2022年2月19日(土)より国立科学博物館(東京・上野)にて、特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」がついに始まりました!!
待ち望んでいた方、早速行かれた方も多いことと思います!
今回カラッツ編集部は、前日である2月18日(金)に開催された報道内覧会に参加させて頂きました!
内覧会に先立って行われたカズレーザーさんの取材会の様子や監修者挨拶、会場風景などあらゆる方向から宝石展の魅力についてご紹介したいと思います!!
監修者の1人である諏訪貿易の諏訪恭一(すわやすかず)会長から伺ったイベント開催までの秘話や描き下ろし3作品が展示されている長靴をはいた描(ねこ)こと安部祐一朗氏のインタビューもあります!!
目次
カズレーザーさん取材会
内覧会の前に、音声ガイドのナビゲーターを担当されたカズレーザーさんの取材会とフォト&ムービーセッションが行われました。
キレイなものが大好きだという、カズレーザーさん。
カズレーザーさんが見どころとして一番に挙げられたのは、年代順に並んだ指輪の展示(国立西洋美術館所蔵 橋本コレクション)。
古代エジプト時代の指輪から現代のものまでが一堂に会しており、時代とともにデザインやカット方法、使われる素材の移り変わりを見ることができます。
ある時代を境に装飾が急に華美になるのが分かったりするのも面白いとカズレーザーさん。
また、キレイな宝石が沢山並んでいるので、その中で自分の推し宝石を一つ見つけることも、特にお子さまにはオススメだとお話されていました。
宝石は特徴や性質などがそれぞれ異なります。
見つけた推し宝石について調べてみることで、そこから派生する多くのことが分かり、知識を深めることができるから、とのことですよ。
開催秘話
カラッツ編集部がこのイベントのことを初めて知ったのは、実は約2年前。
諏訪貿易の諏訪恭一会長に取材させて頂いた時でした。
橋本コレクションのお話などを目をキラキラさせながらお話頂き、スタッフ一同、開催をとても楽しみにしてきました。
報道内覧会が始まる前に少しだけ諏訪会長とお話させて頂く機会があり、開催までの道のりについても伺いましたのでご紹介させて頂きますね。
実はこのイベント開催に関わるプロジェクトは約5年前に始まったといいます。
その頃はまだ新型コロナウィルスが発生する前、世界が今のような状況になることを誰も知るよしもなかった頃です。
当初は、海外の博物館が所蔵する品々を貸し出してもらい展示する計画もあったそうですが、新型コロナウィルス感染拡大の影響から断念し、国内にあるものだけで組み立てることに変更されたそうです。
それでも多くの原石、宝石、豪華なジュエリーたちが立ち並ぶ様子を見ると、当初の計画通りに進んでいたら、どんなスゴイことになっていたのだろうと、むしろ想像すら難しい状況です。
今回の展示品の中で、諏訪会長が皆さんにぜひ見ていただきたいと熱く語られる宝石があります。
それは、あるジュエリーにセッティングされた誰もが知る有名宝石なのですが、それが何かについては、後ほど改めてご紹介いたしましょう。
報道内覧会開始!
報道内覧会の冒頭には、監修された先生たちの紹介とご挨拶がありました。
向かって右から、国立科学博物館 地学研究部 部長 宮脇律郎氏、同じく国立科学博物館 地学研究部 門馬綱一氏、愛知大学教授 西本昌司氏、そして、諏訪貿易会長 諏訪恭一氏です。
宮脇氏の挨拶の後、いよいよ内覧会開始です!
原石発掘から始まる宝石の歴史
特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」は、全部で5つの章で構成されています。
第1章:原石の誕生
第2章:原石から宝石へ
第3章:宝石の特性と多様性
第4章:ジュエリーの技巧
第5章:宝石の極み
原石ができるところからジュエリーとして人の手に渡るまで、順に追って見ることができ、お子さまや宝石に詳しくない方でも楽しく学べる工夫が所々に散りばめられています。
カズレーザーさんがナビゲーターを担当された音声ガイド(一般・大学生:600円)を聞きながら回ると、クイズやパネルにはない小ネタも入り、より楽しく学べますよ。
第1章:原石の誕生
第1章は原石がどのような場所で生成されるかの説明と生成場所別に展示された原石たちを見ることができます。
場所によって結晶が大きく育ちやすかったり、逆に小さい結晶しかできにくかったりするそうです。
その理由についてもパネルと音声ガイドで説明してくれます。
原石の展示の脇には隕石の紹介もあります。
コラボ企画の一つである、『七つ屋 志のぶの宝石匣』(二ノ宮 知子著 講談社)の登場人物が紹介するパネルの展示も至るところにあります。
2つの巨大なアメシストドームの展示もあり、前で写真を撮ることもできます。
第2章:原石から宝石へ
第2章は原石がどのように宝石へと変わるか、原石の採掘と宝石研磨について、動画、パネル、展示物で紹介されています。
特にラウンドブリリアントカットの研磨工程の模型は分かりやすかったです。
宝石の研磨についての展示が終わると、橋本コレクションの展示コーナーに移ります。
カズレーザーさんもオススメの橋本コレクションは、古美術収集家であった橋本貫志氏(1924-2018)がその生涯で収集した指輪のコレクションです。
国立西洋美術館に寄贈された800点あまりのコレクションの内、宝石がセットされており、かつ、製造年が分かる約200点が展示されています。
先述したとおり、年代順に並べられているため時代とともに素材の変遷や技術発展が目に見えて分かります。
上に掲げられた歴史年表も合わせて見ると、技術発展のタイミングなども分かり、より面白いですよ。
ただ、貴重なコレクションの数々に思わず足を止めてじっくり見たくなってしまうため、混みやすいコーナーでもあります。
じっくり見たい方は、平日朝イチの比較的空いている時間帯か時間の余裕をもって行かれることをオススメします。
第3章:宝石の特性と多様性
橋本コレクションが終わると、宝石の特性やバリエーションなどについての展示がある第3章に入ります。
色々な説明パネルとともに、本当に多くの原石やルースたちが並んでおり、ここもゆっくり見ようとすると時間が掛かるかもしれません。
しかし、種類や性質ごとに並べられた宝石たちを見ているだけでも勉強になりますし、時間が経つのを忘れる位充実したコーナーが続きます。
中にはネギそっくりの見た目をしたトルマリンなど個性豊かな宝石もありました。
蛍光する石が並べられた小部屋もあり、宝石好きにはたまらない仕掛けも。
ご覧ください、この指輪にセッティングされた宝石、美しく輝くブルーが見事だと思いませんか。
こちらが、かの有名なインドカシミール産コンフラワーブルーサファイアの指輪でございます。
このコーナーには、3つの有名な産地、ミャンマー(左)、カシミール(中央)、スリランカ(右)で採れたブルーサファイアの指輪が一緒に展示されています。
それぞれの色合いの違いと特徴がお分かりになるでしょうか。
カシミール産サファイアのベルベットのような少しシルキー感のある色合いは本当に美しく、一見の価値ある展示だと思います。
個人的に凄いと感じたのは、所々に飾られているクォリティスケールと色とりどりの宝石が並べられた宝石の色相環(ともに、諏訪貿易所蔵)。
クォリティスケールとは、宝石ごとに色や透明度で価値の違いが分かるように並べられた見本帳のようなもの。
以前、諏訪会長の取材をさせて頂いた際、諏訪会長が仕事を始められた当時、日本には宝石の勉強ができる場所も価値の違いを教えてくれる人もおらず、分からないことだらけだったとおっしゃられていました。
そのため、誰が見ても価値がひと目で分かり、判断がしやすくなるように、クォリティスケールを作られたといいます。
ルビーやサファイアといった有名宝石だけではなく、ターコイズやラピスラズリといった不透明石まであり、細部まで拘りを感じました。
宝石商を目指している方や宝石の価値を知りたい方は、このクォリティスケールを本にしたGEMSTONES QUALITY GUIDEも勉強になりますよ。(初日はお土産ショップでも販売されていました。)
他にも、日本産の宝石やレアストーン、巨大宝石の展示など、本当に見どころが盛りだくさんで、全てをご紹介できないことがとても残念です。
第4章:ジュエリーの技巧
第4章は、趣向が大きく変わり、ここからはジュエリーの展示に移ります。
ヴァン クリーフ&アーペルとギメルの作品が並びます。
日本の四季をイメージした作品たちや
珍しいトラピッチェエメラルドを使ったユニークなジュエリーなど、
まさに眼福な製品たちが次々と出てきます。
ジュエリー加工にまつわる説明パネルなどもありますので、ここでも楽しく勉強ができます。
第5章:宝石の極み
第5章は、宝石の極み、豪華絢爛なアンティークジェエリーたちが艶やかに並びます。
ここに前述した、諏訪会長がぜひ見ていただきたいといわれた宝石があります。
それがこのジュエリー。
メイン石としてセッティングされている最高品質のコロンビア産エメラルドの美しさをぜひ多くの方に見て頂きたいとのこと。
コロンビアに60回以上行き、数多くのコロンビア産エメラルドを見てきた諏訪会長でも今まで見た中で3本の指に入る程の美しさだといいます。
第5章の中央付近にありますので、ぜひご覧ください。
その他にも豪華絢爛なジュエリーたちが立ち並びます。
第2会場へ
第5章が終わると、音声ガイドの返却場所があり、順路は第2会場へと続きます。
第2会場には、桜石、ダイヤモンドのインクルージョンについての展示のほか、昨年の「JJAジュエリーデザインアワード」(一般社団法人日本ジュエリー協会(JJA)主催)の入賞作品などが並びます。
そして、色鉛筆画家『長靴をはいた描(ねこ)』こと、安部祐一朗氏の描き下ろし3作品が展示されているコーナーへと続きます。
色鉛筆画家 安部祐一朗氏インタビュー
お待たせいたしました!
ここからは、色鉛筆画家『長靴をはいた描(ねこ)』こと安部祐一朗氏のインタビューの様子をご紹介したいと思います。
プロフィール
安部祐一朗氏は、2002年生まれ。美容学校に通う学生でありながら、TwitterやInstagramなどSNSを中心に活動される、生物と宝石や鉱物を融合させた作品で人気を博している色鉛筆画家です。
今回の宝石展のために3点描き下ろし、出展されています。
コラボすることになったきっかけは?
監修者のお一人である門馬綱一氏(国立科学博物館 地学研究部)がSNSを通し安部氏の活動を知り、主催者に推薦されたことがきっかけだったそうです。
安部氏自身も門馬氏が監修された本を持っており、以前からご存知だったそうで、そんな方にお声がけ頂き大変光栄に思っているとのことでした。
展示されている作品のコンセプト
今回の3作品のコンセプトはずばり「挑戦」。
今まで発表してきた作品とは異なる分野に挑戦してみたく、モチーフや宝石も色々考えて選ばれたそうです。
最初に決まったのはモチーフの方。
主催者から国立科学博物館にある標本をモチーフに描いて欲しいとの要望を受け、提示された5点の中から3点選び、その後それぞれにどの宝石を融合させるかストーリーやテーマを考えながら決めたといいます。
それぞれどういった理由で選んだか一つ一つご紹介しましょう。
フタバスズキリュウ 化石 オパール化
フタバスズキリュウを選んだ理由としては、今まで色々な作品を描いてきた中で、恐竜の化石をモチーフにしたことはなかったため。
この作品については、モチーフで挑戦されたとのこと。
宝石としてオパールを選ばれた理由は、化石がオパール化することがあるということは、以前から知っており、いつか作品にしてみたいと思っていたそう。
ただ、生物とどう融合すべきか上手くイメージできずにいたところ、今回の話を受けて、挑戦することにしたといいます。
最も拘った部分は顔。
絵でしか表現できない、オパールの美しさを表現したかったとのことで、特に顔の部分を重点的に描かれたといいます。
制作には塗りの部分だけで約10日掛かったとのことですが、実はこの作品、一度ボツにして描き直されたものだそうです。
作品をボツにするのは、これまでも含めて初めてだったそうで、それ程、オパールを絵で表現するのはとても難しかったとのことです。
ご本人も「新しく開拓できた作品」といわれる程、拘りぬいた作品です。ぜひそういった観点でも見て頂きたいと思います。
ハチ公×モルガナイト
ハチ公と合わせたのはモルガナイト。
何故、モルガナイトを選んだかと伺うと、まず、今回出展された作品で使う宝石はダイヤモンドやサファイアのように誰もが知っているような有名宝石以外のものを主に使いたかったとのこと。
有名ではないけれど、知っている人は知っている宝石を使うことで、今まで宝石に興味がなかった方も宝石好きな方も両方に楽しんでもらえたら、という思いがまず根底にあったといいます。
その中でモルガナイトを選んだ理由は、主人を駅で待ち続けたハチ公の深い愛を表現するのに、モルガナイトの象徴とされている「優美」「愛情」といったイメージや優しい色合いが合致したからだそうです。
モルガナイトといえば、昨年12月末に全国宝石卸商協同組合より4月の誕生石に追加されたとして注目を浴びている宝石の一つでもありますね。
この作品は、前出のフタバスズキリュウとは異なり、これまでの作品の延長線上というか、今まで得た技術や経験を存分に出し切った作品に仕上がったとのことです。
尻尾の部分に原石を生えさせたのは、標本のハチ公が白っぽくて岩のようなイメージももてたので、原石もどこかに使いたかったそうです。
よく見ると、爪の先もピンク色に塗られていたり、細部の拘りまで見て頂きたい作品です。
シロナガスクジラ×ダイオプテーズ
ダイオプテーズもなかなかマニアックな宝石を選んだな、という印象でしたが、この宝石をシロナガスクジラと融合させた理由を伺うと、
シロナガスクジラは、全長30m近くになることもある巨体をもちながら、繊細さも持ち合わせている生き物とのこと。絶滅危惧種にも指定されていますね。
シロナガスクジラの繊細さを表現したくて、モース硬度が5と低めで2方向に劈開性をもつダイオプテーズが選ばれたとのこと。
実は今回モデルとなったダイオプテーズは宝石展の中に展示されているものだそうです。
どこに展示されているか、ぜひ探してみてくださいね。(ヒントは第3章です)
また、この作品における挑戦部分としては、大きさ。
先の2作品はA4サイズなのですが、こちらはF6という一回り大きいサイズの紙に描かれており、これまでで最も大きい紙に描かれた作品とのことです。
シロナガスクジラは地球上最も大きい生物といわれ、前出のフタバスズキリュウの約2倍程の大きさになるそうで、紙のサイズを変えることでも大きさを表現できればということだそうです。
安部祐一朗氏は、一つの作品を平均10日~2週間程度で作られることが多いそうなのですが、この作品については、大体20日程度掛かったとのこと。
シロナガスクジラのダイナミックさと繊細さ、そしてそこに組み合わされた際立つグリーンが美しいダイオプテーズとの融合をじっくり感じて頂きたい作品です。
見て欲しいポイント
安部祐一朗氏の今までの作品は、自然に溶け込ませることをテーマに描かれたものが多かったそうですが、今回は宝石展ということで、宝石を主張させるべく、強めに描いているので、宝石をメインに見てもらえたらとのことでした。
オパールの遊色が織りなす美しさ、原石からカットされたものまで色々な形をしたモルガナイトの優美さ、希少石ダイオプテーズの存在とその魅力など、ぜひ色々な角度から楽しんで下さいね。
『七つ屋 志のぶの宝石匣』著者二ノ宮知子描き下ろし作品
安部祐一朗氏の3作品の横には、会場の至るところにパネル展示があった『七つ屋 志のぶの宝石匣』の作者である二ノ宮知子先生の描き下ろし作品もあります。
実はこの作品に描かれている宝石たちは全て第1会場に展示されているものです。
第2会場から第1会場に戻ることはできないため、先にあたりをつけてから見られることをおすすめします。
顕定が付けているブローチ以外は第3章、ブローチは第5章にあります。
お土産品も充実!
特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」は、最後まで気を抜くことができません。
第2会場の隣りに特設されたお土産ショップではオリジナル商品を始めとした数多くの品々が並びます。
この他、監修された先生たちの本や宝石、鉱物、アクセサリーなど目移りする程多くの商品があり、お土産選びにも時間を費やすこと必至です。
出口付近には、鉱物ガチャまでありました。
宝石展の思い出やご家族、ご友人へのお土産用にぜひ立ち寄ってみて下さいね。
最後に
特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」の内覧会の様子をご紹介しました。
実は、内覧会では写真撮影とインタビューのことで頭がいっぱいできちんと味わえなかったこともあり、翌日である開催初日に改めて行って来ました。(一部その時に撮った写真もあります)
予約時間が夕方だったため多くの方で賑わってはいましたが、予約人数の制限をされていることもあり、ごった返していてゆっくり見られない、ということはありませんでした。
ただ、橋本コレクションやルースが並んでいるコーナーなどは作品数も多く、間近でゆっくり見るためには並ぶ必要がありました。
また、第5章のアンティークジュエリーのところ以外は写真撮影も可能です(※フラッシュおよび動画撮影はNG)。
一つ一つゆっくり見たい方や写真が沢山撮りたい方は、平日朝イチの比較的空いている時間帯か、余裕をもって行かれることをオススメします。
どちらかと言うと、ジュエリーの方が比較的ゆっくり見られるものが多かったように思います。
美しいものを見ながら楽しく勉強でき、全身で宝石を感じることができる、特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」は、6月19日(日)まで、国立科学博物館 地球館地下1階 特別展示室 にて開催中です。
良かったらぜひ足を運んでみてください、きっと宝石を通して、地球の奥深さを再認識することもできると思いますよ。
特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」から生まれた書籍「起源がわかる宝石大全」も好評発売中です。監修者4名の拘りがつまった素晴らしい本です。
この書籍について紹介した記事もありますので、宜しければこちらも併せて読んでみて下さい。
カラッツ編集部 監修