お気に入りのジュエリーを身につけてお出かけすると気分が上がったりしますよね。
調べてみると人は紀元前の昔からジュエリーで着飾っていたという記録が残っています。
昔の人はどんな気持ちでジュエリーを身につけていたのでしょうか。
現在と違いはあるのでしょうか。
ジュエリーと宝石の歴史についてわかりやすく解説していきたいと思います。
目次
宝石はいつから採掘されていた?
文献などによると、宝石は人類が誕生してから比較的すぐに採掘され始めたと考えられています。
新石器時代(紀元前25000〜12000年)最初のジュエリーは貝殻や動物の牙などを使ったものでした。そこから徐々に宝石が使われるようになっていきます。
最初は加工しやすい柔らかい石が主に使われていましたが、技術が向上するにしたがって研磨をしたり穴をあけたりが出来るようになり、硬い石も使われるようになりました。
紀元前7000年前のメソポタミアのジャルモではカーネリアンや水晶を加工したビーズが流行したと伝わっています。
紀元前2500年頃に作られたと思われるネックレスを資料で見たことがありますが、宝石を色々な形に研磨したり、表面に打刻加工がしてあったりして、高い技術が見て取れました。
ラピスラズリとカーネリアンを組み合わせて作られていたのですが、配色も素晴らしく、とても紀元前につくられたものとは思えない出来栄えでしたよ。
昔から採掘されていた宝石とは
美しい色をした宝石は古代から人々を虜にしてきました。
中世までは山形のカボションカットと厚板状にカットされたスラブが主流だったようですが、カメオやインタリオ、彫刻などの素材として用いられることも多かったといいます。
それでは、古来より愛されてきた宝石の一部をご紹介しましょう。
ガーネット
ガーネットは紀元前3100年頃に見つかったとされる宝石です。
鮮やかで深い赤色が印象的で、今でもとても人気がありますね。
エジプトのファラオの装飾品としても使用されていました。
赤色が一般的でしたが、1860年に緑色のデマントイドガーネット、1882年にロードライトガーネットが見つかり注目を集めたことで人気が高まります。
ヨーロッパでも人気が高く、宝石店のショーウィンドウに色とりどりのガーネットが並ぶ様子が描かれた書物もあるようですよ。
ルビー
ルビーは紀元前8世紀頃からスリランカで採掘されていたとされ、聖書の中にも登場します。
ルビーの鮮やかな赤は血の色ととてもよく似ていることから、生命の力を持っていると信じられていました。
中世からルネッサンスには愛の象徴として婚約指輪に使用されることも多かったようですよ。
サファイア
青色をはじめ、様々な色が楽しめるサファイア。最初に発見されたのは紀元前1700年頃といわれています。
現在でも主な産地のひとつとして知られるスリランカでは、当時から良質なサファイアが採れていたようで、マルコ・ポーロもその著書の中に記しています。
スリランカのサファイアは今でもセイロンサファイアとして人気が高く、少し紫味を帯びた淡めの青色が特徴です。
エメラルド
紀元前1700年頃に見つかったとされるエメラルドは、クレオパトラが愛した宝石としても有名です。
自分の名前がついた鉱山を所有していたこともよく知られた話ですね。
エジプトで採れたエメラルドは淡く半透明のものが多かったそうですよ。
エメラルドにまつわる伝説や言い伝えは他にも数多くあり、例えば、『目の疲れやストレスを軽減してくれる』とか『緑色の宝石には大地の精霊の力が宿る』などと考えられていた時代もあったようです。
いつからジュエリーは作られている?
前述したとおり、ジュエリーの始まりは新石器時代に作られた牙や貝を使用した装身具と見られています。
どうして人間は身を飾るようになったのでしょうか。
ジュエリーを身につけるようになった理由ははっきりとは分かっていませんが、いくつかの憶測がたてられています。
代表的な説を4つご紹介しましょう。
- 闇の中に潜む悪いものや襲ってくる動物から身を守るための「お守り」だったという説
- 人間の遊び心が生み出したものという説
- 他人と違う人になるために、身を飾ってオリジナリティを出していたという説
- 3の逆説で、人間の何かに所属していたいという気持ちから、お揃いの装身具を身につけていたという説
どの説も一理あるなぁと感じますね。
そして時代が進むと、人間関係が複雑に絡みあうようになり、階級社会ができあがります。
人々をまとめあげる王の出現です。
王は自分の権威を誇示するため様々な装飾品を身につけ、支配者が代理をする「神」を表現しました。
やがてキリスト教が生まれると、キリスト教の荘厳さを表すために聖職者も装飾品を身につけるようになります。
さらに時代が進み18世紀になると、産業革命が起こり、これがジュエリーの概念を大きく変えるきっかけとなります。
王族・貴族でなくても事業を起こして成功すれば、資産を手にし裕福に暮らすことができるようになったのです。
裕福な人が増えたことでジュエリーが大衆化し、家族や恋人のためにジュエリーをプレゼントする人も増えていきました。
ジュエリー発展の歴史
ジュエリーは人間の文化、文明と共に発展していきました。
デザインやモチーフ、宝石の留め方を見れば当時の製造技術、芸術、時代背景を知ることができますよ。
紀元前のジュエリー
宝石をジュエリーとして身に着けるようになったのは紀元前7000年ごろからだといわれています。
古くから人々は宝石には特別な力があると考え、石に対する信仰のようなものがあったと伝わっています。
日本でもこの頃作られたと見られる翡翠の勾玉が発見されています。
古代エジプトで作られたというアメジストのリングの写真を見たことがあります。
アメジストをスカラベ(甲虫の一種)の形に彫刻し、ゴールドのリングにセッティングされていました。
この頃にはすでに石の研磨だけでなくゴールドをリングに加工する技術があったとは驚きですね。
中世のジュエリー
ヨーロッパでは中世には男女問わずジュエリーを身につけるようになりました。
当時は信仰を表すために身につけられていたそうで、当時流行したデザインはキリスト教と騎士道に関するものがほとんどだったとか。
宝石には神秘的な力があるとし、宝石の種類によって様々な効力があると信じられていました。
使われていた地金は主にシルバーやゴールドで、サファイア、ルビー、真珠、エナメル細工も人気があったそうですよ。
ルネサンスのジュエリー
ルネサンスとは、元々14世紀からイタリアで始まった古代ギリシャ・ローマ文化の復興をしようとする文化運動です。
この時代、ジュエリーも古代ギリシャ・ローマの美術から影響を受け、神話をモチーフにしたデザインの人気が高まります。
衰退していたカメオやインタリオも再評価され、16世紀にはイタリアがカメオ彫刻の中心地となりました。
同じ頃、大航海時代にあったヨーロッパでは、貿易が盛んで、文化や経済が発展していきます。
宝石の留め方や新しいエナメル技術が開発され、さらに華やかなジュエリーがたくさん登場しました。
人気のデザインは人魚や船など航海に関するものだったそうですよ。
大きな船に乗って海を渡る船乗りや商人たちに思いを馳せたり、航海のお守りとして贈る人もいたかもしれませんね。
18世紀から発展したアンティークジュエリー
産業革命が起こり一般に広まったジュエリーはさらに色々な様式を生み出していきました。
一般的にアンティークジュエリーと呼ばれ市場で見かけるものは、18世紀以降にヨーロッパで流行したものが多いです。
それらのアンティークジュエリーを大まかに分けると、ジョージアン、ヴィクトリアン、アール・ヌーヴォー、エドワーディアン、アールデコの5つで、流行のスタイルやデザインなどが少しずつ異なります。
歴史的背景も大きく関わるジュエリーの変化は非常に奥が深いので、詳しくはこちらの記事をご覧くださいね。
日本のジュエリーの歴史
文献によると、日本でジュエリーが身につけられるようになったのは約17000年前の旧石器時代からといわれています。
数は少ないですが、ネックレスとして使われたであろう小玉類や、頭部の飾りと考えられている石製品などが見つかっています。
古墳時代には朝鮮半島南部の百済や伽耶との交流を通じて馬具や武器などと一緒に金、銀、宝飾品が日本に伝えられたと記録が残ります。
日本のジュエリーとして有名な勾玉は縄文時代から使われていたようで、和歌山県の古墳からは国内唯一の金で出来た勾玉が出土しています。
恐らくどこか外国から持ち込まれたものではないかと考えられているそうですよ。
衰退したジュエリー文化と日本独自の価値観
盛んだったジュエリー文化は7世紀ごろから徐々に見られなくなり、そこから江戸時代までの約100年間、リングやネックレスといったいわゆるジュエリー文化はほとんどなくなってしまいます。
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。
理由は今でもはっきりとは分かっていないようです。
しかし、当時の日本独特の価値観は桃山時代に来日したヨーロッパ人を大いに驚かせたそうで、
『日本要録』と呼ばれるイタリア人宣教師ヴァリニャーノが書いた書物には、
”日本人は宝石をなんの役にもたたない「小石」だといった”
と記されているのだとか。
それでは当時の日本人が何を珍重していたかというと、名工が作った茶器や刀の鐔。
ヨーロッパの人たちからすると、ただの土や鉄の日用品をそんなに大事にするなんてと疑問に思ったそうですよ。
国による考え方の違いは面白いですね。
最後に
今回は宝石とジュエリーの歴史について大まかにまとめてみました。
改めてジュエリーはずっと我々人類やその文化と共に進歩していることが分かりました。
お守り、王の象徴、信仰の対象、愛する人への贈り物、いろんな意味合いや思いが込められていて、様々なジュエリーが生まれるきっかけになったんだと思います。
今も昔も、ジュエリーや宝石は、私たち人間にとって、とても大切な宝物なんだなぁとつくづく感じました。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『決定版 宝石』
著者:諏訪恭一/発行:世界文化社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか