ガーネットといえば赤い宝石だと思っている方、多くないですか?
実は私も昔はそう思っていました。ところが本当は、ガーネットは色も性質もバラエティに富んでいて、奥が深い宝石なんですよ!
しかも、ガーネットとはひとつの石の名前ではなく、グループの名前なんだそうです。
と言われても、それだけではどういうこと?となってしまうかもしれないですね。
そこで今回は、知れば知るほどはまってしまう、ガーネットについてイロイロ紹介したいと思います!
目次
ガーネットとは?
ガーネットは最も古くから知られている宝石のひとつで、青銅器時代から宝石や研磨剤として使われていました。
5000年前のエジプトでもファラオが赤いガーネットのネックレスをつけていたと記録が残っているようです。
その後も古代ローマで貴重な石として用いられたり、中世では聖職者や貴族に好まれていました。
アールヌーボーやアールデコの時代にもガーネットは重宝されていたといいます。
青銅器時代から現代に至るまでずっと愛されているガーネットは、どのような鉱物なのでしょうか。
鉱物としての基本情報
冒頭でチラッとお伝えしましたが、「ガーネット」とはひとつの石の名前ではなく、化学組織が近い等軸晶系の鉱物のグループ名だそうです。
その化学成分は20種類以上ともいわれています。
全体としての鉱物情報は次の通りです。
鉱物名 | ガーネット |
結晶系 | 等軸晶系 |
モース硬度 | 6.5-7.5(※) |
屈折率 | 1.614-1.888(※) |
比 重 | 3.47-4.15(※) |
※「モース硬度」「屈折率」「比重」は種類によって異なるため、数値に幅があります。
一般的に、ガーネットとしてよく見かけるものは赤色のものが多いかと思いますが、実際にはあらゆる色のものが存在します。
ガーネットグループを大まかに分けると、アルミニウム系ガーネットとカルシウム系ガーネットの二つになるといわれ、その中から更にそれぞれ3つずつ枝分かれし、現在宝石として主に扱われているのは6種類だといわれています。
アルミニウム系ガーネットには「パイロープ」「アルマンディン」「スペサルティン」という3種類があり、レッドやオレンジ系の色味が強いものが多い印象。
一方のカルシウム系ガーネットには「グロッシュラー」「アンドラダイト」「ウバロバイト」という3種類で、こちらはグリーンやイエロー、褐色系が多い印象です。
そして、上記6種類を端成分とし、端成分が複数混ざりあった固溶体と呼ばれる種類もあります。
産地
ガーネットは世界中すべての大陸で産出されているそうです。主な産地を種類ごとに見てみましょう。
まずは、アルミニウム系ガーネット(パイロープ、アルマンディン、スペサルティン)からです。
名 称 色 化学組成 |
おもな産地 |
パイロープ 血のような赤色 Mg3Al2(SiO4)3 |
チェコのボヘミア、アメリカ、南アフリカ、オーストラリア、 ブラジル、ミャンマー、タンザニア |
アルマンディン 黒っぽい赤色 Fe3Al2(SiO4)3 |
東アフリカ、アメリカ、オーストラリア |
スペサルティン 橙色、黄色、赤色 Mn3Al2(SiO4)3 |
ドイツのスペッサルト地域、ナミビア、ナイジェリア、 スリランカ、マダガスカル、ブラジル、ミャンマー、アメリカ |
次にカルシウムガーネット(グロッシュラー、アンドラダイト、ウバロバイト)の主な産地です。
名 称 色 化学組成 |
主な産地 |
グロッシュラー 緑色、無色、黄色 金色、褐色など Ca3Al2(SiO4)3 |
ケニア、タンザニア、南アフリカ、スリランカ、パキスタン、 アフガニスタン、カナダ、メキシコ、イタリア、スイス、ロシア |
アンドラダイト 緑色、褐緑色、黄緑色 黒色、黄色など Ca3Fe2(SiO4)3 |
ロシア、イタリア、ドイツ、アメリカ |
ウバロバイト エメラルド色 Ca3Cr2(SiO4)3 |
ロシア、南アフリカ、アメリカ、ポーランド |
原石の形
ガーネットは原石の状態から様々な色を呈していますが、結晶体ははっきりしているそうです。
ガーネットの結晶体は等軸晶系の「菱形12面体」か「変菱24面体」、またはその組み合わせでできているといわれています。
原石の状態でありながら、まるで研磨したかのようにガラス質の光沢のあるものも多く存在しているのだとか。
名前の意味
ガーネットという名前は、中世のラテン語「グラナタス(granatus)」が語源といわれています。
「ザクロ」という果物を表した言葉です。
ザクロを割ると、中にキラキラした赤い実が詰まっていますが、あの色はガーネットそのものですよね。
ガーネットは和名もそのまま「柘榴石(ざくろいし)」です。
石言葉
ガーネットは「真実」「友愛」「貞操」の象徴と考えられてきました。
親しい人への贈り物に適した石言葉ですね。
ロシアやボヘミア、アラスカなどでは、国を象徴する宝石として大切にされてきたそうです。
インドの占星術では、ガーネットはネガティブな感情をなくし心の平和を保つと伝えられています。宝石にはそれぞれパワーがあると考えられているのですね。
ガーネットの色と種類
どんな色があるの?
これまでご紹介した通り、ガーネットは赤だけではなく、多様な色調をもっています。
ほぼ全ての色があるようにも思います。ブルー系の色も希少ですが存在しています。
「ガーネットは暗い赤色の石で、少し地味な感じ」と思い込んでいた私は、スリランカに行ってオレンジやグリーンのガーネットがあることを知り、本当にびっくりしました。
特に初めてオレンジのガーネットを見た時は衝撃的でした。
最初は騙されているとさえ思っていましたが、その後宝石店巡りが趣味になり、様々な色のガーネットを見るに従い、その魅力の深さも知ることになりました。
タンザニアでも、とても美しいガーネットを沢山見ることができましたよ。
レッドやグリーンで透明度が高く、大粒で照りが良くキラキラしたルースたちが揃っていました。
色々見させてもらいながら、結局何も購入しないまま帰国してしまいましたが、あの時、鮮やかなグリーンのツァボライトを買っておけばよかったと今では後悔しています。
固溶体と珍しい種類
すでにご紹介したように、ガーネットには赤系のアルミニウム・ガーネットと、緑系のカルシウム・ガーネットがあります。
そして、そこからさらに枝分かれして、パイロープ・アルマンディン・スペサルティン・グロッシュラー・アンドラダイト・ウバロバイトの6種類が、宝石として扱われているガーネットであることも、ご紹介しました。
さらに、いくつかの成分が混ざり合った「固溶体」としての種類もあり、有名なところだと、「ロードライトガーネット」「マラヤガーネット」「マリガーネット」「カラーチェンジガーネット」などがあります。
どの成分が溶け合っているのか、詳細は次の通りです。
名 称 | パイローブ | アルマンディン | スペサルティン | グロッシュラー | アンドラタイド |
ロードライトガーネット | 〇 | 〇 | |||
マラヤガーネット | 〇 | △ | 〇 | ||
マリガーネット | 〇 | 〇 | |||
カラーチェンジガーネット(※) | 〇 | 〇 |
※カラーチェンジガーネットの多くはパイロープとスペサルティンの固溶体といわれていますが、例外もあります。
先程の図をもう一度ご紹介します。
他にも珍しい種類のガーネットがありますのでご紹介しましょう。
ミントガーネット
ミントガーネットは、グリーン・グロシュラー・ガーネットの淡い色味の石です。
ブラックライトで色が変わる「UVタイプ」のものが多く見られます。
私も実際、タンザニアの宝石店でUVタイプのミントガーネットを見せてもらった事があります。
淡い色合いで照りも良く、ペパーミントキャンディのようなキラキラのルースでした。
ブラックライトを当てると明るいオレンジに変わったので、とても驚いたのを覚えています。
▽カラッツSTOREのミントガーネット▽ |
スターガーネット
カボションカットに研磨した際、宝石の内部にある針状のインクルージョンが光の反射で条線として表面に現れることをスター効果(またはアステリズム効果)といいます。
そして、ガーネットの中でこの現象が起こるものをスターガーネットと呼びます。
スター効果は、ルビーやサファイアなど他の宝石にもよく見られる現象ですが、ルビーやサファイアの場合は6条が多いのに対し、ガーネットの場合は4条が多いといわれています。
とはいえ、ガーネットにも6条が現れるものもあります。
これは、ガーネットの針状インクルージョンは結晶が生成された後にできると考えられていますが、特徴として、約110度と約70度の角度で結晶の辺に沿って「三次元的に交差する」といわれており、これに関係しているそうです。
三次元的に交差したインクルージョンは、平面的に見ると2方向に交差しているように見える場合でも、立体的に見ると奥行きをもってもう1方向にも入っていることがあるそうで、それをカボションカットでうまく石取りすると、3方向目のラインが奥に現れ6条のスターが現れることもあるそうなのです!
ただしそれ故に、ガーネットの6条スターはある1方向のスターの線が弱いことが一般的なんだとか。
天然の作り出すアンバランスさもまた宝石の魅力の一つですよねー。
▽カラッツSTOREのスターガーネット▽ |
誕生石としてのガーネット
ガーネットは1月の誕生石です。健康や富、幸福をもたらすといわれています。
ガーネットには多様な色や種類がありますので、1月生まれの方は好みの色を選ぶことができてラッキーだと思います!
比較的お手頃価格で手に入るものも多いですし、色々集めてみるのも楽しそうですね。
価値が高い種類はどれ?
赤色系のガーネットに比べ、緑色系のガーネットは産出量が少ないこともあり価値が高くなる傾向にあります。
特に深いグリーンが特徴的なデマントイドや、エメラルドのような色をしたツァボライトは希少で、近年人気が上昇していることもあり、価値も上がっているといわれています。
特に3カラット以上のものは珍しいそうです。
また、ジューシーなオレンジ色をしたマンダリンガーネット(スペサルティンガーネット)も価値高く扱われる種類の一つです。
それぞれ簡単に説明しましょう。
デマントイドガーネット
カルシウム系ガーネットである、アンドラダイトの一種となるデマントイドガーネット。
深いグリーンと光の分散が高いことからくる強い輝きが特徴的な宝石です。
また「ホーステール」と呼ばれるインクルージョンをもつことも特徴の一つですね。
中心から放射状に広がる線がまるで馬の尻尾のようです。
ホーステールが美しく入ったデマントイドは、さらに価値が高まります。
▽カラッツSTOREのデマントイドガーネット▽ |
ツァボライト
一方、ツァボライトは同じグリーン系カルシウムガーネットの中のグロッシュラーガーネットの一種です。
ケニアとタンザニアにある「ツァボ国立公園」で採掘されたことから、ティファニー社によって名付けられたことも有名ですね。
エメラルドに似たグリーンが印象的で、近年人気が上昇している宝石の一つです。
グロッシュラーガーネットには、カラーレス、イエロー、褐色などがあり、ツァボライトはクロムとバナジウムが含まれることで緑色に発色すると考えられています。
これはエメラルドの発色要因とも同じらしく、だから色が似ているのかもしれませんね。
▽カラッツSTOREのツァボライト▽ |
マンダリンガーネット
マンダリンガーネットは、アルミニウムガーネットの一つであるスペサルティンガーネットの中で、濃いオレンジ色の、まるで果実のマンダリンのような色合いをもつものを指します。
マンダリンガーネットはコマーシャルネームのため、鑑別書にはスペサルティンガーネットと書かれます。
くすみのない鮮やかなオレンジカラーであることがマンダリンガーネットの一つの条件とされています。
海外でも人気がある種類です。
▽カラッツSTOREのマンダリンガーネット▽ |
ガーネットを購入する前に知っておきたいこと
価値基準
ガーネットの価値基準で最も重要なポイントは色です。
これは全ての種類に共通して言えることで、色が濃くて鮮やかなもの程価値が上がります。
その他、クラリティ(透明度が高くインクルージョンやキズ欠けがないもの)、カット、カラット(大きさ)などで総合的に判断され価値が決まります。
なお、種類別の基準としては、デマントイドガーネットはホーステールインクルージョンが含まれるものの方が高く扱われ、形が美しい程評価が上がります。
また、カラーチェンジする種類についてはハッキリと変化が見られるもの、スターガーネットはスターが見えやすいもの程高くなります。
種類での価値の違いとしては、最も価値高く扱われるものはデマントイドガーネット、次にツァボライト、マンダリンガーネットなどです。
市場価格
種類によって相場価格が異なるため一概にご紹介することは難しいですが、比較的手に入りやすい価格のものが多いのはアルマンディンガーネットやロードライトガーネットです。
コレクターを中心に人気の高いマラヤガーネットやカラーチェンジガーネットはクォリティに依って数万円以上、マンダリンガーネットやツァボライトでは数十万円以上するものもあります。
最も価値高く扱われるのは先程ご紹介したとおり、デマントイドガーネットでホーステールインクルージョンが美しいトップクォリティのものですと百万円以上するものもあります。
購入できる場所
アルマンディンガーネットやロードライトガーネットは流通量が多いため、ルースでもジュエリーでも取り扱っているお店は多い印象です。
パワーストーンのお店やアクセサリー雑貨のお店でガーネットとして売っているものも恐らくこれらの種類が多いのではないかと思われます。
マンダリンガーネット、マラヤガーネット、ツァボライト、デマントイドガーネット、カラーチェンジガーネットなども、ルースであれば、オンラインショップを中心に取り扱っているお店は多い気がします。
ミネラルショーなどのイベントでもよく見かけます。
その他の種類もレアストーンの取り扱いの多いお店でルースを見かけることはありますが、タイミングにも依りますのでご興味のある方はマメにチェックしてみると良いかもしれません。
ガーネットのお手入れ方法
ガーネットはモース硬度が6.5から7.5です。
ルビーやサファイア、ダイヤモンドよりも低いですね。
他にもガーネットよりも硬度が高い宝石は幾つかありますので、あまり他の宝石と一緒に保管しない方が良いでしょう。
表面に傷がつく恐れがあります。
ピアスやブローチ、ペンダントなどの方が適しているといえますが、硬いものにぶつからないように注意すれば、リングでも大丈夫でしょう。
目立つ汚れを取りたいときは、温かい石鹸水と柔らかい布を使うと良いですよ。
最後に
いかがでしたか。ガーネットは、知れば知るほど奥深いですね。
ガーネットがグループ名だったなんて、驚きました。
我が家には現在、赤とオレンジとカラーチェンジするガーネットがありますが、他にもコレクションしたくなってきました。
今回、ガーネットについて調べたことで、一気にファンになってしまったのです。
知らないことだらけでした。
いつか、ツァボライトかデマントイドが欲しいなーと思っています!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか
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◆https://www.gia.edu/