最近、世界情勢の影響を受けて物価が値上がりしています。
宝石好きの方の中には、今後ダイヤモンドを始めとした宝石の価格も高騰するのでは、と心配されている方も多いのではないでしょうか。
今回は、現在の世界情勢がダイヤモンドの供給や価格にどのような影響を及ぼすのかについて調査してみました。
ダイヤモンドの購入を検討している方など、良かったら参考にしてみてくださいね。
ウクライナ情勢によるダイヤモンド価格への影響とは
今年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始したことを受け、アメリカとイギリスがロシア企業との取引を行わないという制裁措置を加えることを発表しました。
その結果、両国に属する企業がロシアのダイヤモンド鉱山会社「アルロサ(Alrosa)」と直接取引することができなくなりました。
巨大な鉱山会社「アルロサ」はロシア国家が所有権の一部を保有するほか、サハ共和国(別名ヤクーチア)とその行政機関も権利を所持しています。
「アルロサ」と取引を行えばロシア国家の財源となり、延いてはウクライナ侵攻の軍事資金になる可能性も考えられるのです。
ロシアは世界のダイヤモンドの約30%を産出しており、その中の98%が「アルロサ」によって採掘され販売されています。
ロシアからの供給が途絶えれば、さらなる不足が生じ、その結果ダイヤモンドの価格高騰につながると予測されています。
また、ロシアの銀行は主要な国際決済「SWIFT」から除外されたため、制裁措置が加えられていない国との取引でも支払いに困難をきたすといいます。
例えばインドは、「アルロサ」社との取引を円滑に進めるため、ロシアルーブルとインドルピーでの決済を検討しているといわれています。
世界情勢によるダイヤモンド供給への影響とは?
Photo by : Parikh Mahendra N
こういった世界情勢は、世界的に有名なジュエリーブランドへも影響を及ぼす結果となりました。
当初、アメリカやイギリスの企業がロシア産ダイヤモンドの供給をストップしても、西側への流出を止めるのは困難だろうといわれていました。
なぜなら、原石の大半は最初にインドへ輸出されカットが施されるため、アメリカはこれらをインド産として合法的に輸入することができるからです。
そこで、アメリカの高級宝飾ブランド「TIFFANY(ティファニー)」、スイスの時計・宝飾メーカー「Chopard(ショパール)」、世界的規模を誇るジュエリー店「PANDORA(パンドラ)」などはロシア産ダイヤモンドの購入を一切中止すると発表しました。
そして全てのサプライヤーにロシアを原産国とするダイヤモンド原石の供給を中止するよう命じたのです。
また、「Responsible Jewellery Council(責任あるジュエリー協議会)」はロシア産ダイヤモンドに関して沈黙を守っていると非難され、有名ブランドを傘下に置く「リシュモン」や「ケリング」などが会員から脱退しています。
こういったボイコットにより、ダイヤモンドのサプライチェーンの多くが市場から消滅する可能性が高くなりました。
今後は世界的にロシア産ダイヤモンドの供給が少なくなり、今のような世界情勢が長引くことで、ダイヤモンド供給量に多大な影響が出ると考えられています。
今後ダイヤモンドの価格は上昇する?
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって、世界経済は大きな打撃を受ける結果となりました。
さらに新型コロナによる影響が長引いており、アメリカではインフレ率の上昇や利上げの約束など、将来への不確実性が消費者心理に重くのしかかっているといわれています。
ダイヤモンド価格表を発表する「ラパポート」によると、2022年初めからダイヤモンドの価格が上昇しているといいます。
特にアメリカでは、2021年からダイヤモンドとジュエリーの消費が増加しており、それに伴ってダイヤモンド原石に関するコストも上昇しているとのこと。
原石価格が上昇すると、カットされたダイヤモンドの価格も上昇するという期待を煽り、投資としてのダイヤモンドへの関心が高まるのだそうです。
この他にも、「アルロサ」に制裁を加えた結果、ダイヤモンドカッターやトレーダーなどが原石の調達に苦労しているとの報告もあります。
実際、メレダイヤモンドのような小さな原石の価格は、3月初めに比べると、約20%上昇したようです。
アルロサのライバルであるデビアス社に期待が膨らみますが、同社はアフリカの鉱山の拡張が完了する2024年までに、供給が大幅に増加する見込みはほとんどない、と伝えています。
過去の世界情勢とダイヤモンド価格の関係について
ダイヤモンド価格は、過去にも世界情勢の影響を受けたことがあります。
例えば、2008年9月のリーマンショック発生後には、最高品質のダイヤモンド原石が信用収縮の被害を受けたのです。
株式市場の急落や深刻な信用収縮を受け、ダイヤモンドなどの高級品の需要も減ったそうです。
そのため、同年10月にアントワープで行われた入札では、最高品質のダイヤモンド原石の価格が、これまでの平均価格よりも14%下落したと報告されています。
また、2020年に新型コロナの感染が拡大した時には、鉱山の閉山やサプライチェーンの混乱など、ダイヤモンド業界に壊滅的な影響を与えました。
パンデミック中にはダイヤモンドの需要が急落し、販売が凍結されたり価格が高騰したりしました。
さらに鉱山の閉鎖が続くことが懸念されたため、ダイヤモンド採掘業者は原石の価値をさらに上げる方法を模索しなければなりませんでした。
ダイヤモンド取引のプラットフォーム「RapNet」によると、高品質ダイヤモンド1カラットの価格は上昇しており、2020年8月時点では年初より12%高くなっていたとのこと。
一方、同サイズで低品質の原石の価格は、依然として低迷していたそうです。
最後に
アメリカやイギリスがロシア企業に制裁措置を加えたことで、ロシア産ダイヤモンドの供給が減り、ダイヤモンド業界全体に大きな影響を与えたことが分かりました。
現在の世界情勢が長引くことで、さらなるダイヤモンドの供給の減少や、価格の高騰などが懸念されているようです。
気になる方は、「ラパポート」のダイヤモンド相場をマメにチェックするなどし、価格の動きを見ておくと良いかも知れませんね!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考サイト>
◆https://www.diamonds.net/
◆https://www.theguardian.com/
◆https://www3.nhk.or.jp/news/html/ ほか