ブラウンやグリーンがかった褐色系の色合いが美しい宝石、クリノゾイサイト。
タンザナイトに代表されるゾイサイトと名前が似ていますが、関係はあるのでしょうか。
今回はクリノゾイサイトについて、鉱物としての特徴や色、名前の意味、そしてゾイサイトとの違いなど紹介していきたいと思います!
目次
クリノゾイサイトとは?
落ち着いた色合いがシックな印象を与えるクリノゾイサイト。
市場に出回る数はそれ程多くないレアストーンです。
名前に「ゾイサイト」が含まれますが、タンザナイトに代表される、鉱物ゾイサイトの一種なのでしょうか。気になるところです。
それではまず、鉱物としての基本情報から詳しく見ていきましょう!
鉱物としての基本情報
英名 | Clinozoisite(クリノゾイサイト) |
和名 | 斜灰簾石(しゃかいれんせき) |
鉱物名 | クリノゾイサイト |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | Ca2Al3(SiO4)3OH |
モース硬度 | 6.0 – 7.0 |
比重 | 3.21 – 3.38 |
屈折率 | 1.67 – 1.73 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
クリノゾイサイトは、1869年に発見された、エピドートグループに属する鉱物です。
色は全般的にグリーンやブラウン系の褐色が多い印象です。
モース硬度が6-7と高い方ではない上に、特定方向からの強い衝撃に弱い性質劈開(へきかい)をもつため、取り扱いには注意が必要です。
色
純粋のものはカラーレスですが、微量の金属イオンを含むことで発色すると考えられています。
くすんだグリーンや濃いイエローグリーン、ブラウンのものが多いとされますが、グレー、ピンクなども確認されています。
産地
ブラジル、タンザニア、ノルウェー、ジンバブエ、パキスタン、ドイツ、アメリカ、スペイン、オーストラリア、ネパール、カナダ、スイス、イタリア、日本 など。
名前の意味
クリノゾイサイトは単斜晶系のゾイサイトというところから、単斜、曲がった・傾いたを意味する「clino(クリノ)」をつけて、クリノゾイサイトと呼ばれるようになったといわれています。
ちなみに、ゾイサイトはスロベニアの鉱物学者であったジギスムント・ゾイスに因んで名付けられたと伝わっています。
和名は斜灰簾石(しゃかいれんせき)。
古くはゾイサイトを「黝簾石(ゆうれんせき)」、クリノゾイサイトを「斜黝簾石(しゃゆうれんせき)」と呼んでいたこともあったようですが、現在では殆ど使われていないそうです。
クリノゾイサイトの原石の形
塊状や結晶状で産出するクリノゾイサイト。
結晶の形は、エピドートと同じく柱状結晶や卓上結晶などになります。
緑色片石相の広域変成岩や接触変成を受けた石灰岩、閃緑岩質のペグマタイトの中などに生成されます。
火成岩に対し熱水の作用が関わるような環境でもよく産出されるそうです。
また、蛇紋岩帯のロジン岩の主成分鉱物としても産出され、斜長石の変質物としても見られます。
クリノゾイサイトとゾイサイトの違い
画像:左-クリノゾイサイト 右-ゾイサイト
見た目もとてもよく似ている、クリノゾイサイトとゾイサイト。
実はこの2つ、いわば親戚のような間柄で 化学組成が同じで結晶構造が違う同質異像の関係にあります。
大きな違いは、鉄分子が含まれるか含まれないか。
鉄が10%以下の割合で含まれているとクリノゾイサイト、鉄が含まれていなければゾイサイトとなります。
ちなみに、鉄を10%以上含んでいるものはエピドートに分類されるそうです。
また、ゾイサイトは強い多色性をもつことで有名です。クリノゾイサイトにも多色性はあるようですが、強くないものが多いそうです。
鑑別機関で機械を使って成分分析すれば、判別は難しくないそうですが、見た目だけではプロでも見分けが付かない場合も多いそうです。
その他のクリノゾイサイトの仲間
先にもお伝えしたとおり、クリノゾイサイトはエピドートグループの一種です。ゾイサイトの他にも仲間が存在します。
エピドートグループに属する鉱物は10種類以上あるそうですが、代表的なものを2つご紹介しますね!
エピドート
まずはエピドートグループの代表エピドート。
グループの総称としても使われますが、エピドートとして流通するものもあります。
クリノゾイサイトとの大きな違いは、鉄分子の含有量で、先にも伝えたとおり、鉄を10%以上含んでいるとエピドートになります。
また、クリノゾイサイトよりも濃い色合いのものが多い印象です。
エピドートは色によっては強い多色性をもち、角度によってイエローやグリーンに見えるものもあるそうです。
▶エピドートをもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ!
ピーモンタイト
同じエピドートグループの中にピーモンタイトという鉱物があります。
クリノゾイサイトの組成の中のアルミニウムが三価のマンガンに置き換わるとピーモンタイトになると考えられています。
発色元素であるマンガンの影響でピンク系の色合いをもつと考えられ、多くの場合不透明です。
見た目だけだとロードナイトともよく似ているので、間違えやすい石としてよく挙げられています。
クリノゾイサイトの価値基準と市場価格
価値基準
クリノゾイサイトは半透明や不透明のものがパワーストーンとして出回ることもありますが、透明度が高い高品質のものは希少性が高く、レアストーンとして扱われます。
それらはファセットカットに研磨され、どちらかというとコレクター向きの宝石として扱われることが多いようです。
他の色石と同様、色が濃く、鮮やかなもの。
透明度が高く、インクルージョンやキズ欠けが少ないもの。
カットが美しいもの。カラットが大きいもの程価値高く扱われます。
市場価格
クリノゾイサイトは、クォリティによっては一万円以下でも探せます。
サイズが大きくクォリティが高いものは数万円以上するものもあります。
どこで買える?
クリノゾイサイトは、ルースであればオンラインショップやミネラルショーなどのイベントで時々見かけることがあります。
ジュエリーとなるとグッと数が減り、半透明や不透明の数珠状のブレスレットであれば比較的手に入りやすいかもしれませんが、宝石品質のクリノゾイサイトのジュエリーは殆ど見かけない印象があります。
お気に入りのルースを見つけて、オーダーメイドで自分だけのジュエリーを作っても素敵かもしれませんね!
クリノゾイサイトのお手入れ方法
前述したように、クリノゾイサイトは、モース硬度が6-7と高い方ではない上に、劈開性をもちますので、強くぶつけたり硬い地面に落としたりしないよう注意が必要です。
日常的なお手入れは、柔らかい布で拭いてからしまう程度で大丈夫です。
汚れが目立つ場合は、中性洗剤や石鹸を溶かしたぬるま湯の中で柔らかいブラシなどを使って洗ってあげて下さい。
少量のアルコールであれば、付いても問題ありませんので、気になる汚れをアルコールティッシュなどでサッと拭いてもキレイになります。
超音波洗浄機の使用は避けて下さい。
最後に
落ち着いた色合いがシックで大人っぽい雰囲気のクリノゾイサイト。
余談ですが、まだ鉱物の研究が確立していなかった時代には、これらの宝石はトルマリンだと考えられていたとか。
この先更に研究が進み、今まで同じだと思われていた鉱物が実は別の種類だった、ということが増えたら個人的にはちょっと面白いかな、と思います。
クリノゾイサイトは、宝石品質のものだとレアストーンとなり市場に出回る数も少ないですが、実際に目にする機会があれば、是非手に取ってみてくださいね♪
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『天然石のエンサイクロペディア』
著者:飯田孝一/発行:亥辰舎
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社 ほか