「アクロアイト」という宝石の名前を聞いたことはありますか?
個人的には、響きが良いためかクリエイティブ作品などに名前が使われることの多い宝石という印象。
実際私も、「アクロアイト」という名称を知ったきっかけは、とあるゲーム。
馬の名前として使われていたことからでした。
きっと宝石の名前だろうと直感し、いざ検索するものの競走馬の方がヒットしたりして・・・
もしや宝石としてはメジャーではないのでは?などと勝手に心配になってみたこともありました。
しかし、調べてみると、実はとてもメジャーな、誕生石にも選ばれているあの宝石の一種。
知る人ぞ知る魅力が満載の宝石、「アクロアイト」について、詳しく見ていきましょう。
アクロアイトとは?
アクロアイトは、カラーレスのトルマリンを指す名前です。ホワイトトルマリンと呼ばれることもあります。
アクロアイトとホワイトトルマリンは全く同じ宝石だったのですね。
「ホワイト」と付きますが、基本的にカラーレスのものを指します。ホワイトサファイアやホワイトトパーズと同じ定義ですね。
ご存知の方も多いかもしれませんが、トルマリンは、「ない色はないのでは」といわれるほど色種が豊富で、1石の中に複数色が含まれるものもあるくらい。
その中にあって殆ど色味を感じない、カラーレスのものが「アクロアイト」という名前で流通しています。
実は「トルマリン」というのは、1種類の鉱物を指す名前ではなく、化学組成が近い鉱物のグループ名のようなもの。細かく分けると30種類以上あるともいわれています。
しかし宝石として流通するのは、エルバイト、リディコータイト、ドラバイト、ウバイト、ショールの主に5種類で、最も多いとされるのが、リチウムを主成分とするエルバイト(リチア電気石)です。
エルバイト種は、様々な色を呈し、宝石トルマリンとして出回る多くがこの種類に属します。
カラーレスの「アクロアイト」もその一つ。殆どがエルバイト種だといわれています。
少し余談ですが、宝石の中には、ガーネットやフェルスパーのように、主成分の違いや成分比率などで名前が分けられるものも多いです。
しかしトルマリンの場合、名前の定義はあくまでも色。色が同じであれば、種類は違っても同じ名前で呼ばれます。
例えば、パライバトルマリンの中には、エルバイト種のものとリディコータイト種のものがあるそうですが、パライバトルマリンの定義に当てはまれば、種類に関わらず「パライバトルマリン」と呼ばれます。面白いですよね。
鉱物としての基本情報
それでは次にアクロアイトの鉱物としての基本情報について見ていきましょう。
お伝えしたように、アクロアイトはほぼエルバイト種ですので、英名以外の鉱物データはエルバイトのものでご紹介します。
| 英名 | Achroite(アクロアイト) |
| 和名 | リチア電気石 ※エルバイト |
| 鉱物名 | トルマリン |
| 分類 | 珪酸塩鉱物 |
| 結晶系 | 三方晶系 |
| 化学組成 | Na(Li,AL)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4 |
| モース硬度 | 7-7.5 |
| 比重 | 2.90-3.26 |
| 屈折率 | 1.61-1.65 |
| 光沢 | ガラス光沢 |
特徴
存在しない色はないと言われるほどカラーバリエーションが豊富なトルマリンの中にあって、殆ど色味を感じないのがアクロアイト(ホワイトトルマリン)です。
トルマリンの場合、何かしらの色が感じられるものが多いことから、カラーレスのアクロアイトはトルマリンの中では希少性が高い色種といえます。
トルマリンは、見る角度によって異なる色合いが見える多色性が強いことでも知られますが、カラーレスのアクロアイトに多色性はありません。
トルマリン(エルバイト種)のモース硬度は、7-7.5で比較的高く、特定方向からの衝撃に弱い「劈開」も弱いため、日常的なジュエリーやアクセサリーとして楽しむこともできます。
色のあるトルマリンとはまた異なる輝きで、目を、心を癒やしてくれる宝石です。
色
トルマリンの中でカラーレスのものをアクロアイトと呼びますので、他の色はありません。
逆に言うと、少しでも色味が感じられるものは、その色にまつわる名前か、ただの「トルマリン」と呼ばれるため、「アクロアイト」の名が付くことはありません。
ホワイトトルマリンと呼ばれることもありますが、白っぽい色のものはあまり見かけた記憶はなく、透明度の高いカラーレスのものが殆どではないかと思います。
ちなみに、薄いピンク色のトルマリンに加熱処理を施すと、カラーレスになることもあるそうで、そうした処理が行われているものもあるようです。
繰り返しになりますが、トルマリンは何らかの色が入りやすいため、天然未処理のアクロアイトは流通量が少ない希少な存在です。
色合い豊かで華やかな印象のあるトルマリンの中にあって、少し影に隠れがちなアクロアイトですが、実は貴重な種類ということ、覚えていただけたら嬉しいです。
原石の形
アクロアイトをはじめとしたエルバイト種のトルマリンの原石は全般的に、底面が一面の柱状結晶の形を作ることが多いとされています。
主軸に平行な条線ができることも特徴のひとつです。
主にペグマタイト中に生成するといわれています。
産地
スリランカ、アフガニスタン、アメリカ合衆国などで産出されます。
名前の意味
アクロアイトは、ギリシャ語で「無色」を意味する「achro」に由来して名付けられたといわれています。
アクロアイトの価値基準と市場価格
トルマリングループに属する石たちは、色や種類によって価値が変わります。
アクロアイトの場合はどうなのか、アクロアイトの価値基準と市場価格、買える場所についてご紹介しましょう。
価値基準
アクロアイトに限らずですが、カラーレスの宝石の場合、最も重要なのは透明度です。
目立ったインクルージョンや傷がなく、透明度が高いほど、価値が上がります。
加えて、色味を感じず、カラーレスに近いものも高く評価されます。
さらに、サイズが大きいもの、カットが美しいものも価値に影響を与え、その総合評価により、価格が決まります。
市場価格
トルマリンの中では希少性の高い色種であるアクロアイト。
全般的に安価なものは少なく、透明度が高くクリアなものであれば、0.5ct程度の大きさでも1万円以上するものが多い印象です。
1ctを超えると値段が大きく上がり、トップクォリティで5ctを超える大きさのものなどは、10万円以上することもあります。
どこで買える?
トルマリン自体は多くの店で取り扱いがありますが、アクロアイトは産出量の少なさから一般的なジュエリーショップなどでの扱いは少ない印象です。
レアストーンの扱いが多いお店や、ミネラルショーなどのイベントで探した方が探しやすいかもしれませんね。
他の色合いのトルマリンに比べ、ジュエリーとして販売されるものも少ないため、既製品を探すより、ルースで探してご自身で空枠に留めたり、オーダーメイドで作る方が自分好みのものを手に入れやすいといえます。
宝石をルースから選ぶのは、最初は何を基準にして良いか分からず戸惑うことも多いかもしれませんが、色々なお店を見るうちにコツが分かり楽しくなってきますよ。
カットや大きさ、インクルージョンの入り方など、自分の好みを色々取り入れやすいのもルースから選ぶ醍醐味のひとつだと思います。
カラッツSTOREでも取り扱う場合がありますので、良かったらチェックしてみてくださいね。
| ▽カラッツSTOREのアクロアイト▽ |
アクロアイトのお手入れ方法
基本的には、一般的なトルマリンのお手入れ方法と同じです。
柔らかい布などで優しく汚れを拭きとるだけでも、輝きを保つことができます。
トルマリンは、和名の「電気石」から想像できるかもしれませんが、熱を加えると静電気を発生するという性質をもちます。
ぞれゆえ、ホコリが付きやすいという特徴もありますので、着用後は、柔らかい布で拭いたり、軽く水で洗ったりしてあげるとより良いと思います。
汚れが気になる場合は、ぬるま湯に中性洗剤を数滴溶かして浸し、柔らかいブラシで優しくこすりましょう。洗剤で洗った後は、真水でしっかりとすすいで水分をふき取ることも大切です。
モース硬度が異なる他の石にぶつかると、硬度が低い方に傷がつく恐れがありますので、他の石とまとめて保管しないようにご注意ください。
また、ジュエリー全般に言えることですが、直射日光も避けて保管することも忘れないようにしたいですね。
最後に
カラーバリエーション豊かなトルマリンの中にあって、ちょっと存在感控えめなアクロアイト。
トルマリンの色が入りやすい特徴から、「カラーレスだからこそ稀少性が高い」ことも分かりました。
色のある宝石の華やかな輝きも素敵ですが、カラーレス宝石の控えめでありながら清潔感あふれるような、透明度の高い輝きも個人的にはとても美しいと思います。
競走馬やクリエイティブ作品などで名前が使われることも多く、私のように、宝石名と知らずにこの記事にたどり着いた方もいるかもしれません。
この記事で、少しでも宝石アクロアイトの魅力が伝わり、興味を持って頂ける方が増えると嬉しいです。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石宝飾大事典 新訂第3版』
著者:近山晶/発行:近山晶宝石研究所
◆『宝石の写真図鑑』
著者:キャリー・ホール/発行:日本ヴォーグ社
◆『起源がわかる宝石大全』
著者:諏訪恭一、門馬綱一、西本昌司、宮脇律郎/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社 ほか






















