シルバーアクセサリーの刻印を見てみると「SV925」、「S925」、「スターリングシルバー(sterling silver)」、「純銀」などと表記されているものがあります。
特によく耳にするのがスターリングシルバー。
シルバーの一種だということは何となく分かるものの、他のシルバーとどう異なるのでしょうか。
何だか気になったので色々調べてみました!
スターリングシルバーの詳細とともに純銀についても一緒にお話したいと思います!
目次
スターリングシルバーとは
シルバー製品やジュエリーの商品説明などでもよく見かける、スターリングシルバーという言葉。
どうやら純銀とは異なるようですが、どう異なるのでしょうか。
まずは、それぞれの特徴と違いについて簡単にご説明しましょう。
純銀とスターリングシルバーとの違い
純銀とは、銀(シルバー)の純度が99.9%以上であるピュアなシルバーを指します。
刻印では純度を示す「999」が表記されます。
純度が高いためメタルの色が美しく、変色も最小限に抑えられるという特徴があります。
しかしその反面、柔らか過ぎるためジュエリーとしての加工には向いておらず、時間の経過とともに変形したり、耐久性が低いというデメリットがあります。
一方、スターリングシルバーは、92.5%の純銀に銅や他の金属などを割金(わりがね)として7.5%分混ぜて作られたものを指します。
純銀の量が全体の92.5%であることから、「925」と表記されます。
純銀に銅などを混ぜることで、シルバーがより硬くなり耐久性が高まり、ジュエリーとして加工したり着用しやすくなります。
そのため、現在多くのシルバージュエリーにはスターリングシルバーが使用されているといいます。
スターリングという言葉の由来
スターリング(Sterling)という言葉の由来は諸説あります。
一つは、イングランド王ヘンリー2世(在位:1154年₋1189年)の在位中、硬貨の品質向上のために持ち込まれた東ドイツの硬貨が「イースターリング(Easterlings)」と呼ばれていたことに由来するというもの。
もう一つは、古典英語で「星のある硬貨」を意味する「steorling」という言葉に由来するという説です。
イングランド王国のノルマン王朝(1066年~1154年)には星の形を刻んだペニー硬貨があったことから、このような言葉が使われていたのではないかということです。
ちなみに、現在のイギリスの通貨「ポンド」は、「スターリングポンド」(英語ではpound sterling)とも呼ばれていますが、これは1158年にヘンリー2世が92.5%の純銀と7.5%の銅の合金を硬貨における法的基準とし、その基準をスターリングシルバーと名付けたことに由来するといわれています。※諸説あり
この純銀が92.5%という硬貨の純度規格は1920年まで続きましたが、1920年に純銀の割合が50%となり、1946年以降の硬貨にはシルバーが使用されなくなったということです。
S925とSV925は同じ?
前述したとおり、純銀を92.5%含むものがスターリングシルバーと呼ばれ、92.5%を意味する「925」とシルバーを意味する「S」や「SV」が付けられ「S925」や「SV925」と刻印されます。
「S」と「SV」の違いは国や規格機関、メーカーなどでの定めの違いで、いずれもスターリングシルバーであることに変わりはありません。
刻印を見ることでそのシルバー製品がどの国で製造されたかを見分けるのに役立つこともあります。
7.5%の割金に銅を使っているものだけをスターリングシルバーと呼ぶと定義される場合もありますが、国や規格機関、メーカーなどによって見解が異なる部分でもありますので、必ずしもそうとは言い切れないのが実情ではないかと思います。
純銀の定義とは
ちなみに、「純銀」とはどのようなシルバーなのでしょうか。
純銀の純度や、表記する際の国際基準について、こちらで説明していきます。
シルバーの純度について
純銀は英語でファインシルバー(Fine Silver)といいます。
純銀とは前述したとおり、他の金属などが混ざっていない99.9%のピュアなシルバーのことです。
0.01%ほどのわずかな微量元素を含む場合がありますが、本質的には純粋なシルバーです。
貴金属の純度は999が最高表示と定められているため、1000(100%)とは表示されません。
日本では以前、シルバーを含む貴金属の品位を「1000」で表示していたこともあるそうですが、造幣局は平成24年(2012年)4月に品位を改正し、国際標準規格(ISO9202)及び日本工業規格(JIS H6309)に準じた「999」と表示することにしました。
そのため、2012年4月以前のシルバー製品には「1000」と表記されたものもありますが、基本的には、現在の「999」と純度(品位)は変わらないということです。
ちなみに、シルバーが92.5%のスターリングシルバーは、シルバーの純度(品位)が1000分の925という意味になります。
日本でのシルバー表記
前述したとおり、日本の造幣局は2012年より純銀を「1000」ではなく「999」と表記するように改正しました。
これは、貴金属合金の純度(品位)を定める国際標準規格(ISO9202)と日本工業規格(JIS H6309)にあわせたものです。
また、CIBJO(World Jewellery Confederation:国際貴金属宝飾品連盟)も純銀を「999」と表記するように定めています。
国内のシルバー製品の純度表記もこれらの規格にあわせ、純銀=999に統一されています。
世界でのシルバー表記
1972年、シルバーを含む貴金属製品の国境を超えた貿易に関する国際条約が定められます。
それにより、プラチナ、金、パラジウム、シルバーの純度に対する共通した表示が決められました。
その後ヨーロッパ各国が条約に署名し、これらの国で製造したシルバー製品には 国際条約に準じて純銀を「999」、それ以外は純度に合わせて「925」「800」などの表記をすることが法律で定められました。
イギリスのスターリングシルバー表記の歴史
前述したとおり、1158年、イングランド国王ヘンリー2世は純銀92.5%と銅7.5%を硬貨における法的基準とし、「スターリングシルバー」と呼ぶよう規定を定めました。
1238年には、イングランド国王ヘンリー3世がゴールドとシルバーの製品に対する初めての規制を設けます。
それにより、シルバー製品が国王の通貨(スターリングシルバー)より品質が劣ってはいけないという法律が定められます。
つまり、純銀の含有率が92.5%以下の製品は法律上許されなかったのです。
しかし当初、純銀92.5%のスターリングシルバーであるか否かの証明方法がありませんでした。
そこで1300年、イングランド国王エドワード1世はシルバー製品にレパードの頭の刻印がない限り販売できないという法律を定めます。
1238年に最初の法令が定められた際、分析は6人の金細工職人(ゴールドスミス)に任されていましたが、1327年、その責任はゴールドスミスギルド(金細工職人で作られた協会)に移行します。
その後の法律で、シルバー製品には製造者、分析が行われた場所(バーミンガム、ロンドン、シェフィールド、エジンバラなど)、製造年月、シルバーの純度の刻印を入れることも定められました。
付属として製造時の国王または女王の刻印を入れることも出来ました。
1975年以降には横を向いたライオンの姿の刻印がスターリングシルバーの証明となります。
更に1976年、貴金属の表記に関する国際条約に署名したことから、その後のイギリス製のシルバー製品には国内外問わず全てに「925」の刻印を押すことが法的に定められました。
アメリカのスターリングシルバー表記の歴史
イギリスで行われていたスターリングシルバーを証明するという表記をアメリカの企業として初めて実施したのはティファニー社で、1851年のことでした。
自社製作していたシルバー製品をより特別なものとしして売る戦略として刻印を入れて販売したのです。
この後、他のアメリカ企業も続々と刻印入りのシルバー製品を販売し始めます。
当初は刻印のデザインに決まりがなかったため、製造年や場所など様々な刻印が押されていたそうです。
また、1868年以前のアメリカのシルバー製品は銀貨を溶かして作られたものが多かったといいますが、当時銀貨に使われていたシルバーの純度は様々だったにも関わらず、特に純度は表記されていなかったといいます。
そこで1868年、銀貨にスターリングシルバーを使用することが標準化され、1907年にはスターリングシルバーの表示規格が定められます。
連邦政府はスターリングシルバーが純銀を92.5%を含む製品であることを証明するため、「925」と表記することを定めました。
スターリングシルバーは金属アレルギーを起こしやすいって本当?
シルバー自体は、比較的金属アレルギーを起こしにくい金属といわれています。
スターリングシルバーの場合、前述したように、シルバーの他に銅などが割金として含まれます。
この割金に含まれる別の金属が原因で金属アレルギーを起こすことが多いと考えられています。
但し、金属アレルギーを引き起こす素材や割合には個人差があります。
まずは専門医に相談するなどしてきちんと調べ、ご自身がどんな金属に反応を起こしやすいかを知ることが大切だと思います。
スターリングシルバーのお手入れ方法
シルバーは元々大気中の硫化水素や硫黄成分などと触れると硫化するという性質をもつため、温泉に入ったり、時間の経過とともに黒ずんでしまうということがあります。
しばらく使っていなかったシルバージュエリーを取り出してみたら、黒く変色していたという経験をおもちの方も多いのではないでしょうか。
また汗などで変色することもあるそうです。
しかしきちんとお手入れをすれば、長く美しさを保つこともできますし、通常の使用で品質が低下することもありません。
お手入れ方法
日常のお手入れは、使用後に柔らかい布で拭きとるだけで十分です。
特に汗をかいた後などはきちんと拭き取ってからしまいましょう。
汚れが目立つときは中性洗剤を薄めたぬるま湯の中に入れて洗い、泡を洗い流したあと柔らかい布で水分を拭き取ってしっかりと乾燥させます。
黒ずみが目立つようでしたら、シルバー専用のクロス(シルバークロス)で優しく磨きます。
こすり過ぎるとダメージを与える恐れがありますので注意しましょう。
シルバークロスで取れない小さな汚れがある場合は、シルバー専用のクリーニング液に浸すと、細かい部分まで綺麗になります。
この他、シルバージュエリーを水の中に入れて重曹でこすり洗ったり、歯磨き粉で磨くなど、家庭にあるものを使ってクリーニングすることも可能です。
但し、宝石が付いているものはクリーニング液や重曹などには入れないようにして下さい。
また、宝石によっては化学薬品に弱いものなどもありますため、それぞれの宝石に合ったクリーニング方法をするよう心がけて下さい。
取り扱いで注意する点
スターリングシルバーのジュエリーは、黒ずみを避けるために以下のことを心がけることをおススメします。
- 温泉に入る際は外します。硫黄成分の多い温泉地に行く時は付けて行かない方が安心です。
- 硫黄成分の入った入浴剤などにも注意しましょう。
- 手を洗う時は指輪を外し、指輪の細部に石鹸分が残るのを避けます。
- スポーツやエクササイズをする際にはジュエリーを外すことで、汗や皮脂などがシルバーに付着するのを避けられます。
- 湿気の多い場所での長期の着用は避けるようにします。
- 定期的にクリーニングを行うようにしましょう。
黒ずみのほかキズなどから守るためにも、保管する際には個別の袋や箱に入れて、直射日光や湿気のない場所に置くようにして下さい。
最後に
スターリングシルバーのジュエリーの多くは、「925」などの刻印が押されています。
シルバーコーティングなどには刻まれないので、刻印を確認することでジュエリーの品質を見分ける基準にもなりますよね。
今回お伝えした通り、古いシルバー製品には個性的な刻印が押されているものも多いです。
欧米のビンテージやアンティークのシルバー製品をお持ちでしたら、ぜひ刻印を確認してみて下さい。面白い発見があるかもしれませんよ☆
カラッツ編集部 監修