とてもゴージャスで個性的な印象をもつイエローの宝石。
数あるイエロー系宝石の中でイエローサファイアは、硬度も靭性も高いので、日常使いのジュエリーにも最適!
幸福のシンボルとも金運アップの色ともいわれるイエロー。
キラキラ煌めくイエローサファイアを身に着けて出かけたらおしゃれでハッピーな気分になれそうです。
ちょっと気になるのはイエローサファイアの価値や施される人工処理など。
本当のところ、どうなんでしょうか!?
イエローサファイアの世界を色々探ってみましょう。
目次
イエローサファイアとは?
イエローサファイアは、ファンシーカラーサファイアの一つです。
ブルーの印象が強いサファイアですが、実は様々な色があり、ブルー以外のサファイアを総称してファンシーカラーサファイア(ファンシーサファイア)と呼んでいます。
コランダムならではの硬質な輝きに元気でゴージャスなイエローカラーがプラスされたイエローサファイアは、ブルーサファイアとはまた違う独特な魅力を放っているように思います。
鉱物としての基本情報
英名 | サファイア |
和名 | 鋼玉(こうぎょく) |
鉱物名 | コランダム |
分類 | 酸化鉱物 |
結晶系 | 六方晶系/三方晶系 |
化学組成 | Al2O3 |
モース硬度 | 9 |
比重 | 3.99 – 4.05 |
屈折率 | 1.76 – 1.77 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
サファイアはコランダムという鉱物に属します。
コランダムはダイヤモンドに次いで硬いとされる鉱物で、劈開がなく、靭性も高いとされています。
日常使いのジュエリーにも適していますが、だからと言って全く割れないという訳ではありませんので、大切に取り扱いましょう。
赤いコランダムがルビーで、それ以外の色が全てサファイアに分類されています。
前述した通り、様々な色を呈し、ブルー以外の色のものは総称してファンシーカラーサファイア(ファンシーサファイア)と呼ばれます。
ファンシーカラーサファイアの内、イエローのものがイエローサファイアです。
産地
ブルーサファイアの産地として歴史的にも有名なのは、北インドのカシミール、ミャンマー、スリランカでしょう。
博物館などで見られるサファイアの大部分がこの3つの産地から採れたものです。
他にも、タイ、カンボジア、オーストラリア、アフガニスタン、アメリカ、マダガスカルなど多くの土地からサファイアは産出されます。
イエローサファイアを始めとしたファンシーカラーサファイアの産地も大体同じとされますが、有名なのは、スリランカ、マダガスカル、タイなどです。
また、近年注目度がアップしているファンシーカラーサファイアの産地の一つとして、アメリカのモンタナ州があり、この地で採れるサファイアはモンタナサファイアと呼ばれています。
アフリカの数カ国でも、良質のファンシーカラーサファイアが採掘され始めています。
今後も新しい鉱脈が世界のどこかで発見されるかもしれませんね。
原石の形
イエローサファイアの原石は、他のサファイアと同じです。
アルミナの多い広域変成岩や、霞石閃長岩などのシリカに乏しい火成岩、中~高温の酸性熱水による変質帯などで産出されています。
コランダムの典型的な結晶は樽状、または紡錘形の六角錘状です。
宝石品質のサファイア結晶は、2次性堆積層である砂鉱床の中から採掘されています。
風化した岩盤から洗い出されたサファイア結晶は比重が大きく、川の流れの中で一定の場所に集まるのだそうです。
サファイアは化学的に安定した鉱物で、土や水による腐食はしにくいのですが、川を流れるうちに摩耗されていきます。
サファイアの原石を川で採掘する様子をスリランカで見たことがありますが、普通の小石と見分けのつかないものが多く、やはり素人では判別が難しいと思いましたよ。
もしかして、知らないうちにサファイアの原石を踏んでいたかもしれませんね・・・。
イエローサファイアの色のヒミツ
イエローサファイアの色について語る前にまずはサファイアの色のヒミツからお話しましょう。
サファイアの色
サファイアというと、誰もがまず思い浮かべるのはブルーサファイアでしょう。
ピンクとオレンジの中間色であるパパラチアサファイアもよく知られていますし、その他にも様々な色がありそれぞれにとても魅力的ですよね。
しかし昔はサファイアにこんなに沢山の色があるとは知られていなかったようです。
中世から19世紀末までは、グリーンサファイアは「オリエンタルペリドット」、イエローサファイアは「オリエンタルトパーズ」と呼ばれていたそうですよ。
サファイアにはなぜ、様々な色があるのでしょうか。
サファイアの色のヒミツは、微量元素にあります。
コランダムはアルミニウムと酸素からできており、元々はカラーレスなのだそう。
コランダムが生成される過程で入り込んだ微量元素の作用によって発色すると考えられています。
例えば、鉄やチタンの相互作用によってブルーになり、クロムによってレッドやピンクに発色します。
また、マグネシウムやバナジウム、コバルトなどが関係して発色する場合もあります。
イエローサファイアの色
ではイエローサファイアの発色元素は何なのでしょうか。
イエローサファイアは微量のニッケルが含まれることによって発色し、含有量の違いで色味に違いが生じると考えられています。
イエローサファイアの色相は、グリーンに近いものからオレンジに近いものまであります。
それに色の濃淡や透明度の違いが加わって、印象の異なるイエローサファイアが出来上がります。
オレンジに近いものは、華やかなゴールドの輝き。
グリーンに近いイエローサファイアには、レモンを思わせる爽やかな煌めきがありますよ。
イエローにも様々なニュアンスがあって面白いですね!
イエローサファイアに施される人工処理
次にイエローサファイアに施される人工処理についてお話しましょう。
現在流通しているサファイアの殆どに、色や外観を改善させるため、何らかの処理がされているといわれています。
私はスリランカの宝石店で「非加熱、無処理のサファイアを見せて」とお願いしたことがあったのですが、私の手の届く値段では、美しい非加熱のサファイアはありませんでした。
色むらが大きかったり、シルクインクルージョンやホクロのような内包物が目立っていたり。
「熱処理は大抵のサファイアに施されている。他にも、色を綺麗にするための処理があるんだよ」
と教えてもらい、衝撃を受けたことを覚えています。
イエローサファイアに施される処理には様々ありますが、その中から今回は「加熱処理」と「ベリリウム拡散処理」について解説しましょう。
加熱処理
サファイアの殆どは、美しい発色や透明度を上げるために加熱処理が施されるといわれています。
実は宝石の加熱処理は、古代エジプトや古代インドで既に行われていたという文献が残っているそうですよ。
紀元前から行われてきたとは、本当に驚きました。
昔は薪や木炭などで何日もかけて行っていたそうですが、現在はハイテクな機材が使われることもあるのだとか。
加熱処理は、地球が気の遠くなるような長い年月をかけて鉱物に与えるプロセスを、人間が代わりに行っていると考えられ、カラーストーンの市場では最も一般的な処理方法です。
加熱処理が施されたからといって天然石には変わりなく、偽物にはなりませんし、著しく価値が下がることもありません。
コランダムの場合は加熱の有無が判断できる場合も多く、判断できる場合は「加熱が行われています」もしくは「加熱の痕跡が認められません」と記載されます。
判断できないものは「通常、加熱が行われています」と記載されます。
ベリリウム拡散処理
この画像のサファイアは全て、ベリリウム拡散処理が施されています。
とても美しいイエローサファイアやパパラチアサファイアなども見られますよね。
高価なサファイアのように見えますが、これらは海外では、安いものですと、1ct数百円ほどで買えるものなのです。
ベリリウム拡散処理と知って買う分には全く問題ないのですが、天然のパパラチアサファイアやイエローサファイアなどと偽って高値で売られるケースもあるそうなので、注意が必要です!
ベリリウム拡散処理とは、ベリリウムの着色剤をサファイアと一緒に坩堝に入れて、融点まで加熱し、人工着色する方法なのです。
加熱することでベリリウムの成分がサファイアの中に入り込み、イエローやオレンジに変化するといいます。
ベリリウム拡散処理だけでなく、価値を偽った処理や合成サファイアなどもありますので、高価なものを購入される場合は特に、信頼のおける鑑別機関の鑑別書付のものかオプションで取れるものを購入することをオススメします。
イエローサファイアの価値基準と市場価格
価値基準
イエローサファイアの価値は、色相、色調、彩度の組み合わせによって決まります。
明るくて鮮やかな色で、照りが良く透明度の高いものが高品質とされます。
トップクォリティのイエローサファイアは、彩度の高い鮮やかなイエローや、オレンジがかったイエローだといわれています。
それから、サファイアにはゾーニングといって、一つの石の中に違う色が見られるゾーンがあるのですが、それが目立つと価値が下がってしまいます。
様々な角度から見て、ゾーニングの有無を確かめることも大切でしょう。
イエローサファイアはサファイアの中では比較的大きいものが採れやすいそうです。
サイズに比例して価格も上昇します。
市場価格
イエローサファイアは、ブルーやパパラチアに比べれば、比較的お手頃価格のものも多い印象です。
サイズやクォリティによっては、一万円以下でも見つけることができるでしょう。
全般的に数万円以上のものが多く、サイズが大きくトップクォリティのものですと数百万円以上するものもあります。
どこで買える?
サファイアはブルーやパパラチアが人気とされており、イエローサファイアと出会うのは少し難しいかもしれません。
最近では、オンラインショップやミネラルショーなどを中心にルースで販売されているイエローサファイアを見かけるようになったので、手に入れる機会が増えつつありますね。
高級ジュエリーブランドのティファニーやヴァンクリーフアーペルでもイエローサファイアの取り扱いがあるようですよ。
しかしまだまだイエローサファイアは、ジュエリーとしてではなく、ルースで流通しているものが多いという印象です。
イエローサファイアのお手入れ方法
イエローサファイアは、前述したとおり、モース硬度や靭性が高いため比較的取り扱いやすい宝石ですが、強い衝撃を与えれば傷ついたり欠けたりする恐れはありますので、大切に取り扱って下さいね。
日常的な習慣として、しまう前にやわらかい布で拭いてあげるとキレイを保ちやすいです。
時々、少量の石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で柔らかいブラシなどで優しく洗ってあげると、より良いでしょう。
泡などは水の中でよく流し、やわらかい布できちんと水分を拭き取ってからしまうようにして下さいね。
少量であれば、アルコールも問題ありませんので、アルコールティッシュなどでサッと拭き取ってもキレイになりますよ。
保管する際は仕切りのある箱や小袋に分けるなど、他の宝石とぶつからないようにした方が安心です。
最後に
ファンシーカラーサファイアの中で、ゴージャスな輝きがとても素敵なイエローサファイアをご紹介しました。
イエローサファイアに施される処理にはいろいろあって、加熱処理は紀元前から行われてきたものだということも分かりました。
それから、ベリリウム拡散処理によって人工着色されたイエローサファイアは価値がとても低いので、注意が必要ですね。
素敵なイエローサファイアとの出会いに期待しています!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか
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◆https://www.gia.edu/