宝石を見るうえで必要な道具としてはもちろんルーペもですが。
さらにプロのジュエラーっぽく見える道具と言えばピンセット!
筆者もこの仕事を始めたばかりのひよっこ時代、お客様にピンセットとルーペを巧みに使って説明している先輩の姿に神々しいものを感じ、ずっとあこがれていました。
なんて、筆者の甘酸っぱい昔話はまた別の時にってことで(いつになることやら(笑))
大げさかもしれませんが、宝石への愛情は道具の細部に宿る、という事で今回は、ピンセットの選び方と使い方、そして、見るうえで注意することを紹介していきますね!
目次
宝石用と一般のピンセットの違いは?
ピンセットと言えば、一般的には薬局で販売されていたり工業用で使われていたりするもののイメージが強いと思いますが、宝石用は何が大きく違うのでしょうか?
一番は、種類によって硬度が異なる宝石をつかむ際に、先端への力が弱いと宝石を落としやすくなってしまうため、ルースを固定したりできるようにストッパーがついていることでしょうか。
また注目すべきポイントは先端にもあります。
医療用や工業用に使われているピンセットと大きく異なり、宝石用のピンセットは先が丸くなっていたり、宝石が傷つかないようにシリコンやゴムで加工されていたり、ダイヤモンドパウダーがまぶしてあったり。
中にはピンセットの内側に溝が彫られているものもあったりします。
宝石を快適に見るためにいろいろな工夫が散りばめられているんですね。
ある意味ピンセットこそいろいろな方の宝石愛が詰まったアイテムなのかもしれません。
宝石用のピンセットの種類は?
宝石用のピンセットと一言で言っても、宝石に依って硬度が異なったりしますので、用途に応じて色々な種類があります。
そこで今回は一般的な宝飾用のピンセットを大きく6つに分けてまとめてみました。
一般用(宝石をつかむ用)
○真珠用
真珠を傷つけないようにソフトに触れるように先端が皿状に丸くなっています。

○宝飾品用
硬度が低いものに使えるように、先端がゴムで覆われています。

☆ロック式
ルースを掴んだ状態でピンセットの頭部分にロックが掛けられるようになっています。
※主に硬度が高い宝石用
○ルーペ一体型
ルースの写真撮影に用いる事が多いピンセットです。特徴としてはルーペとピンセットの距離を調節し固定して撮影することができます。
加工用
○先端がくの字に曲がったもの
先端が細く曲がっているため、時計の修理や宝飾品加工時の作業に用いる場合があります。
○固定型
加工のためにガスバーナーを使用する際、固定用に使うピンセットです。
このピンセットは宝石を見るためというより、加工のためだけのものになります。
加工で使うピンセットも紹介に入れさせていただきました。
こう見ると宝石の美しさを引き出すために、宝石用のピンセットは一般的なピンセットに比べて色々改良が加えられている事が分かりますね。
慣れてきたらいろんな用途に応じてそろえてみるのも面白いと思いますよ。
ただ、まずは使い慣れたプロのようにかっこよく見えて且つ!宝石が美しく見えるピンセットの持ち方を習得しましょう。
一番使うことが多いロック式のピンセットで紹介していきますね!
と、その前に私が体験したピンセットにまつわる話を。。。。
使い方を間違えると恐ろしいピンセットの怪談話
最初にお伝えしたように、宝石への愛情は細部に宿るという事で。
使い方をお伝えする前に、まずは私が体験した背筋も凍る怪談話をご紹介したいと思います。
よくやってしまいがちなピンセット怪談話

怪談その①
テーブルとキューレットを挟んでしまい、キューレットが削れテーブルが傷ついてしまった。。。。
→もちろん一気に宝石の輝きと価値が下がってしまいます。下手したら、もう売り物になりません。。。。(泣)
怪談その②
机があるのに立ったまんまピンセットでルースを挟んだまま右から左へ。。
ルースはちょっとの遠心力を使い、弧を描いてピンセットから脱走、その場にいた人みんな地に這いつくばり捜索するも見つからず。。。
約1年後思わぬところから見つかる。
→宝石は一つ一つ個性があります。このお話の時はお店の商品で、ルースを飛ばしたのが従業員だったので会社内で終わりましたが、これが人からの預かりものだった場合取り返しのつかないことになります。。
怪談その③
大きいルースを無理やりピンセットでつかんだためガードルをつかんでしまい傷つけてしまった。

→①同様価値が下がってしまいます。
怪談その④
机の上に、宝石用のトレイも何も敷かずにピンセットで宝石を挟もうとして、失敗して机の上にルースが落ちキューレットにひびがいってしまう
→価値が下がってしまいます。キューレットに破損があると輝きも変わってきます。
実はまだまだ紹介したい身の毛もよだつ怪談話はたくさんあるのですが、、、
思い出しているうちに私が遠いところに行ってしまいそうなので、今回はこの4つにさせていただきます(泣)
ちなみにですが、4つともすべて私のやらかした事ではないのであしからず。
では この4つを踏まえてピンセットを使用する際どんな事を注意していったらいいのか具体的に説明していきましょう。
プロっぽく見えるピンセットの持ち方と姿勢とは?
では、先ほど紹介した怪談話のようにならず、且つプロっぽく見せるためには、どのようにしたら良いのでしょうか?
1つ目:姿勢
「手先のピンセットなのになぜ姿勢?」って思われる方もいらっしゃるかと思います。
ピンセットの先端には「この世にたった1つの宝石」が挟まれる事を忘れてはいけません。
大事な宝石を守るために姿勢も重要なポイントの一つなのです。
座っている時
ピンセットを使って、座ってルースを見ているときに一番安全な姿勢はどんな姿勢だと思いますか?
それはお腹部分をできるだけ机と密着させる事です。
これをすることで ピンセットからルースが逃げ出した時に机の下に落ちるのを体が防いでくれるからです。
立っている時
立っている時も同様、お腹部分を机やショーケースに固定してください。立っている場合は座っている時よりも不安定になるため、脇をしっかり締めて固定することで体が安定します。
ただ基本的には、立ったままピンセットでルースを見ることはお勧めしません。万が一落下してしまった時のダメージが大きくなってしまうからです。
2つ目:ルースのつかみ方
ピンセットでいよいよルースをつかむところまで来ました!
ルースをつかむ際気を付けなければいけないのは、「とにかく宝石に傷をつけない」事です。
怪談話にもありましたが、せっかくカットしてある宝石のキューレットとテーブルを傷つけてしまっては、元も子もありません。
そんな持ち方にならないために。
手順①
まずはピンセットで持つ予定のルースのテーブル面をすべて下にします。

その時に素手やピンセットでするのではなく、セーム皮(鹿革)や未使用の眼鏡ふきなどの柔らかい布でひっくり返してください。
←ルースをきれいに見るために重要です!
理由としては、素手でもってしまうと手の油がつき、輝きが失われてしまい、ピンセットの先でしてしまうと傷をつけてしまう恐れがあるためです。
ルースをひっくり返したら、次はいよいよピンセットです!
手順②
ピンセットを手に持ち、人差し指をピンセットの間に入れて、持つ予定のルースより少し広く幅を出してルースに沿わせます。
←ピンセットでガードル部分を傷つけないため。

手順③
力を入れずに優しく挟み、ロックを掛けてからゆっくりひっくり返します。
これでピンセットでの掴み方はばっちりです☆
番外編:☆ピンセットでつかむ際のエチケット
掴み方をマスターしたところで、さらにプロっぽく見せるために宝石を守るためのエチケットを知ってレベルアップしましょう。
怪談話でもしたように、少しの心配りで宝石を危険から守ることができます。
また宝石を見せてもらう時のマナーとして覚えておくと、ほかの方のルースを見せてもらう時に持ち主さんの不安を少しでも和らげる事ができます。
そのエチケットとは、ずばり!うっかり宝石の転落事故が起きてしまった時の備えです!
ピンセットでしっかり挟んでいるといっても、宝石の転落事故は後を絶ちません。
そんな時のための保険として、万が一の落下のために机の上に備えとしておいていたらいいものを紹介します。
●宝石用のトレイ
ネットで購入可能!一番安全ですが、携帯はしにくい。。。
●セーム皮(鹿革)
大きめのホームセンターに行ったら手に入ります。
●きれいなメガネフキ
一度メガネをふいたものはNG!もし購入したら宝石専用にしてください。大きさはハンカチ大くらいが理想です。
●大きめのコットン
薬局で手に入ります。
もちろんプロっぽく!というのはすごく大切ですが、宝石を扱う上で一番大切なのは細やかな気遣いと作法です。
最後に

プロっぽく見えるピンセットの持ち方と私が体験した話を織り交ぜて紹介してきました。
今回、紹介させていただくのにあたり、自分がひよっこ時代に書いたノートを読み返してみたのですが、本では得られなかった経験がそこにはたくさん記してあったので入れさせていただきました。
初めてピンセットを持つ方にとっては、宝石をつかんでルーペで見ることができるのはすごくうれしいコトだと思います。
でも必ず頭の片隅でもいいので覚えておいて欲しい事があります。
それはあなたの手元に来るまでにたくさんの物語を得てその宝石は輝いているということです。
どんな場合でも宝石の輝きを損なうようなことはあってはいけません。
宝石がさらに輝けるようにピンセットを使ってもっともっと楽しんであげてくださいね。
道具はあなたと共に成長して変化していく戦友でもあります。
カラッツ編集部 監修