宝石好きのみなさまは、ルビーの産地と聞いて、まずどの国が思い浮かびますか?
ミャンマー、タイ、ベトナムなどアジアの国々は有名で、特にミャンマーでは高品質のルビーが採掘されることで知られています。
そのほか、モザンビークやケニアなどアフリカでも採れますが、北米にあるグリーンランドでもルビーが産出されることはご存じでしょうか。
主要産地のものに比べると流通量は多くありませんが、独特の柔らかな色合いで注目を浴びています。
グリーンランド産ルビーの色や特徴、歴史、価値基準などをお伝えしていきます。
目次
ルビーの産地

ルビーは古代から世界中で珍重されてきた宝石です。
産地として最も有名なのはミャンマーですが、そのほか、ベトナム、カンボジア、タイ、スリランカ、マダガスカル、モザンビークなども、高品質のルビーが採れることで知られています。
古くから採掘が続いているのは、ミャンマーやスリランカなどで、タイでは1970年頃、ベトナムでは1990年頃、モザンビークでは2008年頃からと、実は近代になってから採掘されるようになった産地も多いです。
そして今回お話するグリーンランド産ルビーは、1960年代後半頃に発見され、2017年頃から本格的に採掘が始まったとされる、産地としての歴史は浅い宝石です。
しかしながら、ルビーが形成された年代でいうと、現在の研究では、最も古いのはグリーンランドと見られており、26〜29.7億年前の始生代に出来たとされる変成岩類の中から見つかっています。
インド、スリランカ、ケニア、モザンビークなどは4.5~7.5億年前、ミャンマー、ベトナムは500~4500万年前、タイやカンボジアは50~300万年前に形成されたと考えられていますので、グリーンランド産ルビーがいかに古い時代に出来上がったかが分かりますね。
▼ルビーの産地と産地別特徴について詳しくはこちらで紹介しています
グリーンランド産ルビーの特徴

グリーンランド産ルビーは、内包物が入りやすいという特徴があります。
そのため、採掘後、洗浄された後に、ホウ砂(ボラックス化合物)を用いた加熱処理が施されるのが一般的です。
ホウ砂を用いることで小さな亀裂やひび割れを充填し、耐久性が高められるとともにルビーをより美しく見せることができるのだそうです。
半透明から不透明のものが多く、透明でクオリティの高い宝石品質のものはあまり採れないとされます。
ほとんどがカボションカットかビーズにカットされ、クオリティの高い原石にのみファセットカットが施されます。
市場に出回っている、透明度の高いグリーンランド産ルビーはとても貴重なものなのですね。
グリーンランド産ルビーの色

グリーンランド産のルビーの色は、ディープレッドからピンキッシュレッドまで色幅があります。
グリーンランド・ルビー社のグレーディング基準によると、グリーンランド産ルビーでいうところの“ディープ・レッド”とは、ルビーの最高峰の色合いとして知られる“ピジョン・ブラッド”に匹敵する色合いを指すようです。
ちなみに、グリーンランドで採掘されるコランダムの内、最も多いのはピンクサファイアで、次いでルビー、時にはブルーサファイアも見つかるとのことです。
そのほか、少量ですが、カラーレス、パープル、ブラックなどが採れることもあります。
グリーンランド産ルビーの歴史

グリーンランドでは、いつどこでルビーが見つかり、どのように採掘が始まったのでしょうか。
グリーンランド産ルビーの発見から発展、そして現在採掘を行うグリーンランド・ルビー社の設立までを簡単にご紹介していきます。
発見
1966年、グリーンランド南西部にある“Qeqertarsuatsiaat”という小さな集落の近くでルビーが初めて発見されました。
1970年代後半から1980年代前半にかけて、グリーンランド産のルビーが商業的に注目されるようになり、カナダの探鉱会社「Platinomino 」が、ルビーを産出する地帯の地図作成や含有ゾーンの探索などを行いました。
発展
2004年には、カナダのバンクーバーを拠点とする炭鉱会社「トゥルー・ノース・ジェムズ(True North Gems)」がライセンスを取得。採掘を開始し、翌年に合計3トンのルビー原石が採取されました。
2006年には、これまでルビーの原石が発見された中で特に有望である、AappaluttoqとKigutilikという土地での採掘に力を入れるようになります。
これらの場所ではそれぞれ30トンの原石が採取され、Aappaluttoqでは、さらに多くの鉱床が発見されました。
2009年になると、グリーンランド政府が天然資源に関する法律やライセンス、許可などのすべての管理を行うようになります。
これにより、鉱山開発や採掘、宝石の取引や販売などは、政府からの正式な許可を得ることが必要になりました。
2016年、採掘に必要な資金が調達できず、「トゥルー・ノース・ジェムズ」が倒産します。
グリーンランド・ルビー社の設立
2016年に、グリーンランド政府天然資源省からライセンスを与えられた「グリーンランド・ルビー」社が創立し、2017年5月よりAappaluttoqで正式に採掘を開始。
市場にも多く出回るようになりました。
しかし2023年にグリーンランド産ルビーの鉱山が閉山したとの話が浮上。
同社に問い合わせたところ、採算が合わず鉱山での生産を一時的に停止しているが、完全に閉鎖した訳ではないとのこと。
しばらくの間は在庫販売のみとし、事業を立て直した後、再開する予定でいるとのことでした。
早く再開することを祈るばかりですね!
グリーンランド産ルビーの価値基準と価格相場

グリーンランド産ルビーは、どのような基準で価値が決められ、どれほどの価格で流通しているのでしょうか。
グリーンランド産ルビーの価値基準、価格相場、どこで買えるのかなど、見ていきましょう。
価値基準
ルビーは全般的に、カラットの大きいものが採掘されることが少ないです。
そのため、2カラットを超えるものは価格が大きく上昇します。
クオリティの面では他のカラーストーンと同様に、色の鮮やかさ、透明度の高さ、カットの美しさが優秀であるほど、価値が高くなる傾向にあります。
価格相場
グリーンランド産ルビーは、大きさやクオリティによっては数万円の価格がつけられるという印象です。
さらに2カラットを超えるものになると、クオリティによっては数百万円もの価格が付く場合もあります。
クオリティが低い場合には産地の鑑別を行わず、一般的なルビーとして販売されることもあります。
どこで買える?
ルビーを取り扱っているショップは一般的に多いのですが、グリーンランド産ルビーとなると、国内市場ではそれほど多く出回っていないようです。
しかし、レアストーンを数多く取り扱うショップやミネラルショーなどでは見つかることがありますので、そういったところを中心に探すのが良さそうです。
カラッツSTOREでも取り扱うことがありますので、良かったらチェックしてみて下さいね。
▽カラッツSTOREのグリーンランド産ルビー▽ |
最後に

グリーンランド産ルビーは採掘が始まったのは最近とはいえ、形成されたのは世界で最古という、長い歴史を持っていることが分かりました。
今回、色々調べているうちに、私はすっかりグリーンランド産ルビーの虜になってしまいました。
ディープレッドからピンキッシュレッドなど美しい色合いが多く、いつかコレクションのひとつとして加えたいと思っています!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
https://www.greenlandruby.gl/ ほか