カラーレスからホワイトの色合いのものが印象強いオリゴクレース。
食べ物の名前に似ているせいか、個人的にはちょっと美味しそうな印象があります(笑)
調べたところ、カラーレスやホワイト以外の色や少し特徴が異なるものが産出されることもあり、なかなか奥深い要素を感じる宝石ということが分かりました。
何やらあのサンストーンと深い関係にあるそうです。どんな関係があるのでしょうか。
という訳で、オリゴクレースの特徴や原石、価値基準、お手入れ方法など色々調べてみましたので早速お話していきましょう!
目次
オリゴクレースとは?
オリゴクレースは、長石(フェルスパー)グループに属する鉱物です。
色は一般的にカラーレスやホワイト、ライトグリーンが多いとされますが、その他の色や特徴をもったものが産出されることもあります。
では、少しずつ詳しくお話していきましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Oligoclase(オリゴクレース) |
和名 | 灰曹長石(かいそうちょうせき) |
分類 | ケイ塩酸鉱物 |
結晶系 | 三斜晶系 |
化学組成 | (Na,Ca)(Al,Si)AlSi2O8 |
モース硬度 | 6.0-6.5 |
比重 | 2.6 |
屈折率 | 1.53-1.55 |
光沢 | ガラス光沢~真珠光沢 |
特徴
前述したように、オリゴクレースは長石(フェルスパー)グループに属する鉱物です。
オリゴクレースについて説明する前にまずは長石について簡単に説明させて頂きますね。
長石について
長石(フェルスパー)はオーソクレース、アルバイト、アノーサイトを主成分とする固溶体鉱物の総称で、20種類以上の鉱物が属するグループ名のようなものです。
固溶体とは複数の固体成分が混ざり合ってできた鉱物のことを指します。
カリウムとナトリウムを多く含むアルカリ長石グループとナトリウムとカルシウムを多く含む斜長石グループ(プラジオクレース)の2つに大きく分けられます。
更に含まれる成分比率によって細かく分けられます。
オリゴクレースの特徴
オリゴクレースは斜長石グループ(プラジオクレース)に属します。
斜長石グループはアルバイト(曹長石)とアノーサイト(灰長石)を主とするグループです。
その中で、70~90%がアルバイト、10~30%がアノーサイトのものがオリゴクレースに分類されるといいます。
断口は貝殻状、不平坦、多片状などをしており、2方向に完全な劈開の性質をもち、脆いことも特徴です。
結晶は透明~不透明で、白い条線を見せます。
全体的にガラス光沢をもちますが、劈開面では真珠光沢を放つといわれています。
色
前述したとおり、多いのはカラーレス、ホワイト、ライトグリーン。
他にもグレー、レッド、褐色、ライトイエロー、オレンジのものなどが見つかっています。
産地
主な産地はアメリカ、タンザニア、インドです。
他にもケニヤ、カナダなどで産出されています。
オリゴクレースの原石の形
オリゴクレースは、斜長石グループ(プラジオクレース)の中で、最も多く産出されるといわれています。
原石は主に花崗岩(グラニット)、花崗岩ペグマタイト、閃緑岩(ダイオライト)、流紋岩(ライオライト)、珪長質火成岩などで生成されます。
オリゴクレースは三斜晶系ですが、結晶で発見されることはあまりなく、殆どが塊状や粒状、卓上結晶の双晶などで見つかっているそうです。
名前の意味
前述したとおり、オリゴクレースは、2方向に完全な劈開の性質をもちます。
しかしオリゴクレースの劈開性は主成分であるアルバイト(曹長石)に比べると完全ではない(劈開性が強くない)と考えられています。
このことから、1826年にドイツの鉱物学者オーガスト・ブライトハウプト(August Breithaupt)によって、ギリシャ語の「oligos(少ない)」と「clasein(壊れる)」から「Oligoclase」と名付けられたといわれています。
ちなみに、「オリゴクレース」と命名される以前の1824年にスウェーデンの科学者で医師のイェンス・ヤコブ・ベルセリウス(Jöns Jacob Berzelius)が「ソーダ・スポジュメン」と名付けたという記録も残っているようです。
見た目がスポジュメンに似ていることからそう名付けられたのだとか。
オリゴクレースの仲間
先に簡単に説明したとおり、オリゴクレースが属する長石グループには多種多様な種類が存在します。
主にアルカリ長石グループと斜長石グループ(プラジオクレース)の2つに大きく分けられ、それぞれの中で成分比率によって細分類されます。
では、アルカリ長石グループと斜長石グループの中に主にどんな種類があるのか、もう少し詳しく説明しましょう。
アルカリ長石グループ
アルカリ長石グループに属するものはカリウムとナトリウムを多く含みます。
主な種類は、オーソクレース(正長石)、マイクロクリン(微斜長石)、サニディン(玻璃長石)、アノーソクレース(曹微斜長石)、アルバイト(曹長石)です。
6月の誕生石としても有名なムーンストーンはオーソクレースの一種が多いとされ、ブルーグリーンの色合いが美しいアマゾナイトはマイクロクリンの宝石品質のものを指します。
斜長石(プラジオクレース)グループ
斜長石グループに属するものは、カルシウムとナトリウムを多く含みます。
オリゴクレース以外の主な種類は、アルバイト(曹長石)、アンデシン(中性長石)、ラブラドライト(曹灰長石)、バイトウナイト(亜灰長石)、アノーサイト(灰長石)です。
ナトリウムを主成分とするアルバイトは両方のグループに属します。
コレクターの間で人気の高い、オレゴンサンストーンはラブラドライトの一種、レインボームーンストーンと呼ばれ流通している宝石もラブラドライトやアンデシンラブラドライト(アンデシンとラブラドライトの中間体)であることが多いとされます。
長石グループの鉱物の中には、ムーンストーンのシラー、ラブラドライトのラブラドレッセンスのように独特の光学効果を見せるものがあります。
光を当てると内部がキラキラと輝くアベンチュレッセンスを見せるサンストーンもその一つです。
サンストーンとは
サンストーンは長石(フェルスパー)グループの中で地色がオレンジ~レッドで、アベンチュレッセンスを示すものを指します。
この輝きは、石に内包される微小な鉱物が一定の方向に並んでいることに起因すると考えられています。
これらの内包物はヘマタイト(赤鉄鉱)やゲーサイト(針鉄鉱)、レピドクロサイト(鱗鉄鉱)、銅であることが多いとされます。
内包物が小さい場合は、レッドやゴールドの煌めきを放ち、内包物が大きくなると、煌めきもより大きくなると考えられています。
アベンチュレッセンスを示す宝石は長石以外にもクォーツ、アイオライトなどに見つかっています。
サンストーンは、前述したとおり、長石の中で地色がオレンジ~レッドで、アベンチュレッセンスを示すものです。
この条件に当てはまれば、種類を問わずサンストーンと呼ばれます。サンストーンが多く見られる種類は以下のとおりです。
アルカリ長石グループ
オーソクレース
斜長石グループ(プラジオクレース)
オリゴクレース、アンデシン、ラブラドライト
サンストーンの産地
サンストーンはアメリカ、インド、チベット(中国)ノルウェー、タンザニアなどが主な産地です。
特にアメリカオレゴン州で産するラブラドライトはオレゴンサンストーンと呼ばれ、コレクターを中心に近年人気が上昇しています。
この他、カナダ、ロシア、コンゴ、ケニア、日本などでも産出しています。
オリゴクレースとサンストーンとの関係
前述したとおり、オリゴクレースの中にもサンストーンが存在します。
そして、サンストーンの中で最も一般的なものがオリゴクレース種だといわれています。
一般的にサンストーンの鑑別書に細かい鉱物種までは記されないことが多いようですが、調べれば多くは分かるそうです。
鑑別に出す機会があれば、その時一緒に聞いてみたら教えてくれるかもしれません。
オリゴクレースの価値基準と市場価格
前述したとおり、オリゴクレースはカラーレスやホワイトのものが多いのですが、色があるものは色の濃淡や鮮やかさなどで評価されます。
その他、内包物やキズなどがなく透明度が高いもの、カットバランスが良いものほど高く評価されます。
サンストーンの場合は、色の鮮やかさとアベンチュレッセンスの美しさが最も重視され、その他透明度、カラット、カットなどで総合的に評価が決まります。
オリゴクレースの市場価格は、クォリティに依りますが、数千円~数万円位のものが多い印象です。
サンストーンの場合も同様ですが、全般的に一般的なオリゴクレースよりも高くなる傾向にあります。
オリゴクレースのお手入れ方法
オリゴクレースは2方向に完全な劈開をもちますので、強い衝撃を与えるとキズが付いたり欠けたりする可能性が高いです。
ジュエリーとして身に着ける場合は特に取り扱いに注意しましょう。
保管する際も他の宝石とぶつからないように仕切りのある箱や小袋に入れておくと安心です。
多少のアルコールは問題ありませんので、アルコール消毒液が少し掛かっても心配はありません。
もし過度に掛かるようであれば念のため柔らかい布などで拭き取るか石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯でしまう前に洗うとより安心です。
汚れも取れますので、定期的に洗ってあげると美しさを保ちやすいと思います。
超音波洗浄器の使用は避けて下さい。
最後に
長石(フェルスパー)グループに属する鉱物の中でも、オリゴクレースは知れば知るほど興味深い石だと思います。
カラーレスのオリゴクレースとグリッターを散りばめたようなサンストーンは、まるで違う石のようですよね。
サンストーン以外のものは市場に多く出回らない宝石ではありますが、この記事をきっかけに興味をもつ方が増えたら嬉しく思います☆
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか