もしかしてパライバトルマリン!?グリーンの宝石の正体とは
ある日、インターネットで、とても気になるリングを見つけました。商品説明には「トルマリン」と書かれているものの、グリーントルマリンとしてはかなり明るい色味です。
最近、グリーンのパライバトルマリンを見る機会が多く、「もしかして、パライバトルマリンだったりしないかな」という期待を込めて買ってみたんです。とても綺麗なトルマリンなので、違っていても使えばいいやと思って。
今回は、この可愛らしいリング1本について私が必死に調べて知ったことをお伝えしたいと思います。
届いたリングについての仮説
手元に届いたリングは画像よりは少し渋い色ではありましたが、グリーントルマリンにしては明るく、ネオン感の感じられる美しいものでした。
とりあえず、グリーントルマリンの知識がほとんどなかったので、いろいろと調べてみることに。
グリーントルマリンの可能性
もちろん、説明には「トルマリン」としか書いていないし、グリーンの石なので普通に考えると一番確率が高いのはグリーントルマリンです。
でも、いくら調べてもグリーントルマリンって、カーキ色のような渋いグリーンのものしか出てこないんですよね。
リングの宝石はネオン感のある濃くて明るいグリーン。暗い場所でも比較的明るくギラギラと光っています。
ネオン感の強めのグリーントルマリンもあるようですが、そのネオン感というのが、どの程度なのかわからず…。
クロムトルマリンの可能性
グリーントルマリンの中には、クロムを含むものがあるそうです。それが、クロムトルマリン。
実はクロムトルマリンはよく見たことがなかったので、もしかすると、ネオン感のあるグリーンのトルマリンなのかもしれないと考えました。
それを何とか見分ける方法はないかと探した結果、見つけたのが「チェルシーカラーフィルター」でした。
元々はエメラルドを見分けるために使われていた簡易鑑別用品のようですが、クロムが入っていればこれで赤く見えるとのこと。
使い方は簡単で、アレキサンドライトを赤紫に変化させる時のライトを当てて、フィルターを覗くだけ。
自宅にあったエメラルドはほんのり赤くなりましたが、こちらのリングは全く無反応。そもそも、詳しい人に聞いたところ、クロムトルマリンは明るい色味ではなくもっと深いグリーンとのこと。
とりあえず、「多分、クロムトルマリンではない」という結論になりました。
パライバトルマリンの可能性
次に、期待のパライバトルマリンの可能性について考察してみました。圧倒的にブルーやブルーグリーンが人気のパライバトルマリンですが、かなりグリーンの強いものもあるんですよね。
パライバトルマリンとして認定されるためには、「銅とマンガンを含有するエルバイトトルマリン」である必要があります。
でも、パライバトルマリンかどうかというのは検査してみないと分かりません。グリーンだとなおさら、見た目だけでは判断が難しいです。
そこで、中央宝石研究所に「パライバ分析表付き鑑別書」を依頼してみることにしました。
パライバ分析表付き鑑別書って?
分析表というのは、パライバトルマリンの銅とマンガンの含有量を記載してくれるものです。銅が1.0~1.5%以上含まれていると最高級のブラジル産だといわれています。
銅が多いとブルーに、マンガンが多いとグリーンになる傾向にあるようですが、マンガンが多くてもブルーが強いものもあるので、一概にはいえないかもしれません。
万が一、パライバトルマリンでなかった場合には分析結果も出ないので、手数料500円のみで済むということだったので、チャレンジしてみました。
鑑別結果発表!グリーンのリングの正体とは?!
鑑別書の受け取り前日、中央宝石研究所の方から電話がありました。
「パライバ分析の件ですが
…実はエメラルドでした」
え?!エメラルド!?
これだけ一生懸命調べたのに、なんとトルマリンではありませんでした(笑)。
ちなみに、エメラルドであれば赤く光るチェルシーカラーフィルターが無反応だったのは、高品質といわれるコロンビア産ではないからだと思います。
以前はコロンビア産のエメラルドが多かったため、チェルシーカラーフィルターで判別できたそうですが、最近は反応のないエメラルドも増えて、判別できなくなっているとか。
ちなみに、反応しないエメラルドも当然クロムが含まれているのですが、本来の成分ではない鉄が邪魔をして反応が出ないそうです。
まとめ
トルマリンだと思い込んで調査していましたが、結果はまさかのエメラルドでした。
それほど高額でないジュエリーなどでは、わざわざ鑑別書をとらないことも多いと思います。そういった場合には、このようなことが起こり得るということがよく分かりました。
期待通りの結果ではなかったのですが、「なんの宝石だろう?」と一生懸命仮説を立てるのはとても楽しかったです。
結論としては、「宝石は鑑別に出してみないと分からない」ですね。もし、鑑別のついていない宝石があれば、依頼してみることで驚きの結果が出るかもしれませんよ。
カラッツ編集部 監修