ジュエリーとして加工されるよりもコレクター用にカットされたものの方が多い印象の宝石、オーソクレース。
フェルスパー(長石)グループの一種です。
6月の誕生石として有名なムーンストーンと深い関係にあるといいます。
オーソクレースとは一体どんな宝石なのでしょうか。
こちらでは、フェルスパーグループの代表鉱物の一つであるオーソクレースについて、鉱物としての特徴から名前の意味、ムーンストーンとの関係など、幅広くご紹介していきたいと思います。
オーソクレースとは?
冒頭でも触れたように、オーソクレースはフェルスパーグループ(長石族)に属する鉱物です。
フェルスパーグループ(長石族)は大きく分けて、以下の2種類に分類されます。
- アルカリ長石・・・カリウムかナトリウムのいずれかを含むか、両方を含む。
- 斜長石・・・ナトリウムかカルシウムのいずれかを含むか、両方を含む。
オーソクレースはカリウムを主成分とするため、アルカリ長石に分類されています。カリウムの長石であることから、「カリ長石」とも呼ばれることもあるそうです。
では、順番に詳しく説明していきますね。
鉱物としての基本情報
英名 | Orthoclase |
和名 | 正長石 |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | KAlSi3O8 |
硬度 | 6-6.5 |
比重 | 2.55-2.63 |
屈折率 | 1.52-1.53 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
二平面が直交するように割れるという性質をもつオーソクレース。
結晶がもろいことから宝石としてカットされることが比較的少ないとされる宝石です。
宝石品質と呼ばれるようなものがコレクター用にファセットカットされることはあるようですが、市場に出回ることはそれほど多くない印象です。
一般的に無色や黄色が多いといわれますが、赤やオレンジ、グレーなど他の色のものが産出されることもあるそうです。
カボションカットを施したとき、キャッツアイ効果を見せるものもあるといいます。
色
カラーレス、黄色、オレンジ色、グレー、ホワイト、淡青色、淡緑色、赤色、褐色など
実は意外とカラーバリエーションがある宝石といえるかもしれませんね。
産地
宝石品質のものが多く採れることで有名なのは、スリランカ、ミャンマー、マダガスカル、ドイツなど。
他にイギリス、チェコ、イタリア、スイス、スペイン、タンザニア、カナダ、アメリカ、ブラジル、インドなどでも産出されます。
またかつてロシアでは、約102トンもある単結晶が採れたこともあるそうです。
日本でも採れることがあるといわれていますね。
オーソクレースの原石の形
オーソクレースの原石は通常、花崗岩(グラナイト)や巨晶花崗岩(ペグマタイト)中に生成しますが、火成岩や接触変成岩から発見されることもあるそうです。
結晶は単斜晶系で、柱状や双晶、塊状で生成することが多いといわれていますが、珍しい状態で発見されることもあるようですのでご紹介しますね。
- アデュラリア・・・結晶が透明なことから「氷長石」と呼ばれています。結晶は低温で生成され、オーソクレースの変種に分類されます。
- カールスパッド式双晶・・・2つの結晶が平行に積み重なった「接合双晶」で生成されたもの。
- ペリクリン式双晶・・・アルバイト双晶に似た、接合双晶で生成したものです。
主要な造岩鉱物の一つであるオーソクレースは、花崗岩の主要成分の一つでもあります。花崗岩に見られるピンク色や白色の部分はオーソクレースである場合が多いそうです。
オーソクレースの名前の意味
前述したように、オーソクレースの結晶は2方向にある劈開(へきかい)面が直交するように割れるという特質をもちます。
このことから、「まっすぐな割れ」という意味を持つギリシャ語「Orthos」と「Klassis」という言葉にちなんで「Orthoclase」と名付けられたと伝わります。
ムーンストーンとの関係とは
実は俗にムーンストーンと呼ばれている宝石は、他の多くの宝石と異なり、一つの鉱物のことだけを指す宝石名ではありません。
ムーンストーンとはフェルスパーグループ(長石族)の中で、表面に月光のような青白い輝き「シラー効果(シーン)」を見せる種類のことを指します。
なので論理的には、含まれる成分が異なっても、フェルスパーの一種でシラー効果をあらわせばムーンストーンになるという訳ですね。
ただ、多くはオーソクレースを主体とした中にアルバイトが含まれるものだといわれており、オーソクレースとアルバイトが交互に微細な層をつくると、光の反射によってシラー効果があらわれると考えられているようです。
うーーん、なかなか難しいですね。。
ちなみにムーンストーンは、このシラーの輝きが月光のように見えることから「ムーンストーン(月長石)」と呼ばれるようになったといわれています。
まあ、要は自然の神秘の中で生まれた美しい産物ということです!
そしてその神秘的な様子に思わず別の名前を付けたくなってしまった気持ち、少し分かるような気がします!!
オーソクレースの価値基準
オーソクレースはもろいことから、ジュエリーとして加工されることはあまりない印象です。
そのため、コレクター用にカットされることが殆どだといわれています。
他の色石同様に、透明感が高く、濃く鮮やかな色をしているほど価値が高くなります。
ちなみに、ムーンストーンは透明度とシラー効果の美しさで評価されるといいます。
特に、透明感が高く青味のある乳白色のシーンを見せる「ブルームーンストーン」が最も高く評価されるといわれています。
しかし現在ブルームーンストーンは新たに産出されることはなく、市場に出回ることも殆どなくなってしまったため、同じような効果を見せる他の宝石がブルームーンストーンとして販売されていることが多いそうです。
それについてはこちらの記事で詳しく説明していますので、良かったら参考にしてくださいね。
また、キャッツアイ効果を見せるムーンストーンも希少性があることから、普通のムーンストーンよりは高価に取引されることが多いようです。
最後に
オーソクレースはフェルスパーグループのアルカリ長石に属する鉱物ということが分かりました。
カリウムを主成分としており、マイクロクリンとサニディンという鉱物も同じグループに属しています。
一般的に良く知られるムーンストーンとも深い関係にあるオーソクレース。ムーンストーンに比べて知名度は高くないかもしれませんが、この機に興味をもって頂けたら嬉しいです♪
そしてもし手に入れる機会があったら、もろく欠けやすい宝石ですので取り扱いには注意してくださいね。
カラッツ編集部 監修