世の中には、天然石に人工処理を施し、本来と見た目を変えて別の宝石として販売されるものがあります。
事実を消費者に分かりやすく表記して販売する分には全く問題ないのですが、中には伏せて本来の価値より高く販売する悪徳業者もいます。
幾つかある人工処理の中でも特に多いとされるのが、着色コーティング処理。
そこで今回は、どんな宝石が着色コーティング処理を施され、どんな宝石として販売されているのか、見分け方はあるのか、などお話していきましょう。
目次
宝石の偽物について
宝石の偽物と一口に言っても色々ありますが、偽物として多く見かけるのは、合成石や人造石、模造石、張り合わせ、人工処理で見た目を変えられた天然石、見た目が似ている別の天然石などです。
冒頭で触れたた通り、誤解を受けない形で事実を明記して販売され、消費者が納得した上で購入するのであれば何の問題もありません。
宝石を楽しむバリエーションの一つとして、使い分けるのも良いと思います。
しかし敢えて事実を伏せて、本来の価値とは異なる価格で販売するなど、悪質に利用されることは許されることではありません。
天然石の見た目を変える人工処理
先にお伝えしたとおり、偽物宝石の中には、人工処理で色などの見た目を変えられた天然石もあります。
色などを変える人工処理方法には、加熱処理、照射処理、染色処理、拡散処理など色々あります。
人工処理が施されたからと言っても、施される宝石や処理によって価値が下がるものと下がらないものがあるため、一概に悪いとはいえません。
また、ブルーダイヤモンドなどのように、処理を施すことで、天然ではなかなか手に入れられないものを身の丈に合った価格で手に入れられる場合もありますから、人工処理自体を否定してしまうことも違うと思います。
何度もお伝えしているように、誤解のないよう明記して販売すれば、咎められることは何もありません。
ただ、世の中には人を騙して儲けようとする悪徳業者も少なくないため、注意が必要なのです。
着色コーティング処理
それでは、今回のテーマである、着色コーティング処理について、お話していきましょう。
着色コーティング処理とは、宝石の表面、または裏面に施すトリートメント処理のこと。
最も多く見かけるのは、ホワイトトパーズやロッククリスタルに着色コーティングを施したもの。
カラーレスであることから色が付けやすいこと、比較的産出量が多いことが理由かもしれません。
ホワイトトパーズかロッククリスタルかを見分ける方法は肉眼では難しいかもしれませんが、鑑別の機材を使えば分かります。
また、着色コーティングがされた宝石には独特の特徴が生じます。見分け方などは後ほどご紹介しますね。
着色コーティング処理のメリットとデメリット
メリット
着色コーティング処理のメリットとしては、何と言ってもどんな色にも変えられることです。
天然では希少過ぎて手に入れられない色合いのものも作れますので、お好みの色の宝石を手頃な価格で手に入れられます。
また、ミスティックトパーズのように、自然界には存在しない色合いのものも作れますので、色で楽しみたい方には無限の可能性が広がるという訳ですね。
デメリット
着色コーティング処理は宝石の中まで色が着いている訳ではなく、あくまでも表面が着色コーティングされているのみです。
摩擦に弱く、身に着けているうちにキューレットが擦れて剥げてきたり、アセトンなどで拭くと色が落ちてしまいます。
気軽にカラフルな色が楽しめるものの、耐久性はあまり高くないのがデメリットです。
どんな宝石の偽物として売っている?
では、実際にどんな風に姿を変えられ、どんな宝石の偽物として出回ることが多いのか気になりますよね。
具体的なものを幾つか取り上げて、簡単にご紹介したいと思います。現物があるものは画像も一緒にご覧下さい。
※こちらで挙げている宝石はごく一部です。他の宝石の偽物として出回っている可能性もあります。ご了承下さい。
①レッドトパーズ
カラーバリエーションが豊富なトパーズの中にレッドのものもあります。
レッドトパーズは、トパーズの中で最も産出量が少なく、希少価値の高い宝石です。
レッド味の強い、鮮やかな色合いのものなど、宝石商であっても殆ど出会えない程だといわれます。
それ故か、ホワイトトパーズに着色コーティングを行ったレッドトパーズが多く出回っているといいます。
本来のレッドトパーズは非常に手に入りにくいため、高額であることも多いです。
鑑別書の付いていないレッドトパーズがあったら、まずは鑑別してもらうことから始めても良いかもしれません。
安価なものもコーティングトパーズを疑って良いと思います。
②パライバトルマリン
鮮やかなネオンブルーが特徴的なパライバトルマリン。
トルマリンの中で最も人気も価値も高く扱われます。
世界的人気を誇るパライバトルマリンですから、偽物も多く出回っています。
パライバトルマリンの偽物として最も多いのは、アパタイトですが、最近着色コーティング処理が施されたものも市場で見かけるようになったといいます。
多くはホワイトトパーズに着色コーティングを行ったもの。
パライバブルートパーズとして販売されているものもあるそうですが、表記が分かりづらい場合もあるようですので、注意が必要です。
▶パライバブルートパーズの詳細についてはコチラの記事で
③バイカラートルマリン
1石の中に2色が存在するバイカラートルマリン。
バイカラートルマリンもホワイトトパーズに2色の着色コーティング処理を施して作った偽物が存在します。
バイカラートルマリンに模した合成バイカラークォーツが実はコーティングトパーズだったなんてこともあるようです。
色が鮮やかすぎたり、境目がはっきりしすぎているものは着色コーティング処理を疑っても良いかもしれません。
④パパラチアサファイア
まるで蓮の花のような美しい色合いをもつ、パパラチアサファイア。
オレンジとピンクが混ざったような何とも言えない絶妙な可愛らしさがあります。
パパラチアサファイアも希少価値高く、人気もあるため偽物が存在します。
こちらもホワイトトパーズに着色コーティング処理を施したコーティングトパーズが多いとされます。
パパラチアサファイアはコーティングトパーズの他に、ベリリウム拡散処理を施されたものも多く出回っているといいます。
元は天然サファイアであるものの、ベリリウム拡散処理が施されると価値が著しく下がりますので、こちらも注意しましょう。
⑤モルガナイト
優しいピンクカラーが特徴のモルガナイト。
ティファニー社が名付け親となった宝石でもあります。
モルガナイトも偽物としてコーティングトパーズが利用されることが多いようです。
⑥ロードライトガーネット
ほんのり紫がかったワインレッドのような宝石、ロードライトガーネット。
多くはホワイトトパーズ、またはクォーツを着色コーティング処理してロードライトガーネットに模しています。
まだ日本では多く出回っていない様子ですが、一応覚えておいて下さいね。
ロードライトガーネットを安く大量に提供出来ると宝石商に紹介されましたが…違和感あるの分かりますか?
先月のタイ・バンコクで買い付けの際にロードライトガーネットとして紹介されたルースで、500ピース以上ありました。
拡大すると怪しい箇所が… pic.twitter.com/cwXFdHlK32
— KARATZ代表|小山慶一郎 (@keiichiro_oyama) December 17, 2019
着色コーティング処理の見分け方
着色コーティング処理が施された宝石は、摩擦に弱い特徴があるので、キューレットやファセット稜線に剥がれが見られることが多いです。
オンライン上の画像でもよく見れば分かる場合も多いため、注意して見ると良いでしょう。
手元で見れる場合は、表面や裏面のエッジ部分をルーペで確認してみて下さいね。
最後に
着色コーティング処理を施された宝石についてご紹介してきました。
元々は、希少性などからなかなか手に入らない宝石を気軽に楽しむことが出来るよう考えられた技術のハズが、偽物作りに利用されてしまうのは悲しいですね。
偽物を販売するつもりではなく、意図せず混じってしまうこともあるそうですが、消費者の立場からすると、本物だと思って購入した宝石が実は偽物だと知ったら割り切れないものがありますよね。
偽物が出回らない市場ができることが理想ではありますが、自衛のために、知識を付けておくことも大切だと思います。
怪しいな、と思う宝石に出会った時、こちらの記事を思い出していただけると嬉しいです♪
カラッツ編集部 監修