キラキラと輝く金(ゴールド)は古くから人々を魅了し大切にされてきました。
私にとって金といえば喜平のネックレスのような華やかでゴージャスなイメージがありますが、皆さんはどんな印象をお持ちですか?
金はジュエリーの地金のほか、時計や工芸品などさまざまな用途で使われています。
資産価値も高く、金の延べ棒や金貨を財産として持つ方もいらっしゃいますね。
人間の生活になくてはならない金の基本情報から性質、産地、歴史、用途など詳しくみていきましょう。
目次
金(ゴールド)とは
金は、今から約6~7000年前に発見され、人類が最初に使った金属ともいわれています。※諸説あり
古来よりジュエリーや装飾品の素材に広く用いられ、珍重されてきました。
経年劣化に強いという特徴をもつため変色や腐食をしにくく、数千年前に作られた装飾品が現在も良い状態で残っていたりします。
変動はありますが、大きく価値が下がらないことから資産としても重要視されていますね。
鉱物としての基本情報
英名 | Gold(ゴールド) |
和名 | 金(きん) |
鉱物名 | 自然金 |
分類 | 元素鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Au |
モース硬度 | 2.5−3 |
比重 | 19.3 |
光沢 | 金属光沢 |
性質
金は柔らかく、延びやすい性質をもっています。
なんと1グラムの金を約3000メートルまで延ばすことができるのだそうですよ!
建築や工芸品などに使われる金箔を想像してみたら、その性質を実感しやすいでしょうか。
さらに金は、化学的に極めて安定しており、ほとんどの物質と化学反応しないといわれています。
それ故、長い年月が経っても腐食したり変色したりせず輝きを失いにくいため、ジュエリーや装飾品の素材としても適しているのですね。
そのほか、工業利用されることも多いです。
産地
オーストラリア、ロシア、中国、アメリカ、カナダなどが主な産出国です。
金鉱石から採れる金は平均3〜5gととてもわずか。
しかしオーストラリアでは1kg以上ある砂金が採れることも多く、過去には90kgほどの金塊が見つかったこともあるそうです。
世界最大規模の金鉱床は南アフリカのウィットウォータースランド。
南アフリカには、なんと全地球の約半分量の金が眠っていると考えられているのだそうですよ。ロマン溢れる話ですね!
かつては日本にも多くの金鉱山があり、金の産出が盛んだった時代もありました。
今でも砂金が採れる河川は多く、観光地化しているところもありますね。
まさに黄金の国ジパング!といったところでしょうか。
原石の形
金の結晶は8面体や12面体を成すこともあるようですが、多くは粒状、箔状、樹枝状などで見つかります。
形よく成長することはあまりないそうです。
小さな結晶が針状や格子状に連なったり複雑に結晶したり、実にさまざまな形をとり、大きな塊で見つかることもあります。
金には砂金と山金があり、砂金は主に河川などの漂砂鉱床から見つかります。
砂金の大型のものをナゲット(Nugget)と呼びます。
ナゲットと初めて聞いた時、私はチキンナゲットを想像してしまいましたが、英語でNuggetは塊、特に金や貴金属の塊のことを指すのだそうです。
砂金に対し鉱山の鉱脈から採れるものを山金と呼びます。
輝銀鉱などの銀の硫化鉱物の鉱脈に生成されるのが最も一般的。ただ金の純度は高くありません。
堆積岩中の石英脈に入っているものは「老脈」と呼ばれ、金の粒が肉眼でわかります。
銀を伴わず純度は高いですが、鉱床の規模が小さいのが特徴です。
金の用途
金といえば、ジュエリーや時計といった宝飾品、延べ棒、金貨などをイメージする方も多いと思いますが、それだけではありません。
薄く引き延ばした金箔を工芸品や建築素材、仏具、美術品、食用に用いたり、工業用製品に使われることもあります。
さまざまな特徴を持つ金は文化・経済だけでなく工業にも欠かせない存在なんですね。
具体的にどんなものに使われているか、ジュエリー用と工業用の2つに分けて詳しく見ていきましょう。
ジュエリー用として
金はその美しさと性質から長くジュエリーの素材として使用されてきました。
細く加工しても丈夫で、宝石を留める爪に繊細な作りを施すこともできます。
宝石店で働いていた頃、繊細な細工が入ったジュエリーを作りたいという相談を受けた際は、金を使用するように提案することも多かったです。
ただ、純粋な金は柔らかく伸びやすいという性質をもっています。
そのままだと柔らかすぎて加工しにくいため、ジュエリーなどに使用する場合は通常、他の金属を割金(わりがね)として混ぜて使用します。
他の金属を混ぜたものを合金と言い、割金の種類や配分によって色が変わります。
例えばシルバーやパラジウムを混ぜるとホワイトゴールド。
銅を混ぜるとピンクやレッドゴールド、鉄を混ぜると青味がかったゴールドに変化します。
工業用として
電気伝導率が高く化学的に安定している金は、工業用素材としても広く利用され、例えば半導体製品や電気接点のメッキ、プリント配線などに使用されています。
廃棄されたコンピューターから金を回収するビジネスも一般的になりましたよね。
人工衛星や宇宙服の表面に貼られることもあるそうですよ。
金の薄いフィルムが赤外線の98%を反射させるため、表面に貼り付けることで温度調節がしやすくなるのだそうです。
金の歴史
金を最初に用いたのは約6~7000年前といわれ、現在までの長きにわたり珍重されてきました。
古代から金は富と豊かさの象徴でさまざまな用途で使用されています。
金と人類の関係とお金(貨幣)の歴史についても調べてみました。
金と人類の関係
約7000年にわたる金と人類の歴史。
貴重な金を集めるために、多くの人が金鉱を探し出し、様々な方法で金を取り出そうと試みてきました。
例えば古代エジプト人にとって金は太陽のシンボルであり、宗教的にも重要な意味をもつ存在でした。
金を手にいれるために古代王朝時代(紀元前2575〜2434年)の初期、ファラオはヌビア(現在のスーダン)に調査団を派遣したと伝わっています。
彼らは石英脈の岩盤に深い井戸を掘り下げ、そばで火を燃やし、その熱で鉱脈と岩盤を破砕。採掘した岩石を粉砕し金を取り出したそうです。
そんな古い時代から金を取り出す技術が確立していたなんて驚きですよね。
現在エジプトの墳墓ではたくさんの金を使った宝飾品が見つかっており、かの有名なツタンカーメンの黄金マスクも金にラピスラズリと着色ガラスの板を嵌め込んで作られています。
日本で金の宝飾品が扱われるようになったのは、これよりずっと後の古墳時代中期(5世紀)ごろと考えられています。
朝鮮半島から金や銀を使用した武器、馬具、装身具が伝えられました。
古墳時代は大王の時代と呼ばれており、権力を持った人物が国を統治するようになった時代です。
金色に輝く装身具を身に纏うことで、いかに力があるかを国民にアピールしたのではないかといわれています。
絢爛豪華な異国の装身具をつけた権力者はきっと憧れの眼差しで見られていたのでしょうね。
お金(貨幣)の歴史
金の歴史を調べてみると、お金(貨幣)の歴史とも深い関わりがあることが分かりました。
まず、お金という概念は物々交換から始まったといわれています。
物々交換とは、持っているものを他人と交換し、互いに必要なものを手に入れるという仕組みです。
交換するためには、他人が欲しがるものを揃える必要がありますし、保存が効かない食べ物などは交換する前に腐ってしまうリスクがあり、タイミングも重要です。
そこで持ち運びやすく時間が経っても品質が変わらない金や銀の貴金属が物々交換に使われるようになりました。
しかしここで一つ問題が出てきました。
ひとつひとつは小さく持ち運びが簡単で腐らないため長く蓄えることができますが、量が増えると重くなり持ち運ぶのが大変だったのです。
そこで金の代わりに「この紙と金を引き換える」と書いた約束手形を渡すようになり、これが紙幣の始まりといわれています。
当時の紙幣には「このお札を持ってくればいつでも同じ価値の金と交換する」と書いてあったそうですよ。
これが金本位制と呼ばれる仕組みで、世界恐慌前までイギリスやアメリカなどでも採用されていました。
紙幣が信頼されてきたのは金に交換できるという前提条件があったからで、現在の貨幣経済は金がなければ始まらなかったかもしれませんね。
金が重要視される理由
金がここまで重要視されるようになったのは、金の特性によるものと考えられます。
美しく加工がしやすいのに腐食したりすることがなく、価値が下がりにくい。
これだけ多くの魅力がそろっている物質はとても貴重です。
次第に貨幣としても使われるようになり、経済的にも重要なものとなりました。
工業用品の部品として活用されることからも人々が豊かに暮らすために欠かせない存在といえます。
さらに金が重要視されている理由の一つに、有限資材という点もあげられます。
いくら金に魅力的な特徴が備わっていたとしても、限りなく出るのであれば価値としては下がります。
限りがあるからこそ貴重なものとして扱われるということですね。
金の価値
金の価格は株と同じように毎日相場が変動します。
相場が下がれば安く手に入り上がれば購入額も高くなるという訳ですね。
2008年は最高で3,300円台/1gでしたが、そこから大幅に値上がりしており現在(2024/01)は10500円台となっています。
15年前と比べて3倍以上値上がりしているなんて驚きですよね。
昔、お客さまから持っていた金製品が購入時よりも高く買い取ってもらえたという話もよく聞きましたよ。
金の価値はどうやって決まる?
金の価値は世界情勢に影響を受けやすく経済動向によっても変動します。
テロや戦争などの社会不安が生じた場合、実物資産である金を購入する人が増える傾向にあるそうですよ。最近の金の高騰もそういった事情が関係しているかもしれませんね。
また、需要と供給のバランスなどによっても金相場は変動します。
例えば、金を使った新しい技術が開発されるなどして今より需要が高まった場合、金の価格はさらに高くなる可能性があるということです。
金相場の知り方
金相場を知るためにはどうすれば良いのでしょうか。
さまざまなサイトで金価格は確認できますが、一番おすすめなのは田中貴金属工業さんのサイトに掲載されている「日次金価格推移」です。
田中貴金属工業は1885年創業の企業で、貴金属地金や貴金属製品の製造、販売などを行っています。
サイトでは金をはじめ、プラチナ、銀といった貴金属の価格を日本円で掲載しており、毎日の価格推移をグラフで確認することもできます。
マーケット市場情報なども読めるので非常に参考になりますよ。
私もよくジュエリー加工の見積もりを出す時などに参考にさせてもらっていました。
金の売買について
金は色々な形で購入することができます。
例えば、金相場と連動した株を購入したり、純金積立をするといった方法です。
投資先としても人気があるので、気になる方は調べてみるのも良いかもしれません。
現物にはジュエリーや時計、コインのような用途のある金製品と、延べ棒のような金そのものがあります。
現物を購入するなら何処で購入するのが良いのでしょうか。
金はどこで買える?
金製品はジュエリーショップや時計店のような小売店などで購入することができます。
また質屋や買取専門店でも買い取られた金製品が買えます。
最近ではメルカリなどのフリマアプリを使って購入するのも当たり前になってきましたね。
金の延べ棒なら田中貴金属、日本マテリアルなどの専門店で購入可能です。
金の買取について
金は買取専門店や質屋で買い取ってもらうことができます。
買取専門店と質屋の違いはご存じですか?
買取専門店はお客様のお品物を査定しお金を払う『買取』を行っています。
それに対し質屋は『買取』だけでなく『質入れ』と呼ばれるシステムがあります。
品物を担保に一時的にお金を借りられるというもので、借りたお金+手数料を払えば品物を返却してもらえるという仕組みになっています。
買取はショップによって手数料が異なり、査定によって価格が変わってくることもあります。
出来るだけ高額で売りたい場合は色々なお店で査定してもらうのがおすすめです。
最後に
金は美しいだけでなく、加工がしやすい、腐食しない、化学的に安定しているなどさまざまな特性があることがわかりました。
そしてその特性によってお金という通貨の概念が生まれるようになり、貨幣経済の始まりとなりました。
世界各地のさまざまな文化・文明を発達させるのにも大きな役割を担ってきたといえます。
私自身、金の美しさは唯一無二だと感じ、その普遍的な価値がゆえに、多くの人の憧れの対象になったのではないかと思っています。
これからもきっと、社会経済、文化、技術発展などあらゆる場面で、金は私たちの生活を支えてくれることでしょう。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『カラー版 日本装身具史』
編・著者:露木宏/発行:美術出版社
◆『社会人として必要な経済と政治のことが5時間でざっと学べる』
著者:池上彰/発行:KADOKAWA ほか
▽参考書籍・参考サイト一覧▽