撮影で拘っている点は、その宝石が最も良く見える、つまり、最も輝くポイントを追いかけるために、何ショットも撮るとのこと。角度を変えたり、ライティングを変えたりしながら何枚か撮り、その中から一番良いカットを探し出す、という作業が必要なのだそうです。
その努力があるからこそ、宝石が瞬間的に見せる最高の輝きを逃さず写真におさめることができるのかもしれませんね。
「宝石大全」の制作で最も苦労した点
「宝石大全」の制作において、最も苦労した点というと、やはり一番は時間だったといいます。
新型コロナウィルスが蔓延したことにより、当初予定していた海外の博物館がもつルースや原石が借りられなくなり、代わりのものを国内で探したそうですが、全く同じようなものを探すことは難しく、妥協点を見極めるなど、展示品がなかなか決まらない鉱物・宝石もあったそうです。
展示品が決まらないことには写真も撮れず、結果、当初の予定より発売を遅らせざるを得ない状況になってしまったといいます。
意見が割れたところ
最も悩ましかったのは、名前の表記。
例えば、ダイアモンドとダイヤモンド、サファイヤとサファイア、トラピーチェとトラピッチェなど、英語読みなのか日本語読みなのかで迷ったり、宝石学上の名前と流通名がズレている場合どちらに合わせるかなど迷うことが多かったといいます。
最終的には、どちらがより一般的に普及している表記かなどでご判断されたといいます。
他にも細かくは色々あったようですが、多少意見が割れた場合は、4人で話し合いながら決められたとのこと。
こういったエピソード一つとっても、この本がいかに大事に作られたのかが分かるのではないかと思います。
特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」と併せて見て欲しいところ
特別展「宝石」の開催中は、掲載されているものの多くを実物で見ることができます。(一部、展示されていないものもあり)
「宝石大全」を読んでから実物を見ると、その鉱物の歴史や特徴を把握した上で見られるので、見方が変わるのではないか、とのことです。
200種類の宝石が紹介されていますので、全ての詳細を把握することは難しいと思いますが、例えば、ご自身やご家族などの誕生石、お好きな色の宝石など幾つかに絞って予習した上で、特別展「宝石」に行っても面白いかと思います。
写真では表現し切れない輝きや色の深さ、趣など実物からしか感じられないものも多くあります。やはり機会があればぜひ実物を見て頂ければと思います。
ただ、実物は写真で見るより、遥かに小さいものも多いため、細部まで見ることは難しいと思います。
宮脇先生いわく、本は手元に置けて、何度でも読み返せるという利点もあります。
詳細を読んだ上で特別展「宝石」に行き、本物の良さを直に感じ、帰って来てから実物では見られなかった細部などを写真で確認する、というのが理想形なのではないでしょうか!?
遠方に住まれていたり、外出が難しいなどで直接行かれない方は、特別展「宝石」の紹介記事と「宝石大全」で少しでもその雰囲気を味わって頂けたら幸いです。
伝えたいこと
最後に、注目して欲しいところ、または、この本を読んで下さる方へ伝えたいことを、それぞれに伺いました。
「注目して頂きたい点は色々ありますが、まずは4人の専門家のチームワークで作られた本である、というところです。
宝石をただ紹介するだけでなく、鉱物学や岩石学の観点からも専門的に書かれていますので、読み応えがあると思います。実際私が読んでも非常に面白いと思いますから。良いものが出来たと自負しています。
また、主要宝石の内、分かるものは、普及した時期の目安が分かるように宝石名の左側に色を付けました。普及した時期が1500年までのものはパープル、1950年以降のものはグレーに色分けられています。
古くからあったものか比較的最近になって普及し始めたものかが一目で分かるようになっていますので、参照して頂ければと思います。
第2章を原則硬度順に並べたこともポイントですね。(一部を除く)
「価値がわかる宝石図鑑」と同じシリーズということで、宝石図鑑と同じように並べることで、二つの本を見比べることができるようにしました。」
「この本を読んで下さる方に伝えたいこととしては、とにかく、
『見て、読んで楽しんでもらいたい。宝石・鉱物の世界を楽しんでもらいたい。』
この2つですね。後は、特別展「宝石」と併せて楽しんで頂ければ、より嬉しいです。」
「注目して欲しいところとしては、鉱物情報の部分です。宝石名と鉱物名が合致していない方も多いと思うので、その部分を極力整理し、化学式などの詳細も比較的詳しいところまで入れるようにしました。
また、原石の綺麗な画像も撮って頂きましたので、磨かれる前の天然の姿を見て頂き、宝石の元となる原石を作り出す地球の奥深さみたいなものを多くの方に感じて頂けたら嬉しく思います。」
「注目して頂きたいところとしては、普通は宝石にされることがないような石です。特にこの岩石のページ(P182-83)はぜひ読んで頂きたいです。
ありふれた岩石も磨き方次第で美しく見えます。宝石の歴史や種類、その元となる原石や岩石がどう出来て、どのように宝石になっていくのか、その起源を知ると、奥深さに気付いてもらえるのではないでしょうか。宝石も人間も同じで、生い立ちを知ると、外見だけでは分からない良さや本来の美しさのようなものが分かると思っています。
宝石の歴史には人間の営みも深く関連します。宝石を通じて人間の営みや歴史も見えてくると思います。地球と人と歴史、そしてその営みが、特別展「宝石」には込められていて、石を通じてそれらを垣間見ることができる面白さがあります。宝石を入り口にして石のサイエンスを少しでも感じて頂けたら嬉しいですね。」
最後に
「起源がわかる 宝石大全」4名の著者とカメラマン中村淳氏に伺ったお話をご紹介しました。
取材を終えて、この「宝石大全」は5名の専門家の強い思いと拘りで出来ていると改めて感じました。
私自身、今まで多くの宝石や鉱物にまつわる本を読んできましたが、「宝石大全」には、他の本にはないような要素も多く掲載されており、読んでいるだけでも楽しく、ずっと読み続けてしまう面白さがあると思っています。
先生たちのお話の中には出てきませんでしたが、要所要所に「コラム」としてちょっとした逸話などが入っていたり、クォリティスケールが入っている宝石については、目次にも記載があったりなど、細かな工夫や気遣いに、個人的に感動を覚えたところも数多くあります。
宝石・鉱物の本としては価格もお手頃のように思います。(むしろ、内容の充実さを考えると安すぎるのではないかと思ってしまうほどです・・)
読めば読むほど、その深みを感じる「起源がわかる宝石大全」、ぜひ多くの方にお手元に取って頂きたい一冊です。
そして、特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」も6月19日までは東京・上野の国立科学博物館で、7月9日~9月19日は愛知県の名古屋市科学館で開催予定です。行ける方はぜひ足をお運び頂き、本に出ている鉱物および宝石たちを直接その目で見てみてください。
本の情報と併せて実物を見ると、きっとより多くの発見があると思いますよ。
なお、この取材を機に、この本をカラッツSTOREでも販売することとなりました!
宝石の小瓶とセットで販売しています。宜しければチェックしてみて下さいね。
カラッツ編集部 監修