宝石の鑑別書でよく見かける
「通常、加熱が行われています」
という文章。
「通常」ってどういうこと?
そう疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
宝石に施される人工処理には様々な種類があり、通常的に行われるものもあれば、そうでないものもあります。
処理が行われることで宝石の価値を下げるものもあれば、大きく影響を与えないものもあります。
そして、最も一般的に行われていると聞くのが加熱処理です。
なぜ加熱処理を施す必要があるのか、加熱処理によって宝石の価値はどうなるのか、そして一般的に加熱処理が施されるといわれる宝石にはどんなものがあるかなど、色々掘り下げてお話できればと思います!
目次
宝石に加熱処理を施す理由
そもそも宝石に加熱処理を施す理由は何でしょうか。
加熱処理は、その宝石がもっている本来の美しさを引き出すために行われています。
加熱をすることで、インクルージョンが消えて透明度が増したり、色が鮮やかになったり変化したりするのです。
鉱物の多くは地球の強いエネルギーによって生み出されます。
地球の内部で気の遠くなるような長い時間をかけて、鉱物に圧力をかけたり、マグマや熱水が作用したりなどして、美しい宝石となるのです。
地熱によって美しい色を発する宝石もあります。
その自然が時間をかけて鉱物に行う加熱作用を、人工的に行っているのが加熱処理です。
昔から人びとは宝石の中には加熱することで美しくなるものがあることを知っており、宝石の加熱処理は古くから行われていたと考えられています。
ただ、加熱処理を施せば全ての宝石が色鮮やかで美しくなるとは限らず、潜在的に美しさを秘めたものだけが加熱処理によって美しくなるのだそうです。
加熱処理の世界もなかなか奥が深そうです!
▶加熱処理について詳しくはこちらも参考にしてみて下さいね。
加熱と通常加熱の違いとは?
宝石について調べたり、鑑別書を見たりしていると、
「加熱が行われています」
や
「通常、加熱が行われています」
という言葉を目にします。
両者とも加熱処理のことを表しているようですが、言葉の違いは何なのでしょうか。
詳しく説明していきましょう。
加熱とは
加熱処理を施された宝石には、加熱の痕跡が分かりやすいものと、分かりにくいものがあるといいます。
加熱の痕跡が認められた場合は、
AGL(日本の鑑別団体協議会)加盟の鑑別機関では、
鑑別書に
「加熱が行われています」
の一文が入ります。
加熱の痕跡が分かりやすい宝石の内、鑑別で加熱の痕跡が認められない場合は、非加熱である可能性がとても高くなります。
その場合、分析報告書などに
「加熱の痕跡は認められません」や「No heat」
などと書かれることになり、流通の現場で非加熱として販売される場合が多いようです。
しかし、加熱の痕跡が分かりやすい宝石であっても、痕跡が分からない場合もあるので、正確に判断できるとは限らないようです。
通常加熱とは
一方、加熱の痕跡が分かりにくい宝石は、加熱の有無さえ分からないものが多いといいます。
しかしそういった宝石であっても、昔から人の手によって加熱処理が施され、業界内の常識となっているものは多いです。
そのため一般的に加熱処理が行われていると業界内で周知されている宝石については、
「通常、加熱が行われています」
などと鑑別書に記載されるのだそうです。
また、加熱の痕跡が分かりやすい宝石においても、先に述べたように、加熱されているか否かの判断がつきにくい場合は同じ文言が記されることになります。
つまり、通常とか一般的にというのは、全部ではないけれど処理が行われていることが多く、かつ処理の有無が識別しにくい場合に使われる言葉なのです。
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ココまででお気づきになった方もいるかもしれませんが、鑑別書に書かれる言葉は
「(通常、)加熱が行われています」
です。加熱処理ではありません。
これはどういうことかと言うと、様々な機械を使い鑑別をし、仮に加熱の痕跡が認められたとしても、それが人工処理によるものなのか自然の熱によるものなのかまで分からないことも多いそうなのです。
そのため、加熱処理ではなく加熱に留められるそうです。
逆に処理の痕跡までが認められる場合は、「◯◯処理が行われています。」という文言になるそうですよー、奥が深いですよね。
思わず持っている鑑別書を読み返したくなってしまいました(笑)
加熱か非加熱かで価値はどう変わる?
それでは次に、加熱か非加熱かで価値がどう変わるかの気になるお話に移りたいと思います。
人工的に行われる加熱処理は、宝石の品質に影響を与えるのでしょうか。
加熱処理は科学的に証明できる?
先ほども触れた通り、加熱の痕跡が分かりやすい宝石であれば、加熱の有無についてはある程度はできるといいます。
しかし、それが人工処理によるものか自然熱によるものかまではっきり分からない場合が多いそうです。
加熱の痕跡が分かりくい宝石については尚更証明しにくいです。
鉱物が熱によって受ける作用は、その熱が自然のものであれ人工のものであれ、殆ど同じということなのでしょう。
私は、加熱処理について考える時、目玉焼きに例えてみたらどう?などと思う時がありますよ。
目の前に二つの目玉焼きがあって、それぞれ違う熱源で作られたものであったとしても、出来上がりの状態は、見た目も味も大きく変わらない場合が多いですよね。
目玉焼きを作る熱源は、コンロやIH、炭火や焚火など他にも様々です。太陽光で目玉焼きを作るテレビ番組も見たことがありますよ。
人工的な熱であれ、自然の熱であれ、焼かれて出来上がった目玉焼きは同じ。
それと同じで、人工的な加熱でも自然のエネルギーによる加熱でも出来上がる宝石の美しさも変わらないのではないか、と思うのです。
ちょっと脱線してしまいましたし、適切な例えでは無かったかも知れませんが。。。私はそう考えています。
加熱処理で価値は変わる?
それでは、加熱処理をしたことで、宝石の価値や品質は下がるのでしょうか。
一般的に加熱処理が施されることが多いといわれている宝石の場合は、処理の有無によって価値が大きく下がるということはないようです。
先ほども述べた通り、加熱されているか否かの科学的な証明は難しい傾向にあります。
加熱・非加熱の区別がつきにくいということは、価格差をつけることも難しいでしょう。
しかしながら、非加熱の可能性が高いものに高い価値が付けられる傾向にあるのも事実。
色が美しく透明度が高いもので、加熱の痕跡が認められないものは、希少価値が高いことから評価も上がります。
但し、宝石によっては、加熱か非加熱かよりも、色の鮮やかさやインクルージョンの少なさなどの方が重視される場合も多く、一概に非加熱=加熱より価値が高い、という訳でもなさそうです。
それから、加熱処理を施したことで、耐久性が下がったり色が落ちたりするなどの品質の低下は起きないとされています。
良かった!安心ですね!
一般的に加熱処理が施される宝石とは
画像:パライバトルマリン
一般的に加熱処理が施される宝石には具体的にどんな宝石があるのか、についてもお話していきましょう。
一般的に加熱処理が施される宝石は、結構沢山あります。
全部紹介することはさすがに難しいため、今回は一例として、有名宝石の中から8石だけご紹介したいと思います。
まずはアクアマリンからです!
アクアマリン
印象的な明るいブルーの宝石で、海が一粒の宝石になったかのようなアクアマリン。
一般的に加熱処理が施されている宝石として知られ、鑑別書にもそう記されます。
アクアマリンは、加熱か非加熱の鑑別が困難なのだそうですよ。
アクアマリンの中には、深い青さをもつサンタマリアアクアマリンもありますが、こちらも同様です。
アクアマリンの色相は、グリーン掛かったブルーからブルーの間にあるのですが、ブルーが強い方が高い価値が認められる傾向にあるといいます。
アクアマリンは加熱処理を施すことによってグリーンが弱まり、ブルーが引き出されることが多いそうですよ。
私は、グリーン味の強いアクアマリンをスリランカで見たことがあります。
単独で見ると、南国の浅瀬の海の色に似ていて好きだな~と思ったのですが、ブルーのアクアマリンと並べて見ると、やはり青味が強い方が魅力的だな、と感じたのを覚えています。
加熱処理でブルーのアクアマリンにした方が、需要が高いのかも知れませんね。
サファイア
サファイアも多くは加熱処理が施されているといわれています。
例えばブルーサファイアの場合、熱を加えることでブルーがより鮮やかになったり、色が均一になったりするのだそう。
また、サファイアはコランダムという鉱物なのですが、その鉱物によくあるシルクインクルージョンという針状のルチルを加熱処理によって消し透明感を引き出すことができるといいます。
つまり、サファイアは加熱処理を施すことで、色を鮮明にし、透明度を高め、より美しい外観のサファイアへと生まれ変わらせる可能性を秘めている、ということなのです。
サファイアは、加熱の痕跡が分かりやすい宝石といわれています。
そのため、鑑別書や分析報告書の文言は、
痕跡が認められれば、「加熱が行われています」
分からなければ「通常、加熱が行われています」
痕跡が認められなければ、「加熱の痕跡が認められません」
と書き分けられます。
私はスリランカのラトナプラという宝石の産地で、サファイア原石の選別作業を見せてもらった事があります。
選別作業をする職人さんが白や黄色の砂利の中から石を選り分けていたのですが、それがブルーやイエローのサファイアになるのだと聞いて、本当に驚いたのを覚えています。
実際は加熱処理をしてもブルーのサファイアになるものとならないものがあって、その識別は熟練の人にしか分からないようでした。
私も試しに選ばせてもらい、なるべく透明度の高い石を選んでみたのですが、ことごとく間違っていたのを覚えています。
シトリン
柑橘類の爽やかさと透明感を感じる宝石、シトリン。
淡黄色からオレンジ色の輝きが印象的で、イエロー系宝石といえばシトリンが真っ先に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
実はシトリンは希少な宝石だってご存知ですか?
その割には宝石店などでシトリンを見かけることが多いのは何故?、と思われるかもしれませんが
その理由は、現在流通しているシトリンの殆どは、アメジストを加熱したものだからだそうです!
私もその事実を知った時は、本当に驚きました。
アメジストは比較的産出量が多く、加熱することで色が変わるため、シトリンを始めとした別の色のクォーツを作るためにも利用されるのだそうです。
グリーンアメジストと呼ばれるグリーンクォーツもアメジストを加熱して作られるといいます。
加熱処理後のシトリンの色は、加熱前のアメシストの色によって変わってくるのだそうです。
上の画像は、アメトリンというアメシストとシトリンが一つになった宝石です。
アメジストもシトリンも同じ鉱物クォーツの一種です。
地球内部でクォーツに作用する熱の温度の違いで、パープルになったりイエローになったりするのですよ。
中には一つの結晶にパープルとイエローが混ざっているものもあって、それがアメトリンです。
アメトリンを見るとアメジストがシトリンになることが想像できる気がしますよね。
ジルコン
地球最古の鉱物として知られているジルコンにも色によって加熱処理が通常的に施されているものがあるそうですよ。
ジルコンはどのくらい古い鉱物かご存知ですか?
何と44億年前のジルコンが、オーストラリアで見つかったことがあるそうです。
恐竜が出現したのが2億5千年前で、地球の生命の起源は40億年前といわれていますが、それよりもはるか昔から、ジルコンは地球に存在していたのですね。
そんなジルコンですが、ブルー、黄褐色、カラーレス(透明)のものなどは一般的に加熱処理が施されているのだとか。
褐色系のジルコンが加熱処理によって美しいブルーのジルコンに生まれ変わるのだそうですよ。
私はかつてジルコンは人造石だと思い込んでいたことがあります。
スリランカで見たカラーレスのジルコンがキラキラでダイヤモンドのように美しいので人造石かと聞いたら、店員さんに
『キュービックジルコニアは人造石だけど、ジルコンは天然の宝石。間違えてる人多いんだよね』
と言われたことがあります。
そう、私もその一人だったのです。
ジルコンは分散率が大きいために素晴らしい輝きを見せてくれます。
長い間ダイヤモンドの代用品に使われていたのも分かる気がしますね。
タンザナイト
パープルがかったブルーと、見る角度によって色が変わる多色性が魅力的なタンザナイト。
タンザナイトも一般的に加熱処理が施されるといわれています。
なぜ加熱処理が必要なのでしょうか。
タンザナイトの多くは結晶の段階ではブルーやバイオレットより褐色が強いものが多いそうです。
加熱処理を施すことによって、褐色の色味が消えて、タンザナイト特有の紫がかったブルーが引き出されるのだそうです。
通常の加熱処理よりは、低い温度での加熱が、タンザナイトには適しているのだそう。
加熱処理と一口に言っても、温度や環境は様々で、それぞれの宝石に適した方法が研究されているんですねぇ。
もちろん、非加熱の状態で美しいタンザナイトもありますよ!
しかし現在の技術では、タンザナイトの加熱が行われているか否かの鑑別は難しいため、鑑別書には「通常、加熱が行われています」と記載されるのです。
私はタンザニアにいた時、タンザナイトのルースを2つ購入しました。
実に様々な色や品質のルースがある中で、自分に出せる金額で最も良いものを選んだつもりです。
日本に持ち帰ったタンザナイトを見ながら、加熱処理されているのかな、非加熱なのかな、と思いを巡らせています。
鑑別機関で見てもらっても区別が付きにくいということなので、非加熱天然ものだ!と勝手に思ったりしています(笑)
トルマリン
カラーバリエーションが実に豊かなトルマリン。パレットに例えられることもありますね。
そんなトルマリンも、一般的に加熱処理が行われることが多いのだそうです。
しかし、全てのトルマリンに加熱処理が行われているという訳ではありません。
バイカラートルマリンやパーティーカラートルマリンなど様々な色が混在しているものや、カラーレスのアクロアイトなどは、未処理のものが多いのだとか。
また、レッド~濃いピンクのルベライトは、加熱処理ではなく、照射処理が施されることが一般的なのだそうです。
トルマリンは加熱処理によって、例えば、暗い緑色が淡い緑色に変わります。
トルマリンの中でも別格の存在感を誇るパライバトルマリンも、加熱処理が施されているものが多いのだそうです。
あのネオンブルーの輝きは、加熱処理によってが引き出されていることがあるのですね。
パライバトルマリンは、比較的低い温度で処理されているそうです。
そのせいか、加熱の有無を科学的に証明することは、現時点では難しいのだそうですよ。
そのうち技術が進歩すれば、鑑別できるようになるかもしれませんね。
ピンクインペリアルトパーズ
幅広い色相のあるトパーズですが、その中でもピンクインペリアルトパーズの華麗さは群を抜いています。
そのピンクインペリアルトパーズも通常、加熱処理が施されているのだそうです。
加熱によって、イエロー味が消え、ピンクが現れることがあるそうですよ。
トパーズの結晶を半分に割り、片方に加熱処理を施したという画像を見たことがあります。
非加熱の状態ではゴールドの輝きで、それだけでも十分美しいのですが、加熱するとパープリッシュピンクになり、ピンクインペリアルトパーズに変身していました。
麗しいあのピンク色は加熱によって引き出されることが多いと思うと、それはそれで感慨深いですよね。
▶ピンクインペリアルトパーズについてもっと詳しく知りたい方はコチラ
ルビー
ルビーは一般的に加熱処理が施されている宝石です。
最初、それを知った時はショックでした・・・。
ルビーは原石の状態から燃えるように赤い結晶なのだ、と勝手に幻想していたからです。
ルビーは加熱処理を施すことで、パープル味が消えて純粋なレッドに変化し、透明度を増すこともできるのだそうです。
「ルビーは殆ど加熱処理されている」
私はこの言葉を、スリランカの宝石店で嫌と言うほど耳にしました。
ルビーを見せてもらうたびに「加熱?非加熱?」と聞いていたら、多くの店員さんから
『ルビーは殆ど全部が加熱してるんだから、その質問は無意味。気にする必要ない』
などと言われたものです。
未処理で真紅で状態の良いルビーはめったに無く、あったとしても私などでは手が届かない、たいそう高価なものになるです。
加熱と非加熱の見分け方はあるの?
加熱処理を施した宝石と、非加熱の宝石とを簡単に見分ける方法はあるのでしょうか。
繰り返しますが、加熱の痕跡が分かりにくい宝石は機械を使った鑑別でも見分けるのは困難だといいます。
加熱の痕跡が分かりやすい宝石であれば、加熱によって消えてしまうインクルージョンもあるそうで、そのインクルージョンが入っていることで非加熱の可能性が高まるということはあるようです。
今回は、加熱によって消えるとされているインクルージョンを2種類、ご紹介しましょう。
レイン状インクルージョン
まずご紹介するのは、レイン状インクルージョンです。
細長い糸のようなインクルージョンが、まるで雨がサーッと降っているように見えることから、そう名付けられたと考えられています。
レイン状インクルージョンは、アクアマリンに見られることが多いといいます。
このインクルージョンは高温加熱によって消えてしまうといわれていることから、レイン状インクルージョンがあると非加熱の可能性が高まるそうです。
ただし、全てのアクアマリンにレイン状インクルージョンがあるわけではないようで、また加熱の温度によっては消えない場合もあるそうです。
ここが、ややこしい所ですよね・・・。
そのため、インクルージョンの有無だけでは人工的な加熱か否かの判断ができず、アクアマリンの鑑別書には、『通常、加熱が行われています』と記載されるということです。
シルクインクルージョン
ルビーやサファイアといったコランダムの宝石によく見られるのが、シルクインクルージョンです。
絹糸のようなルチルが交差したものです。
シルクインクルージョンは高温で加熱すると消えてしまうといわれていることから、これがあると非加熱の可能性が高まるのだそうです。
コランダムは産地によって特徴やインクルージョンが変わり、シルクインクルージョンも産地によってあるものとないものがあります。
シルクインクルージョンがあることで有名なのは、カシミール産サファイアやスリランカ産サファイア、それからモゴック産ルビーでしょう。
かつてスリランカの宝石店で『私にも買える値段の非加熱のサファイアが欲しい!』と言い続けていたら、お店の人が探し出してくれ、見せてもらったことがあります。
石の中にブルーの濃淡があり、シルクインクルージョンで曇った箇所もあって、味わい深いものの、お世辞にも綺麗とは言いづらいルースでした。
高品質の非加熱サファイアだったら、シルクインクルージョンさえも美しいのですが、私が見せてもらったものはシルクインクルージョンが悪目立ちしていました。
同じ値段なら、熱処理したサファイアの方がいいな、とその時思ったのを覚えています。
加熱処理された宝石の耐久性と注意点
加熱処理が施された宝石には、特別なお手入れが必要なのでしょうか。
加熱したことで色が鮮やかになったり透明度が増して美しくなった宝石が、間違ったお手入れによって色褪せたり、曇ったりしたら嫌ですもんね。
でも、大丈夫ですよ!
加熱処理されているかどうかで、宝石のお手入れ方法が変わるということはないようです。
先ほども触れた通り、加熱処理はその宝石の耐久性を下げたり、退色性を生じさせることはないといわれています。
加熱処理が施されていてもいなくても通常のお手入れをすれば大丈夫です。
宝石によって注意点は若干変わりますが、一般的には、着用後柔らかい布で汗や皮脂汚れを拭いたり、時々石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯で洗ったりしてあげると綺麗を保ちやすいです。
また、保管する際は、宝石同士がぶつからないように小分けして、直射日光が当たらない場所で保管するとより良いでしょう。
最後に
画像:サファイア
宝石好きの方の中には、加熱処理に悪いイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
実はかつての私もそうでした。
しかし、地球が鉱物に対して行っている熱作用を人間が代わりに行っているのが加熱処理だということを知って以来、私の加熱処理に対してのマイナスイメージはなくなりました。
薬品などで色付けするような処理とは全く違い、加熱処理はその宝石の性質を変えないといわれています。
もちろん、天然の状態で美しい結晶が採れることに越したことはありませんが、その数は非常に限られています。
加熱処理に対する誤解が解けて、より多くの方がより多くの宝石を愛せるようになったら嬉しく思います。
カラッツ編集部 監修