貴金属の一種である銀(シルバー)は、食器や装飾品、工業用品など、古くから様々な用途に使われてきました。
現代では、シルバーウィークやシルバー会員、シルバー世代など、言葉として使われることも多く、金(ゴールド)とともに身近にある金属と言えるのではないでしょうか。
金(ゴールド)の対の言葉として、一般的に金の次といった位置付けで使われるため、金より劣っている印象を受けますが、調べてみると金に負けないぐらい重要なものということがわかりました。
それに銀と金は似ている部分もありますが、比べてみると結構違うんですよ。
銀(シルバー)の基本情報、性質、用途、歴史、価値についてお伝えいたします。
目次
銀(シルバー)とは
銀(シルバー)は、紀元前の昔から採掘され、私たち人類にとってなくてはならない重要な金属のひとつです。
加工しやすいという性質をもち、食器、装飾品、コイン、置物、写真フィルム、工業製品など、幅広い分野で利用されています。
金やプラチナに比べると安価に手に入りやすく、日常使いのジュエリーやアクセサリーとしても十分に楽しめます。
ただし、空気中の成分に反応して、変色や変質を起こしやすいという性質もあるため、取り扱いには少し注意が必要です。
鉱物としての基本情報
| 英名 | Silver(シルバー) |
| 和名 | 銀 |
| 鉱物名 | 自然銀 |
| 分類 | 元素鉱物 |
| 結晶系 | 等軸晶系 |
| 化学組成 | Ag |
| モース硬度 | 2.5 − 3 |
| 比重 | 10.1 − 11.1 |
| 光沢 | 金属光沢 |
性質
銀は金に次ぐ高い展性と延性を持っているといわれる金属です。
展性とは圧縮により薄く広がる性質を示し、延性とは引張られて細く伸びる性質を示します。
「展延性」と合わせて使われることもありますが、展性と延性は必ずしも相対関係にあるといえず、どちらか一方にのみ優れている物質もあります。
展性にも延性にも優れている銀はいろんな形に加工がしやすく、古代からジュエリーや装飾品として広く使われてきました。
純銀は白さの程度と光の反射率では金属の中で最高ですが、灰色や黒色に変色しやすいという性質を持っています。
そのほか、電気伝導率と熱伝導率が高いため工業用素材としても活躍していますが、需要が高まると、貯蔵量が大きく減少してしまうこともあるといいます。
産地
メキシコ、ペルー、オーストラリア、ロシア、カザフスタン、カナダ、アメリカと広範囲にわたって見つかります。
世界最大の産出国はメキシコで、1500年頃から採掘が続けられています。
標本になるような美しい銀が見つかることもあるのだそうですよ。
また、モロッコの鉱山内には自然銀から出来た壁があるといいます。
聞いただけで壮大なイメージが湧き上がりますよね!一度見てみたいものです。
原石の形
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原石は立方体状や針金状の形をしていますが、はっきりとした結晶の形で見つかることは稀だそうです。
ほとんどの場合は立方体でも少し歪だったり、塊状、鱗片状、樹枝状などで産出されます。
自然銀と自然銅が集合体になって見つかることもありますよ。
自然銀は主に熱水鉱脈で生成するといわれますが、別の鉱物が変質した後の二次鉱物として出来ることも多いとか。
また、今日使われる銀の大半は、鉛や銅、亜鉛を精錬する際の副産物として得られたものだといいます。
銀は金よりも風化に不安定で、一度溶けると砂金のように粒状になって再生、成長することはないのだそうですよ。
砂金はあっても、砂銀は聞かないのはそういう理由だったのですね!
銀(シルバー)の歴史
銀(シルバー)の歴史は古く、紀元前4000年頃のお墓からも銀の装飾品が見つかっています。
コインとして使用され始めたのは金(ゴールド)よりも少し後の紀元前550年頃で、そこから数多くの銀貨が生み出されていきます。
色んな銀貨を見比べると、作られた時代や場所で特色があり、芸術的にも見応えがありますよ。
古代エジプト、古代ローマ、古代メキシコなどの遺跡からも発見されており、様々な文明において利用されていたことが分かります。
プラチナがまだジュエリーに使用されていなかった18〜19世紀には、ダイヤモンドの輝きを引き立たせるために銀が多く使用されていました。
また、銀は月に例えられることも多く、各地に民話や言い伝えが残ります。
他にも純潔のシンボルとして扱われたり、魂と体を繋ぐものと信じられていたり、キリスト教では神の知恵を意味するものと考えられているなど、神聖なものとしての位置付けも多いようです。
工業用素材として注目され始めたのは実は割と最近のことのようで、1960年頃には銀の需要が供給量を上回ったという話もあります。
銀(シルバー)の用途
最初にお伝えしたとおり、銀(シルバー)は古代から様々な用途に使用されています。
ジュエリーやアクセサリーの素材としてだけでなく、工業用として使われているものも多いため、思っている以上に身の回りに沢山あるかもしれません。
装飾品や食器の素材として
美しく加工がしやすい銀はジュエリーやアクセサリーの素材としても多く使用されてきました。
純銀の状態だと柔らかすぎるので、通常は割金(わりがね)を入れ合金にしてから加工されます。
銀製品として有名な銀の食器は中世ヨーロッパでも愛用されてきました。
当時、富の象徴だった銀食器は子供が生まれた記念に贈ると、その子は一生食べ物に困らないといわれていたそうです。
今でもいろんなブランドが魅力的な食器やカトラリーを作っていますね。
工業用として
銀は工業用素材としても大活躍しています。
電気伝導率と熱伝導率の高さを活かして電子回路に用いられるだけではありません。
エチレンをエチレンオキサイドという有機化合物に変換する特性があり、これがいろんな有機化合物の原料になるのだそうです。
最近はデジタルカメラの普及で少なくなってきましたが、写真のフィルムにも使われています。
フィルムや印画紙の光を感じる部分の素材が銀や塩素の化合物で作られているのだとか。
その量はとても多く、産出される銀の60%が写真工業で消費されていた時代もあったようですよ。
使い捨てのインスタントカメラにも銀が使われているそうで、デジタルカメラに慣れてしまった身としてはカメラがとても贅沢なもののように感じますね。
他にも太陽光パネル、携帯電話のバッテリー、ほぼ全ての電子機器の製造に使われているといいます。
銀は今の便利な生活には欠かせない、とっても重要なものなんですね。
銀(シルバー)の弱点
金属としてのポテンシャルが高い銀(シルバー)ですが、弱点もあります。
一つは、先にもお伝えしたとおり、「変色しやすい」ということ。
他によく聞くのは、金属アレルギーを起こしやすいということ。
この2つの弱点についてお話していきましょう。
変色について
銀(シルバー)は、空気中の硫化水素や硫黄成分などに反応し(硫化)、変色するといわれています。
硫黄成分が多く含まれている温泉地などで銀製のジュエリーや時計などを着けていると、黒ずんでしまいやすいのもそのせいです。
そのため、近年では、銀製のジュエリーやアクセサリーの変色を防ぐため、仕上げにロジウムメッキと呼ばれる加工が施されることも多くなりました。
ただ、この加工のお陰で変色を防ぐことはできるものの、銀本来の美しさをロジウムで隠してしまい、色がくすんで見えるというデメリットも。
銀本来の眩い白さは本当に美しいので、それが見られないのは少し勿体ない気もしますが、気がついたら黒ずんでしまった、という悲しい気持ちを防ぎ、使い勝手の良さを得るためには必要な加工だと思います。
しかしながら、ロジウムメッキ加工は経年劣化や摩擦によって剥がれてしまうことも多く、その結果、中の銀が表に出て変色してしまうこともあるため、注意とメンテナンスが必要です。
金属アレルギー
シルバージュエリーなどの銀製品は金属アレルギーを起こしやすいと思っている方が多いかもしれませんが、実は純銀はアレルギーを起こしにくい金属といわれています。
ではなぜアレルギーが出てしまうかというと、ジュエリーやアクセサリーとして銀が使われる場合、強度を上げるために、銅など別の金属を割金(わりがね)として混ぜて使用することが多く、その割金によってアレルギーが起こりやすくなると考えられているからです。
私自身シルバージュエリーを身に着けてよく肌荒れを起こしていて「銀ってアレルギーが出やすいんだな」と思っていたので、この事実を知った時はとてもびっくりしました。
スターリングシルバーとシルバー925の違い
ジュエリーやアクセサリーがお好きな方ならスターリングシルバーやシルバー925という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
スターリングシルバーとシルバー925は実は同じ意味で、どちらも同じ純度の銀の合金のことを指します。
純度100%の純銀は柔らかすぎて耐久性が低く変形してしまうためジュエリーを作るのに向いていません。
そのため通常は銅などを割金(わりがね)として混ぜて、強度をあげてからジュエリーに加工します。
スターリングシルバーは92.5%の銀に7.5%の割金(銅など)を混ぜた純度の高い銀のことを言います。
純度が92.5%のためスターリングシルバーを別名シルバー925というんですね。
刻印はSV925と打刻されていることが多いですよ。
銀(シルバー)の価値
ジュエリーや精密機器の材料として現在の暮らしに欠かせない存在となった銀(シルバー)。
投資目的で購入する方もいらっしゃいます。
価格の相場を知るなら田中貴金属工業や三菱マテリアルなどの銀を商品として扱っている会社や買取専門店のHPを見ると掲載されています。
どうやって価値が決まる?
銀の相場は世界情勢や経済状況によって決まります。
金と似た値動きをしますが、工業用素材として景気にも影響を受けると言われています。
相場は1999年には30円程度だったのに対し、2011年に240円を超えるなど価格が高騰しています。
そこからは一旦落ち着きましたが、最近はまた徐々に高くなっているようです。
銀相場について
現在(2026年8月)、金の買取相場が24,000円台に対し銀は370円台とかなり差が出ています。
これは金に対し銀の方が産出量が多いためといわれています。
価格が安い分手頃に売買出来るので、投資信託や積立に銀を選ぶ方もいるということです。
ただ市場が小さいため価格が大きく変動することもあり、注意が必要なのだそうです。
かつて、世界的な投資家であるウォーレン・バフェット氏が銀を買い占めたことで大幅に値を上げたこともあったそうですよ。
いくら有名な投資家とはいえ、影響力のある一人の力によって相場が変わってくることがあるなんて驚きですね。
最近も金やプラチナの高騰に引っ張られるように、銀の値段が大きく変動したことがありました。
資産としてもつ場合は、金やプラチナ以上に値動きに注意した方が良いかもしれません。
銀(シルバー)の売買について
それでは銀(シルバー)はどんなところで購入できるのでしょうか。
投資目的であれば、投資信託や積立投資という手もありますが、今回は現物としてどこで売買するかに焦点を当てていきたいと思います。
銀の現物はジュエリー、地金、装飾品、食器などがありますが、どこで購入すればいいのでしょうか。
購入できる場所
ジュエリーであればジュエリーショップ、アクセサリーショップなどで購入できます。
比較的手頃な価格のものから高級なハイブランドのものまで、いろんなお店が銀製品を扱っています。
食器や装飾品はそれぞれ専門店がありますから、好きなメーカーやブランドを探してみてはいかがでしょうか。
店舗だけでなく、百貨店にも多く入っているイメージがあります。
一方、銀の地金は貴金属メーカーや地金を専門で扱っている専門店で購入できます。
お店によって購入できる種類やグラムに制限がある場合もありますので、事前に調べておくと良いでしょう。
買取について
銀の買取をしてもらう場合は貴金属専門店や買取専門店に出すのが一般的です。
ジュエリーでもブランドのものだった場合、銀の地金価格にプラスしてブランド価格をつけてもらえる場合があります。
そういった場合はブランド買取に強いと言われている買取専門店の方が良いかもしれませんね。
色々なお店に行って買取価格を比較するのも、高価買取に繋げる一つの方法です。
銀は相場が毎日変わってしまうので、比較検討する場合は相場が変わらない土日か、平日であればその日1日でお店を回ると良いですよ。
銀(シルバー)のお手入れ方法
お伝えしたように、銀(シルバー)は、空気中の硫化水素や硫黄成分などに反応し、変色しやすいという性質を持っています。
ピカピカに輝くシルバージュエリーがしばらく放置していたら真っ黒になってしまったという経験はありませんか?
販売員時代にたくさんのお客様からもお聞きした話です。
しかし、中には毎日磨いて大切に身につけられてきたというお客様もいて、その方のシルバーはとても眩しい輝きを放っていました。
同じ金属なのに、お手入れの頻度によってこんなにも変わるものかと驚いた覚えがあります。
きちんとお手入れすれば長く美しさを保つことも難しくありませんので、ぜひ参考にしてくださいね。
日常的なお手入れ
最も簡単で、日常的にぜひやって欲しいお手入れ方法は、使用後に柔らかい布で拭くことです。
特に夏場や運動後など汗をかいた時はきちんと拭くよう、習慣づけましょう。
汚れが目立つときは中性洗剤を薄めたぬるま湯の中に入れて洗うのも良いですよ。泡をしっかり洗い流し、柔らかい布で水分を十分に拭き取ってくださいね。
さらに黒ずみが目立つ場合は、シルバー専用クロス(シルバークロス)で磨いたり、シルバー専用のクリーニング液に浸すのも良いと思います。
重曹や歯磨き粉を使って磨く方法などもありますね。
但し、銀のお手入れ方法には注意したい点もあります。
注意すること
ロジウムメッキ加工が施されたジュエリーの場合は、シルバー専用クロスで磨いたり、強く擦ったりするお手入れはやめましょう。
薬液や重曹に浸けたりするのも避けた方が良いと思います。
先ほどもお伝えしたとおり、ロジウムメッキ加工は、経年劣化や摩擦によって剥がれてしまうことが多いです。剥がれてしまったら、変色を防ぐ効果も薄れてしまいますので注意してくださいね。
また、宝石が付いているジュエリーも薬液や重曹には浸けないようにしましょう。
シルバー専用クロスで磨く場合も宝石に当たらないよう十分注意してくださいね。
宝石によっては化学薬品だけでなく、水に弱いものなどもあります。
宝石の性質を調べ、それぞれに合った方法でお手入れすると、長く楽しむことができますよ。
最後に
白く眩く輝く銀(シルバー)。その特性も相まって様々な素材として広く利用されていることが改めてよく分かりました。
放置すると変色してしまうこともありますが、手がかかる子ほど可愛いと言うように頻繁にお手入れしてあげるととても愛着が湧きます。
縁あって手元に来た製品も多いと思います。ぜひ末永く付き合ってみてくださいね。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社 ほか























