ユークレース(Euclase)は、 産出量も流通量も少なく、コレクターの間でも人気のレアストーンの一つといわれています。
今回は、深い海のようなミステリアスさも感じられる宝石、ユークレースの謎に迫ってみましょう!
ユークレースの特徴
ベリリウム珪酸塩鉱物の一種とされるユークレース(Euclase)は、一時期ベリル族のアクアマリンと混同された歴史があるといわれています。
硬度が同じ位で、似た色の結晶がとれることから混同されてしまったようですが、とても強い劈開の性質が見られることと、断面がもろいことに疑問を持ったフランスの鉱物学者ルネ=ジュスト・アユイが徹底研究し、別の石だということが判明したといわれています。
劈開とモース硬度
前述した劈開(へきかい)と呼ばれる、結晶や岩石の割れ方が特定方向に割れやすい性質をもっています。
ユークレースの劈開は完全で、傾斜軸面に対して平行であるといわれています。
劈開には「完全」「明瞭」「不明瞭」「なし」の4段階あり、「完全」に近いほどその鉱物は割れやすいということを意味しているといいます。
鉱物の硬さを測るモース硬度は7.5ということなので、硬度としては高く表面上の傷はつきにくいといえますが、完全な劈開をもっているため全体的には割れやすい鉱物といえるでしょう。
名前の意味
ユークレースの名前は、その割れやすいという最大の特徴から由来しており、ギリシア語の「容易(Eu)に割れる(Klasis)」という言葉が語源となっているそうです。
1792年に、ルネ=ジュスト・アユイが命名したとされています。
色
ユークレースは青色のものが一番人気が高く薄い青から濃い青まであります。
青以外の色は、無色、緑色、黄色、白色などがあり、色の違いは不純物の混ざり具合によるもので、微量のクロム・イオンが含まれると緑色になるといわれています。
ユークレースの主な産地であるブラジルでは無色や淡いブルーのものが多く採れることから、かつては濃いブルーのユークレースはないものと思われていたこともあったようです。
しかしその定説がコロンビアで濃いブルーの結晶が発見されたことで覆されます。
近年ではコロンビアのチボール鉱山から発色の美しい石が産出されることで有名です。
濃いブルーのユークレースからは鉄やチタンが検出されることから、それが発色要因だと考えられています。これはサファイアやカイヤナイトと同じです。
また中には無色&青、無色&黄色などツートンカラーの石もあります。
産地
主な産地は、ブラジル、コロンビア、エチオピア、ジンバブエです。
ロシア、タンザニア、ケニア、オーストラリア、イタリア、ドイツ、インドなどでも産出されたことがあります。
産出地は多いものの宝石として流通するような品質の高いものは少ないとされています。
日本国内では、岐阜県中津川市の福岡鉱山で、微細な結晶が見つかっています。
ユークレースの原石はどんな形?
ユークレースは断面がひし形の柱状結晶の形で生成することが多く、柱面に平行に条線が入り、端面は山型で複雑な面を持つことが大きな特徴とされています。
とても美しい形をしているものも多いと聞きます。
ユークレースのジュエリーはあるの?
とても割れやすく、結晶が欠けやすいため、「職人泣かせの石」といわれるユークレース。
加工が大変難しいため、カットされたルースやジュエリーとして流通することは少ない宝石だといわれています。
それでも時々カットされたルースに出会えることもあると思いますが、その稀少さから高価なものも多いため、中に劈開がないかまでよく確認し、納得した上で購入した方が良さそうです。
終わりに
「出会うこと自体が奇跡」といわれるほど稀少性の高い宝石、ユークレース。
近年、「宝石の国」というアニメのキャラクターとして登場したことから、若い世代を中心に一気に知名度が高まりました。
しかしめったに出会うことができないレアストーンである上に壊れやすい性質をもつことから、美しく儚い、守ってあげたくなるような魅力のある石のようにも思います。
気に入った色のユークレースと出会うことがあったら、それは運命かもしれません。
自分好みの美しい宝石との運命の出会い、そんな奇跡を信じて探すのも素敵かもしれませんね。
カラッツ編集部 監修