2024年2月27日(火)から3月4日(月)まで世界最大級の国際宝飾展である、香港ジュエリーショーが開催されました!
44の国と地域から4,000を超える出展社が参加した今回の香港ジュエリーショーは、137の国と地域から約81,000人のバイヤーが集まり、大盛況の内に幕を閉じました。
KARATZ Gem Magazineは、昨年より香港ジュエリーショーとメディアパートナーを結ばせて頂いており、今回初めてメディアとして参加させて頂くこととなりました!
海外で開催される国際宝飾展に初参加した興奮と活気ある会場の雰囲気に感動を覚えるとともに、約1週間の取材を経て、色々得るものもあったと感じています。
世界中から集まった素晴らしい宝石とジュエリーの写真も沢山撮ってきましたので、レポートとともにご堪能いただけたらと思います。
では早速ご紹介していきましょう!!
目次
香港ジュエリーショー2024年開催概要
香港ジュエリーショーとは、毎年3月に行われる、世界最大規模の国際宝飾展で、一般的に「香港インターナショナル・ダイヤモンド、ジェム&パール・ショー(Hong Kong International Diamond, Gem, and Pearl Show)」と「香港インターナショナル・ジュエリー・ショー(Hong Kong International Jewellery Show)」の2つを指します。
2024年は、「香港インターナショナル・ダイヤモンド、ジェム&パール・ショー」が2月27日(火)から3月2日(土)、「香港インターナショナル・ジュエリー・ショー」が2月29日(木)から3月4日(月)まで行われ、二つのショーを合わせて、137の国と地域から約81,000人のバイヤーが集まりました。
出展ブース数は、44の国と地域から4,000を超え、日本からも約270社が出展されました。
香港インターナショナル・ダイヤモンド、ジェム&パール・ショー
その名が表わすとおり、ダイヤモンド、色石、パールに大きくエリアが分かれ、その中で更に国や地域ごとに分かれるような形になっていました。
初日の朝イチから終始人が絶えず賑わっていたのが、日本産真珠、ラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド)のエリアなどで、期間中を通しても最も人気が高かったエリアのように感じました。
日本産真珠エリア
中国での真珠人気を受け数年前から日本産真珠の需要が上がっていることは聞いていましたが、その人気がまだ衰えていないように見た目には感じました。
ただ、真珠を販売されている出展社様の内、何社かにお話を聞かせて頂いたところによると、どこも2023年9月に比べると客数は変わっていないものの、販売個数などは減っている感覚とおっしゃられていました。
恐らく中国の経済状況が影響しているのではないか、とのことでしたが、それでも最終日の夕方になっても人が途切れないブースも幾つか見受けられました。
現在人気が高いのは白蝶真珠とのこと。
2019年頃からアコヤ貝の大量死により、アコヤ真珠の生産量が減り価格が高騰し、手の届かないところまで上がってしまったこともあり、白蝶真珠を買い求める方が増えたようです。
オーストラリアの業者さんも、白蝶真珠については現状生産量が比較的安定していると言われていましたので、この人気はしばらく続くかもしれませんね。
ラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド)
ラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド)のエリアも連日賑わっていました。
こちらも2社ほど、お話を伺いましたが、いずれも「とても好調」とおっしゃられており、常に複数のバイヤーがブースのアチコチで商談をしている状況でした。
特に人気が高い色はカラーレス。
色の付いたものでは、ピンクとブルーが人気とのことでした。ナチュラルダイヤモンドと需要は近いかもしれませんね。
特に需要が高い国としては、アメリカやインドで、日本ではまだラボグロウンダイヤモンドの需要は上がっていない印象と、いずれのブースの方もおっしゃっていました。
近年インドや中国、アメリカを中心にクォリティの高いラボグロウンダイヤモンドが多く作られるようになり、今盛り上がっている市場の一つではないかと思います。
香港インターナショナル・ジュエリー・ショー
ジュエリーショーの会場も同じく、大きくカテゴリー分けされた上で、国や地域ごとにエリアが分かれるような形になっていました。
ラグジュアリー・ジュエリーのエリアは多くが撮影禁止になっていたため、個別の写真は殆ど撮れていませんが、琅玕やレッドダイヤモンド、ノンオイルエメラルドなどトップクォリティの宝石を使ったジュエリー達が立ち並び、まさにラグジュアリーな世界。
いつまでも見ていたくなるような贅沢な空間でした。
ファインジュエリーのエリアが一番広く、国ごとに区切られていたため、その国ごとの特徴などを見比べることができとても興味深かったです。
ジュエリーショーで賑わいを強く感じたのは、ジャパンパビリオン。
こちらも連日人が途切れることなく訪れていました。
ジャパンパビリオン
前回までジャパンパビリオンは4箇所に分かれており、フロアも同一ではなかったそうですが、今回は同じフロアで2箇所に集中させたとのこと。
買取専門店や真珠ジュエリーなどが特に人気が高く、価格や商品を見比べたいものも多い分野だと思いますので、アチコチ行ったり来たりせず集中的に見られたのはとても良かったです。
特に買取専門店のブースはどこも活気があったように思います。
ジャパンパビリオンは、全般的にアジアからのバイヤーが集まっていました。
中国を中心としたアジアの国々で日本の中古ジュエリーの人気が高いという話は時折耳にすることで、最終日を待たずして商品が殆ど残っていないブースも幾つか見受けられました。
あと、詳しいお話は伺えなかったのですが、ゴールドネックレスを中心に扱っていたブースにも人だかりができていました。金が日々上がり続けているのと関係しているのかもしれないですね。
色石市場のトレンドについて
香港ジュエリーショーにはとにかく世界各国から多くの出展社が集まります。
なので、今世界でどんな宝石が流行っているか、狙い所は何処かなど、最新情報を得られる機会も多々あります。
幾つかのブースで耳にした話としては、とにかく今アメリカ市場が熱い、ということ。
景気が良く、様々な色石が注目を浴びているという話でした。
前述したラボグロウンダイヤモンドのほか、トリートメントダイヤモンドも人気があるそうです。
ナチュラルダイヤモンドと比較したら宝石としての価値は低いかもしれませんが、正しい知識をもって使い分ければそれぞれに良さがある、ということがアメリカ市場では浸透しつつあるのかもしれないですね。
アメリカにも拠点をもつある出展社様より伺った話では、トリートメントダイヤモンドは多くの色合いを作り出せるため、月々の誕生石の宝石の色合いのトリートメントダイヤモンドを大切な方へのプレゼント用にオススメすることも多いそうですよ。
それでは、世界各地に営業所を持ち、業界でも名の知れた2つの出展社に、詳しくお話を伺うことができましたので、簡単にご紹介しましょう。
Paul Wild
ドイツに本社を置くPaul Wildは、パリ、アメリカ、バンコク、香港などに支社をもちます。
特にヨーロッパ市場に強く、高級ブランドとの取引も多い、業界内でも広く知られた会社です。色石のことならPaul Wildに!ということで突撃取材させて頂きました。
当日は社長様がいらっしゃらなかったなどの都合もあり、後日メールでのやり取りとなりましたが、山程質問を送ったにも関わらず、社長様にインタビュー頂き、一つ一つ本当に丁寧にご回答頂きました。
現在トレンドの宝石
近年注目を集めていると感じる宝石は、温かみのある桃色の宝石とのこと。
パントーン社が発表した2024年のカラーオブイヤーも「Peach Fuzz」で、ファッション業界などからも注目されている色です。
具体的な宝石で言うと、シェリーカラーのインペリアルトパーズやパパラチアサファイア、モルガナイトなどですね。
社長様の肌感覚的には、何処かの国に偏った話ではなく、世界的にその流行傾向が見られる、ということでした。
近年注目を集めている宝石
先程の桃色系の宝石もその一つなのですが、それに加え、素晴らしく明るく温かみのあるブルージルコンやアップルグリーンのパライバトルマリン、ペリドットなども最近注目度が上がっているように感じるとのことでした。
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Paul Wildのブースには、自社が誇るドイツの熟練職人の手による素晴らしい宝石彫刻も多く展示されていましたので併せてご紹介させてください。
ちなみにこの宝石、何かお分かりになりますか。
パライバトルマリンだそうです。
パライバトルマリンに彫刻を施すとはなんと贅沢な、と思いましたが
宝石集積地としても有名なドイツのイーダーオーバーシュタインの近隣都市に本社をもち、ドイツが誇る一流の研磨職人を有する自社工場とブラジルに鉱山を持っている、Paul Wildだからこそなせる技なのかもしれません。
主にカメオと同じ技法を使うのだそうですが、パライバトルマリンは内包物やクラックなどが入りやすい性質もありますし、クォーツやシェルなどに比べてモース硬度も高いため、このように美しく仕上げるにはかなり高い技術力が必要なのではないでしょうか。
また、宝石の展示方法も一つ一つに芸術性とセンスを感じ、大変素敵でした!
RMC
RMCは、バンコクで創設され、現在、香港、アメリカ、日本、中国など世界各地に営業所をもつ、世界規模で色石販売を行っている会社です。
特にトパーズに自信を持っており、品揃えが広く、業界内でも有名な会社です。
以前長く日本に在住し、現在ニューヨーク営業所に勤務しているという女性から色々お話伺ってきました。
近年人気の宝石
言うまでもないかもしれませんが、パライバトルマリンの人気は変わらず高いというお話でした。
アメリカでもその人気は不動で、ティファニーやGUCCI、D&Gといった有名ブランドでも取り扱うほどだそうです。
また、アメリカでは近年モルガナイトも人気で、同じくティファニーやカルティエ、ハリー・ウィンストンなどのジュエリーにも使用されているとのこと。
「モルガナイト」、ここでも名前が出てきましたね。
ただ、とにかく今アメリカの宝飾市場は熱く、正直どんな宝石も売れる、のだそうです。
その他、インドにはルベライト、日本にはトルマリンやビーズなどを卸すことが多いというお話でした。
また、正面のブースにズラリと並んだ彩り豊かなbig gemsも際立っていました。
幾つか手に乗せて写真を撮らせて頂きましたが、少しはその大きさを感じて頂けるでしょうか。
出展ブースについて
44の国と地域から4,000を超える出展社が参加した今回の香港ジュエリーショー。
様々な国や地域のブースが立ち並び、目移りしながらも特に気になったところを幾つかピックアップしお話伺ってきましたので、少しずつご紹介いたします。
ANTWERP CUT
ベルギー・アントワープに本社を置き、カラーダイヤモンドを中心に取り扱うANTWERP CUT。突撃取材だったにも関わらず、なんと社長様自ら対応して頂きました。
カラーダイヤモンドを専門に取り扱っている理由は、カラーダイヤモンドは個性的で美しく、人々の心を感情的に動かし、幸せな気持ちにさせてくれるから。
確かに美しい発色をするカラーダイヤモンドを見ると思わずうっとりと眺めてしまうところ、ありますよね。
ベルギー・アントワープと言えば、ダイヤモンドの集積地としても有名で、世界中からダイヤモンド原石が集まってくる場所です。
古くからダイヤモンド研磨の中枢にあり、その技術は恐らく世界最高峰と言えるのではないでしょうか。
そんなベルギー・アントワープの熟練研磨職人の技を持って磨かれた、見事なカラーダイヤモンドたちはどれも、これでもかと言わんばかりの輝きを放っていました。
まずは、カラーダイヤモンドの中でも最も希少性が高いといわれるレッドダイヤモンドからご紹介しましょう。
特にFancy以上の発色の美しいものは非常に珍しいです。オーストラリア・アーガイル鉱山産。
続いてブルーダイヤモンド。
こちらも希少なFancy vivid blue。ナチュラルで色合い濃く、程よいサイズ感のブルーダイヤモンドは初めて拝見しました。色鮮やかでまさに息を呑む美しさ。
こちらは、なんとFancy deep greenの見事なピース。
以前、グリーンダイヤモンドはカットの際色が消えてしまうことがあると聞いたことがあり、それについて尋ねたところ、確かにグリーンダイヤモンドにはそういった性質があるとのことでした。
ただし、専門的な知識と高い職人技術を持ってすれば、そんな繊細さをもつグリーンダイヤモンドも鮮やかさを失うことなく、美しく輝かせることができるのだそうです。
グリーンに限らず、カラーによって研磨方法を少し変えることもあるのだそうですよ!
ダイヤモンド研磨の世界もなかなか奥が深そうですね!
BIALONCZYK
オーストリアに本社のあるBIALONCZYKは、貴重なメロパールのジュエリーを何点か取り扱われていたのがとても印象的でした。
世界で最も希少だといわれる天然真珠、メロパールをまさか同時にいくつも目にすることができるとは思ってもいませんでした。
実は社長様は元々は歯科医師だったとのこと。
タンザニアでタンザナイトに魅せられたことをきっかけに宝石の収集を始め、その後ジュエリーデザインに興味を持つようになったのだそうです。
タンザナイトがティファニー社によって「タンザナイト」と名付けられる前に出会い、コレクションしていたそうですよ!
そんな方が取り扱うからか、宝石の特徴を活かしたユニークなデザインのジュエリーが多かったのも印象的でした。
こちらは中心がメロパールのジュエリー。
周りがギミックになっており花のように動きます。
メロパールはどちらかと言うと、オレンジ味の強い色が多いなか、こちらはブラウン味を帯びた色合い。更に希少性が高いのだそうです。
こちらも天然パールとのこと。
ですが、鑑別しても種類は分からなかったそうです。
白いコンクパールとも思われましたが、大きさや形的にそれも違うという判断になり、結局正体は不明なままなのだそうです。ベトナムのハロン湾で採れたもの。
中石が珍しいマンダリンガーネットキャッツアイのリング。
鮮やかでジューシーな色合いの中に一筋の光を示し、全体から華やかさを感じるリングです。
CARRERA y CARRERA
CARRERA y CARRERAはスペインのジュエリー会社。
取り扱う商品はいずれも繊細な細工が施され思わず見入ってしまうような商品が多かったです。
歴史ある会社で日本でも広く知られているためご存じの方も多いかもしれませんね。
ブースの中央にドーンと飾られていたこちらはシルバー製のパンサーのマスク。
表面にぎっしりと彫刻が施されています。
よく見ると、何匹か動物が隠れています。どんな動物が隠れているか分かりましたか?
中国の五行をヒントに作られたジュエリー。
こちらは海をテーマとし、モチーフとしてマーメイドが使われています。そして使用されている宝石は海との縁深いアクアマリン。ストーリーが見えるジュエリーですね。
こちらのテーマは「Air」。
バレリーナがモチーフで、今にも踊り出しそうな雰囲気が素敵です。宝石はタンザナイト。濃く鮮やかな色合いがデザインをよく引き立てています。
その他のブース
AUTORE
白蝶真珠を中心に取り扱うAUTOREはオーストラリアに本社を置く会社。
アコヤ真珠の供給量がままならないなか、白蝶真珠は安定した供給量が保てているとのこと。独自の養殖場で生産した品質の高い白蝶真珠を使ったラグジュアリーなジュエリーを多く取り揃えていました。
白蝶真珠は大振りなものが多いため、ジュエリーにセッティングすると華やかさが際立ちますよね!
CASCO Cameos & Coral
イタリアパビリオンからは、CASCO Cameos & Coralをご紹介します。
ここは珊瑚とカメオを中心に取り扱う会社で、様々な素材にカメオを施したジュエリーなどを取り扱っていました。
ドイツでカメオ彫刻が盛んな話は聞いたことがありましたが、イタリアにも多く工房があるそうです。イタリアのカメオ彫刻の中心地は、ピザ発祥の地としても知られるナポリ。この会社もナポリに工房をもちます。
ターコイズに彫られたものや珍しいところでラバー(溶岩)に彫られたものも(↓画像中央)!ドイツのカメオとはまた違った雰囲気が感じられて素敵です!
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その他民族衣装を思い浮かべるような色合いとデザインのシルバージュエリーを取り扱っていたペルーの会社や1850年代に作成された、世界初の蒸気船を作ったCharles Baird所有のブレスレット兼ネックレスを取り扱う会社など、本当に種々様々なブースがありました。
お忙しい中貴重な時間を割いてお話してくださった皆様に心から感謝です!
セミナーや会場内イベント
香港ジュエリーショーの会場では、連日様々なセミナーやイベントが各会場で行われていました。
セミナー
私が参加させて頂いたのは、最新のジュエリートレンドについてのセミナーとAiを使った最新技術についてのセミナー。
最新のジュエリートレンドのセミナーでは3人のパネラーが順番に講演をした後、3人によるパネルディスカッションという構成。
終始英語での講演ではありましたが、スライドに映し出される資料とともに、ジュエリーの歴史や最近の傾向などを知ることができました。
Ai技術についてのセミナーは、ジュエリーデザインにAiを活用するといったお話でした。
イベント
先行して始まった、「香港インターナショナル・ダイヤモンド、ジェム&パール・ショー」の初日に行われたオープニングセレモニー。綺羅びやかな衣装とジュエリーで着飾った美しいモデルたちによるショーから華やかに始まりました。
中日には綺羅びやかなレセプションパーティも行われました。
また、今回で25回目を迎えた「Jewellery Design Competition Award 」の表彰式も行われ、一般部門、学生部門それぞれで多くの受賞者が表彰されていました。
今年の受賞作はこのような作品たちでした。(全てではありません)
最後に
いかがでしたでしょうか。
2024年2月末~3月初旬に行われた香港ジュエリーショーのレポートをお届けしました。
約1週間に渡り2会場に分かれて行われた今回のショー。4,000を超える出展ブース全てを紹介しきれないのは残念ですが、少しでも雰囲気や活気が伝わっていれば嬉しく思います。
所々で中国の景気低下による影響などの声も聞きましたが、ラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド)など好調なマーケットも確かに存在し、特にアメリカ市場が熱いという話もチラホラ耳にしました。
どこをターゲットにするかで利用の仕方は異なると思いますが、世界中から様々な人が集まる世界最大級のイベントです。
色々な人の声を聞くことができ、個人的には世界の宝飾市場の今を知るためにもとても良いイベントだと思いました。
今回私はメディアとして参加させて頂きましたが、バイヤーや出展社など、立場が違えばまた感じ方も異なると思います。
香港ジュエリーショー、来年の開催が今から待ち遠しいです!
カラッツ編集部 監修