レインボームーンストーンという宝石をご存知でしょうか。
表面に浮かび上がる虹色の輝きはなんとも言えない美しさがあり思わず目を奪われてしまいます。
なぜあのように華麗な色が走るのか、とても不思議ですよね。
一般的なムーンストーンの光は大人しくて優しい印象なのに対し、レインボームーンストーンはとても華やか。
同じ名前がついているし、見た目も少し似ていることから、レインボームーンストーンはムーンストーンの七色バージョン?と思ったのですが、実は違いました!
なぜレインボームーンストーンは、ムーンストーンの名前がついているのでしょうか!?
そしてどうやらレインボームーンストーンには主に2種類あるとのこと。
レインボームーンストーンの秘密と魅力、2つのレインボームーンストーンの違いなどについて探ってみましょう。
※フェルスパーグループの識別については、鑑別機関および時代によって見解が異なる場合があります。
目次
レインボームーンストーンとは?
画像:アンデシンラブラドライト
レインボームーンストーンは鉱物名ではなくコマーシャルネーム(流通名)です。
多種多様な長石(フェルスパー)グループに属する鉱物の中で、表面に光を当てると虹色の煌めきを見せるものを指します。
主にホワイトラブラドライトとアンデシンラブラドライトが、レインボームーンストーンとして流通しているのだそうですよ。
ホワイトラブラドライトは、ラブラドライト(曹灰長石:そうかいちょうせき)の一種で地色がカラーレスからホワイトのものです。
ラブラドライトは一般的にラブラドレッセンスと呼ばれる光学効果を示します。
アンデシンラブラドライトは、アンデシンとラブラドライトの固溶体(中間体)に当たる鉱物で、ラブラドライトに似た光学効果を示すものもあります。
ラブラドレッセンスの出方は地色や個体によって異なり、虹色の揺らめきのような出方をするものがレインボームーンストーンとして流通しているのです。
それぞれの特徴など詳細は後ほど改めてご紹介しますね!
長石(フェルスパー)グループについて
長石(フェルスパー)とは、20種類以上ある鉱物のグループ名です。
ムーンストーンもホワイトラブラドライトやアンデシンラブラドライトも長石グループの一種です。
とても多様性のある長石は、地球地殻中で最も多い鉱物なのだとか。
地殻の60%が長石グループで占められている、という話も聞いたことがありますよ。
世界中どこでも、石ころをいくつか拾った時に長石グループの鉱物が含まれている確率は非常に高いのだそうです。それ位ありふれた鉱物なんですね。
なんと、地球だけではなく、月や隕石の中にも長石が含まれているのだそうですよ!
宇宙にも長石グループの鉱物があるんですねぇ。本当に驚きです。
また、長石は砥石や陶磁器の材料としても使われていて、とても身近な鉱物でもあります。
長石グループは、アルカリ長石類と斜長石類に大別することができます。
アルカリ長石は、カリウムを含んだオーソクレース(正長石)とナトリウムを含んだアルバイト(曹長石)で構成されています。一般的なムーンストーンはここに属しています。
カリウムとナトリウムを両方含む長石は、その割合によって様々なアルカリ長石になりますが、代表的なものにはマイクロクライン(微斜長石)やサニディン(玻璃長石)などがあります。
一方、斜長石はナトリウムを含んだアルバイト(曹長石)とカルシウムを含んだアノーサイト(灰長石)で構成されています。
ナトリウムとカルシウムの両方を含んでいる代表的な斜長石には、オリゴクレース(灰曹長石)、アンデシン(中正長石)、ラブラドライト(曹灰長石)などがあります。
レインボームーンストーンは斜長石の一員なのですよ。
ざっと長石について説明しましたが、種類が多くて混乱してしまいますよね・・・。
長石の世界は広くて深くて複雑なのです~。
ムーンストーンとは
月の光を宿したような、優しく神秘的な宝石ムーンスト―ン。
実はムーンストーンという宝石名は、ひとつの宝石を表しているものではなく、アルカリ長石の中でアデュラレッセンス(青色閃光)というシラー効果があらわれるものに対してつけられているそうです。
実際はその中の一つ、オーソクレース(正長石)の変種であることが殆どで、オーソクレース(正長石)とアルバイト(曹長石)が薄い層となって相互に重なり形成されているといいます。
この薄い層の重なりに光が当たると、ムーンストーン独特のシラーが出現するそうです。
定義からいうと、オーソクレースとアルバイトの組み合わせ以外でもシラー効果が見られるアルカリ長石はムーンストーンと呼ばれる可能性はありそうですが、今のところ、他種のムーンストーンはあまり見かけられないとのこと。
ムーンストーンを動かすと、ブルーやホワイトなどの閃光が蓮の葉の上の水滴のようにコロコロと動いて、なんだかとても神秘的な印象を受けますよね。
ブルームーンストーン
ムーンストーンの中でブルーのシラーが出るものをブルームーンストーンと呼びます。
かつてスリランカで産出され、ムーンストーンの中で最も人気も価値も高く扱われた種類です。
現在は鉱山が閉山し、殆ど市場に出回らないといわれていますが、今でもブルームーンストーンの名で市場に出回る宝石があります。
それらは主に、先に説明したホワイトラブラドライトやアンデシンラブラドライトであったり、ペリステライト(またはアルバイトムーンストーン)と呼ばれる宝石のことが多いそうです。
いずれも長石(フェルスパー)グループに属する宝石でブルームーンストーンに似たブルーの閃光を放つことから、詳細をきちんと明記すれば、ブルームーンストーンという流通名を使用できる、というのが宝石流通業界の通説となっています。
※鑑別書でブルームーンストーンになるものは、アルカリ長石の中でブルーのシラーが出るものだけです。
2つのレインボームーンストーンの特徴
左-ホワイトラブラドライト 右-アンデシンラブラドライト
では、2つのレインボームーンストーン、ホワイトラブラドライトとアンデシンラブラドライトについて、もう少し詳しくご紹介しましょう。
ホワイトラブラドライト
ホワイトラブラドライトは、斜長石類の中でカルシウムの割合が多いラブラドライト(曹長石)の一種で地色がホワイトやカラーレスで、半透明~透明のものを指します。
その中で、虹のような揺らめきを示すものが、レインボームーンストーンとして流通しています。
ラブラドライトは、アルバイト(曹長石)とアノーサイト(灰長石)の固溶体(中間体)で、その割合が、50:50から30:70までの範囲に属しているそうですよ。
アルバイトとアノーサイトの薄い層が重なり、その中で金属鉱物であるマグネタイトやヘマタイトが発達して干渉することで、七色のラブラドレッセンスが生じるとのことです。
ラブラドライトの基本的な色調はブルーやグレーで、虹色の光が浮き出ている様はとても幻想的で素敵なのです。
彫刻が施されて、ブローチなどに加工されるものも多いそうですよ。
ブルーやグレーのラブラドライトも魅力的ですが、レインボームーンストーンとして流通しているホワイトラブラドライトの華麗さはまた格別です。
アンデシンラブラドライト
アンデシンラブラドライトとは、アンデシン(中正長石)とラブラドライト(曹長石)の固溶体(中間体)で、斜長石類に属しています。
カルシウムが多いラブラドライトよりはナトリウムの含有量が多いということが、ホワイトラブラドライトとの違いになっているそうです。
アンデシンラブラドライトの中で、ホワイトラブラドライトによく似た光学効果のあるものがレインボームーンストーンとして流通しているのですよ。
アンデシンラブラドライトに関する資料が少ないため詳細が分からず残念ですが、七色の美しさは変わらないですよね。
レインボームーンストーンの魅力!
画像:アンデシンラブラドライト
レインボームーンストーンの魅力を言葉で説明するのには限界を感じてしまいます。
ぜひ美しい画像をご覧になって、それぞれの魅力と違いを見比べてみてください。
ホワイトラブラドライト
ホワイトラブラドライトは、虹を閉じ込めた水滴のようですね!
手のひらに載せて、いつまでも眺めていたい魅力があります。
アンデシンラブラドライト
アンデシンラブラドライトの方がより華やかな印象がありますね。
ムーンストーンに似た優しい雰囲気のものもあれば、カラフルで力強いものまで様々ですね!
レインボームーンストーンの感想
画像:アンデシンラブラドライト
では次に、私が実際にレインボームーンストーンを見た時の感想をご紹介しますね。
私はスリランカで、とても質の良いレインボームーンストーンを見せてもらったのですが、本当に虹みたいに色が変わる様子に「うわぁ綺麗・・・」と思わず声が出てしまったのを覚えています。
外国から入ってきたという、そのレインボームーンストーンは、ティアードロップ形にカットされていて、煌びやかな色が次々に現れて、それまで見たことの無い美しさでした!
ムーンストーンとレインボームーンストーンを並べて、じっくり観察させてもらいましたよ。
ムーンストーンは、内側から青くて柔らかい光が浮かびあがる感じで、霧がかかった夜空に、ポワンと青い月が浮かんでいるという印象でした。
それに対してレインボームーンストーンは表面を七色が走るような、ちょっと派手な感じ。まるで、霧の無い冴え渡った空を、色とりどりのオーロラが走っているようでしたよ。
見せてもらったレインボームーンストーンは、ムーンストーンよりもずっと高価でしたが、あの時買っておけばよかったなー、と後悔しています。
レインボームーンストーンの価値基準と市場価格
左-ホワイトラブラドライト 右-アンデシンラブラドライト
価値基準
レインボームーンストーンの価値は何と言っても虹色の閃光が美しいかどうかで決まります。
美しいもの程価値が上がります。
ホワイドラブラドライトかアンデシンラブラドライトかで価値が大きく変わることは少ないと思います。
ただ、近年アンデシンラブラドライトが日本市場に多く出回るようになり、人気も上昇していることからアンデシンラブラドライトの方が若干高くなる傾向にはありそうです。
その他、カットの美しさ、透明度の高さ、サイズの大きさなどでも評価され、価格が決まります。
市場価格
レインボームーンストーンはサイズやクォリティによっては一万円以下でも十分探せます。
全般的には数万円位のものが多く、サイズが大きくトップクォリティのものであれば十万円位するものもあります。
どこで買える?
レインボームーンストーンは、ルースであれば実店舗でもオンラインショップでも取り扱っているお店は比較的多い印象です。
ジュエリーとして販売されているものも増えているように感じます。ご興味がある方は探してみて下さいね。
最後に
レインボームーンストーンについてお話しましたが、いかがでしたか?
虹色の煌めきは、一目見たら虜になってしまう魅力があります。
ムーンストーンとレインボームーンストーンの関係についても知ることができましたね。
両者は同じ長石グループなのですが、ムーンストーンはアルカリ長石類で、レインボームーンストーンは斜長石類、という違いがありました。
レインボームーンストーンの光は、ブルーが強いもの、オレンジが強いもの、全体的に薄く散らばっているもの、濃い色が移り変わるものなど、実に様々です。
次はどんなレインボームーンストーンとの出会いがあるでしょうか。とても楽しみです!
※フェルスパーグループの識別については、鑑別機関および時代によって見解が異なる場合があります。
カラッツ編集部 監修