サファイアというと、透明感のある落ち着いたブルーをイメージされる方が多いのではないかと思います。
サファイアがもつ、あの吸い込まれそうな美しいブルーは、日々のすり切れた心を浄化してくれるようで、私も大好きです。
しかし実はサファイアにはブルー以外にも多くの色合いが存在します。
存在しない色がないのではといわれるほどカラーバリエーションが豊富で、しかも、一見見た目が異なる種類も多く、集めて楽しい宝石なのです。
そんなサファイアの奥深い魅力と豊富な種類についてご紹介していきます。
目次
サファイアの色はブルーだけじゃない!ファンシーカラーサファイアとは
サファイアはコランダム(和名:鋼玉(こうぎょく)という鉱物に属します。
実は、赤色が特徴のルビーも同じコランダムの宝石で、ルビーとサファイアは色違いの兄弟のような関係にあります。
赤いコランダムをルビー、その他の色合いをサファイアと呼びます。
そして、ブルー以外のサファイアを総じてファンシーカラーサファイア(ファンシーサファイア)といいます。
一般的に、サファイアの前に色名を付けて、ピンクのものはピンクサファイア、グリーンのものはグリーンサファイア、カラーレスのものはホワイトサファイアなどと呼ばれます。
ブルーサファイアについては、「ブルー」をつけずに、ただの「サファイア」と呼ばれることもあります。
様々な場所で産出されるファンシーカラーサファイアですが、例えばスリランカではブルー:約60%、レッド、バイオレット、パープル:約15%、オレンジ、イエロー:約25%の割合で産出されているといわれています。
サファイアはモース硬度は9で宝石のしなやかさや粘りを表す靭性(じんせい)も高いため、デイリーに使うジュエリーにもおすすめです。
サファイアについて、もっと詳しく知りたい方は下記記事もご参照ください。
ファンシーカラーサファイアの色
ない色がないというほど多くの色が存在するサファイアですが、実は純粋なサファイアはカラーレスだそうです。
そこに鉄・チタン・コバルト・ニッケルなど、さまざまな微量元素が加わることにより発色すると考えられています。
主な色合いは、
●ブルー ●パパラチア ●ピンク ●オレンジ ●イエロー ●グリーン ●パープル ●ヴァイオレット ●カラーレス(ホワイト)
の9種類。
濃淡や2色が混ざったようなニュアンスカラーも含めると無限にあるのではないかと思える程で、サファイアだけで色相環を作ることもできます。
中には1石の中に複数色を含むパーティーカラーもあります。
それでは、ブルーを除いた、ファンシーカラーサファイアの中から代表的なものを幾つかご紹介していきましょう!
パパラチアサファイア
クロムとニッケルによってピンクとオレンジが混ざったような色を発色するサファイアをパパラチアサファイアといいます。
細かくいうと、ピンクが強すぎても、オレンジが強すぎてもパパラチアサファイアとは呼ばれません。
蓮の花の色に似ていることから、スリランカのシンハラ語で蓮の花(ロータスフラワー)を意味するパパラチアから名付けられたといわれています。
ファンシーカラーサファイアの中では最も価値も人気も高い種類です。
かつてはスリランカからしか産出されなかったようですが、現在はマダガスカルなどからも産出されるようになりました。
パパラチアサファイアとピンクサファイアの違いは色味のみなのですが、微妙な色合いのものも多く、鑑別機関によって判断が異なる場合もあります。
ただ、ベリリウム拡散処理でパパラチア色に改変したサファイアを天然未処理のパパラチアサファイアとして高額に販売している業者もいると聞きますので、注意が必要です。
特に高額のものは、信頼のおける鑑別機関の鑑別書やソーティング付きのものかオプションで取ってもらえるお店で購入することをオススメします。
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▶パパラチアサファイアについてより詳しく知りたい方はコチラの記事へ
ピンクサファイア
その名の通り、ピンク色のサファイアのことです。
クロムが混入することで発色し、ほんのりパープルがかったライラックのようなピンクから、レッドに近い鮮やかなピンクまで存在します。
パープルがかったものよりも純粋なピンクカラーで、色が濃く鮮やかなほど価値が高いとされています。
ちなみにクロムが1%以上含まれるとレッドに近くなりルビーとして扱われるものも多いそうです。
ルビーのチェリーピンクと呼ばれる色に近いものもあるため、ルビーには手が出ないけど、レッドに近い色合いなら良いという方は、レッド寄りのピンクサファイアを探すことをオススメします。
ピンクサファイアも安価であるとは言いがたい宝石ではありますが、近いクオリティのルビーと比べれば、まだ手にしやすい価格帯のものが見つけやすいと思います。
そう考えると、レッドに近い濃いピンクを発色するピンクサファイアは、コストパフォーマンスの高い宝石といえるかもしれませんね。
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イエローサファイア
イエローサファイアは、ニッケルが混入することでイエローを発色すると考えられています。
爽やかなレモンイエローから少しオレンジがかったものまで色幅があります。
透明度が高く鮮やかな色合いのもの程価値高く扱われます。
ビビットなイエローはその日の気分を明るく変えてくれそうな元気なイメージがありますよね。
ジュエリーにして手元や首元を飾るのもきっと素敵だと思います!
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グリーンサファイア
コバルトが混入することでグリーンに発色するといわれる、グリーンサファイア。
明るいグリーンから深く落ち着いたグリーンまで幅広い色合いが存在します。
ミントグリーンやモスグリーンに近い色合いが多い印象ですが、ごく稀にネオンカラーをもつ鮮やかなグリーンも産出されるといいます。
一般的なグリーンサファイアはファンシーカラーサファイアの中では比較的手にしやすい価格のものが多い気がします。
落ち着いた色味のグリーンサファイアも奥深い魅力があるように感じますね♪
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パープルサファイア
チタンや鉄、クロムが加わることで発色する、赤みの強いパープルのサファイアをパープルサファイアと呼びます。
青みが強い場合はバイオレットサファイアと呼ばれ区別されています。
淡い色合いから濃くて鮮やかなものまで濃淡は様々で、レッドに近いものやブルー味が強いものなど色幅もあります。
パープルサファイアは、加熱処理などの処理が施されない未処理の状態でも美しく発色するものが多いといわれているそうです。
ティールサファイア
近年、コレクターを中心に注目を集めているのがティールサファイアと呼ばれる、ブルーグリーンの色合いを呈するもの。
ティールとはブルーグリーンの色合いを指す言葉で、鴨の羽根の色と表されることも多い、青味の見える深いグリーンの色合いのことをいいます。
ブルーとグリーンが混ざったようなニュアンスカラーで、たまらない魅力を放ちます。
バイカラーサファイア
一石の中に2色の色を呈する、バイカラーサファイア。
はっきりと2つに分かれているものもありますが、まだらに混ざって2色が確認できるものもあります。
明確に2つの色が確認出来るもの程、評価が高くなります。
中間色の宝石は光によって見せる色合いが変わってくるので、コレクターアイテムとしても人気の高い宝石です。
この画像のバイカラーサファイアは、ファセットカットに溶け込むように2色が確認できます。
1つの宝石の中で2色が楽しめるのは、華やかさも感じられて素敵ですね!
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その他の色
このほか、バイオレットサファイアやオレンジサファイアなども人気の色合いです。
見た目が異なるサファイアの種類
サファイアにはさまざまな色合いがあるだけでなく、一見見た目が異なる種類もあります。
こちらも代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
スターサファイア
光を当てると6条の筋が浮き上がるスターサファイア。
光源が動いたり石を傾けるとスターが揺れる楽しさもあります。
6条の光はアステリズムと呼ばれている星彩効果で、多くの宝石に見られる性質です。
スターの中心が石の中央にくるように計算して、主に表面が丸いカボションカットが施されます。
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▼スターサファイアについての詳細はコチラの記事を参考に
ブラックスターサファイア
ブラックスターサファイアは、黒地にスターが浮かび上がるものです。
一般的なスターサファイアは、線状のルチルインクルージョンが入ることによりスター効果を示すといわれますが、ブラックスターサファイアのインクルージョンはヘマタイトだといわれています。
光の筋もゴールドで、メタリックな輝きが魅力的です。
中には、12条の筋を見せるものなどもあります。
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特に有名なのが、「バンカチャサファイア」などと呼ばれる、タイのバンカチャ地方で採れるもの。
成長線が強く見られたり、地色にブルーやグリーンが混ざるものもあり、光の中で神秘的に輝く姿がとても美しく、人気が高い種類です。
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▼ブラックスターサファイアについての詳細はコチラの記事を参考に
トラピッチェサファイア
トラピッチェとは、サトウキビを絞る道具についている歯車を指します。
歯車のような模様がついているサファイアを、トラピッチェサファイアと呼び、スターサファイアの6条の光とは異なり、石自体に放射線状の模様が浮かび上がっています。
トラピッチェ模様のある宝石で最も有名なものはトラピッチェエメラルドで、他にもルビーやクォーツなどでも見つかっています。
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▼トラピッチェ宝石についての詳細はコチラの記事を参考に
カラーチェンジサファイア
カラーチェンジサファイアには、マジカルな魅力があるように思います。
カラーチェンジサファイアはその名の通り、色が変化する性質をもちます。
カラーチェンジする宝石として有名なものはアレキサンドライトで、光源の種類によって異なる色を放ちます。
カラーチェンジサファイアも同様に、光源によって色が変わって見えます。
光源が異なることでサファイアの色が変わるなんて、まるで2つのサファイアを持っているようで、贅沢な気分になりますよね!
太陽光や蛍光灯に照らされるとグレーイッシュブルー、白熱灯ではレッドパープルに変化するものも多いと聞きます。
光の変化が強いほど、価値が高まるといわれています。
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サファイアに施される処理
画像:ベリリウム拡散処理を施されたサファイア
宝石の見た目を美しくするのに用いられる人工処理はサファイアにも施されることがあります。
一口に処理といっても様々な方法があり、通常的に施されるため価値を下げない処理もあれば、著しく価値を下げてしまう処理もあります。
処理方法や価値にどう影響するかを正しく知って、購入前にきちんと確認することも大切です。
こちらでは、サファイアに施されることが多い2つの処理をご紹介しますね!
加熱処理
宝石の色を濃くしたり、変化させるために最も一般的に行われている加熱処理。
多くの宝石に通常的に行われており、サファイアもその一つです。
サファイアの場合、加熱処理が施されていることにより価値が著しく下がることはありません。
サファイアの加熱処理は処理の痕跡が残ることが多く、鑑別で加熱か非加熱か判断できるものも多いそうです。
加熱の痕跡が見当たらないものは非加熱サファイアとして扱われます。
サファイアの価値において、最も重要とされるのは色が美しいことであり、加熱処理の有無よりも色の美しさが重視されるケースも多いといいます。
そのため、色の鮮やかさやクォリティが同じであれば、非加熱サファイアの方が価値が上がりますが、同じでなければ色の美しい方が評価される傾向にあるそうです。
ベリリウム拡散処理
ベリリウム拡散処理とは、加熱処理の過程で表面にベリリウムを含ませて彩度の高い色合いに変化させる処理のこと。
パパラチアサファイアに見せるために使用されることも多いといわれる処理です。
ベリリウム拡散処理が行われたサファイアは宝石としての価値は著しく低くなるそうです。
しかしながら、ベリリウム拡散処理を施されたパパラチアサファイアを未処理のものとして高額に販売していることもあると聞きますので注意が必要です。
鑑別で処理の有無を確認できる場合も多いそうですので、高額のパパラチアサファイアを購入する場合は、信頼のおける鑑別機関の鑑別書付のものかオプションで鑑別書を取ってもらえるお店で購入することをオススメします。
但し、処理の有無が分かりにくく特殊な検査を必要とする場合もありますので、鑑別書に「外部からの元素の拡散加熱処理に関する検査は行っておりません」と書かれていたら、別途見てもらった方が良いかもしれません。
▶ベリリウム拡散処理についてより詳しく知りたい方はコチラの記事へ
上記2つ以外でサファイアに施されることが多いとされるのがガラス含浸処理です。
ガラス含浸処理も価値を著しく下げる処理の一つですので、注意が必要です。
▶サファイアに施されるガラス含浸処理の詳細と見分け方はコチラの記事で
ファンシーカラーサファイアの価値基準と市場価格
ファンシーカラーサファイアについてはよく分かったけれど、購入する場合の選ぶポイントやどこで購入出来るか分からないという方に!
大まかではありますが、購入する際に参考になる価値基準、大体の市場価格、購入場所などをご紹介しましょう。
価値基準と市場価格
色によって価格差があり、特にパパラチアサファイアは別格的に高くなります。
クオリティがほぼ同じでも、色味の近いパープルサファイアと比べるとなんと価格差約2倍以上もあるといわれています。
特に、無処理で美しい発色を見せてくれるパパラチアサファイアは評価が高く一千万円を超えるものもあるほどです。
サファイアの価値は全般的に
・色が鮮やか
・透明度が高い
・カラットが大きい
・カットが美しい
上記の条件を多く満たすほど価値が高くなる傾向にあります。
パパラチアサファイアの次に価値が高いのはピンクサファイアです。
イエローやオレンジ系も人気がありますね。
どこで買える?
ピンクサファイアやパパラチアサファイアなどはルースやジュエリー問わず、取り扱うお店は比較的多いので、購入しやすい印象です。
イエローサファイア、グリーンサファイア、バイオレットサファイアなどもルースでの取り扱い店舗は意外と多く、ネット上でも探しやすいと思います。
バイカラーサファイアなどはレアストーンの取り扱いが豊富なお店などで見かけることが多いですね。
ミネラルショーなどのイベントではどのサファイアも目にしますので、比べてみたい!という場合には行ってみると良いかもしれません。
最後に
沢山の色が存在するファンシーカラーサファイア。
同じ宝石の中から好みによって色が選べるのはとても贅沢ですよね♪
特にサファイアは9月の誕生石ですので、9月生まれの方は選択肢が広くちょっと羨ましいです。
例えば恋人やご夫婦でファンシーカラーサファイアの中からそれぞれの好みの色をルースから選んでペアリングにする・・・なんてのも素敵です☆
今回ご紹介した色以外にもファンシーカラーサファイアには魅力的な色が沢山あります。
お好みのファンシーカラーサファイアを見つけてみてくださいね♪
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『有名石から超希少石まで美しい写真でよくわかる 宝石図鑑』
著者:KARATZ 監修:小山慶一郎/発行:日本文芸社
◆『起源がわかる宝石大全』
著者:諏訪恭一、門馬綱一、西本昌司、宮脇律郎/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人 ほか