ジュエリーなどに使用されることも多いトパーズ。
11月の誕生石と聞いてトパーズを連想される方も多いかもしれないですね。
カラーバリエーションが豊富で、色や種類によって価値が大きく変わることもある宝石です。
個人的な主観かもしれませんが、トパーズの輝きはどことなく柔らかく水々しい雰囲気で、潤いさえ感じるような気がします。
今回はそんなトパーズについて基本情報から種類、価値基準、偽物の存在まで色々調べてみましたので、ご紹介しますね!
目次
トパーズとは
基本情報
英名 | Topaz(トパーズ) |
和名 | 黄玉(おうぎょく) |
鉱物名 | トパーズ |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 斜方晶系 |
化学組成 | Al2SiO4F2(Fタイプ) Al2SiO4OH2(OHタイプ) |
モース硬度 | 8 |
比重 | 3.56-3.57(Fタイプ) 3.50-3.54(OHタイプ) |
屈折率 | 1.61-1.62(Fタイプ) 1.63-1.64(OHタイプ) |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
トパーズは古代ギリシャやローマでは太陽や黄金の象徴とされていたと言い伝えられている宝石です。
和名を黄玉(おうぎょく)といいます。
これは、かつてトパーズといえば黄色というように、黄色がトパーズの代表的な色だったことからきているそうです。
しかし日本でも採れるというトパーズですが、日本で黄色のトパーズが産出されることは今も昔もほとんどないそうです。
現在では、各産地から黄色以外の色のトパーズも産出されている他、加熱処理や放射線照射の技術が発達したこともあり、カラーバリエーションが豊富な宝石として有名です。
産地
ブラジル、ロシア、タイ、カンボジア、ベトナム、アフリカ、アメリカ、日本
かつて日本で採れたトパーズはカラーレスやブルーが多かったといわれています。
滋賀県で産出されたトパーズが世界で脚光を浴びていた時代もあったそうですよ。
原石の形
トパーズはアルミニウムやケイ素などでできたケイ酸塩鉱物です。
花崗岩ペグマタイトや結晶質石灰岩などの中に生成されるといわれ、結晶は柱状に伸び、断面は菱形で柱面に条線が入ることが多いそうです。
ちなみに、こちらはインペリアルトパーズの原石です。まるでべっこう飴のような見た目ですね!
名前の意味
トパーズの名前の由来は諸説あるとされますが、よくいわれているのは
●ギリシア語の”topazios”=「探し求める」から由来した
●サンスクリット語(インドなどの東南アジアの言葉)の”tapaz”=「火」から由来した
この2つです。
ちなみに、1つ目のギリシア語の”topazios”から由来して「トパーズ」になったという言い伝えですが、これは昔、紅海に浮かぶSt.john’s島が周辺を霧に覆われやすく探しにくかったことから、この島とこの島で採れる宝石のことを「トパーズ」と呼んでいたことからきているといわれています。
しかし、実はそれは今の「トパーズ」ではなく、「ペリドット」のことを指していたのではないかという説もあるようです。
真相はどちらなのでしょうね、個人的に少し気になるところです。
11月の誕生石としてのトパーズ
トパーズは11月の誕生石です。
石言葉は 「希望、友情、繁栄」です。
秋が深まる11月の誕生石のトパーズ。人生に深みをもたらす言葉が多い気がします。
トパーズ以外の11月の誕生石
11月の誕生石は他にも、シトリンがありますので少しご紹介しますね。
鮮やかな色味のシトリンはフランス語で「レモン」という意味をもちます。※諸説あります
シトリンの色味は含まれている鉄分と放射線の影響によるものと考えられています。
天然のものは殆ど採れないとされ、現在市場に出ているもののほとんどはアメシストに熱処理を加えたものだといわれています。
石言葉は友愛、希望。トパーズと似ていますね!黄色がもたらすイメージなのでしょうか。
2つのタイプに分かれるトパーズ
トパースは化学構造によって、OHタイプとFタイプの2つに分けられるといいます。それぞれの主な特徴を見てみましょう。
OHタイプの特徴
●水酸基が含まれている
●Fタイプに比べ、希少価値が高い
●Fタイプより屈折率が若干高い
●退色性がない
●ブラジル、パキスタン、ロシアなどが主な産地
●ピンク~オレンジ~レッド、シェリーカラー、イエロー~褐色の色合いのものが多い
Fタイプの特徴
●フッ素が含まれている
●屈折率はOHタイプより若干低い
●長時間光に晒されると退色する可能性がある
●放射線照射処理を施されているものが多い(ブルー、グリーン、褐色など)
●世界各地から産出される
●カラーレス、ブルー、グリーン、ピンク、イエロー、褐色 など多くの色合いをもつ
大きく分けてこの2のタイプに分かれますが、ほとんどのトパーズがFタイプに属するといわれています。
トパーズの色と種類、多色性について
前述したとおり、トパーズはカラーバリエーションが豊富な宝石で、様々な色が存在します。
また、見る角度によって違う色に見える多色性という性質をもつ宝石があるのですが、トパーズにもこの多色性があるといいます。
ただトパーズの多色性は全般的にそれほど強くない場合が多いとされ、顕著に分かる感じではなさそうです。
ちなみに、多色性が強いことで有名なのはタンザナイトやアンダリュサイトなどですね。
では、トパーズにはどんな色のものがあるか、いくつかご紹介しましょう。
中にはコーティング処理が施され、人工的に色が作られたユニークな見た目をもつものもありますよ!
ピンクトパーズ
現在ピンクトパーズとして市場に出ているものは黄色や褐色のトパーズに加熱処理を加えたものが多いといわれていますが、未処理で美しいものもあるそうです。
多くはOHタイプに属し、ピンクインペリアルトパーズとして販売されるものも多いです。
ブルートパーズ
ブルートパーズの中で人気があるものは、色の濃さによって呼び方が変わる、スカイ、スイス、ロンドンの3つです。
スカイが一番色が薄く、ロンドンが一番濃いです。
上の画像で説明すると、上がスイス、向かって左がロンドン、右がスカイです。
スカイブルートパーズはアクアマリンと色がよく似ているため、時折混同されて販売されていることもあると聞きます。
この3つの中で一番価値高く評価されることが多いのは、ロンドンブルートパーズです。
なお、ブルートパーズは、通常照射処理が行われている宝石です。
ホワイトトパーズ(カラーレストパーズ)
ホワイトトパーズ(カラーレストパーズ)はブリリアントカットが施されると、ダイヤモンドに似た輝きをもつことから、ジルコンなどとともにダイヤモンドの代用品とされていた時代もあるそうです。
ホワイトトパーズにコーティング処理などを施し、様々な色に変化させて販売されることも多いといわれています。
レッドトパーズ
無処理のレッドトパーズはめったに産出されず、更に美しい色合いのものは非常に少ないといわれるレッドトパーズ。
多くはOHタイプの「インペリアルトパーズ」だといわれています。
希少価値もコレクター人気も高いことから、市場価格も上がり続けているそうです。
もし出会えたとしても、簡単に手が出せる金額ではないかもしれませんね。
しかしレッドトパーズには着色コーティングされたものもあるといいます。
こちらは市場にも多く出回っており、価格も安いため手に入れやすいと思います。
ただし、中には着色コーティングされたレッドトパーズを未処理のものと偽って高額に売る業者もいると聞きますので、ご注意くださいね。
ミスティックトパーズ
ミスティックトパーズはホワイトトパーズ(カラーレストパーズ)にコーティング処理が施されたものです。
見た目がまるで万華鏡のようで、華やかな雰囲気がありますよね。
皇帝の名をもつインペリアルトパーズ
インペリアルトパーズはトパーズの中で最上質と評価され、とても希少価値が高い種類です。
前述したとおり、全てOHタイプに属します。
「インペリアル」は 帝国の・皇帝の・威厳がある・最上級のという意味をもちます。
名前の由来は諸説ありますが、一説によると、ブラジルのドン・ペドロ皇帝にとても愛され、王冠に飾られていたことからだとか。
インペリアトパーズの色としては、オレンジがかった黄色からオレンジ、レディッシュオレンジやピンク色のものまで様々あるといわれます。
その中で、人気が高いのはシェリーカラーと呼ばれるオレンジやピンクがかった黄金カラーやピンクのものです。
中にはバイカラーのものもあります。
トパーズの偽物や合成石について
トパーズの偽物として、ガラスで作ったものも多く出回っていると聞きます。
ガラスと天然石の簡単な見分け方は、
1.触った時に冷たくない
2.ファセット稜線がぼんやりしている
ということだそうです。
ファセット稜線をチェックするときは、光を反射させて見るそうです。
モース硬度が異なるため、鋭さが違うのだとか。
ただ、慣れていないと見分けることはなかなか難しいと思いますので、気になった時は迷わずプロにお願いしましょう。
本日はトパーズとして持ち込まれたこちらのルースを鑑定。
・触っても冷たくない
・ファセット稜線(画像3枚目)が鋭くないこの特徴から、ガラスと判明しました。
ちなみに、ファセット稜線は光を反射させてチェックします。
モース硬度(硬さ)が8のトパーズと5のガラスでは鋭さが全然違います。 pic.twitter.com/iJBIqWWPkH— KARATZ(カラッツ)代表|小山慶一郎 (@keiichiro_oyama) August 20, 2018
合成石について
トパーズにも合成石は存在するかもしれませんが、市場にはそれ程出回っていないように感じます。
ただ、スピネルなど別の石の合成石がトパーズとして販売されていることなどはあるそうですので注意は必要です。
しかし、それらを見た目だけで判断することはプロであっても難しく、専門の機械も必要となりますので、きちんと確かめたい場合は信頼のおける鑑別機関に見てもらうようにしてくださいね。
ただ一つ誤解して頂きたくないのは、合成石も合成石としてきちんと事実を明記して販売されている場合は問題ありません。
天然石や別の宝石として事実を隠したり誤魔化したりして販売されているのが悪いだけですので、合成石=偽物=悪いと思わないようにして下さいね。
外観観察での真贋判断が難しく、
専門的な機材(※偏光器)で検査縞模様が出ると合成石
ちなみに、トラ猫(タビー)の模様に似ていることから、「タビ−消光」現象と呼ばれこれが合成の証。
※宝石毎に光り方が異なるのですが、人間の見た目ではなく、どういう光り方をするのかを検査する機械 pic.twitter.com/EK47KiQCF4
— KARATZ(カラッツ)代表|小山慶一郎 (@keiichiro_oyama) January 10, 2019
コーティング処理を施されたトパーズについて
トパーズにはコーティング処理を施されたものも多く出回っています。
ミスティックトパーズのように、全てが着色コーティングで作られているものもあれば、一部のものをブルーやレッドなどにコーティングして売っている場合もあります。
コーティング処理されたトパーズであることをきちんと明記して販売されているお店から納得して買う分には全く問題ないと思いますが、中には天然の色であると偽ったり、知らずに販売している業者もいると聞きます。
天然の色と思って気に入って買ったら、実は着色コーティングだった、というのは何だかちょっと騙されたような残念な気持ちになりますよね。
着色コーティングされたトパーズにはある種の特徴がありますので、それを覚えておくと買う前に少しは役に立つかもしれません。
その特徴とは
1. 鏡のような不自然な光沢がある
2. 経年変化により光の反射でファセット稜線に色抜けが見られる
3. 針で削ると剥げる
の3つです。
3は写真や購入前のもので試すことはできませんが、2の色抜けについては、ネット上の写真でも分かることがあるそうですので、トパーズを購入するときは注目してみると良いかもしれません。
レッドトパーズは無色トパーズよりも1000倍以上の価値が。
でも、こちらは着色コーティングされたレッドトパーズ
見分け方は
・鏡のような不自然な光沢
・経年変化により光の反射でファセット稜線に色抜け
・着色は針で削ると剥げますタンザナイトやクォーツでもありますが、見分け方は同じです pic.twitter.com/Px0uHUOwqD
— KARATZ代表|小山慶一郎(旧RECARAT) (@keiichiro_oyama) September 3, 2018
トパーズの価値基準と市場価格
価値基準
では、トパーズの価値はどんなところで見るのか、順番に追っていきましょう。
色
色が濃く鮮やかなもの程高い価値がつけられること多いといわれています。
ちなみに、トパーズの中で価値が高いとされるインペリアルトパーズでいうと、最も価値高く扱われる色はレッド、続いてレディッシュピンク、ピンク、シェリーカラー、その他の色といわれています。
赤味が強い程価値が上がるのだそうですよ。
クラリティ
トパーズは全般的にインクルージョンが少ない宝石です。
なので、透明感の高い、明るい輝きをもつものを比較的簡単に手に入れることができます。
カット
トパースはモース硬度8と高いこともあり、様々な形にカットされることが多いです。
特殊カットを施されたものもありますので、色んなカットのものを集めるのも楽しいと思います。
市場価格
トパーズは色によって人気や流通量の違いから価格が大きく異なる印象です。
Fタイプのトパーズで色味によっては、5ct以上の大きいものでも一万円以下で販売されているものもあります。
人気の高いロンドンブルートパーズで5ctUPのクォリティの高いものだと数万円以上するものも多いといいます。
5ctを超えると1ctあたりの値段がグッと上がるのだそうです。
インペリアルトパーズになると、Fタイプのトパーズより全体的に高くなります。
クォリティや色、カラットによって数千円から、中には数十万円以上するものまであります。
最も希少性が高いと言われるレッドインペリアルトパーズになると、なんとクォリティに依っては数百万円以上するものもあるそうです!
どこで買える?
トパーズもインペリアルトパーズも色によっては、比較的多くのお店で取り扱いがある印象です。
実店舗でもオンラインショップでも見つけやすいと思います。
但し、ピンクインペリアルトパーズやレッドインペリアルトパーズなど希少性が高い種類は取り扱い店舗もグッと減ります。
価格が高いものも多くなりますので、信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付いているものやオプションで付けられるものを購入することをオススメします。
トパーズのお手入れ方法
トパーズはモース硬度8と比較的高い方ですが、特定方向からの衝撃に弱い劈開(へきかい)という性質をもちます。
日常使いのジュエリーとして楽しむことはできますが、強い衝撃を与えると傷ついたり割れたりする恐れがありますので、注意して下さいね。
普段のお手入れは、身につけた後柔らかい布などで拭いてからしまう程度で良いですが、汚れが目立ってきたら、中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中でブラシなどを使って洗ってあげるとキレイになりますよ。
衝撃に弱いため、超音波洗浄機は使用しないで下さい。
Fタイプのトパーズは退色する恐れがあるものも多いと聞きます。日常使い程度では問題ないといわれていますが、念のため直射日光が当たりやすい場所に放置したりしないよう気を付けて下さいね。
OHタイプのインペリアルトパーズは退色しにくいといわれてはいますが、それでも直射日光が当たりやすい場所で保管しない方が安心です。
世界最大のトパーズとは?
出典元:https://geogallery.si.edu/
現在、カットされたトパーズの中で世界最大といわれるものは、「アメリカンゴールデントパーズ」と呼ばれる22,892ctのイエロートパーズです。
ブラジルで発見されたこの宝石は、レオン・エイジによってカットされ、1988年にスミソニアン協会に寄付され、現在ワシントンDCの国立自然史博物館に展示されているそうです。
元々トパーズの原石は、大きいまま産出されることもあるそうで、かつてブラジルで271kgのトパーズが採れたこともあるそうです。
最後に
今回はトパーズに関して調べてみました。
個人的には、オレンジと水色というイメージが強かったのですが、実はカラーバリエーションが豊富な宝石だったことに驚きました。
色が多い分選択肢が広がるということなので、好みのものを見つけやすいかもしれませんね。
ゴージャスなインペリアルトパーズも素敵ですが、爽やかな色合いのブルートパーズも魅力的だと思います。
色によっては比較的手に入れやすい値段で販売されていることもありますので、興味がある方はぜひ探してみて下さいね。
今回の記事でトパースに少しでも興味をお持ちいただけたら嬉しいです。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか
———–
◆https://www.gia.edu/