ダイヤモンドの原石はそれぞれが個性的な形をしています。
カットを施された後の、ダイヤモンド独特のあの輝きこそありませんが、原石には原石の良さがあり、コレクションとして集めたり、一点モノのジュエリーに加工するなど、原石のまま楽しむ方法もイロイロです。
こちらでは、ダイヤモンド原石の魅力と、価格相場や選ぶ際のポイントなどをお伝えできればと思います。
原石の写真もいくつかご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
ダイヤモンド原石とは
ダイヤモンド原石とは、カットや研磨が施される前の採掘されたままの姿のことです。
英語ではラフ・ダイヤモンド(Rough Diamond)といいます。
ダイヤモンドは地球のマントル近くの奥深い場所で何千万年~何億年以上もの間、高温・高圧に耐えて生成します。
一般的に結晶は丸みを帯びた八面体をしており、透明~不透明で黄色味や茶色味を帯びています。
透明感や色味は結晶によってそれぞれ異なります。
そのため、カラット(重量)、クラリティ(内包物やキズの程度)、カラー(無色~黄色味や茶色味)を評価して価値が付けられ、どのようにカットできるかも考慮されます。
ダイヤモンドは微量元素や生成時の影響によって色が生じ、カラーバリエーションも豊富です。
色がはっきりと分かるものは「ファンシーカラー」として高く評価されます。
色の違いは原石から分かるものもあります。
個性は千差万別、全く同じ結晶は存在しません。
ダイヤモンドはモース硬度が10と地球上で最も硬い宝石のため、カット・研磨する際には別のダイヤモンドを使うことになります。
ただ強い衝撃を与えると特定方向にスパッと割れる、完全な劈開(へきかい)の性質をもつため、原石を大きく分割する作業は、意外と容易に行うことができるそうです。
ダイヤモンド原石の形
ダイヤモンドは炭素原子が均一に配列されて生成した物質です。そのため、通常原石の結晶は八面体でできていますが、他の形で見つかることもあるといいます。
例えば、完璧な正八面体で透明度の高い原石は、美しさを最大限に引き出せる形に分解し、ラウンドブリリアントカットが施されることも多いそうです。
平らな形のものは「マクル」と呼ばれます。
マクルは厚みが薄く双晶という特徴をもつこともあり、分割せずそのままトライアングルやハートシェイプにカットされることも多いと聞きます。
では次の項で、もう少し具体的にどんな形や種類があるのかをそれぞれの特徴とともに詳しくご説明していきましょう。
ダイヤモンド原石の種類
ダイヤモンドの結晶は、分かりやすい形をしているものも多いといわれています。
先程もお伝えしたとおり、主に凸状の面で囲まれた八面体で全体に丸みを帯びているものが多いようですが、稀に六面体や十二面体の結晶が産出されることもあるそうです。
また、表面に砂糖のような組織や「トライゴン」と呼ばれる三角形の痕跡などが見られるものもあります。
結晶の見た目はそれぞれが個性的で、時にはカットするには惜しいほど美しい形な上に透明感のあるものもあるそうです。
それらはアンカットダイヤモンドやラフカットダイヤモンドとして、そのままの形でジュエリー加工されたり、コレクターアイテムとして流通しています。
では主な形を具体的に見ていきましょう。
八面体(Octahedron)
4本の炭素原子が結合し合った結果、結晶構造が均一な形で生成したもので、ダイヤモンド原石の基本的な形です。
八面体とは、表面が八つの三角形に囲まれた立体の結晶です。
形の整った正八面体はカットしやすいのですが、産出量は全体のわずか約5%ほどといわれているそうです。
十二面体(Dodecahedron)
結晶の表面に12個の面をもつ立体形で、全体的に丸みを帯びています。
12面の菱形をもつ、菱形十二面体(Rhombododecahedron)も存在するのだそう。
立方体(Cube)
サイコロのような形をした、六つの四角形で囲まれた立体の結晶です。
立方体系で宝石品質のダイヤモンドが見つかるのは稀なうえ、完璧な結晶面をしたものは見つかっていないようです。
他の形
24面の三角形をもつ「二十四面体(Tetrahexahedral)」、24面の不等辺四角形をもつ「偏方多面体(Trapezohedron)」、4面の三角形をもつ「三角錐(Tetrahedron)」、48面の三角形をもつ「四十八面体(Hexoctahedron)」などが見つかっています。
双晶
正八面体の結晶がスピネル双晶を成した「マクル」が代表的です。
ひとつの結晶面で2つの結晶が生成したもので、フラットに近い立体の三角形をしています。
カルボナード
肉眼で見えないほどの微結晶が結合して成長した、集合体です。
それぞれの結晶構造の方向は定まっておらず、ダイヤモンドの中でも最も硬い結晶となります。
ダイヤモンド原石の写真
では、代表的な原石の形と特徴的な痕跡について、写真でご紹介しましょう。
八面体
まずは典型的な八面体の原石です。
全体的に丸みを帯びていますね。
マクル
平たい三角形のマクルです。
自然に作られたとは思い難い程、美しい結晶の形をしていると思いませんか。
立方体
立方体のキューブ型をした原石です。
丸みのあるサイコロ型で、表面がデコボコしています。
トライゴン
ダイヤモンド原石に特徴的に見られる三角形の痕跡です。
トライゴンがハッキリと分かるものは希少性が高いため、コレクターの間で人気が高いと聞きます。
ダイヤモンド原石の価格
原石のクオリティ
通常、カラットが大きく、透明感と色の評価が高いほど価値が上昇します。
さらに、正八面体でトライゴンがあるなど、原石の形も価値に影響します。
世界市場の相場
ダイヤモンドの原石はデビアスなどのダイヤモンド採掘企業が世界市場の需要に合わせて供給量をコントロールしているといわれています。
需要の上下による大幅な価格差を抑えることや違法な取引を防止し、ダイヤモンドの価値を守ることを目的としているそうです。
米国ラパポートは、カラット別にクラリティ(透明感)とカラー(色)のグレードによる相場を細かく表示する「ラパポート・ダイヤモンド・レポート」というダイヤモンドの価格指標を毎週発行しています。
ダイヤモンド取引所では、ラパポートの指標価格を参考に、需要と供給に合った価格を業者間で交渉して決定しています。
国内での流通コスト
日本国内で販売される場合、米国ラパポートの相場を日本円に換算した価格を参考とします。そのため、米ドル相場が日本円での価格に影響します。
海外から輸入したダイヤモンドの原石は、卸売店からの流通費や販売店の店舗維持費などのコストを加算した価格で販売されます。
店によっては広告費やブランドの付加価値なども加わるため、実際の販売価格に差が出るということです。
カットを前提とする原石
美しいルースにできるカット向きのダイヤモンド原石ほど、高い価値が付きます。
ダイヤモンドの原石は、キズや内包物などの欠点を隠して、色と光沢が最大限に活かされるようにプロポーションを計算してカットされなくてはなりません。
例えば、1カラットのファセットを作るには4カラットの原石が必要なのだそうです。
カットを前提とする原石の価格には、最終的に1/3~1/4ほどの大きさのルースになることと、透明感と色のグレードを評価し、将来どれほど美しいルースが誕生するかが考慮されています。そして、前述した流通コストなどが加わります。
ダイヤモンド原石をカットを前提に選ぶ場合、以下の3 つの大きなカテゴリーに分類されます。価値の高いものから順番にご紹介します。
ソーヤブル(Sawable)
八面体か十二面体をした結晶で、Saw(切れる)able(できる)でソーヤブルと呼ばれるそうです。
八面体のものの方が多いといわれ、流通上、正八面体の結晶をソーヤブルと呼ぶこともあります。
研磨した際に2つに分割できるため、2つのルースが生まれます。
最も理想的な形ですが、産出量が少なく希少なのだそうです。
メイカブル(Makeable)
同じく八面体か十二面体の結晶ですが、ハッキリとした形をしていないそうです。研磨する場合、一つの結晶から一つのルースが誕生します。
クリベージ(Cleavage)
不規則な形をしており、カットや研磨には特別な注意が必要です。
一説によると、80年代以前はカット技術よりもカラット数が重視されていたのだそうです。
それがバブル時期以降に、エクセレントカットの需要が増えたことで、1/3~1/4にカットされるようになったのだそうですよ。
ダイヤモンド原石の選び方と注意ポイント
ダイヤモンドの原石は、形が明瞭で整っているものほど価値が高くなります。
さらに、透明感が高く無色に近いものも評価が上がります。
宝石品質と評価されない原石は、主に工業用ダイヤモンドとして使用されるといいます。宝石としての価値が低いため、宝石品質に比べて安価になります。
また市場には、人工的に作られた合成ダイヤモンドの原石も流通しています。
勿論天然か合成かなどを、誤解のないようにきちんと説明して販売している分には全く問題ありません。それを納得して購入し、それぞれの良さを楽しむのも宝石を愛でる一つの形だと思います。
しかし、中には合成ダイヤモンドを天然ダイヤモンドとして売ったり、工業用の安価なダイヤモンドを高値で売ったりする悪徳業者もいると聞きます。
購入する際には事前に色々調べて、信頼のおけるショップを見極めてから購入することをオススメします。
▶工業用ダイヤモンドが安い理由や使い道についてはこちらの記事も参考に
ダイヤモンド原石のマニアックな楽しみ方☆
ダイヤモンドには、ブラックライトなどで紫外線を当てるとネオンのように輝く蛍光性をもつものもあります。
蛍光性をもつダイヤモンドは全体の3割ほどといわれており、蛍光の強弱も個体差があります。
蛍光する色もさまざまで、ブルー系、グリーン系、イエロー系、オレンジ系、ピンク系など石によって異なるそうです。
原石の状態でも蛍光がはっきり分かるものも多く、写真のような原石もあります。
もしかしたら原石の方が大きいものが多いことから、蛍光性が見やすいということもあるかもしれません。
もし機会があれば、暗い場所でブラックライトを照らして、不思議な蛍光性を楽しんでみて下さいね☆
ラフカットダイヤモンドジュエリーの魅力
ダイヤモンドの原石は生まれたままの姿から美しいものもあり、カットや研磨をせずに楽しむ贅沢を与えてくれます。
地球の奥深くで培ったぬくもりと力強さを感じることのできる魅力もあります。
原石の美しさを生かすために、ダイヤモンドの原石をキューブ型に入れたり、ひと粒ダイヤやステーションタイプのネックレスにしたり、原石の個性を生かしたリングにするなど楽しみ方もさまざま。
世界で一点モノの、自分だけのジュエリーとして、お守りのように身につけても素敵ですね!
最後に
ダイヤモンドの原石は、八面体や六面体、平たい三角形など色々な形で産出されます。
カットを施さなくても形が整った、透明感もある、そのままでも楽しめるラフカットダイヤモンドの魅力もお伝えしました。
表面に三角形の痕跡(トライゴン)が見えるものや強い蛍光性をもつものなど個性も様々で、この世に2つとして同じものはないからこそ、集める楽しみが生まれるのかもしれませんね。
カットを施されたダイヤモンドの強い輝きも格別ですが、生まれたままの素朴な輝きもまたダイヤモンドのもつ魅力の一つなのかもしれません。
カラッツ編集部 監修