翡翠(ヒスイ)は古くから世界中で使われてきた長い歴史をもつ宝石です。
日本で採れることでも知られていますね。
古墳から出土した翡翠の勾玉などを、教科書や博物館などで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は翡翠の産地、日本で採れる翡翠、日本の翡翠の歴史などについてご紹介したいと思います!
目次
翡翠(ヒスイ)とは?
半透明~不透明のグリーンが印象的な宝石翡翠(ヒスイ)。ジェダイトとも呼ばれます。
実は日本の国石は翡翠だとご存知でしょうか。
2016年日本鉱物科学会により定められたといいます。
そんな日本と縁が深い翡翠は、古くから世界各地で装飾品としてだけでなく、祭祀などにも用いられ親しまれてきました。
グリーンのイメージが強いですが、実はオレンジやイエロー、レッド、ホワイトなど多くの色合いがあります。
グリーンの次に人気が高いのはパープル系。ラベンダー翡翠と呼ばれるものです。
また、翡翠(ジェダイト)によく似ており、かつて同じ鉱物だと思われていたネフライトと呼ばれる宝石もあります。
中国語で玉、英語でジェードという、ジェダイトとネフライトの両方に対して使う名前もあるため混乱されがちですが、鉱物としては全く別物で価値も異なります。
翡翠(ヒスイ)の主な産地
翡翠の産地は、世界各地に散らばっています。
アメリカ、グアテマラ、ロシア、トルコ、ミャンマー、そして日本。
ヨーロッパでもスイス、オーストリア、フランス、イタリアから産出されます。
良質な翡翠の産地として有名なのはミャンマーでしょう。
世界に出回っている翡翠の約9割はミャンマー産ではないかともいわれているようです。
日本でも良質な翡翠が採れることがあるそうです。
ミャンマー産(ミャンマーヒスイ)と日本産の翡翠については後ほどもう少し詳しくお話しますね。
翡翠の形成と産出状態
翡翠は高圧低温で変成された地質帯で生成されるといいます。
温度の高い大陸プレートの下に温度の低い海洋プレートが沈み込んでいるのですが、そこで翡翠が生成されるのだそうです。
地球深部で作られた翡翠は、蛇紋岩(サーペンティン)が断層活動や火山活動により上昇する際取り込まれて地表に運ばれると考えられています。
そして、山でできた翡翠が何らかの形で川などに転げ落ち、川から海へと流れ出て、川や海の中、そして海岸に打ち上げられた形で見つかることも多いといいます。
ちなみに、日本の翡翠とミャンマーの翡翠の違いは、ミャンマーの翡翠によく見られるスキンと呼ばれる膜が日本の翡翠には見られないものが多いということだそうです。
特に海岸や河口付近で採れる翡翠は、水流によって研磨され、表面に独特の模様がついているのだとか。
翡翠によく似たキツネ石もあるといいます。
ミャンマー産翡翠(ミャンマーヒスイ)
ミャンマーで良質な翡翠が採れる主な産地はカチン州の北部地域で、特にトーモー(Taw Maw)やミェンモー(Mien Maw)、パンモー(Pang Maw)、ナムシャモー(Namsh Maw)の4ヶ所が有名です。
最大の岩脈があるのはトーモーで、19世紀後半に発見されたといわれています。
ミャンマーの翡翠には土の中から採掘されるものと川の中から採掘されるものがあるそうなのですが、土の中から見つかる原石の中には、表面が層に覆われているものも多いといいます。
一方、川の中から見つかるものには層は形成されていないものが多く、良質なものも多いようです。
裸足で泥の中を歩き、原石を発見することもあるのだとか。
採掘方法は国や鉱物によって異なり、なかなか興味深いものがありますね!
日本で翡翠(ヒスイ)が採れる場所
日本には翡翠の産地が10か所ほど点在しているといわれていますが、宝石品質のものが採れる場所は少ないそうです。
最も品質が高いものは、新潟県糸魚川及びその周辺地域で採れるといわれています。
富山県宮崎・境海岸もヒスイ海岸と呼ばれ有名ですね。
日本の翡翠は約519万年前に生成されたものではないかと考えられており、日本は世界最古の翡翠産地の一つであるといわれています。
では、日本の代表的な翡翠産地である、2つの場所についてもう少し詳しく見てみましょう。
新潟県糸魚川市
新潟県糸魚川市で採れる翡翠は緻密で透明度も高く、ミャンマー産に負けない程美しいものが採れることもあるそうです。
特に明星山で生成された翡翠は美しいものが多いとされ、姫川の支流である小滝川に明星山の大岩壁が落ちた川原一帯は小滝川ヒスイ峡と呼ばれ、1956年に国の天然記念物に指定されています。
また、青海川の上流黒姫山の麓にある青海川ヒスイ峡も美しい翡翠が採れることで知られ、こちらも1957年、国の天然記念物に指定されています。
いずれも現在立ち入り禁止で、翡翠採取はできません。
ちなみに、青海ヒスイ峡から流れ出たヒスイが流れ着く辺りの海岸は、ラベンダー翡翠が多く見られることからラベンダービーチと呼ばれるそうですよ。
実は縄文時代の遺跡から見つかった翡翠も糸魚川地方で加工されたものと考えられているそうです。
富山県宮崎・境海岸(ヒスイ海岸)
宮崎・境海岸(ヒスイ海岸)は、富山県朝日町にあります。
実は朝日町と糸魚川市は隣接しており、宮崎・境海岸~糸魚川海岸辺りまでの海岸で翡翠の原石を見つけることができます。
新潟県の明星山でできた翡翠が何かの拍子に崖下に落ち、長い時間をかけて川を下り、やがて海岸に流れ着くと考えられています。
新潟県糸魚川市やヒスイ海岸周辺には全国から多くの翡翠ハンターが集まり、海岸を探索しています。
もしかしたら品質の高い翡翠に出会えるかも、そう思うとロマンがありますよね。
ただし、鉱物採取にはルールがあります。
危険を伴うこともありますので、行かれる場合は決められたルールや注意事項を事前にきちんと確認し、安全の範囲内で探すようにしてくださいね!
日本史に見られる翡翠
日本の歴史に翡翠が登場したのは約5500年前、縄文時代のことです。
糸魚川地方で作られたペンダントやビーズ状の翡翠が日本各地で取引されていたそうです。
弥生時代には勾玉や管玉の制作が盛んになりましたが、奈良時代以降突如日本史から翡翠が消えてしまいます。
糸魚川市の小滝川で翡翠が再発見されたのは1938年のこと。
当初日本各地の古墳から出土した翡翠は全て外国産だと考えられていたのですが、翡翠の再発見によりその定説は覆り、現在では糸魚川市などで採れた国内産の翡翠であったといわれています。
それから翡翠は、日本の神話にも登場しています。
新潟に越という古代国家があって、翡翠を身に着けた美しい奴奈川姫(ぬなかわひめ)が国を治めていた、という物語があるそうですよ。
最後に
翡翠の産地と形成、日本で採れる翡翠の特徴と歴史についてお話しました。
とても長い歴史があり、日本は世界最古の翡翠産地の一つとしても数えられていることも分かりました。
日本の国石である翡翠。
この記事で翡翠をより身近に感じて頂けたら嬉しいです。
いつかヒスイ海岸やラベンダービーチに行って、翡翠を探してみたいですね!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『翡翠』
著者:飯田孝一/発行:亥辰舎 ほか
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◆https://www.itoigawa-kanko.net/