澄みきったブルーの宝石、アクアマリン・・・
その名の通り、「海の水」の様に、みずみずしく美しい宝石ではないかと思います。
昔、バイキングやヨーロッパの船乗り達が航海の「お護り」として身につけていたという言い伝えもある程、古くから色んな形で愛され続けてきた宝石でもあります。
そんなアクアマリンにも「偽物」が存在しているといいますがご存知でしたでしょうか。
そこで今回はアクアマリンの偽物を見分ける方法など、知っておきたい情報をご紹介していきたいと思います!
目次
アクアマリンについて
偽物についてお話する前にまずはアクアマリンについて簡単に説明させて下さい。
詳しく知りたい方はコチラの記事を、よくご存知の方は飛ばしちゃって下さいね。
アクアマリンは、エメラルドと同じベリル(緑柱石)という、ベリリウムを含む鉱物の一種です。
ベリルは色が豊富な鉱物で、他にも、ピンク色のモルガナイト、黄色のイエローベリル、赤色のレッドベリルなどあり、色によって名前が変わります。
色の違いは主に含まれる成分の違いと考えられているそうです。
一般的な結晶の形は六角柱状で、主な産地は、ブラジル、マダガスカル、ナイジェリア、モザンビーク、スリランカ、ロシア、インドなどといわれています。
宝石の中では比較的大きな結晶で産出される事が多いといわれ、過去には、ブラジルで重さ110kg、直径38cm、長さ48cmの巨大なアクアマリンの結晶が産出されたという記録が残っているそうです。
比較的インクルージョン(内包物)が少ないものが多いのも特徴の一つですね。
色
前述したとおり、アクアマリンはベリルの中で青色を示すものを指します。
そのため基本的には青色~緑がかった青色~緑青色といった色幅に限られており、多くは緑色がかった青色をしているといわれています。
未処理でも美しいブルーのものもあるそうですが、市場に出ているものの多くはグリーンや黄褐色のものを加熱処理によってブルーに変えたものだといわれています。
一般的に加熱処理が施されているため、処理がされているからといって価値が著しく下がることもなければ、ましてや加熱処理されたアクアマリン=偽物ということはありませんので誤解しないようにして下さいね。
最高級のアクアマリン:「サンタマリア」
かつてブラジルのサンタマリア鉱山で深いマリンブルーのアクアマリンが採掘されていました。
それらはサンタマリアアクアマリンと呼ばれ、高い価値をつけられ最高級アクアマリンとして重宝されていました。
サンタマリア鉱山のアクアマリンは採掘しつくされてしまったといわれていますが、その後アフリカのモザンビークからも同じような濃い青色のアクアマリンが発見され、「サンタマリア・アフリカーナ」と呼ばれるようになったそうです。
現在では産出地に関わらず、深いマリンブルーのものは「サンタマリアアクアマリン」と呼ばれています。
アクアマリンは産地証明ができない宝石です。
アクアマリンの偽物ってどんなもの?
では本題に入りましょう!
同じベリル族の宝石「エメラルド」などと比べて比較的控えめな価格帯のものが多い印象ですが、大きさや品質によっては高額で取引されることもあるアクアマリン。
人気もある宝石ですから、偽物も存在しています。
ではどんなものがアクアマリンの偽物として出回っているのか、順番に詳しく説明していきますね!
1.合成スピネル
スピネルという宝石は、天然でも多く産出され、色幅が広く美しい宝石です。
宝石鑑定技術がまだ発達していなかった昔、大きなルビーとして王冠に留められ重宝されていたものが実はレッドスピネルだったという歴史もある程、古くから採掘されてきた宝石でもあります。
スピネルは人工的にも多く作られ、宝石市場に出回っています。
そしてその人工的に作られた「合成スピネル」がアクアマリンの偽物として混在している事もあるというのです。
2.ガラス
ガラスは古くからさまざまな宝石の「偽物」として出回っています。
例外にもれず、アクアマリンに似せて作られたガラス製品も存在するそうです。
3.ダブレット(張り合わせ)
それほど多くは出回っていないようですが、2つのガラスを接着剤でくっつけたダブレットと呼ばれる偽物の存在も確認されています。
いわゆる張り合わせと呼ばれるものですね。
ダブレットは他の宝石でも多く見られ、ダブレットオパールなどが有名です。
見分け方はあるの?
偽物の存在は分かりましたが、素人にもできる見分け方はあるのでしょうか?
完璧にとまではいきませんが、参考にはできる簡単な見分け方がそれぞれあるみたいなのでご紹介しましょう!
合成スピネルの見分け方
画像は、チェルシー・カラーフィルターと呼ばれる宝石鑑別の道具です。
カラーフィルターは特定の光だけを透過します。
1度に大量の宝石を区別することができ、かつ小さく携帯性にも優れているため、とても便利な宝石鑑別道具の一つです。
(6000円程度で入手可能です!)
アクアマリンとして買い付けられた宝石にペンライトなどで光を当てながらカラーフィルターで覗いてみると・・・
なんと他と色が異なって見える2つの宝石が見つかりました。
この2つが合成スピネルです。
天然のアクアマリンは淡緑色に見えますが、合成スピネルは茶色がかったグレーに見えるそうです。
※カラーフィルターはあくまでも補助検査です。実際の鑑別では専門機材などを使って色んな角度から見た上で判断しますので、これだけで全てが分かるわけではありません。
ガラスの見分け方
アクアマリンに限らず、ガラスと天然石の見分け方は主に次の3つです。
1.触っても冷たくない
2.ガラスの特徴「気泡」あり
3.ファセット稜線が鋭くない
ではそれぞれをもう少し詳しくご説明していきましょう。
1.触っても冷たくない
天然石とガラスでは熱伝導率が異なるため、天然石は触った時にどことなくヒヤッとした感触があるといいます。
一方ガラスにはその感触がありません。
ただこれは、持ち比べてみたり沢山触って2つの感触の違いを覚えないとすぐには分からないレベルのものだと思います。
慣れていない人が少し触っただけでは分かりにくいかもしれません。
人によって冷たい、冷たくないの感覚は多少異なりますしね。
ただ逆に言えば、感触を覚えたら何となく触っただけで違和感を感じられるようになるかもしれない、というもののようです。
2.ガラスの特徴「気泡」あり
ガラスには、気泡と呼ばれる泡の粒の様なものが内包されている事が多いです。
一方ガラスに見られるような気泡はアクアマリンには見られません。
よって、この気泡の有無で、この2つを区別することができます。
3.ファセット稜線が鋭くない
もう一つ、ガラスである場合はファセット稜線が鋭くない(角が丸まっている)事でも区別できるといいます。
中にはファセット稜線がすり減ってなんだかガサガサしてしまっている場合もあるといいます。(摩耗)
これは、一般的にガラスの硬度が天然のアクアマリンよりも低い場合が多いため起きる現象だと考えられているみたいです。
ダブレット(貼り合わせ)の見分け方
前述したとおり、ダブレットは2つの素材を貼り合わせてつくっているためまずは接着面を確認します。
肉眼では分かりにくくてもルーペなどで拡大して見ると、接着面が目で確認できる場合もあります。
また、接着面と上下のガラスと反射率が異なるため、ピンセットで挟んでチラチラ動かしてみると、明らかに違和感が感じられます。
天然のアクアマリンの特徴
偽物の特徴が分かったところで、最後に本物(天然のアクアマリン)の特徴についても簡単に説明しましょう。
ファセットカットされたアクアマリンは比較的内包物(インクルージョン)が少ないという特徴があり、肉眼で見ると、いわゆる”アイ・クリーン”(内包物が少なくキレイに見えるもの)である事が多い宝石です。
(鑑定士の立場からすると、インクルージョンは天然の宝石か否かを区別する判断基準として非常に有用なものなので、”アイ・クリーン”は悩ましいのですが・・・)
しかし10倍のルーペで見てみると、アクアマリン特有の雨が降っている様な平行に走る細かなインクルージョン(内包物)が見られる事があります。
これは”レイン状インクルージョン”と呼ばれるもので、天然のアクアマリンだという証拠の1つになります。
また、アクアマリンキャッツアイと呼ばれる、キャッツアイ効果を見せる種類もあります。
クリソベリルキャッツアイの模造石などは存在するという話もあるようですが、アクアマリンキャッツアイの偽物を市場で見かけることはまだあまりないと聞きますので、今のところは天然のものが多いと言っても良いかもしれません。
最後に・・
青く澄んだ透明度の高い宝石、アクアマリン。
縁あって巡り会えたもので「偽物」はやはり避けたいですよね。
きちんと知るためにはやはり鑑別機関でしっかり調べてもらうことをオススメしますが、購入前の一つの参考にしてもらえればと思います。
一人でも多くの方が素敵なアクアマリンに出会えることを祈って・・・
カラッツ編集部 監修